渋谷教育学園幕張高校 入試対策
2020年度「渋谷教育学園幕張高校の国語」
攻略のための学習方法
論理的な思考力を付けて、本問のような論説文の入試問題で高得点を取るにはどうしたらよいか。いくつかのポイントをあげておこう。
第一に『文章を書く』ということである。何も考えなしに闇雲に文章を書いてみても、入試問題における論説文対策にはあまり効果が期待できないだろう。おすすめは「論説文の要旨をまとめる」ということである。受験生にとって一冊の論説文〈岩波新書など〉を読んで要旨をまとめると言っても、その様なことを行う時間的余裕はないはずである。そこで提案したいのは、論説問題の文章をまとめてみよう、ということである。それも、文章でまとめるのではなく、『箇条書き』で『単語』としてまとめていくということである。そうすれば、文章を書くという時間的な負荷も軽減され、なおかつコンパクトに論説文の内容、論旨の流れなどが手に取るように理解できるはずである。
第二に『論点を明確にする』ということである。『論点』を『筆者の主張』と置き換えてもよい。つまり、筆者は何がいいたいのかということを明確に把握するということである。具体的には、本文中で筆者が繰り返している部分や、「つまり」や「したがって」という接続詞でつないでいるような箇所は要注意である。
また、筆者の考えを丁寧に辿ることである。「丁寧」といっても時間をかければよい、というわけではない。いうまでもなく試験時間は限られており、その時間的制限の中で的確に筆者の考えや論理展開を把握しなければならない。そのためにも、文章を読むスピード、内容を把握する力、把握した内容をまとめる要約力など、求められる「力」は相当なレベルである。これをしっかり満足のいく程度にブラッシュアップさせるためには、日頃から自分の言葉でしっかり考え、文章を書くということである。
次に、小説に関する設問についてのアプローチを考えてみよう。まずは、心情の読み取りである。直截的に「私は……と思う」とは描写されない。人物の心の中は、情景描写であったり、その人物の一挙手一投足に現われる。そのような表現をしている部分を選び出し、人物と人物の間の精神的葛藤や同調する部分をしっかり理解しよう。そのような作業を行うことなく、小説に描かれている『人物』の内面の本質的な部分を理解するのには時間がかかるであろう。さらに、注目すべきは『会話』である。会話のやり取りを読み進めるうちに、人物同士が相手に対してどのように感じているか、心理的駆け引きは行われているのか、といった事柄も見えてくる。全体的な内容をしっかり理解するには、そのような面の理解と分析が不可欠である。いずれにしても、学校で扱う小説や過去問で挑戦する小説の問題に対して、人物の心情を中心に読み進める癖をつけるように心掛けること。これをうまくマスターすれば合格点は取れる筈である。
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2020年度「渋谷教育学園幕張高校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】哲学的分野(人生)の随筆文に関する読解総合問題<22分>。
漢字の書き取り問題、記述問題と選択肢問題である。
【大問2】小説の読解問題<25分>。
漢字の書き取り、記述問題が2題と選択肢問題である。
【大問3】古文読解総合問題<13分>。
基本的な文法事項や古語知識は不可欠である。文学史も押さえておくこと。
【大問1】 哲学的分野(人生)に関する随筆文の読解問題
- 時間配分:22分
出典:「宗教について」(岡潔著)
(問一)漢字の書き取り問題<1分>。
標準的な漢字問題である。完答を目指せるレベルの漢字である。
(問二)語句選択問題<1分>。
「四時」とは「四つの季節=春夏秋冬」のことである。
(問三)内容把握選択問題<3分>。
筆者によれば、「理性的な世界は自他の対立している世界」で「宗教的な世界は自他対立のない世界」としており、「自と他が同一になったところで初めて悲しみが解消」するとしている。
(問四)内容把握選択問題<3分>。
本文中に、「『自分は世界の苦しみを身に荷うているのだ』とキリストに答えさせている」という部分が手掛かりになろう。
(問五)内容把握選択問題<2分>。
本文中には、「宗教的な形式を指して宗教」と呼んでいる状況が書かれており、筆者は「宗教的な世界は自他対立のない世界」と記載している。
(問六)内容把握記述問題<5分>。
筆者は、宗教を自他対立のない世界と捉えており、該当する句には「何をする人ぞ」というくだりがあるが、この内容は自他を区別して考える論理である。つまり、隣が何をしているのかさえも「分からない」という寂しい状況を表わしているのである。
(問七)内容把握記述問題<5分>。
「両方をかね備えた世界」とは、「宗教的世界=自他同一の世界」と「理性的世界=自他対立の世界」である。筆者は、戦時中は「研究=理性の世界」、戦後は「宗教の世界」に生きてきたのである。
(問八)文学史に関する問題<2分>。
夏目漱石の未完成作品である。漱石は『明暗』の執筆中に没している。
【大問2】 小説の読解総合問題
- 時間配分:25分
出典:「松葉巴」(永井荷風著)
(問一)漢字の書き取り問題<1分>。
「シンダイ」とは、「身分や地位」のこと。
(問二)語句問題<1分>。
「なまめかしい」ことを「凄艶」、「奥深く悲しい」ことを「幽哀」という。この言葉を知らなくとも、「哀」は「悲しい」という意味であることより類推しよう。
(問三)語句問題<2分>。
「怜悧」とは、「賢いこと」である。
(問四)ことわざ問題<2分>。
自分にはそんなに「力も立場」もないのに、権力者や実力者の権勢を借りて、あたかも自分がいかにも「力」のあるように振る舞う器の小さな人物のこと。『虎の威を借る』ということわざがある。
(問五)内容把握記述問題<5分>。
記述問題である。字数指定はないが、40~50字は書きたい。「人情」とは勇吉と小玉が一緒になり合いという気持ちであり、「義理」とは親の思いを受け入れなければならないという心情のことである。
(問六)内容把握選択問題<3分>。
「駿馬痴漢を乗せて走るが如き」とは、自分と釣り合いの取れた相手に恵まれないことを意味しており、そのことが「身の薄命」なのである。
(問七)心情把握問題<3分>。
なぜ「その夜すぐさま月謝を納めた」のかを本文より勇吉の置かれた状況を読み取り、適切な選択肢を選ぶこと。また、「お弟子が稽古する唄」を聴けば聴くほど、勇吉は自分の過去の恋を思い出したのである。
(問八)内容把握記述問題<5分>。
「深い額の皺」とは何をたとえているのかを考えること。それは「職務上の心配」と「生活の労苦」のことであり、「消えてしまう」とは「忘れてしまう」ということである。
【大問3】 古文読解総合問題
- 時間配分:13分
出典:「宇治拾遺物語」
(問一)内容理解選択問題<2分>。
一条摂政は、かなりの女好きであった。「御名を隠させ給い」とは、「偽名を使って」という意味である。
(問二)内容理解問題<2分>。
「あらがう」とは「抗う」ことである。母を責めた父に対して母が「抗った」のである。
(問三)古典知識問題<2分>。
「逢坂の関」がどこにあるかを問う問題である。問題演習等でこの言葉が出てきたときに、しっかり「注」を参照してもらいたい。
(問四)内容把握選択問題<3分>。
「空言」とは「根拠もない、あり得ない話」のことである。この場合、父にとって何が「空言」だったのかを考える。一条摂政に関する「噂」を父は「空言」と捉えたのである。
(問五)内容理解選択問題<3分>。
一条摂政は何が「をかしく」感じたのであろうか。父が、娘と母に騙されて、一条摂政と娘が会っていないことを信じた父の姿に一条摂政は「ほほゑまれ」たのである。
(問六)文学史問題<1分>。
出典である『宇治拾遺物語』より古い作品を選択する問題である。文学史はある意味得点源にもすることができるので、事前にチェックしておこう。
攻略のポイント
全体的に、現代文(随筆・小説)の読解、古文読解が中心である。この出題傾向は例年変わらない。設問内容としては内容把握・心情把握をしっかり行えるようにして欲しい。また、漢字、文学史、語句、古典文法などの知識問題は確実に得点できるように事前準備を怠らないように。さらに、50~60字の記述問題も全得点に占める比重が高いので、短時間で自分の考えを本文に沿って文章に纏め上げる能力も身に付けなければならない。対策としては、とにかく記述式問題集で徹底的に文章を書くことである。この対策を怠ると、本番で徒に時間だけが過ぎてしまい、満足のゆく答案に仕上げることができないであろう。