青稜高等学校 入試対策
2016年度「青稜高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[記述]
「青稜の記述対策」は「問題解説」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。60~70字程度で書いてみる(青稜の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
[解法]
前述のとおり、「多種多様な設問内容」の「青稜の国語」で勝利するための鍵は、「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
全てで5000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
青稜に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
「青稜の国語」では、「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる(直接出題は勿論、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
[古典]
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、青稜などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2016年度「青稜高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一 は「論説文」、出典は佐伯啓思「さらば、資本主義」(文字数約3300字)。
小問は全10問(解答数25)。「選択肢」(「複数解答」あり)「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「60字以内」「15字前後」指定各1問)、「漢字の書きとり」(5問)、「総合的知識問題」。
問題文は4分ほどで読み切り、設問を16~17分で解きたい。
大問二は「小説」、出典は山田詠美「色彩の息子」所収の「埋葬のしあげ」(文字数約4700字)。
小問は全11問(解答数20)。「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「15字前後指定」2問、「7字指定」1問)、「漢字の書きとり」(4問)、「総合的知識問題」。
問題文は6分ほどで読み切り、設問を15分ほどで解きたい。
大問三は「古文」、出典は編者未詳「宇治拾遺物語」(文字数約350字)。
小問は全9問(解答数13)。「選択肢」「抜き出し」、「総合的知識問題」(「文学史」)。
10分弱で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
経済成長と民主主義、世界での地位を追求してきた戦後の日本はなぜ、こんなにも奇妙な社会になったのか?物質的豊かさと便利さを実現したのに、日本人はなぜ、幸福を感じられないのか?資本主義の限界と醜態を、日々のニュースの本質を鋭く衝くことで次々と浮かび上がらせている。本文では、IT革命により「がまんしない風潮」が強まり、今日の資本主義は人々の「衝動」へ働きかけることで、「人間破壊」へと導いていると論じている。「社会論」だが、さほど難解な語句もなく内容は十分理解できるはずだ。
本校の特徴である「多種多様な設問内容」なので、設問を正確に理解して手際よく解き進めたい。以下、いくつか確認してみたい。
[問1] 「漢字の書きとり」(全5問)
平易そうだが、いざ書こうとすると……、意外と手強い。
二重傍線部、
(a)「カンリャク化して」=「簡略」(「部首」に注意)、
(b)「サンパツする」=「散髪」(「細部」を丁寧に)、
(c)「テッテイして」=「徹底」(これは問題なし)、
(d)「自由のカクチョウ」=「拡張」(これもOK)、
(e)「カンネンに囚われる」=「観念」(「文脈」から特定する)。
本校では「ハイレベルな語彙力」が求められていると認識しておきたい。
<時間配分目安:1分>
[問2] 「語句の意味の選択肢」(全5問/5択)
「総合的知識問題」。波線部(ⅰ)~(ⅴ)の「語句の意味」を答える。
「外来語」も含めてかなり難解だ。
「答え」を確認する。
(ⅰ)「相乗」=選択肢(エ)の「複数の要因が重なり、掛け合わせたほどの大きさになること」、
(ⅱ)「プロセス」=(ウ)の「過程」、(ⅲ)「還元」=(オ)の「根源に戻すこと」、
(ⅳ)「媒介」=(ア)の「仲介すること」、(ⅴ)「フロンティア」=(イ)の「最前線」となる。
本校では「高度な語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:1分>
[問3] 「語句の空所補充選択肢」(全5問/2択)
本文中の空所 ア ~ オ に、A「私的」かB「公的(公共的)」かのどちらかをあてはめる。「対になっている語句」の「空所補充問題」だ。こうした問題は決して難解ではないのだが、細部に注意して判別しないと全て逆になってしまう恐れがある。要注意だ。
各空所を確認していく。
「ただほしい『モノ』を手にする ア 活動」⇒無論、「答え」はA「私的」、
「社会活動であり イ 活動」⇒「社会活動」でもあるので、B「公的(公共的)」、
「商店街」が「消費活動の『 ウ 的側面』を提供」⇒「商店街」であれば、B「公的(公共的)」、 「いくら『 エ 』といっても~いかがわしいものを買うには気恥ずかしさがあった」⇒「個人的な買い物であっても」ということなので、A「私的」、
「『 オ 活動』」を「徹底して個人的な欲望の充足とみなした」⇒「個人的」で、A「私的」となる。
冷静さを失うと大量失点をも招くので心して判別したい。
<時間配分目安:1分半>
[問8] 「内容説明選択肢」(全2問/5択)
傍線部⑤「アイデンティティ」について、A〈筆者が考えるアイデンティティ〉、B〈現代人が考えるアイデンティティ〉、それぞれの「説明」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
だが、ここは「内容説明」なので「設問」だけでは無理。そこで、「同一意味段落」を確認する(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。傍線部の次段落に「アイデンティティと呼べるようなものがあるとすれば、それは、多かれ少なかれ社会的な次元で定義されるもの」とある。これは「筆者の考え」だ。そして、その2段落後は「ところが」で始まり、「戦後のある時期から」「われわれは『消費を通じて自分を発見しなさいと手招きされている』」と述べている。「現代人の考え」ということだ。各選択肢を確認する。
「文末」は全て「自分らしさ」となっている。
「内容」は、
(ア)「がまん強く努力することで~発見される」、
(イ)「消費活動を通して、自分で発見しなくてはならない」、
(ウ)「躍起になって探そうとする」、
(エ)「他者に用意してもらう」、
(オ)「他者や社会との関係性から導き出される」。
どうか?「A」=「社会的な次元で定義される」⇒「他者や社会との関係性」=「答え」は「(オ)」、「B」=「消費を通じて自分を発見しなさい」⇒「消費活動を通して自分で発見」=「答え」は「(イ)」だと判別できなくてはいけない。
「逆説の接続詞」から段落の「対の関係」をとらえることが肝要。
<時間配分目安:2分以内>
[問9] 「換言説明記述」(「40字以内」指定)
傍線部⑥「『空疎なアイデンティティ』の代用として、『即席の欲望充足』の魔術に取り込まれてしまった」について、「『即席の欲望充足』の魔術に取り込まれ」るとは「どのようなことか」を説明する。
先ずは、「即席の欲望充足」とは何かを捉えたい。「同一意味段落」を確認すると、前段落に「より安く、より早く、より便利に、消費者の欲望を満足させるという『即席の欲望充足』」とある。これだ。次に、この「魔術」は誰が(何が)仕掛けているのか? さらにその前の段落に「『私は私』という空疎なアイデンティティの病に今日の市場経済は徹底してつけ込んできた」とある。傍線部前半の内容とも合致している。つまり、「今日の市場経済」が「魔術」を仕掛けているということだ。あとは、「魔術」という「比喩表現」を何かに換言して(「説明記述」では「比喩表現」は使えない)、「過不足なく」まとめればいい。たとえば、「消費者の欲望を満足させる今日の市場経済の魅力につけ込まれてしまったということ。」といった「答え」になる。「換言説明記述」の「解法」に則してまとめることが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
【大問二】
- 時間配分:
妄想、孤独、虚栄、倒錯、愛憎、嫉妬、再生、劣等……。こうした感情が金赤青紫白緑橙黄灰茶黒銀に偏光しながら、心のカンヴァスを妖しく彩る12色の短編集の一編。
本文では、自分は不必要な人間であり、死んだように生きていくしかないと思っている「ぼく」が、メイドとのやりとりを通じて、「死」のイメージであった「土」を「生きた場所」だと感じるようになっていく姿が描かれている。難解な語句はないが、作者独特の「世界観」や「心情」を把握するのに苦労するはずだ。以下、いくつかの設問を検証する。
[問3] 「心情説明選択肢」(4択)
傍線部②「こいつは、生を受けてからのわずか二週間の間に、生きているということを実感したのだろうか」について、「この時『ぼく』はどのようなことを思っているのか」を答える。傍線部だけでは「原意消去」は困難なので、「直前直後」を確認する(「同一場面の直前直後に根拠あり」が「小説の解法」の大原則)。
2行後に「そうでなければ良いと、ぼくは思った」とある。「良い」と思ったのだから(=「プラス」の心情)、「文末」が「不憫で哀れだ」となっている選択肢(ウ)は「消去」だ。他の選択肢の「文末」は全て「プラス」の心情なので、前半を確認する。(イ)のみが「生きている実感」について述べており、傍線部の「生きているということを実感したのだろうか」に合致しているので、「答え」になる。
「選択肢設問」では「段階的消去」も駆使することが重要だ。
<時間配分目安:2分以内>
[問5] 「内容説明選択肢」(4択)
傍線部④「それは、ぼくの家が金持ちであることだけが原因しているのではない」について、「『ぼく』はこのことについて、どのように考えているか」を答える。
先ずは、「指示語」を開く。「それ」=「友達が『ぼく』のことを『おぼっちゃま』と呼んだこと」だと分かる。なので、そのことの「原因」を「ぼく」がどのように考えていたのかということだ。「直前直後」を確認すると、直後に「ぼくの考え」が説明されている。「彼ら」(=「友達」)の「やっかみ」は、「ぼく」が「まわりの人々よりも、あらゆる点で劣り、しかも、そのことを気に病んで、人と打ち解けることのできない人間だった」からだと考えていることが分かるはずだ。各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「親しみやすく好意的な性格の持ち主だから」、
(イ)「自分に人間的な欠陥があるから」、
(ウ)「劣等感を抱えた卑屈な人間だから」、
(エ)「裕福な家庭での生活に安住しているから」。
無論、(ウ)以外は「消去」可能だ。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は「(ウ)」だ。「指示語」をすぐに開いて、解いていくことがポイントだ。
<時間配分目安:1分以内>
[問8] 「条件付き空所補充抜き出し及び記述」(全2問/ともに「7字」指定)
傍線部⑦「ぼくは、呆然として、彼女の言葉を反芻し続けるだけだった」について、その「理由」について示されている「説明文」の空所 A ・ B に「入る言葉」を答える。
提示されている「条件」は、「 B は『抜き出し』で、 A は『それに対応する言葉』」にすること。「説明文」は、「今まで、自分自身のことを A だと思い込んでいたが、異なる価値観を持った他人にとっては B として受け止められることもあるのだと知り、衝撃を受けたから」となっている。この「説明」から、「他人」(=「彼女」)が「自分自身」(=「ぼく」)のことを、「ぼく」とは異なる「受け止め方」をしていることが「衝撃」であって、その「言葉を反芻し続けている」ことが分かる。
では、どのような「受け止め方」なのか?直前に「彼女」(=「恵子」)の「言葉」がある。それは、「私から見たら、信介さん(=ぼく)の方が、ずっと価値のある人間ということです」というものだ。 であれば、「抜き出し」の B の「答え」は「価値のある人間」になる。そして、「異なる受け止め方」である「対応する」 A は、「価値のない人間」を「答え」にする判断できるはずだ。「条件」は重要な「手がかり」だと心得よ。
<時間配分目安:2分半>
[問11] 「漢字の書きとり」(全4問)
【大問一】以上に悩ましい。
二重傍線部、
(ⅰ)「タイハイの匂い」=「退廃」(「難解語彙」だ)、
(ⅱ)「センメイに覚えている」=「鮮明」(これは正解必須!)、
(ⅲ)「クウキョを食ってた」=「空虚」(「比喩表現」に惑わされないこと)、
(ⅳ)「カけ寄った」=「駆(け寄った)」(「複合動詞」に要注意)。
本校の「漢字」はやはり、一筋縄ではいかないということだ。
<時間配分目安:1分以内>
【大問三】
- 時間配分:
鎌倉時代の代表的説話集。全15巻で197話を収録。「今昔物語」と共通のものも多いが、「仏教説話」の他、「人間滑稽譚」など民話風な説話も多い。本文は、巻三の「雀、報恩」。「古文単語の意味」や「文語文法」、「主語特定」といった「古文の基礎」、そして「内容解釈」、さらには「文学史」も問われている。以下、いくつか検討してみよう。
[問2] 「口語訳選択肢」(4択)
傍線部②「あはれなれ」について、「口語訳」を答える。
形容動詞(ナリ活用)「あはれなり」の已然形(直前に「忘れず来たるこそ(係助詞)」とあるので「係り結び」で「已然形」になっている)。「あはれなり」は「最重要古文単語」だということは知っているはず。時代によって様々な「意味」があり現在に至っているわけだが、「古文単語」としての基本として、先ずは「しみじみとした思いだ。趣深く感じる」という「意味」だと判断できなくてはいけない。
したがって、「答え」は選択肢(ウ)の「しみじみ感心なことだ」になる。
「古文単語」で最も注意を要するものは、現在も使われているが、「意味」が異なっているものだ。
<時間配分目安:30秒>
[問4] 「口語訳選択肢」(4択)
傍線部⑥「やうこそあらめ」について、「口語訳」を答える。
ひとつの単語ではないので、品詞分解する。「やう(=名詞)/こそ(=係助詞)/あら(=動詞『あり』の未然形)/め(=『推量』の助動詞『む』の已然形⇒『係り結び』」。「時制」は「現在形」なので、「過去形」になっている選択肢(ア)(イ)は「消去」できる。
次に、「やう」(=「様」)の意味だが、「様子」「手段」「理由」、「~こと(形式名詞)」などいくつかあるが、ここは「文脈」から「理由」だと判別できるはず。
したがって、「答え」は(エ)の「手段があるのだろう」ではなく、(ウ)の「理由があるのだろう」となる。「口語訳」は「古文単語の意味」+「文脈」で判別することが肝要だ。
<時間配分目安:1分>
[問5] 「会話部分特定抜き出し」(「5字」指定)
本文中で、「『女』が言った言葉なのに『 』がついていない部分」を抜き出し、「はじめの5字」を答える。
そもそも「古文」では「『 』」などの記号は用いられていないので、「会話(引用)」部分」の特定は頻出だ。着目すべきは当然、「会話(引用)」部分」を閉じる格助詞の「と」だ。直前に「 』」がない部分を確認する。唯一、3行目に「忘れず来たるこそあはれなれといふほどに」とある。つまり、「~あはれなれ」までが「女」の「言葉」だと分かるはずだ。
よって、「答え」は「忘れず来た」となる。
「動作主」と並んで「会話特定」は「古文」の定番、しっかりと練習しておくこと。
<時間配分目安:1分半>
[問9] 「ジャンル特定選択肢」(4択)
本文の出典である「宇治拾遺物語」の「ジャンル」を答える。
「総合的知識問題」の「文学史」。基本中の基本で、本校志望者は正解が必須。「宇治拾遺物語」といえば、「今昔物語集」や「十訓抄」とともに「説話集」の代表的作品だ。
したがって、「答え」は(ウ)の「説話」。
「宇治拾遺物語」とあるから「物語」などと間違わないこと。
「文学史」や「古典常識」などもしっかりと定着させておくこと。
<時間配分目安:30秒>
攻略ポイント
●「時間との闘い」が最優先課題だ。
どう「攻略」するか? 要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要。「時間切れ」での「失点」は最悪だからだ。大問では、「知識」中心の「古文」を優先する。「現代文」で、「論説文」と「小説」のどちらを先に解くかは、自分自身で事前に決めておくこと。また、「小問」は「知識問題」からこなすのが原則。
合計で5000字超(本年度は一気に増加して約8300字)の「文章」を「読解」することになる(速く正確に読み取るために、分速750字以上を目標に「読む練習」をすること)。
「解答数」は50以上。全て丹念に答えることは物理的に不可能。
したがって、「取れる問題を確実に押さえる」ことが最優先で、「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も求められる。無論、「単純ミス」は絶対にしてはいけない。
「合格ライン」は6割ほど(過去4年間の3科目合計の「合格最低得点率」は57.6%。本年度は58.7%)。「戦術ミス」は致命的になると心得よ。
●「多種多様な設問内容」に「攻略法」はあるのか?
「設問内容」を的確に捉え、それぞれに応じた「解法」を適切に用いることが最重要。そのためには、基本的「解法」を完全習得し、自分自身の「ツール」にすることが必須だ。切迫する「時間」の中で、いかに的確に「解法」を用いて解いていくかが合否を分ける。
●「高度な語彙力」が問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。
独自に「幅広い知識」を常に習得していくこと。学校や塾での学習だけでは全く不十分、「独習」は不可欠だ。
●「古文」については、 重要な「古文単語」の定着は勿論だが、「内容理解」も求められるので、「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「古典常識」も「日本史」を含めてなじんでおくことが必要だ。