芝浦工業大学柏高等学校 入試対策
2019年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」
攻略のための学習方法
難解な文章ではないので、取り立てて哲学的抽象的な文章を扱った問題演習は必要ないであろう。その代わりに、標準的な問題をしっかり腰を据えて行なうことである。指示語の扱い方や、言うまでもなく『キーワード』や『特徴的な独特な表現』も見逃さないことである。古文についても中心は読解である。基本古典文法を確実に押さえて、正確に本文を読めるようにしなければならない。
本問に拘わらず、いかにしたら『論理的思考』が身に付くかということについて、幾つかポイントを挙げてみたい。参考になればと思う。
受験生の皆さんは何か文章を書くときに、どのような思いや感情を抱いて書くだろうか。きっと、「この文章を読んでいる人に自分の言いたいことが正確に伝わるように」と思って文章を書くであろう。そういう思いで文章を書かなければ、読み手に作者の意図や本心が伝わる訳がないのは言うまでもない。
それでは、皆さんはどうすれば読み手に「自分が言いたいこと」「自分が主張したいこと」が伝わると考えるだろうか。文を作るうえでの作業として、段落を作り各段落ごとに所謂「起承転結」を明確にしようと考えるだろう。その上で、自分が言いたいことは『インパクト』を持たせて繰り返し文章中に書きこんでいくだろう。更に、自分の主張により説得力を持たせるために、具体的事例や第三者の意見なども取り込むのではないだろうか。文筆家と呼ばれるプロの書き手の人たちも、文章を作る上では同じプロセスを経るのである。
文章の構造はそれ程大きくは違わないであろう。しかし、皆さんが作る文章と彼等の文章との決定的な違いは、言葉・語彙の圧倒的な差異さである。この差異ばかりは、その世界に身を置く絶対的年数の隔たりの違いであり、これを埋めることはできないのであるから、より濃密な一般的抽象性の高い論理的文章を彼等が書き上げることができるのも無理はないであろう。そのような論理的文章が入試問題として出題されてくるのである。初見の文章であればあるほど、難解な意味不明の単語を多用されればされるほど、一体何を作者が言いたいのか把握できなくなってしまうであろう。
しかし、慌てることは全くない。自分が文章を書く場面をイメージしてもらいたい。何がポイント(繰り返し使われている言葉)かをいち早く見つけることである。それは『キーワード』であったり、理解を深めさせるために引用した具体例の中に言及されているかもしれない。そのような言葉を炙り出すために、本文を鉛筆で真っ黒にしても構わない。どの文とどの文が、どのような関係性を有しているのかを集中力を高めて精査するのである。日頃から、そのような意識で国語の文章題を解いていけば、本当の意味での『国語読解力』が確実に自分のものになることは間違いない。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2019年度「芝浦工業大学柏高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】は、論説文読解問題である<17分>。国内政治と国際政治に関する論説文である。
【大問2】は、小説に関する読解問題である<21分>。登場人物の心情を読み取る問題が主である。
【大問3】は、随筆古文の読解問題である<12分>。主な出題形式は内容把握問題であり、古典文法の基本的理解は不可欠。
【大問1】世界で頻発するテロのような国際社会における「リスク」に関する論説文の読解問題
- 時間配分:17分
出典は、『境界線の政治学』(杉田敦著)。
(1)は、漢字である<3分>。実際に漢字を書かせるのではなく、同じ漢字を用いるのはア~オのどれであるかを選択させる。選択肢に使用されている漢字についてもしっかり覚えておかなければならない。
(2)は、適語選択問題<1分>。仮に敵が国境を越えたとしても、首都までは「空間的な距離」があるので大丈夫、という安心感があるのである。
(3)は、内容把握選択問題<1分>。本文によれば「国民文化を確立すること」が様々な集合体である国家に統一性をもたらす要素である。
(4)は、内容把握選択肢問題<2分>。傍線部の「それ」とは「少数民族や移民集団の存在こそが、リスクを増大させる元凶」のことである。
(5)は、内容把握選択問題<4分>。本文の内容に即してA、B、C、Dの4人が意見を述べる形式で誰が本文の趣旨に即した発言であるかを選択させる問題。本文の内容は当然として、4人の意見の内容についても正確に把握すること。
(6)は、内容把握選択問題<2分>。本文によれば、セキュリティ対策を求めてゆくとその治安対策は「結局、最後の一人が消滅するまで、社会の中からリスクをゼロにすることはできない」ということが、傍線部の「自己破壊的、あるいは自己否定的」な内容を示している。
(7)は、内容把握選択問題<2分>。地球規模で政治・環境・文化の問題を考えなければならない時代を迎え、「国境」という国家が定める一つの「境界線(他国との違い=差別化)」の持つ意味が失われていくことである。
(8)は、内容要旨選択問題<2分>。グローバルな時代とは、国境を越えた地球規模であらゆる物事を考える時代のことである。そのような時代にどの様に対応するかが政治に求められるのである。
【大問2】小説に関する問題
- 時間配分:21分
出典は『つぼみ』(宮下奈都著)。
(1)は、内容把握選択問題<3分>。紗英の「型」に対する考え方を変えるため、姉は将棋や囲碁の「型」について話しているのである。
(2)は、心情把握選択問題<3分>。祖母の「型」に関する考え方や、日頃の祖母の行動を通じて紗英がどのようなことを感じたのか。
(3)は、文章内容把握選択問題<3分>。紗英のどのような行動が朝倉くんにとって「意外」だったのだろうか。
(4)は、心情把握選択問題<3分>。「さえこ、って呼ばないで」という発言の中に、紗英のどのような思いが込められているかを考えること。
(5)は、文章内容把握選択問題<3分>。適当でない選択肢を選ぶ問題である。朝倉くんは、紗英の花が変化したことに気づき、その変化を楽しんでいるような紗英にとっては良き友人である。本文中の「太陽が水面に反射してまぶしい」という情景描写も手掛かりになるだろう。
(6)は、表現選択問題<3分>。本問も適当でない選択肢を選ぶ問題である。紗英を象徴するために四文字熟語が使われているわけではない。
(7)は、内容把握選択問題<3分>。最後の部分にある朝倉くんの「これからどこかに向かおうとする勢いがある」という発言に注目すること。
【大問3】随筆古文読解問題
- 時間配分:12分
出典は鴨長明著『発心集』。
(1)は、内容把握問題<2分>。指定された部分の主語は誰であるかについて問う問題である。内容をしっかり把握したうえで解答すること。
(2)は、内容把握選択問題<2分>。時光が帝の使いに返事をしなかった状況はどうであったのかを理解しよう。
(3)は、現代語訳選択問題<2分>。「あはれなり」は「すばらしい」という意味である。正確な現代語訳を考え文脈をとらえること。
(4)は、内容理解選択問題<3分>。「思いの外」とは「意外である」という意味である。誰が誰の振る舞いを見て「意外」と感じたかを考えること。
(5)は、内容理解選択問題<3分>。好きなことに夢中になることが、世事に対する思いもなくすことに一助になる、という内容である。
攻略のポイント
現代文は、論説文と小説である。前者は、内容把握と論旨をいかにコンパクトに自分の頭の中でまとめ上げるかだろう。後者については、心情を正確にかつ迅速に把握することである。両者に共通して言えることは、キーワードを中心に文の流れを正確に読み取ることである。解答は全て選択肢問題であっても、消去法ではなく正解を一つに特定するための正確で迅速な文章読解力は不可欠である。
では、時間的余裕のない受験生にとって、そのような読解力を日頃の学習の中でどのようにすれば身につくのであろうか。それは、ただ単に大量の本を読めばよいというのではなく、過去の入試問題(論理性の高い、言い換えれば入試問題として耐えられる)をじっくり読み解くことである。そのよう作業を通じて、高度な読解力を明につけることが可能になるのである。古文については、基本的な古典文法は確実に押さえておくこと。古文の現代語訳も正確に行えるようにしておきたい。