芝浦工業大学柏高等学校 入試対策
2024年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」
攻略のための学習方法
難解な文章ではないので、取り立てて哲学的抽象的な文章を扱った問題演習は必要ないであろう。
その代わりに、標準的な問題をしっかり腰を据えて行なうことである。指示語の扱い方や、言うまでもなく『キーワード』や『特徴的な独特な表現』も見逃さないことである。
古文についても中心は読解である。基本古典文法を確実に押さえて、正確に本文を読めるようにしなければならない。本問に拘わらず、いかにしたら『論理的思考』が身に付くかということについて、幾つかポイントを挙げてみたい。参考になればと思う。
受験生の皆さんは何か文章を書くときに、どのような思いや感情を抱いて書くだろうか。きっと、「この文章を読んでいる人に自分の言いたいことが正確に伝わるように」と思って文章を書くであろう。そういう思いで文章を書かなければ、読み手に作者の意図や本心が伝わる訳がないのは言うまでもない。
それでは、皆さんはどうすれば読み手に「自分が言いたいこと」「自分が主張したいこと」が伝わると考えるだろうか。文を作るうえでの作業として、段落を作り各段落ごとに所謂「起承転結」を明確にしようと考えるだろう。その上で、自分が言いたいことは『インパクト』を持たせて繰り返し文章中に書きこんでいくだろう。更に、自分の主張により説得力を持たせるために、具体的事例や第三者の意見なども取り込むのではないだろうか。作家と呼ばれるプロの書き手の人たちも、文章を作る上では同じプロセスを経るのである。文章の構造はそれ程大きくは違わないであろう。
しかし、皆さんが作る文章と彼等の文章との決定的な違いは、言葉・語彙の圧倒的な豊富さである。こればかりは、その世界に身を置く絶対的年数の隔たりは埋めることはできないのであるから、より濃密な一般的抽象性の高い文章が出来上がるのは無理もない。
そのような論理的文章が入試問題として出題されてくるのである。初見の文章であればあるほど、難解な意味不明の単語を多用されればされるほど、一体何を作者が言いたいのか把握できなくなってしまうであろう。しかし、慌てることは全くない。
自分が文章を書く場面をイメージしてもらいたい。何がポイント(繰り返し使われている言葉)かをいち早く見つけることである。それは『キーワード』であったり、理解を深めさせるために引用した具体例の中に言及されていたりするかもしれない。
そのような言葉を炙り出すために、本文を鉛筆で真っ黒にしても構わない。どの文とどの文が、どのような関係性を有しているのかを集中力を高めて精査するのである。
日頃から、そのような意識で国語の文章題を解いていけば、本当の意味での『国語読解力』が確実に自分のものになることは間違いない。
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2024年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は、論説文読解問題である<22分>。
人類に関する自然科学的分野に関する論説文の読解問題である。
大問二は、小説に関する読解問題である<16分>。
登場人物の心情を読み取る問題と内容把握問題に関する設問である。
大問三は、古文の読解問題である<12分>。
主な出題形式は内容把握問題であり、古典文法の基本的理解及び古語単語の習得は不可欠である。
【大問一】人類についての自然科学的分野に関する論説文の読解問題
- 時間配分:22分
出典は、『「みんな違ってみんないい」のか?』(山口裕之著)。
(1) は、漢字書取り問題である<6分>。
実際に漢字を書かせるのではなく、同じ漢字を用いるのはア~オのどの選択肢であるかを選択させる。選択肢に使用されている漢字についてもしっかり覚えておかなければならない。紛らわしい選択肢に惑わされないように、しっかりとした漢字の知識を習得しておくこと。
① は「お歳暮」、②は「吐き」、③は「貢献」、④は「支援」、⑤は「繁盛」である。
(2)は、内容把握問題<2分>。
「脳は、周囲の状況や対象が自分の生存にとってどのような意味を持つのか…を、主に自分の生物種としての条件に照らして高速で分析する」のであり、「意識は、そうした分析のあとで、分析結果に応じた感情」を感じるのである。
(3)は、接続語問題<2分>。
空欄Bのあとに具体例が書かれていることより、Bは「たとえば」で決定である。
(4)は、内容把握問題<4分>。
人間における利他的行動と不正への怒りとは何かを本文に即して考えること。進化論において生物は「多くの子孫を残すこと」であることが第一であると考えられる。したがって、敵を攻撃する場合は「利益を得られる場合だけ」であるから、不正に対して怒って相手を攻撃しても利益が得られるわけではないので、「不正への怒り」は進化論に反しているのではないか、ということである。
(5)は、段落関係理解問題<2分>。
7~9は「互恵」についての言及である。10は9の考え方を補足し、11は7~10の要点をまとめている。
(6)は、内容把握選択問題<2分>。
親切を受けただけでそのお礼を相手に返さないという個体に対して「不正と感じて怒り」、「個体を群れから排除する」ことにより、「個体どうしが恩恵を与え合う協力関係」が維持されるのである。
(7)は、内容把握問題<2分>。
アレクサンダーの間接互恵の理論とは何かを、本文から正確に読み取ること。「間接」とは何かを考える。
(8)は、内容要旨問題<2分>。
間接互恵理論により、利他的行動はよい評判を得るのではあるが、「よい評判」を得ようと意識して他人に親切にするとかえって、評判を落とすことになるのである。
【大問二】小説に関する問題
- 時間配分:16分
出典は『敗者たちの季節』(あさのあつこ著)。
(1) は、心情把握問題<2分>。
佐倉の発言内容は「自分の名声」のためだけを考えたものであることに対する「不快」な感情を表している。
(2) は、内容把握問題<2分>。
チーム内における普段の佐倉の様子を考える。佐倉は、「場の雰囲気」和ませようとする気配りのできる人物である。
(3) は、内容把握問題である<2分>。
不祥事のために甲子園に出場できなかった東祥学園に代わって甲子園出場を実現した海藤高校が甲子園で繰り広げる感動の「物語」のことである。
(4) は、内容把握問題<2分>。
甲子園出場という事象が世間からは「感動的な、あるいは悲劇的な物語」として評価され、それを直登たちにも強要されていることに「くじけそう」になっているのである。
(5) は、内容把握問題である<2分>。
不適切な選択肢を選ぶ問題である。「堅実にプレーをこなしているのにレギュラー」を「外されたことを、やむを得ない」と佐倉の暗い表情をみて、佐倉がそのように感じているのではないかと直登が考えているわけではない。
(6) は、内容把握選択問題<3分>。
「『まぁ、一歩(佐倉)はああいうやつだから』…つまり、剽軽で調子良くて、いいかげんで、何事にも深く拘らない。そういうキャラだということ」なのである。
(7) は、内容把握問題<3分>。
登場人物の性格について直接的な説明や言動について、丁寧に描写しているのである。その結果、人物の心情や人物像が読み手により鮮明に伝わるのである。
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:12分
出典は『宇治拾遺物語』。
(1) は、内容把握問題<2分>。
宝志和尚が主語とならないのは、イ「遺はさせ給ふ」とウ「蒙りて」である。
(2) は、内容把握問題<3分>。
三人で描いた方が正しく描けているかどうかの確認ができやすくなるのである。
(3) は、古語意味問題<2分>。
「左右なく」とは「すぐに」という意味であるが、文脈から判断しても「『すぐに』肖像画を描き始めた」のである。
(4) は、内容把握選択問題である<2分>。
絵師たちが描いた絵には、宝志和尚が「菩薩」「十一面観音」「聖観音」という三人三様に描かれていたのである。
(5) は、内容理解問題<3分>。
絵師たちが宝志和尚の肖像画を描いた後、宝志和尚の姿が消えてしまったことに対し「宝志和尚は普通の人間ではない」のではないかと思われ始めたのである。
攻略のポイント
現代文は、論説文と小説である。前者は、内容把握と論旨をいかにコンパクトに自分の頭の中でまとめ上げるかだろう。後者については、心情を正確にかつ迅速に把握することである。
両者に共通して言えることは、キーワードを中心に文の流れを正確に読み取ることである。解答は全て選択肢問題であっても、消去法ではなく正解を一つに特定するための正確で迅速な文章読解力は不可欠である。
では、時間的余裕のない受験生にとって、そのような読解力を日頃の学習の中でどのようにすれば身につくのであろうか。それは、ただ単に大量の本を読めばよいというのではなく、過去の入試問題(論理性の高い、言い換えれば入試問題として耐えられる)をじっくり読み解くことである。古文については、基本的な古典文法は確実に押さえ、的確な内容把握を理解できるようにしておくこと。