青稜高等学校 入試対策
2017年度「青稜高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[記述]
「青稜の記述対策」は「問題解説」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。60~70字程度で書いてみる(青稜の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
[解法]
前述のとおり、「多種多様な設問内容」の「青稜の国語」で勝利するための鍵は、「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
全てで5000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
青稜に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
「青稜の国語」では、「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる(直接出題は勿論、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
[古典]
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、青稜などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。
従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2017年度「青稜高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は鷲田清一「ひとはなぜ服を着るのか」(文字数約2700字)。小問は全8問(解答数16)。「選択肢」(「不適切」あり)、「抜き出し」(「空所補充」あり)、「説明記述」(「40字以内」指定1問)、「漢字の書きとり」(5問)。問題文は3分半ほどで読み切り、設問を15~16分で解きたい。
大問二は「小説」、出典は吉村昭「羆」所収の「ハタハタ」(文字数約5500字)。小問は全13問(解答数18)。「選択肢」、「抜き出し」、「語句記述」(空所補充)、「説明記述」(「25字以内指定」2問、「15字以内指定」1問)、「漢字の書きとり」(5問)。問題文は7分ほどで読み切り、設問を16~17分で解きたい。
大問三は「古文」、出典は作者未詳「住吉物語」(文字数約300字)。小問は全7問(解答数9)。「選択肢」、「抜き出し」、「語句記述」、「説明記述」(「10字前後」指定1問)。6~7分で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
ひとは服なしでは生きられない。流行(モード)という「社会の時間」と「身体の感覚」とがせめぎ合う場所で「わたし」という存在が整形されてゆく――「ファッション」や「モード」を素材として、「アイデンティティ」や「自分らしさ」の問題を現象学的視点から分析している。
本文では、「ファッション」において、人々が微妙な差異にこだわるのも、差異の抹消が個人の存在の特定を不可能にするためであり、人々は、互いに相手の「鏡」となり、自らの「セルフ・イメージ」を微調整し合うと論じている。「哲学論」ではあるが、さほど難解な語句もないので、内容は理解できなくてはいけない。
本校らしさの溢れる「多種多様な設問内容」で、問題を的確に理解して手際よく解き進めたい。以下、いくつか確認してみたい。
[問1] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部①の「女性の〈性の制服〉」とは「どのようなことか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここでは、「制服」の「原意」と各選択肢の「文末」(「選択肢の説明」で最も重要な要素は「文末」に記されている)とが結びつかないものを「消去」していきたい。確認する。(ア)「機能的なもの」、(イ)「半ば強制的に着せられるもの」、(ウ)「普遍性を持つもの」、(エ)「象徴となったもの」。どうか? 「制服」=「ある集団に属する人が着る、色や型の定められた服装」のことだと誰でも知っているはずだ。「定められた服装」ということは、「着なくてはいけない服装」ということだ。
よって、(イ)以外は「消去」可能となる。他の部分の説明も特に誤ってはいないので、(イ)が「答え」となる。「一発消去」だ! 「選択肢消去」では、先ず「原意消去」を試みることが鉄則だと心得よ。
<時間配分目安:30秒>
[問3] 「内容説明の具体例不適切選択肢」(4択)。
傍線部③「衣服やメイクやしぐさが、そういうイメージとの深い共犯関係のなかで強力にはたらいています」について、「こうした状況の事例」として「ふさわしくないもの」を答える。「そういう」という「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で直前を確認すると、「そういう」=「子供らしさだとか高校生らしさ、母親らしさとか教師らしさといった『らしさ』(という)」だと分かる。
そして、「同一意味段落」を確認すると(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)、傍線部の次文に「ある種の社会的な強制力をもって」ともある。つまり、「~らしさ」という「イメージ」と関係のある「衣服やメイクやしぐさ」が、「社会的」に「強制」されている「事例」として「ふさわしくないもの」を答えるわけだ。
各選択肢を確認する。(ア)「柔和な顔立ちの赤ん坊に……男の子であることは気にせず……ピンクの服を着せてみた」、(イ)「女性の教師が、華美な化粧と、強い香水の匂いを教頭から注意された」、(ウ)「日本では物静かだった選手が、大リーグに移籍したとたん、大げさな身振りで喋るようになった」、(エ)「中学校で……長髪やパーマの生徒が……短髪にするよう指導された」。
「~らしさ」と「衣服やメイクやしぐさ」を結びつけてみる。「男の子の赤ん坊」⇒「ピンクの服」、「教師」⇒「華美な化粧と強い香水の匂い」⇒「注意される」、「大リーグの選手」⇒「大げさな身振り」、「中学生」⇒「長髪やパーマ」⇒「指導される」。「~らしさ」を「強制」されるのだから、「男の子の赤ん坊」⇒「ピンクの服」が「ふさわしくない」と判別できるはずだ。
したがって、「答え」は(ア)になる。「解法」に則して段階的に読み解いていくことが肝要。
<時間配分目安:1分半>
[問5] 「内容説明空所補充抜き出し」(全2問/各「漢字2字」指定)。
傍線部⑤「ネガティブに語られる」について、「こうしたファッションがどのように『ネガティブ』(消極的・否定的)に語られるのか」を説明している、「横並びで Ⅰ 的な服装をすることが、一人一人の Ⅱ を見えなくしている」の空所に「入る語」を、それぞれ「漢字二字」で抜き出して答える。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「こうしたファッション」を確認すると、「このような横並びのファッション」だと分かる。さらに、「このような」という「指示語」を開くと、「横並びのファッション」=「制服」だと読み取れる。
要は、「『制服』のような『横並びのファッション』」が「どのように『ネガティブ』に語られるのか」という「説明」だ。「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則。先ずは「内容」。 Ⅰ は「『制服』はどのような『服装』なのか」というもの、 Ⅱ は「『制服』で見えなくなるもの」だと判断できるはずだ。「範囲」は無論、「同一意味段落」。探していく。すると、傍線部の3段落後に「制服が画一性・没個性といったマイナス価値のしるしとされる」とある。「制服」⇒「マイナス価値のしるし」、「『ネガティブ』に語られる」に結びつく。
であれば、「漢字二字」なので、 Ⅰ =「画一」、 Ⅱ =「個性」が「答え」となる。「抜き出し設問」では「抜き出し範囲」を絞り込むことがポイントとなる。
<時間配分目安:2分半>
[問6(1)] 「理由説明記述」(「40字以内」指定)。
傍線部⑥「『自由』の象徴」について、「なぜ『制服』が個人を『自由』にしたのか」を説明する。先ずは「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「手がかり」を確認する。直前直後から、「背広という制服」は「もとをたどれば『自由』の象徴」だったということが分かる。
つまり、「背広」という「制服」は「もと」は、「個人を『自由』にした」ものだったというわけで、その「理由」を説明することになる。「なぜ」なのか? 当然、「同一意味段落」で説明されているはず。チェックする。すると、次段落から「1789年の大革命前のフランスの状況」(=「もと」)の説明がなされており、2段落目には「『自由』のしるしとしてのこうした市民の制服(=「背広」)は、すべての市民が、出身階級やそれにまつわるさまざまの差別を廃棄し、社会生活においてみなが同じスタートラインに立つという、……理念の……表明として編み出された」とある。まさに、これが「理由」だと分かる。
したがって、あとは「過不足」なくまとめればいいことになる。たとえば、「すべての市民の理念の表明としての出身階級等の差別を廃棄するというものだったから。」といった「答え」になる。尚、「説明記述」では「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を必ず「文末」としてまとめることが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
[問8] 「漢字の書きとり」(全5問)。
ここは本校にしては容易いはず。一気呵成に「全問正解」といきたい。やや難解なものとしては、二重傍線部(a)「結婚ヒロウ宴」=「披露」(「披」「部首」に注意)、(e)「差異の完全なマッショウ」=「抹消」(「文脈」から「同音異義語」を判別せよ)だろう。他は、(b)「制服はレキゼンとあって」=「歴然」、(c)「ゲンミツな決まり」=「厳密」、(d)「事態はやがてギャクテンし」=「逆転」。何ら問題ないはず。本校では難易度が低いレベルだと心得よ。
<時間配分目安:1分>
【大問二】
- 時間配分:
東北地方の漁村。「俊一」の父と祖父は「ハタハタ漁」で海に出たまま戻らぬ人となった。数年に1度だけ押し寄せてくる、父を奪ったその「ハタハタ」の到来を村落の者たちは願っている――「ハタハタ漁」を題材に共同社会と伝承伝統の中に潜む非情さを描いている作品。
本文は、(中略)等をはさみながら「作品全体」のストーリー・ラインを捉えようとする構成になっている。そのため、「手がかり・ヒント」が本来の「解法」ではつかみづらいという設問もあり、なかなか厄介だ。
以下、いくつかの設問を検証する。尚、本文には「場面」ごとに1~5の「形式段落」とは別の「段落番号」が付されている。
[問1] 「内容説明抜き出し」(「一文」の「最初の5字」指定)。
傍線部①「そうした村落にとって、集団的に湾内に押しかけてくるハタハタの大群は天与の恵みであり、その漁獲から得た収入金は村落の一年間の生活を支えてくれるのだ」について、「ハタハタ漁のこうした側面の裏にある、村落をおびやかす負の側面について書かれている一文」を「1段落の文中」から探し、「最初の五字」を抜き出して答える。
冒頭に「そうした」という「指示語」があるので開くと、直前から「そうした村落」=「辛うじて湾内の魚介類をあさるにとどまっている海岸線の漁村」だと分かる。つまり、「抜き出すべき内容」は「辛うじて湾内の魚介類をあさるにとどまっている海岸線の村落の一年間の生活を支えてくれるハタハタ漁の裏にある、村落をおびやかす負の側面」というわけだ。
「抜き出し範囲」は「1段落」と指示されている。探していく。すると、段落最後に「選ばれた一つの湾が豊漁ににぎわえば、他の湾の漁村は飢えにおびえて出稼ぎ人が漁村をはなれてゆく。」という「一文」がある。まさに、「村落をおびやかす負の側面」だ。したがって、「答え」は「選ばれた一」となる。「抜き出すべき内容」を的確に捉えることが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問2] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部②「炭焼き村の男生徒の一人が俊一たちに近づいてくると、『お前らの村落には、もうハタハタはこねえとさ』と、言った」について、「この『男生徒』の発言はどのような意味を持っているのか」を答える。「原意消去」をしたいが、「発言の意味」なので、ここだけでは無理だ。
そこで、「直前直後」を確認する(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。すると、直後で「男生徒」がさらに「ハタハタは、……お前らの村落なんか見向きもしねえんだとさ」と言った後に、「炭焼き村の子供たちは、小気味よさそうに頬をゆるませている」という「ト書き」がある。
各選択肢の「文末」は、(ア)「漁村民への非難」、(イ)「漁村民へのやっかみ」、(ウ)「漁村民の目をさますための警鐘」、(エ)「ハタハタ漁への覚悟を決めさせるための激励」。「炭焼き村」(=山の村落)の「男生徒」の「俊一」たち「漁村民」に対する「発言」で、「小気味よさそうに頬をゆるませている」のだから無論、「やっかみ」以外は「消去」できるはずだ。
他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(イ)だ。「本文」に則した「解法」を的確に用いて「消去」していくこと。
<時間配分目安:2分>
[問4] 「条件付き内容説明記述」(「25字以内」指定)。
傍線部④「俊一には、ハタハタの存在が極めて尊大なものとして意識され、その動きに一喜一憂する人間そのものがひどく心許ない(=頼りない)ものに感じられてならなかった」について、「どのようなことから『ハタハタ=尊大なもの』という意識は生まれたのか」を「二十五字以内」で説明する。
「条件」は「『人間』『ハタハタ』という語句を使う」こと。先ずは、「尊大」の「原意」。当然、知らなくてはいけない語句だ。「いばって、他人を見下げるような態度をとること」。「ハタハタ」=「尊大」、そして、「条件」のもうひとつの「人間」=「心許ない」という視点で、「直前直後」を読み解いていきたい。「直前」に「海岸の十数個所の村落はその(=ハタハタの)到来を心からねがい網を張って待ちかまえているが、そのやってくる湾の選択は、ハタハタの側にある」と説明されている。
要は「海岸の村落の人間たちの生活は、ハタハタの選択に左右される」わけだ。だからこそ、「ハタハタの存在」=「尊大なもの」になる。こういった内容を「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「ハタハタが漁村の人間の生活を左右するということ。」といった「答え」だ。「条件」は大きな「手がかり」だと捉えること。
<時間配分目安:2分>
[問9] 「情景描写読み取り選択肢」(4択)。
傍線部⑧「海は、いつもの海とは異なっていた。深い青みをおびた海水は淡褐色に変化し、それは湾全体をそめている。しかもその海面は不気味なうごきをしめし、大きくうねる波にも重々しい奇妙な起伏がみられる」について、「俊一」が見た「海の様子が暗示している内容」を答える。
先ずは「原意消去」。ここは「情景描写」なので、「淡褐色に変化」「不気味なうごき」「大きくうねる波」「重々しい奇妙な起伏」といった「表現」の「原意」が表す「様子」と結びつかないものを「消去」する。
各選択肢の「文末」を確認する。(ア)「死をつれてくる恐ろしい存在に変化してしまった」、(イ)「攻撃の対象へと変えてしまう」、(ウ)「父の捜索を不可能にする不吉なものになっている」、(エ)「命をかけた戦いが今から始まろうとしている」。「海」が「変化している」のだから、「変えてしまう」「始まろうとしている」は即「消去」可能だと判別できなくてきいけない。
次に、「不気味」「うねる」「重々しい」「奇妙」という「表現」との結びつきから考えると、「恐ろしい存在」ではなく「不吉なもの」だと判断できるはずだ。(ウ)は他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」になる。「解法」に則しての「段階的消去」も必要となる。尚、「小説」では「情景描写」から「心情」を読み解く問題も頻出なので、練習しておきたい。
<時間配分目安:2分>
[問13] 「漢字の書きとり」(全5問)。
【大問一】と比べると、相当に悩ましいものが多い。
二重傍線部(a)「半島のトッタン」=「突端」(「文脈」から「意味」を捉えること)、(b)「ニンイに湾を選ぶ」=「任意」(難易度が高い)、(c)「ロウレンな漁師」=「老練」(「練」に要注意)、(d)「フキンシン」=「不謹慎」(「謹」と「慎」、「部首」を勘違いしないこと)、(e)「シキイをまたいだ」=「敷居」(馴染みがなく難解)。
本校では「ハイレベルな語彙力」が求められていると認識せよ。
<時間配分目安:1分>
【大問三】
- 時間配分:
鎌倉時代前期の「擬古物語」(鎌倉時代から近世初頭に成立した、平安時代の王朝貴族を主人公にする物語の総称)で、平安時代の「落窪物語」と同系の「継子(ままこ)いじめ物語」。実母を失い継母に引き取られた姫君が、継母の妨害にあいつつもついに貴公子の少将に愛されて栄華を極め、継母は零落するというお話。
本文は、恋い慕っていた「女君」が突然姿を消し、途方に暮れた「男君」が初瀬(長谷寺)に出かけた場面。「古文単語の意味」や「和歌の表現技法」、「主語特定」といった「古文の基礎」、そして「内容解釈」などが問われている。以下、いくつか検討してみよう。
[問1②] 「古文単語の意味の選択肢」(4択)。
傍線部②「そばむきて」の「意味」を答える。「四段活用」の「動詞」である「そばむく(側向く)」は「わきを向く」が「原意」だ。よって、「答え」は選択肢(エ)の「そっぽを向いて」となる。「そば」=「近く」⇒(ア)の「じっと見つめて」などと勝手な解釈は決してしてはいけない。
よく分からない場合は、前後の「文脈」を確認すること(「現代文」と同じだ)。ここでは、直後に「さし寄りて見れば、我が思ふ人なり(=近寄って見ると、私が思う人である)」とある。近寄って初めて「我が思ふ人」だと判明するのだから、「じっと見つめて」いるはずはないと判断できるはず。知らない「古文単語」を「口語」から類推することは必要なのだが、「文脈」も必ず確認することが重要だ。
<時間配分目安:1分>
[問4] 「主語特定の選択肢」(4択)。
波線部(A)~(D)の「動作」のうち、傍線部⑥「のたまへば」とは「主語の異なるもの」を答える。本文で「主語」となり得る人物(要は「登場人物」)は冒頭の「説明文」から、「初瀬」(長谷寺)に出かけた「男君」と、その「男君」が恋い慕っていて姿を消してしまった「女君」との2人だけだと分かっている。
そして、傍線部⑥は「おはしましどころ、知らせさせたまへ(=いらっしゃるところをお知らせなされ)」と「のたまへば(=おっしゃると)」となっているのだから無論、「主語」は「男君」だ。さらに、この言葉は「会話のやりとり」の中で、直前の「『……いと哀れにぞ』と言ひて」という波線部(C)に対しての言葉だと判断できるので、(C)の「主語」は「女君」になる。
よって、「答え」は(C)だと特定できる。念のために他の波線部を確認しても、全てが「男君」が「主語」だと判断できるので、間違いない。
尚、本校に限らず、「古文」での「主語特定」は定番だ。本文全体から「人物関係」を的確に把握した上で、「敬語」などの「文法的要素」にも着目して判断していくことが求められる。
<時間配分目安:1分>
[問5] 「和歌の表現技法の抜き出し」(「2語」指定)。
本文中の「和歌」には「掛詞(かけことば)」(=同じ音で、意味の異なる語を用いて、表現に二つの意味を持たせる)という「表現技法」が用いられているが、その「掛詞」になっている「語」を「和歌」から「二つ」抜き出して答える。
「和歌」を確認する。「わたつ海(大海)のそことも知らずわびぬれば 住みよしとこそあまは言ひけれ」。「掛詞」は「ひとつの音」で「ふたつの語句」を表現するので、基本的には「ひらがな」で表記されている。そして、ここでの「和歌」は直前の「おはしましどころ、知らせさせたまへ(=いらっしゃるところをお知らせなされ)」という「男君」の言葉に対する「女君」の返事になっていることは「文脈」からすぐに分かる。
そうしたことを考え合わせ、上の句の「そこ」=「(海の)底」+場所を示す指示代名詞「そこ」、そして、下の句の「住みよし」=「住み良し」(住みやすい)+「住吉」(地名)の2つが「掛詞」だと特定したい。尚、「住吉」は本文の出典として「住吉物語」と記されているので、それもヒントになる。
ちなみに、「和歌」の口語訳は「大海の底だとも、そこがどこなのか分からずに困っていると、住みよい住吉という場所だと漁師は言うなあ」(「掛詞」を含む「和歌」では、「2つの意味」を必ず織り込んで口語訳すること)となる。「和歌」の「表現技法」としては他に「枕詞」「序詞」「縁語」などもあるので、必ず習得しておくこと。
<時間配分目安:1分半>
攻略ポイント
●「時間との闘い」が最優先課題だ。どう「攻略」するか? 要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要。「時間切れ」での「失点」は最悪だからだ。
大問では、「知識」中心の「古文」を優先する。「現代文」で、「論説文」と「小説」(あるいは「随筆」)のどちらを先に解くかは、自分自身で事前に決めておくこと。また、「小問」は「知識問題」からこなすのが原則。合計で5000字超(本年度は増加して約8500字)の「文章」を「読解」することになる(速く正確に読み取るために、分速750字以上を目標に「読む練習」をすること)。
「解答数」は50ほど(本年度は減少して43)。全て丹念に答えることは物理的に不可能。したがって、「取れる問題を確実に押さえる」ことが最優先で、「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も求められる。無論、「単純ミス」は絶対にしてはいけない。「合格ライン」は6割ほど(過去4年間の3科目合計の「合格最低得点率」は59.6%。本年度は66.3%)。「戦術ミス」は致命的になると心得よ。
●「多種多様な設問内容」に「攻略法」はあるのか? 「設問内容」を的確に捉え、それぞれに応じた「解法」を適切に用いることが最重要。そのためには、基本的「解法」を完全習得し、自分自身の「ツール」にすることが必須だ。切迫する「時間」の中で、いかに的確に「解法」を用いて解いていくかが合否を分ける。
●「高度な語彙力」が問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。独自に「幅広い知識」を常に習得していくこと。学校や塾での学習だけでは全く不十分、「独習」は不可欠だ。
●「古文」については、 重要な「古文単語」の定着は勿論だが、「内容理解」も求められるので、「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「古典常識」も「日本史」を含めてなじんでおくことが必要だ。