栄東高等学校 入試対策
2022年度「栄東高等学校の国語」
攻略のための学習方法
漢字・言語事項・文法
近年は知識分野が独立して出題されており、今後もこの形式が続くものと予想される。
漢字は、マークシートという形式上、同音・同訓異字の見分けが主体となる。漢字が書けたとしても正確な意味が分からなければ正解できないのは書き取りも同じであるが、同音・同訓異字の問題を多くこなすことは有効な手段である。レベルは標準的な高校入試の漢字問題集で良い。
文法や言語事項も問題数は少ないがしっかり出されている。文のつくりや品詞の区別・敬語や4字熟語など。国語を苦手とする生徒は特におろそかにしがちな分野であるが、正確な読解に必要な基礎を作るものでもあるので、心当たりのある人は復習を。
この分野が特に苦手な人は、中学受験の教材だが、四谷大塚等の漢字と語句の問題集などは良い練習になる。
長文読解
現代文2問で5000~6000字。説明的文章1問と文学的文章1問で出題されることが多い。
こちらもマークシートではあるのだが、通常の多くの試験、つまり書き抜きや記述問題のある試験と同様に取り組むのが得策であろう。他校も受験することを考えるとマークシート対策ばかりに時間を取られるのも不利であるし、選択肢を選ぶにしても、まずは正確な読解が当然必要となるからである。
段落ごとのつながり・要点の抜き出しなど、印や下線などを使ってハイライトしておき、全体の要約を考える。そうしておけば、消去法で明らかな不正解を除いたとき、残った選択肢がおのずと判別しやすくなり、迷ってミスする危険は減少する。その上で選択式問題の注意点に留意する。部分や一単語を注意深く吟味し、わずかな違いを見落とさないようにするのである。
物語の主題や論説文の論理の流れなどは高校入試としてはさほどの難問とはなっていないが、文中の語句・語彙に難しいものが多く見られるので、少し難し目の文章を多く読み、語彙を増やしておくと有利であろう。
古典
中高一貫校の試験の特性かもしれないが、高校入試で高校レベルの古文が出題されてしまっている点が難しい。中学校で一通り軽くなぞった程度の古典の実力では十分な得点は望めない。塾や独学でのさらなる学習が必須である。
とはいえ、それほどの難文が出されるわけではなく、細かな助詞の使い分けや複雑な文法が問われるわけでもない。話の内容やあらすじがわかれば答えられる問題が多いので、「最重要の古文単語200」といった暗記教材や代表的な基本文法を覚えておけば、大量失点は防げるだろう。
そして、他の教科や範囲がおろそかにならない程度に、できるだけ多くの古典作品に触れて慣れておくのがよいだろう。
最後に
全問マークシートが特徴の本校試験なので、選択式問題のコツをつかんでおき、正確にマークする練習をすることは大事である。
だからといって、あまりマークシートを意識しすぎないほうが良い。他の形式の問題でも得点できる実力がなければ、結局正しい選択肢も選べないのである。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2022年度「栄東高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
2022年度は知識問題が独立せず読解問題に含まれた。それ以外は例年通りで大きな変更はない。文章量は8200字ほどで解答数は33問。そのうち、論説文の読解15問・小説の読解11問・古文の鑑賞7問という出題になっている。
文法などは中学受験で学習するレベルのものも多いので、速やかに進めて読解問題の選択肢の吟味に時間を多く取りたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:22分
前近代の日本では神・仏・死者や動植物に超越的存在=カミの存在を感じていて、それが人々や国家の間で緩衝として機能していた。近代の人間中心主義はヒューマニズムを土台として人権の確立に寄与したが、緩衝が失われたことで他者を傷つける社会にもなってしまった。
問一
a. 併設――並列・平面・合併・閉口・横柄
b. 遂げる――研げる・登り・途方・塗炭・遂行
「塗炭の苦しみ」―泥にまみれ炭で焼かれるほどの苦しみ。
c. 循環―― 一環・返還・参観・勘案・圧巻
d. 隔てた――格式・比較・改革・遠隔・画一
e. 排除――介助・除名・序章・叙述・徐行
問二
A. 神の分身「あるいは」支配下にある動物。
B. 狩りは神から動物を分けていただくという儀式だった「したがって」必要最低限に無駄のないように行った。
C. 島も大海原も支配者はカミであった。「かつて」辺境の無人島はカミに祈る場所だった。
D. 近代化・ヒューマニズムが人権の拡大・定着に大きな役割を果たした「しかし」他方でカミという緩衝材が失われて他者を傷つける時代になった。
問三 「人が住まない場所」については、「前近代の日本列島では~」で始まる段落から「その本源的所有者はカミだった。」の部分までに書かれているので、(4)に入れれば流れが合う。
問四 傍線①にはカミ・仏・死者だけでなく「動物や植物まで」含まれていた、とあるので選択肢5が合う。
問五
1. 島の本源的支配者はカミであり、領有を争う場所ではなかったと書かれているので、合わない。
5. 「立ち入りを制限し」「乱獲を厳しく処罰する」とは書かれていない。
問六 ✕の直前までカミが人間の争いの緩衝材となっていたことが語られており、国家間でもそうだった、という流れになっている。
問七 人間至上主義としてのヒューマニズムで人権の拡大・定着が進んだが、他方でカミという緩衝材が失われたことで人間・集団・国家の間で他者を傷つけやすい時代になったと述べられている→選択肢3が合う。
【大問二】小説の読解
- 時間配分:18分
両親と離れた主人公は父方の祖母であるマーサばあちゃんの住む地へ向かった。優しい人たちとの出会いにも恵まれ、パートで働きながらばあちゃんの米作りを手伝おうと決意するが、ばあちゃんに認知症らしい症状が現れて動揺する。
問一
a. 切々と――心に強く迫るさま。
b. 叡智――優れた知恵。
c. 息をのむ――驚きや恐れで一瞬息がとまる。
問二
Ⅰ. しばらく・盛んに話し込んだ→「ひとしきり」
Ⅱ. 志乃さんは頼りになり「文句なく」カッコいい。
Ⅲ. 病に「冒され」ながらも。
Ⅳ. 目を「奪われて」。
問三 主人公としては自分の仕事との両立に不安はあったものの、米作りを手伝う方に気持ちが向いていたが、田畑さんの指摘で揺らいでいる。
問四
1. 「むしろ」は副詞である。
3. 「決して」は「言わないで」にかかる。
4. 「手伝う」「言う」「諭す」「いる」の四つである。
問五 迷っている主人公に、どちらも大事なのだし自分も協力するから頑張れ、と迷いながらも進もうとする意欲を後押ししてくれている点が、主人公にはありがたかったのだろう。
問六 傍線④の時点ではまだ襖を開けておらず、ばあちゃんの様子は確認していない。ばあちゃんが認知症だと認識しているようすも描かれていないので、選択肢1がよい。
問七 ばあちゃんの異常な様子に恐怖している。兄の行動も冷静とはいえず、さらに自分を不安にさせる。服の裾をぎゅっと握る動きは何かに「つかまりたい」という欲求を表していると考えられる。
問八 ばあちゃんの発言に注目する。「食べさせなくちゃ……私の家族に」と言って稲をちぎる行動に、それまでのばあちゃんの人生が凝縮されている。そのように家族を想っていたばあちゃんの過去を知るだけに、正気を失った今の姿がなおさら耐え難く恐ろしいのである。
問九 前半は主人公や周囲の人たちの助けで稲作りが続いていくかのような明るい雰囲気だが、後半はばあちゃんの(おそらくは)認知症が進んだ様子が描かれ、その対比が強烈である。短い文の畳みかけは読む人に迫力や緊張を感じさせる効果がある。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
保昌ら国司一行を前にして馬から下りようとしない老人を従者たちが無礼だととがめようとしたが、保昌はそのたたずまいから老人がただ者ではないことを見抜き、やり過ごして事なきを得た。
問一
a. 「そのような(老人をとがめて馬から下す)ことはあってはならない」
b. 「さればこそ(然ればこそ)」は「そうであると思った・思った通り」の意。
c. 老人をとがめるべきだという従者たちを思いとどまらせて、何事もなく済んだ。
問二 「ここで一人の老人があなたたちとお会い申し上げたでしょう。あれは私の父・平五大夫でございます。すっかり田舎者で、(あなたたちが国司であるなど)事情を分かっておりません。きっとご無礼をいたしましたことでしょう」
問三 強いもの同士が戦うと「両方が死なないということはない」。
問四 「かれが振舞」とは、老人が馬に乗っていた時の雰囲気・たたずまいのことを言っている。老人の息子から話を聞いた保昌は「思った通り。あれは致頼だったのだ」と、老人が高名な武士であることを感じ取っていたことを明かしたのである。
問五 選択肢1は致頼についての評として正しいが、この話の主人公は保昌でその行動が教訓になるというテーマであるから、選択肢2がよい。
攻略のポイント
古文で大きく失点すると不利である。高校初級程度の教材で良いので、最重要単語や文法を覚えてなるべく多くの文章に目を通しておく。
本校の現代文の読解については、マークシート方式だから簡単ということにはならない。通常の解答形式の問題でも得点できる実力がないと正解を選べない。もちろん、選択式問題を多くこなすことも肝要である。その上でマークミスをしないようになれておけば良い。
知識問題は幅広く出題されるので、文法も言語事項も抜かりなく対策をしておくべきである。