芝浦工業大学柏高等学校 入試対策
2017年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」
攻略のための学習方法
難解な文章ではないので、取り立てて哲学的抽象的な文章を扱った問題演習は必要ないであろう。その代わりに、標準的な問題をしっかり腰を据えて行なうことである。指示語の扱い方や、言うまでもなく『キーワード』や『特徴的な独特な表現』も見逃さないこと。古文についても中心は読解である。基本古典文法を確実に押さえて、正確に本文を読めるようにしなければならない。
本問に拘わらず、いかにしたら『論理的思考』が身に付くかということについて、幾つかポイントを挙げてみたい。参考になればと思う。
受験生の皆さんは何か文章を書くときに、どのような思いや感情を抱いて書くだろうか。きっと、「この文章を読んでいる人に自分の言いたいことが正確に伝わるように」と思って文章を書くであろう。そういう思いで文章を書かなければ、読み手に作者の意図や本心が伝わる訳がないのは言うまでもない。
それでは、皆さんはどうすれば読み手に「自分が言いたいこと」「自分が主張したいこと」が伝わると考えるだろうか。文を作るうえでの作業として、段落を作り各段落ごとに所謂「起承転結」を明確にしようと考えるだろう。その上で、自分が言いたいことは『インパクト』を持たせて繰り返し文章中に書きこんでいくだろう。更に、自分の主張により説得力を持たせるために、具体的事例や第三者の意見なども取り込むのではないだろうか。
作家と呼ばれるプロの書き手の人たちも、文章を作る上では同じプロセスを経るのである。文章の構造はそれ程大きくは違わないであろう。しかし、皆さんが作る文章と彼等の文章との決定的な違いは、言葉・語彙の圧倒的な豊富さである。こればかりは、その世界に身を置く絶対的年数の隔たりは埋めることはできないのであるから、より濃密な一般的抽象性の高い文章が出来上がるのは無理もない。
そのような論理的文章が入試問題として出題されてくるのである。
初見の文章であればあるほど、難解な意味不明の単語を多用されればされるほど、一体何を作者が言いたいのか把握できなくなってしまうであろう。
しかし、慌てることは全くない。自分が文章を書く場面をイメージしてもらいたい。何がポイント(繰り返し使われている言葉)かをいち早く見つけることである。それは『キーワード』であったり、理解を深めさせるために引用した具体例の中に言及されているかもしれない。そのような言葉を炙り出すために、本文を鉛筆で真っ黒にしても構わない。どの文とどの文が、どのような関係性を有しているのかを集中力を高めて精査するのである。
日頃から、そのような意識で国語の文章題を解いていけば、本当の意味での『国語読解力』が確実に自分のものになることは間違いない。
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2017年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、論説文読解問題である<18分>。地域社会の運営を都市計画の観点からどうあるべきかを問う論説文である。
大問2は、紀行に関する随筆の読解問題である<18分>。旅とは何だろう。という素朴な疑問に対し、それは『出会い』と『別れ』であると思っている筆者の考えが述べられている。
大問3は、随筆古文の読解問題である<14分>。主な出題形式は内容把握問題であり、古典文法の基本的理解は不可欠である。
【大問1】現代社会に関する論説文の読解問題である。出典は、『しんがりの思想』(鷲田清一著)
- 時間配分:23分
(1)は、漢字である<3分>。実際に漢字を書かせるのではなく、同じ漢字を用いるのはア~オのどれであるかを選択させる。単に提示された漢字を書けるだけではなく、選択肢に使用されている感じについてもしっかり覚えておかなければならない。
(2)は、表現選択問題<3分>。本文の論旨の流れ(前後の文章をよく読むこと)から、微妙に意味の異なる選択肢(それとなく、どことなく、なんとなく、にべもなく、さりげなく等々)を適切に選択すること。
(3)は、内容把握選択肢問題<2分>。職住不一致の結果、どのような事態が想定されるかを考えること。
(4)は、内容把握選択肢問題<2分>。「見ぬふりをして見る」とはどういうことなのかを本文に沿って考えて見る。
(5)は、内容把握選択肢問題<2分>。「あのまなざしの包囲網」とは何かを考えること。「まなざし」とは、地域社会の中における周りの「目」である。この目が「人」を育て、育んでいくのである。
(6)は、内容把握選択肢問題<1分>。地域社会の中で、子供は間近に大人を見ることにより、現実的・効果的に生きる力や知恵を身に付けることができるのである。
(7)は、内容把握論旨展開選択肢問題<2分>。本文を順番に論旨の流れを追いかけていき、選択肢の順番を考えること。
(8)は、内容把握選択肢問題<1分>。現在の職住不一致の坊づくりと都市計画がすすみ、そのような環境の中で従前と同じように子供を育むことができなくなってきている状況のなかで、今の住環境を見直す必要性があるのではないだろうか
(9)は、要旨選択問題<2分>。職住不一致のまちづくり・都市計画によって何がどのように変化したのか。また、人と人とのつながり(かかわり方)が薄くなってきたという住居環境の変化(マンション型でプライバシー保護に優れている反面何が欠落しているのか)により、地域コミュニティが失ったものは何かを考えながら、各選択肢を考えること。
【大問2】自伝的分野に関する随筆読解問題。出典は『戸越銀座でつかまえて』(星野博美著)
- 時間配分:20分
(1)は、内容把握選択問題<2分>。「私」が一人旅に出て感じたこと、発見したことは何か。その発見から「私」が何を感じたのかを考察する。
(2)は、文章内容選択問題<2分>。小さい頃の「私」を振り返り、子猫のような心境だと感じていた。子猫にとって世界とはどんな世界観になるのであろうか。
(3)は、文章内容把握選択問題<2分>。臆病な「私」が一人で旅に出かけられるようになると、どのように「私」は変化するのかを考えて解答すること。
(4)は、文章内容把握選択問題<3分>。「それ」とは旅慣れをすることであり、それは旅というものが「出会い」と「別れ」の連続である、ということを考えると、別れた後ですぐに別の出会いがあり、気持ちの切り替えが素早いということである。
(5)は、文章内容把握選択問題<3分>。「旅慣れ」とは気持ちの切り替えの異名である。が、気持ちの切り替えが素早いということは、人間としての「情」としての部分でどうなのだろう、という疑問が湧くであろう。
(6)は、文章内容把握選択問題<3分>。旅の本質を「出会い」に求め、出会いを大切にすることで情を深め、自分の気持ちも大切にするという旅が良い旅であろう。
(7)は、文章表現選択問題<3分>。文脈を丁寧に追って「私」が幼い頃から旅について、どのような気持ちの変遷があったかを辿ることが大事である。
【大問3】随筆古文読解問題。出典は雨森芳洲『たはれ草』
- 時間配分:
(1)は、内容把握問題<2分>。正確に本文を訳すれば、誰が動作主であるかは明白であろう。
(2)は、内容把握選択問題<2分>。古典文法の基礎事項と基本古語をしっかり覚えておくこと。
(3)は、内容把握選択問題<3分>。正確な現代語訳を考え文脈をとらえること。
(4)は、内容理解選択問題<3分>。本文を正確に読めば本文の冒頭にある「おさな子」であることが分かるであろう。
(5)は、内容一致選択問題<4分>。本文は幼児の教育についての内容である。原則的にどの時代でも、子供を過保護にすることはよくない事は変わらないのだろう。
攻略ポイント
現代文は、論説文と随筆文である。
前者は、内容把握と論旨をいかにコンパクトに自分の頭の中でまとめ上げるかだろう。後者については、読書を巡る筆者の考えを正確にかつ迅速に把握することである。両者に共通して言えることは、キーワードを中心に文の流れを正確に読み取ることである。解答は全て選択肢問題であっても、消去法ではなく正解を一つに特定するための正確で迅速な文章読解力は不可欠である。
では、時間的余裕のない受験生にとって、そのような読解力は日頃の学習の中でどのようにすれば身につくのであろうか。それは、ただ単に大量の本を読めばよいというのではなく、過去の入試問題(論理性の高い、言い換えれば入試問題として耐えられる)をじっくり読み解くことである。
古文については、基本的な古典文法は確実に押さえておくこと。また、古語についても基本的なものは確実に暗記しておくことが重要である。