栄東高等学校 入試対策
2021年度「栄東高等学校の国語」
攻略のための学習方法
漢字・言語事項・文法
近年は知識分野が独立して出題されており、今後もこの形式が続くものと予想される。
漢字は、マークシートという形式上、同音・同訓異字の見分けが主体となる。漢字が書けたとしても正確な意味が分からなければ正解できないのは書き取りも同じであるが、同音・同訓異字の問題を多くこなすことは有効な手段である。レベルは標準的な高校入試の漢字問題集で良い。
文法や言語事項も問題数は少ないがしっかり出されている。文のつくりや品詞の区別・敬語や4字熟語など。国語を苦手とする生徒は特におろそかにしがちな分野であるが、正確な読解に必要な基礎を作るものでもあるので、心当たりのある人は復習を。
この分野が特に苦手な人は、中学受験の教材だが、四谷大塚等の漢字と語句の問題集などは良い練習になる。
長文読解
現代文2問で5000~6000字。説明的文章1問と文学的文章1問で出題されることが多い。
こちらもマークシートではあるのだが、通常の多くの試験、つまり書き抜きや記述問題のある試験と同様に取り組むのが得策であろう。他校も受験することを考えるとマークシート対策ばかりに時間を取られるのも不利であるし、選択肢を選ぶにしても、まずは正確な読解が当然必要となるからである。
段落ごとのつながり・要点の抜き出しなど、印や下線などを使ってハイライトしておき、全体の要約を考える。そうしておけば、消去法で明らかな不正解を除いたとき、残った選択肢がおのずと判別しやすくなり、迷ってミスする危険は減少する。その上で選択式問題の注意点に留意する。部分や一単語を注意深く吟味し、わずかな違いを見落とさないようにするのである。
物語の主題や論説文の論理の流れなどは高校入試としてはさほどの難問とはなっていないが、文中の語句・語彙に難しいものが多く見られるので、少し難し目の文章を多く読み、語彙を増やしておくと有利であろう。
古典
中高一貫校の試験の特性かもしれないが、高校入試で高校レベルの古文が出題されてしまっている点が難しい。中学校で一通り軽くなぞった程度の古典の実力では十分な得点は望めない。塾や独学でのさらなる学習が必須である。
とはいえ、それほどの難文が出されるわけではなく、細かな助詞の使い分けや複雑な文法が問われるわけでもない。話の内容やあらすじがわかれば答えられる問題が多いので、「最重要の古文単語200」といった暗記教材や代表的な基本文法を覚えておけば、大量失点は防げるだろう。
そして、他の教科や範囲がおろそかにならない程度に、できるだけ多くの古典作品に触れて慣れておくのがよいだろう。
最後に
全問マークシートが特徴の本校試験なので、選択式問題のコツをつかんでおき、正確にマークする練習をすることは大事である。
だからといって、あまりマークシートを意識しすぎないほうが良い。他の形式の問題でも得点できる実力がなければ、結局正しい選択肢も選べないのである。
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2021年度「栄東高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
例年通りで大きな変更はない。文章量は7600字ほどで解答数は34問。そのうち、漢字・文法等の知識問題が8問・論説文の読解10問・小説の読解9問・古文の鑑賞7問という出題になっている。
文法などは中学受験で学習するレベルのものも多いので、速やかに進めて読解問題の選択肢の吟味に時間を多く取りたい。
【大問一】漢字
- 時間配分:4分
a. 要請――1誓い 2請う 3整える 4 勢い 5省みる
b. 講和――1講堂 2原稿 3購入 4海溝 5構築
c. 被服――1人件費 2賛否 3悲劇 4被害 5回避
d. 粘り――1天然 2可燃 3捻出 4粘土 5信念
e. 威 ――1偉人 2容易 3維持 4威厳 5遺跡
【大問二】文法・慣用句
- 時間配分:6分
問一 原因・理由を表す「から」
1. 「~してから」は「以後」を表す格助詞(準体助詞)
2・3・5. 場所の起点・経由。
問二 「正確だ(形容動詞)」の連用形。
1. 副詞
2・5. 格助詞
4. 「のに(接続助詞)」の一部。
問三 朝三暮四・四面楚歌・一寸の虫にも五分の魂・二足のわらじ・一矢を報いる
【大問三】論説文の読解
- 時間配分:14分
人びとの会話・書物・儀礼などを媒体として人と人の脳の間をつなぎ、自己複製しながら進化を推進する情報の単位を「ミーム」と呼ぶ。人間はミーム、特に言語を介して情報交換し、道具や行為を選ぶ際の「理由」を比較・評定し、文化的進化の方向性を制御してきたのである。
問一 A. 単純な構造の生物は〇〇、「しかし」複雑な生命体は××。
B. 予想し、どういう動作が最善かを計算する必要が出てくる。「そこで」なぜその動作なのかという問いが生じる。
C. 複雑な生物では、なぜという問いが生じる。「また」目的がすぐ分からず後から付与されることもある。
D. 運動の方向性を別の表現で言いかえているので「あるいは」。
E. 極めて効果的に行っている。「しかも」さらに精度を上げることができる。
問二 ミームとは「人々の会話、教育、書物、メディア、儀礼などを媒介にして脳と脳の間をつなぎ、自己複製しながら進化を推進する情報の単位」である。→選択肢3「ことばなどを手段として進化を手助けし、多様な人々の文化の拡散・普及を可能にする情報の単位である。」
問三 道具的規範性と社会的規範性は対象は異なるものの、いずれも「理由」を比較対照・評定し文化的進化の方向性を制御すべく長期的に作用するようデザインされたミームである(第6・第7段落)。「こうした進化論的な見地に立つと」理由と原因をめぐって細かい問題設定をするのは空虚に思えるのである。
問四 両者はもともと同じ性質のもので、文化的進化に伴って分化してきた、とある。
問五 「文化的進化の方向性を制御すべく、長期的に作用するものとしてデザインされた」のがミームであるから、選択肢1「進化の過程で選択肢をコントロールするために作られた」が合う。
問六 人間はミーム(会話・書物・儀礼などを媒介とした情報の単位)を用いて他者とも文化を伝播し合い、文化的に進化してきた→選択肢2が合う。
【大問四】小説の読解
- 時間配分:16分
正しい親として子どもを厳しく教育してきたが認知症によってその威厳を失ってしまった母に会って、主人公はかつての呪縛から逃れわだかまりを捨てることができた。
問一 a. 人間らしい感情の動きが感じられない目、ということである。
c. 厳格な美術の指導者であった母からすれば、自分の店(おそらくスナックなどの水商売)を持つというのは「下品な・不快な」ことになるのであろう。
問二 「皮肉で」とある。主人公は厳格な教育により整理整頓を強く教え込まれていたようだが、教えた当の母のアトリエが散らかっているので「自分が言っていたくせに」と腹が立ち、皮肉の一つも言いたくなったのである。
問三 傍線②の時点では母が認知症を患っていることに気づいていない。子どものころは自分にしつこく言っていたことを本当に覚えていないのか、と驚きあきれている。
問四 認知症に気づいた主人公に自分の名前を憶えているか訊かれて思い出せない。プライドが高い人であり、娘の名前を思い出せない自分に混乱している様子であろうから、選択肢2がよい。
問五 少し前に「もう正しい母親の役を降りて」とある。絵の指導者として主人公にも厳しくしつけをしてきた母親が、片づけられない自分の部屋を娘に直されたと知ったらプライドが傷つくだろうと思って主人公が遠慮した、という場面である。かつての「正しい母親の役」が「個性派女優を演じ続けて」に当たる。
問六 この「少女」は、厳しい母のもとで抑圧されていたかつての主人公であり、大人になってもまだ心の奥に潜んでいる意識である。しかし、認知症になり本来の姿を失ってしまった母に会い、その落書きのような絵にまだ子供達への思いが失われていないことを知って、かつての呪縛から解き放たれ、母へのわだかまりがなくなった気持ちで自分の中の少女に別れを告げたのである。
問七 1. 「明文化」などされていないし、「怒り」でもない。
2. 母の老化にあらためて気づいたのであって、「嘲笑」はしていない。
3. 現実の少女ではない。
5. 抑圧されたもう一人の自分がいるという心象風景であり、「実家を離れる寂しさ」が描かれているわけではない。
【大問五】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
貧しい男がある僧侶に話を聞き仏を信心したところ、思いがけず財宝を得て家も豊かになり死後も浄土に行くことができた。
問一 ア. 「後世」は死んだ後の世界・あの世。信心すれば死後に極楽浄土に行ける。
イ. 「それはどういうことですか。しっかりとうかがって納得し信仰します。うかがいましょう」
問二 「妻子を養ふに力なし。求むれども(宝を)得る事なし。」→選択肢3
問三 結局、仏を信じろという話であるから、「誠の心」を起こせと言っている。
問四 「自分の心がすなわち仏である。自分の心を離れては仏はいない。自分の心の仏を信じるがゆえに仏は存在するのである。」
問五 男は僧侶の言う通り熱心に信心し、財宝を得て豊かになり死ぬ間際にもいよいよ仏に念じて極楽浄土に行った、という話を聞いた人は「貴みあはれ(尊重し心に深く感じる)」んだのである。
攻略のポイント
古文で大きく失点すると不利である。高校初級程度の教材で良いので、最重要単語や文法を覚えてなるべく多くの文章に目を通しておく。
本校の現代文の読解については、マークシート方式だから簡単ということにはならない。通常の解答形式の問題でも得点できる実力がないと正解を選べない。もちろん選択式問題を多くこなすことも肝要である。その上でマークミスをしないようになれておけば良い。
知識問題は幅広く出題されるので、文法も言語事項も抜かりなく対策をしておくべきである。