成蹊高等学校 入試対策
2023年度「成蹊高等学校の国語」
攻略のための学習方法
問題構成
大問3つに論説文・小説・古文の3題が割り当てられるのが定例となっている。
文章量は2題合わせて8000~10000字ほど。問題数は30問前後。
問題量ではおおよそ論説文5割・小説3割・古文2割といった割合で、論説文に重点が置かれている。
設問形式は長・短合わせた記述問題が3~4割を占め、次いで記号選択、書き抜きの順で多い。漢字は例年、4~5問の出題。
論説文の読解
問題量も多く比重が大きいので、ぜひ得意分野にしておきたい。
使われる素材文は、受験生の年齢を考慮した適度な難しさのものが多い。記述問題が多いが、自分の考えを述べるようなものではなく、文中から適切な部分を抽出してうまくまとめれば答えられるオーソドックスな問題になっている。字数指定は無いが、おおむね30字~60字程度でまとめられる文量である。読解力があれば得点を狙えるので、しっかり答えて点を積み上げたい。
まずは論説文読解の基本を身につける。
形式段落と意味段落の整理。意味段落の内容をおおおまかにまとめて小見出しをつけておくと段落ごとの関係・つながりもわかりやすくなる。
要点と細部の区別。段落の最初と最後に注意して、要点に傍線を引くなど、目立つようにしておく。要旨と要約。要点を結んで全体を要約する。記述問題の答え・ヒントは多くはこの部分にあるだろう。読解問題を多くこなし、決められた字数でまとめる練習を積んでおこう。
小説の読解
こちらの分野も、主人公を小学生~中学生に設定した物語が多く、心情を理解しやすい話になっている。無理に大人向けの難解な小説を想定する必要はないので、中学生~高校生向け程度の文章で練習すれば良いだろう。記述問題も物語を丁寧に読み取れていれば、本文中に解答の手がかりがあるものがほとんどである。小説文の読解の基本力をつけておきたい。
まずは場面分け。時間・場所・登場人物などから場面の変化をマークする。登場人物の言動・情景などをヒントにその心情を読み取る。気持ちの変化があった部分は特に注意する。予断なく、文中に書かれていることを手がかりに正確に考えたい。そして、全体としての主題を考える。誰のどんな気持ちを描きたかった話なのか。記述問題で訊かれることの多い部分である。
記述問題
記述問題の多さから、この種の問題を苦手とする生徒は重いテストだと感じてしまうかもしれない。しかし、「自分の考えを述べよ」「自分の言葉で答えよ」といった小論文タイプの問題ではなく、文中から答えやヒントを探すタイプの問題である。字数も30字から60字程度とさほど長文でもない。読解力があれば点を稼げるのだから、なるべく減点されないような整った記述が書けるよう、同じような字数の類似問題でよく練習しておこう。
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2023年度「成蹊高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
現代文2題で合わせて11000字ほどに、古文約480字が加わる。総解答数は29問。そのうち、記述問題は1~2行ほどのものが計8問。
時間は60分あるが、記述8問にはやはり時間がかかる。20~50字ほどで形良く素早くまとめる訓練を積んでおく。
文中からヒントや答えを得られるものが多いので、傍線などで効率よく答えを探せるようにしておくと、時間のロスを防げる。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:30分
「社会」と「世間」という二つの基準を使い分ける日本人特有の行動原理について解説している。
問一 ① 遭遇 ② 同僚 ③ 機構 ④ 前提 ⑤ 幻想
問二 電車に忘れた荷物が盗られもせず見つかったことに対するフランス人の感想である。彼の母国フランスでは、忘れ物は盗まれてしまって、まず戻ってくることはないのである。
問三 モヒカンヘアー・パンクファッション・ピアスなど、社会や大人に対する反抗心を表象するような風体でありながら老人に当たり前のように親切にしている若者を見て、日本ではありえないことだと驚いている。
問四 日本人は「世間」には関心があるが「社会」には無関心である。自分と同じ「世間」に属する人には優しく親切だが、「社会」の側にいる人のことは存在しないかのように扱う。
問五 忘れ物は盗まないのに老人には不親切であるという、欧米人からすると不思議な日本人の行動様式も、「社会」と「世間」という視点から見るとわかりやすくなる、と述べているのである。
問六 たまたま電車に乗り合わせた人たちは「社会」の人として無視できてしまい、本来は恥ずかしい人前での化粧も平気でできるが、そこに知り合いという「世間」が登場すると「人前」が意識されて恥ずかしくなってしまうのである。
問七 欧米のような「個人がつくる社会」が形成されなかった日本では、「社会」という言葉が定着しなかった、と述べられている。
問八 「世間」に属するものは意識するのに、「社会」に属する人は存在しないかのように無視するという「日本特有の行動原理」があり、網棚の忘れ物を盗まないことと、たまたま乗り合わせた老人を助けないことは、ともに「社会」に属するものとして無視したからだと説明できるのである。
【大問二】小説の読解
- 時間配分:20分
地味でダサい友人と付き合い、要領よく立ち回ることもなくまじめに学校生活を送っている姉を見下していた主人公だったが、その姉が友人から仲間外れになっている状況にありながら、先輩とのいさかいで自分をかばっていてくれたことを知り、姉の本当の意味での強さに気づき、妹であるが故の姉への思いに気づく。
問一 Ⅰ. 広瀬先輩の機嫌を損ねたらしいというだけでも面倒なのに、それを他のクラスの子にまで吹聴されてしまって「うんざり」している。
Ⅱ. おとなしそうな穏やかな子たちが姉を仲間外れにしていると聞いて、「しっくり」来ない。
Ⅲ. 仲間外れにされて一人で行動することを想像すると「げんなり」する。
Ⅳ. 基本が「ごっそり」抜けたまま…。
問二 友人たちから仲間外れにされても、それまでと変わらず部活にも出て、悪口すらも平然と聞いている。もちろん心中はつらいはずであるが、そんな様子を家族にも見せず一人で耐えている。そんな姉の「強さ」は、相手に合わせてコミュニティを作ろうとする主人公の「強さ」とは質の異なるもので本当は姉の方が強いのだ、と母親は言っているのである。
問三 姉が自分をかばってくれたせいで広瀬先輩とケンカしたのだと思いたくない心理が働いている。主人公が姉を要領が悪くダサいと馬鹿にしているのは、私のようにもっと要領よくしたら楽なのにという妹なりの愛情の裏返しであり、姉が自分のせいでさらに苦しい状況になってほしくないと、心では思っているわけである。
問四 傍線3は「友だちとうまくいってないの」という妹の問いかけに反応した答えである。主人公の独白にもあるように、もしここで姉が姉を外している友だちについて言及したら、主人公はその友達を「口汚い言葉で罵る」だろう。そんな事態を避けるために「私が悪い」ということで、主人公の攻撃の矛先を失わせたのである。
問五 姉が友人たちと仲直りした光景を見て、本心では心配していた主人公は「安心」したのである。
問六 遠藤の発言から抽出すると、「勉強ばっか」「アニメ(おたく)」「平凡なつまらない将来」「上下関係・人間関係などの基本が抜けている」など。社会の現実的な楽しみを知らず、対人関係の訓練ができていないつまらない人、というイメージであろうか。
問七 問六で挙げた遠藤が由紀枝に持ったイメージは、少し前まで主人公が思っていたことと同じである。しかし、辛いことにも一人で耐え、自分をかばってくれた姉の本当の意味での強さと自分への愛情に気づき、妹としての姉への思慕も自覚している今となっては、遠藤のいかにも薄っぺらい一方的な批判に怒りを覚えて、これ以上遠藤と一緒にいることが我慢できなくなったのである。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
禅師は尊像を建立するため京へ上った。財物を売り金丹などを買って帰る途中、海人が亀を売っていたので人に勧めて買い取らせ、海に放してやった。二人の童子と舟に乗ったところ、舟人が禅師の金品に欲を出し童子と禅師を海に落としたが、禅師は亀に助けられて岸に就くことができた。放してやった亀が恩を返してくれたのであろうか。
そしてさて、賊たちがその寺に金丹を売りに来た。支援者が値段の交渉をしたのち、禅師が現れた。賊たちは窮地に追い込まれた。禅師は哀れに思って罰は与えなかった。仏像を作り塔を飾って、十分に供養した。その後は海辺にとどまってやってくる人を教化し、八十歳を超えて亡くなった。動物ですら恩を忘れず恩返しをする。ましてや、人間が恩を忘れるものだろうか、いや忘れないだろう。
問一 舟を出してもらう時に舟人に代金は払っているはずであるが、禅師が金品を持っていることに気づき、それらも奪おうと画策した。
問二 賊たちは知らずに禅師のいる寺に金丹を売りに来た。海に落としたはずの禅師が現れたので、窮してしまったのである。
問三 海辺でやってくる人を教化して、(禅師は)八十余歳で亡くなった。
問四 助けてやった亀が海に落とされた禅師を岸まで運んでやったことを指している。
攻略のポイント
問題数も配点も多い記述問題は、苦手だからと避けるわけにはいかない。
さいわい、難易度的にも文字数的にも難問というほどではない。字数制限が無いので適切にまとめるのにコツが要るが、類似問題を多くこなして慣れておけば得点を稼げるだろう。
素材文も総計9000字程はあると予想して、スピードを意識して練習しておこう。
古文も高校レベルの問題が出るので、中学校で習ったレベルで終わるのではなく、高校初級程度の学習で力をつけておきたい。