青稜高等学校 入試対策
2022年度「青稜高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「青稜の記述対策」は「問題解説」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。60~70字程度で書いてみる(青稜の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
前述のとおり、「多種多様な設問内容」の「青稜の国語」で勝利するための鍵は、「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
全てで5000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
青稜に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「青稜の国語」では、「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる(直接出題は勿論、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、青稜などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。
従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2022年度「青稜高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は内田樹編「ポストコロナ期を生きるきみたちへ」所収の鷲田清一「マスクについて」(文字数約5000字)。小問は全10問(解答数22)。全て「マーク方式」の「選択肢」(「不適切」「空所補充」「複数解答」「内容合致」、「漢字の同音(訓)異字判別」あり)。問題文は6分強で読み切り、設問を18~19分で解きたい。
大問二は「小説」、出典は阿部昭「千年・あの夏」所収の「父と子の夜」(文字数約2700字)。小問は全12問(解答数15)。全て「マーク方式」の「選択肢」(「空所補充」「複数解答」「内容合致」、「総合的知識問題」あり)。問題文は3分強で読み切り、設問を14~15分で解きたい。
大問三は「古文」、出典は無住道暁「沙石集」(文字数約600字)。小問は全9問(解答数16)。全て「マーク方式」の「選択肢」(「空所補充」、「主語特定」「内容解釈」「語句原意」「現代語訳」「文語文法」等、「総合的知識問題」あり)。7~8分で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:18~19分
コロナ・パンデミックによって世界は変わった――グローバル資本主義の神話は崩れ、一握りの超富裕層がいる一方で、命を賭して人々の生活を支える多くのエッセンシャルワーカーが貧困にあえいでいる。私たちは今、矛盾に満ちた「歴史的転換点」にいる。こうした分岐点をどのように生き延びればいいのかを論じた中の一篇。本文では、自分たちの秩序と他の秩序が接触する場では緩衝地帯が設けられるが、マスクも緩衝地帯であり、コロナ禍にマスクを装着することは、人と人がともに生き延びるにあたって大事なことは何かを考える機会になると指摘している。やや難解な語句があるが、「※注」も活用してしっかりと内容を読み取りたい。多様な小問が並び、解答数は22もある。だが、難易度は標準レベルなので、とにかく手際よく、即断即決して解き進めていきたい大問だ。
以下、いくつか確認してみたい。
[問1] 「換言語句選択肢」(4択)。
「総合的知識問題」。「語句の意味」だ。二重傍線部(A)「暗黙の約束」の本文における「言い換え」を答える。
「本文における」とあるが、先ずは「原意」を捉えることが肝要だ(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。「暗黙」=「口に出さないで黙っていること。表面に表われないこと」、誰もが知っているはずの言葉。
各選択肢をチェックする。
(ア)「通念」・(イ)「モラル」・(ウ)「定律」・(エ)「不文律」。
知らない語句などあってはならない。「答え」は(エ)で決定。万が一にも意味が曖昧(あいまい)なものがあった諸君は「語彙力不足」を自覚し、徹底的に習得し直すこと。
<時間配分目安:30秒>
[問4] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部④「マスクという言葉じたいが顔と仮面をともに意味する」について、「どのようなことを言いたいのか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」を試みたい(原意絶対優位の原則)。ここは「内容説明」なので、「ともに意味する」の「原意」と結びつかない「内容」を「消去」することになる。
各選択肢の「文末」と照合していきたい(「選択肢の説明」で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(ア)「(『素顔』と『仮面』は)同義であるということ」、(イ)「(『仮面』の)意味あいを多分に含むということ」、(ウ)「二義性が対象の『おもて』と『うら』の存在を想起させるということ」、(エ)「一見素顔にみえるそれ(マスク)は巧みに偽った仮面でしかないということ」。さあ、どうか? 「ともに意味する」のだから、「二義性」とある(ウ)以外は即「消去」できなくてはいけない。「同一意味段落」で他の部分の説明を確認する(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。特に誤っている部分はない。
よって、「答え」は(ウ)になる。見事な「一発消去」だ。「選択肢消去」では「原意消去」が最優先だと心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
[問5(1)] 「会話文の条件付き空所補充語句不適切選択肢」(4択)。
段落の傍線部②「マスクにあたるもの」の「役割」について生徒たちが話し合った「会話文」中の空所 に「あてはまる言葉」として「ふさわしくないもの」を答える。「条件」は「段落の「 」内の内容をふまえて答える」こと。空所前後は「波線部(X)『私生活や家族の生活を知られないように閉じる玄関のあの厳重な鉄製のドア』とあるけれど、これは ために存在するものだよね」「なるほど、境界線というわけか」となっている。そして、「条件」の範囲の最後には「マンションのドアなどは、見えないバリアー(=障壁)」だとある。
こうしたことを踏まえて各選択肢を「消去」していきたい(ここは「不適切選択肢」なので、「消去」すべきものが「答え」になる)。
確認する。
(ア)「公的領域と私的領域とを分断する」・(イ)「他との関係性の構築を拒む」・(ウ)「<外>との接触を断ち<内>面を隠す」・(エ)「<内>に入れるべき存在を選別する」。「境界線」であり「バリアー(=障壁)」なのだから、「<内>面を隠す」」というのは「消去」できるはずだ。よって、「答え」は(ウ)になる。
尚、「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問6] 「説明文の空所補充語句選択肢」(全4問/8択)。
傍線部⑤「その階層的分断が、先のバリアーの一つとしてあることも、このコロナ禍のなかでむきだしになった」について「説明した文」の中の空所に「あてはまる言葉」をそれぞれ答える。
説明文は「世界各地で厳格な都市封鎖が行われることにより、それぞれの社会のが大きく露呈している。わずかな 層が大量の食糧を買い込んで広く快適な邸宅で過ごしている一方で、層にある人々たちは狭くて粗末な小屋で身を寄せあって生活をしている。……、さらには、このパンデミックは公衆衛生や経済面の問題のみにとどまらず、特定の民族に対する行動も大きな問題となっている……」となっている。
各選択肢は、(ア)「富裕」・(イ)「都市」・(ウ)「格差」・(エ)「文化」・(オ)「貧困」・(カ)「郊外」・(キ)「差別」・(ク)「民族」。各空所前後の「文脈」などから、「答え」を特定していく。
⇒「大きく露呈している」≒傍線部⑤の「むきだしになった」⇒何が? 「階層的分断」だ=選択肢の中では「格差」だと判別可能。と は無論、「対の関係」⇒「広く快適な邸宅で過ごしている」一方で「狭くて粗末な小屋で身を寄せあって生活をしている」⇒「富裕」と「貧困」で決定。 ⇒「むきだしになった階層的分断」で、「特定の民族に対する」といったら「差別」以外はありえない。
したがって、整理すると「答え」は=(ウ)、=(ア)、 =(オ)、=(キ)になる。もちろん、傍線部の「同一意味段落」の内容からも特定できるが、空所前後の「文脈」や「文法」などでも判別できるということを押さえておきたい。大幅なショートカットになる。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問8] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(Ⅰ)「周りの化け物は人の顔を取り戻す」・(Ⅱ)「野生という『化け物』にもどこかその『顔』を取り戻させる」について、「『顔を取り戻す』とはどのようなことを言っているのか」を答える。無論、「原意消去」からだ。ここは「内容説明」なので、「顔を取り戻す」という「比喩表現」の「原意」と結びつかない「内容説明」を「消去」したい。
各選択肢説明の「文末」と照合する。
(ア)「社会が築けるということ」、(イ)「関係性を見出すことができるということ」、(ウ)「(『化け物』に仕立て上げたと)気づくことができるということ」、(エ)「尊厳を取り戻すということ」。「取り戻す」のだから、(エ)以外は「消去」に決まっている。えっ、それでいいの? 何ら問題はない。「築ける」・「見出す」・「気づく」との比較なのだから、他にはあり得ないと分かるはず。「同一意味段落」から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと判断できる。したがって、「答え」は(エ)だ。再度の「一発消去」。
解答数が尋常ではない本校では、「原意消去」によるショートカットが必須だと心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
[問10] 「漢字の同音(訓)異字判別選択肢」(全6問/各4択)。
示されている(a)~(f)の二重傍線部の「カタカナ」と「同じ漢字」を答える。熟語を特定し、各選択肢の「文脈」から「同じ漢字」を用いている熟語を判別する。厄介だ。
注意すべきものを確認する。
(a)「リカンを人にうつさない=「罹患」⇒これは難解。「病気にかかること」だ⇒「答え」は選択肢(ア)「傷のカン部を冷やす」=「患部」⇒「病気や傷のある部分」。
(b)「耳をフサぐ」=「塞(ぐ)」⇒これは分かるだろうが、各選択肢がやや難解⇒(ア)「自由をヨク圧」=「抑圧」(問題なし)/(イ)「ボウ災訓練」=「防災」/(ウ)「暗ウツたる気分」=「暗鬱」(これまた難しい。「暗く気がしずむ様子」のこと)/(エ)「人生は『サイ翁が馬』だ」=「塞翁が馬」(「人間の吉凶や禍福は、転変きわまりがない」という故事成語。高校入試の定番なので知っていてほしい)⇒「答え」は(エ)。
(d)「他人とシキン距離で接する」=「至近」⇒これは定番の熟語⇒「答え」は(ウ)「彼の技はシ高の領域に近い」=「至高」、「この上もなく高いこと。非常にすぐれていること」という意味も押さえておきたい。
(f)「顔をオオう」=「覆(う)」⇒「漢字の読み書き」の十八番⇒「答え」は(イ)「フク水盆に返らず」=「覆水」⇒「覆」には「おお(う)・くつがえ(す)」という2つの「訓読み」がある。本校では、「同音異字」だけでなく「同訓異字」「同音異義語」なども、しっかりと定着させておくことが必須。
<時間配分目安:全問で2分以内>
【大問二】
- 時間配分:14~15分
鋭く周密な観察で綴(つづ)られた幼年期、落ち着きの悪い記憶の断片にまとわる不安・恐怖・懐かしさ……、仄暗く深い記憶の彼方の幼年時代を瑞々しく精緻に描出した作品集の一篇で、父と子の屈折した心情があふれている物語だ。本文では、「父」の反対を押し切って「わたし」が大学の文学部を受験し、合格した夜の2人の様子が描かれている。馴染みのない語句もあろうが、なんとか内容は読み取れるはずだ。「状況」や「心情」の読み取りから「総合的知識問題」まで、多彩な設問内容が待ち構えている。以下、いくつかを検証したい。
[問3] 「比喩内容説明選択肢」(4択)。
傍線部③「気の抜けた伝説」について、「どのような意味が読み取れるか」を答える。無論、「原意消去」が最優先。ここは「内容説明」なので、「気の抜けた」と「伝説」という「比喩表現」の「原意」と結びつかない「説明」を「消去」する。
各選択肢説明の「文末」を確認する。
(ア)「『わたし』が思っていること」、(イ)「『わたし』が思っていること」、(ウ)「日常に埋没した人間になっていること」、(エ)「今では全く不釣り合いで現実味の無いこと」。「伝説」とは「事実として人々が言い伝える話」だと当然知っているはず。
よって、「『わたし』が思っていること」はそのまま「消去」。また、「気の抜けた」(=元々の風味がなくなった)なので、「日常に埋没した」ではなく「今では現実味の無い」が残ると判別できなくてはいけない。
念のために、「同一場面」を確認する(「小説」「随筆」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。したがって、「答え」は(エ)になる。「小説」でも「原意消去」は絶対に必須な解法だ。
<時間配分目安:1分>
[問6] 「語句の意味選択肢」(4択)。
「総合的知識問題」。傍線部⑤「父をそそのかしていた」の「この場合の意味」を答える。「そそのかす」の「原意」は「その気になるように仕向ける」だということは周知。
各選択肢は、(ア)「父をけしかけていた」・(イ)「父をだましていた」・(ウ)「父を誘惑していた」・(エ)「父を牽制していた」。当然ながら、「答え」は(ア)だ。
ちなみに、「そそのかす」は「唆す」で、「漢字の読み書き」では必須定着語句だ。
尚、(エ)の「牽制」、「読み」は「けんせい」で、意味は「相手の注意を自分の方に引きつけて自由に行動できないようにすること」。知らなかった諸君は確認しておくこと。
<時間配分目安:30秒>
[問7] 「空所補充の漢字判別選択肢」(全2問。5択)。
「総合的知識問題」。「ことわざ」「慣用句」等だ。本文中の空所部(a)・(b)に「当てはめるべき漢字と同じ文字を用いるもの」をそれぞれ答える。
各空所は、「息子の顔をのあくほど見つめた」・「言い捨ててを蹴るように父のそばから離れた」。この段階で空所を特定できるか? せめてどちらか一方でも……(特に前者はどうか?)。無理か。
では、各選択肢をチェックする。
(ア)「末□をけがす」・(イ)「人の口に□は立てられぬ」・(ウ)「□を貸して母屋(おもや)を取られる」・(エ)「目から□が落ちる」・(オ)「同じ□の貉(むじな)」。「人の口に戸は立てられぬ」と「目から鱗が落ちる」は、意味も含めて定着しているはずだ。だが、どちらも空所にあてはまりそうにない。なかなか厄介だ。次に、「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」(=「一部を貸したために結局その全部が奪い取られる。保護してやったのに、恩を仇(あだ)で返される」)は何とか思い出したい。しかし、空所にはやはり無理だ。ここで、「答え」を確認する。
「 のあくほど見つめた」⇒「穴のあくほど」=「じっと見つめるようす」⇒「同じ穴の貉」=「一見関係がないようでも実は同類・仲間であること」のたとえ⇒(a)の「答え」は(オ)、「言い捨てて を蹴るように父のそばから離れた」⇒「席を蹴る」=「怒って勢いよくその場から出て行く」⇒「末席をけがす」=「会合に出席したり仲間に加わったりすることを謙遜して言う語句」⇒(b)の「答え」は(ア)となる。
本校では、「ことわざ」「慣用句」のみならず、「四字熟語」「故事成語」などの「語彙的知識」を完璧にしておく必要がある。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問10] 「同一表現の心情判別選択肢」(全2問。4択)。
二重傍線部(A)と(B)の「言ってやった」について、それぞれの「言葉の意味合い」を答える。何とも珍しい出題内容だ。「言葉の意味合い」とは何か?
先に各選択肢をチェックしたい。
(ア)「優越感」・(イ)「腹いせ」・(ウ)「皮肉」・(エ)「抵抗」。要は、同じ「言ってやった」だが、それぞれで「心情」が異なっているので、判別することになるわけだ。それぞれの「状況」を「同一場面」から読み取っていく。
(A)では、「文学部への進学」に反対する「父」が「わたし」に、「文学部へなんか行って、一体何をするんだ?」と問うたのに対して、「わたしはしばらく考えてから、物を書く人間になるんだ、と言ってやった」という「状況」だ。「文学部へなんか行って」「何をするんだ?」と馬鹿にされたが即答できず、何とか「父」に言い返そうと「物を書く人間になるんだ」と言い放ったと読み取れるはずだ。よって、「答え」は(エ)の「抵抗」だ。
(B)の方は、「文学部」に合格した直後、「父」に国語の問題用紙を見せ、「こんなのが出たんだ」と「わたしは言ってやった」となっている。そして、直後にでは「ついさっきまでうなだれていた息子が、いまや嵩(かさ)にかかって父を試そうというわけだった」と説明されている。「嵩にかかる」=「優勢に乗じて攻めかかる」は定番の表現。
したがって、「答え」は(ア)の「優越感」になる。活字では全く同じ文字の表現であっても、「意味合い」が異なるということは「小説」ではよくあり、そのことが問われることもある。その際は、前後の「文脈」をしっかりと読み解くことが肝要だ。特に「ト書き」には注意したい。
<時間配分目安:全問で1分半>
【大問三】
- 時間配分:7~8分
鎌倉時代中期成立の、仮名まじり文で書かれた仏教説話集。「今昔物語集」の典拠のひとつと考えられている。全十巻。本文は「いみじき成敗(正直の徳)」。「古文単語の意味」、「現代語訳」、「内容解釈」、「主語特定」、「文語文法」、「文学史」などといった、「古文の基本的知識」が網羅的に問われている大問だ。以下、いくつか検討してみよう。
[問2] 「単語の意味判別選択肢」(全2問。各4択)。
波線部(Ⅰ)「いとほしき」・(Ⅱ)「ことわらしむ」の「文中の意味」をそれぞれ答える。「文中の意味」」とあるが、「現代文」同様に先ずは「古文単語」の「原意」を捉えることが肝要。
(Ⅰ)の「いとほしき」⇒シク活用の形容詞「いとほし」の連体形。最重要古文単語のひとつ⇒「気の毒だ。かわいそうだ」「かわいい」「困る。いやだ」という意味は定着していなければいけない⇒「答え」は選択肢(ウ)「気の毒な」。
(Ⅱ)の「ことわらしむ」⇒これは2単語で(「ことわら」と「しむ」)、ラ行四段活用の動詞「ことわる(理る)」の未然形+「使役」の助動詞「しむ」の終止形⇒「古文単語」では、「ことわる」は「断る」ではないので要注意。「理る」=「判断する。判定する。批評する」だ⇒「答え」は(イ)「判断させる」⇒尚、「ことわる」=「理る」だと知らなくても「しむ」が「使役」ということだけでも判別可能だ。「最重要古文単語」は必ず習得するとともに、「助動詞」「助詞」の「意味・用法」も定着させたい。
<時間配分目安:全問で1分強>
[問3] 「文の現代語訳判別選択肢」(4択)。
傍線部①「ことも欠けず」の「文中の意味」を答える。短いが、「現代語訳」では「品詞分解」が必須だ。「こと/も/欠け/ず」⇒名詞「こと」(=口語の「こと(事)」と同)+係助詞「も」(=「強意」なので特に訳出の必要なし。
尚、「も」には「接続助詞」「終助詞」もあるが、ここの「体言」に接続しているので「係助詞」)+カ行下二段活用の動詞「欠く」の未然形+「打消し」の助動詞「ず」の終止形⇒直訳すると「事は不足しない」⇒各選択肢は、(ア)「お金は大切である」・(イ)「お金は大切でない」・(ウ)「お金に困っている」・(エ)「お金に困っていない」⇒無論、「答え」は(エ)だ。
「文脈」からも判別できるが、このレベルの「現代語訳」があやしい諸君がいたら、「古文」はまだまだ勉強不足だと心得よ。
<時間配分目安:1分強>
[問5] 「内容解釈選択肢」(4択)。
傍線部③の「わづらひを出ださむために」は「言いがかりをつけようとして」という「意味」だが、「『主』はなぜ『言いがかりをつけよう』と思ったのか」を答える。「理由説明」なので、直前の「きっかけ」や直後の「結果」と結びついているはずだ(「現代文」と全く同じ)。
確認すると、直前に「『三つをば奉らむ(=差し上げよう)』と言ひて、すでに分かつべかりけるとき(=今まさに[銀]を分け与えようとしたときに)、思ひ返して(=考え直して)」とある。つまり、「銀を三つ差し上げよう」と言ったことを「考え直した」のだ。各選択肢説明の「文末」と照合する。
(ア)「銀貨を三枚あげるのが惜しくなったから」、(イ)「一枚多く返してもらおうと思ったから」、(ウ)「だまされていたことに気づいたから」、(エ)「すべて手に入れようと思ったから」。「銀を三つ差し上げよう」を「考え直した」のだから、(ア)以外は「消去」できる。他の部分の説明も特に誤っていないと分かる。よって、(ア)が「答え」でいい。
「古文」の「内容解釈」では、「現代語訳」をした後は「現代文」のさまざまな「解法」を駆使することになると心得よ。
<時間配分目安:1分>
[問8] 「文法的説明の空所補充語句選択肢」(全3問。10択)。本文中の「不思議なれ」について、これを「文法的に説明した文」中の空所( A )~( C )に「あてはまるもの」を答える。説明文は「『不思議なれ』は文末にもかかわらず、( A )でなく、( B )の活用形が用いられている。これは、上に強調の(C)『こそ』があるからである」となっている。「こそ」とあるので、すぐに「係り結び」のことだと気づかなくてはいけない。そのことを踏まえて「答え」を判別していく。
「文末にもかかわらず、( A )でなく」⇒「文末」は通常「終止形」⇒( A )の「答え」=選択肢(ウ)の「終止形」⇒「なれ」は「断定」の助動詞「なり」の「已然形」。「( B )の活用形が用いられている」⇒無論、( B )の「答え」=(オ)の「已然形」。「上に強調の(C)『こそ』があるから」⇒( C )の「答え」=(ケ)の「係助詞」。
「文語文法」での「係り結びの法則」は「基本のキ」、誰もが定着しているに違いないが、本校では「品詞分解」を完璧にこなせるように十分な練習を重ねることが肝要だ。
<時間配分目安:全問で1分強>
[問9] 「文学作品判別選択肢」(4択)。
「文学史」だ。「『沙石集』は仏教説話集」だが、「同じ『説話』のジャンルに属する作品」を答える。瞬時に「答え」は選択肢(ウ)「今昔物語集」だと判別できなくてはいけない。
「文学史」は頻出だ。「作品名」「作者」はもちろんのこと、「成立時期」「ジャンル」等も確実に整理定着させておくことが必要だ。
ちなみに、他の選択肢は、「枕草子」=「平安時代」成立の「清少納言」による「随筆」、「おくの細道」=「江戸時代」成立の「松尾芭蕉」による「随筆」、「源氏物語」=「平安時代」成立の「紫式部」による「物語」だ。
<時間配分目安:30秒>
攻略のポイント
●「時間との闘い」が最優先課題だということは、これまで以上に意識したい(「解答数」が増加している)。どう「攻略」するか? 要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要。「時間切れ」での「失点」は最悪だからだ。大問では、「知識」中心の「古文」を優先する。
「現代文」で、「論説文」と「小説」(あるいは「随筆」)のどちらを先に解くかは、自分自身で事前に決めておくこと。
また、「小問」は「知識問題」からこなすのが原則。例年、5000字超(増加傾向で、本年度はなんと約8300字)の「文章」を「読解」することになる(速く正確に読み取るために、分速800字以上を目標に「読む練習」をすること)。
本年度の「解答数」は53。当然、全て丹念に答えることは物理的に難しい。したがって、「取れる問題を確実に押さえる」ことが最優先で、「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も求められる。無論、「単純ミス」は絶対にしてはいけない。「合格ライン」は6割台半ば(過去9年間の3科目合計の「合格最低得点率」は65.4%。本年度は上昇して69.0%)。「戦術ミス」は致命的になると心得よ。
●「多種多様な設問内容」に「攻略法」はあるのか? 「設問内容」を的確に捉え、それぞれに応じた「解法」を適切に用いることが最重要。そのためには、基本的「解法」を完全習得し、自分自身の「ツール」にすることが必須だ。切迫する「時間」の中で、いかに的確に「解法」を用いて解いていくかが合否を分ける。
●「高度な語彙力」が問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。独自に「幅広い知識」を常に習得していくこと。学校や塾での学習だけでは全く不十分、「独習」は不可欠だ。
●「古文」については、 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので、「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「古典常識」も「日本史」を含めて馴染んでおくことが必要だ。