昭和学院秀英高等学校 入試対策
2019年度「昭和学院秀英高等学校の国語」
攻略のための学習方法
長文読解
例年、説明的文章・文学的文章の各1問ずつが出題されている。字数は計7400ほど(2019年度)。
漢字5~6問・接続詞や慣用句などの言語事項が数問、合わせて出されている。
やはり70~90字ほどある記述問題は手間がかかる。論説文・小説の両方で出題があるので、それぞれの記述のまとめ方に慣れておこう。
記述問題
論説文の場合、本文中の言葉・文章の他の表現への変換や詳しい説明が主になるが、各段落の要点にまとめられている場合が多いだろう。傍線部の前後・段落の最初と最後は注意すべき最重要点である。まず同じ意味段落の中で適当な箇所を探すということもセオリーであろう。
形式段落→意味段落への整理・各意味段落の要約(この際、内容を短いタイトルにしてつけてしまうとわかりやすい)・段落ごとのつながり・各段落の要旨の把握、そして全体の要約へといたる。解答の際の手間を省くためにも、上記の重要点を印・傍線で目立つようにしておくことは大変有効である。
およそ20~30字程度で一つの事柄がまとめられる場合が多いので、80字であれば3点くらいの内容を抽出してつなげれば形よくまとまるだろう。
小説の場合、心情の説明がやはり多くなる。場面・登場人物の転換があればその箇所を正確に分けておく。人物の言動や表情からその時の心情を考える。特に心情に大きな変化があった場面は要チェック。情景にも注意しながら本文で描かれているテーマを読み取る。
文学的文章の場合、文中にはっきりと説明されていないことも多い。その場合、普段から多くの小説・随筆を読み、人間のさまざまな気持ちを体験しておくことが何よりもよい勉強になるので、ぜひ読書に勤しんでいただきたい。
選択肢問題
本校の選択肢の問題は5択になっていて、答えを絞るのに手間はかかるが、それぞれの選択肢の内容ははっきりしており、無理に迷わせるようなものではない。本文をしっかり読み取れていれば正解を選べるはずである。
漢字・その他
漢字は基本的なものが5~6問程度出題される。その他、品詞やことわざ・慣用句などの言語事項も数問。高校受験用の問題集などを1冊しっかり仕上げておこう。
古文
単語に注釈はついているが、現代語訳などはついていないので、ほぼ大学レベルとも言える難しさである。内容は現代人にも理解しやすいものが選ばれているようなので、古典に慣れていれば読み取れるであろう。
ただし、そのためには中学校で習う量では全く足りない。高校初級~中級レベルの教材で、重要単語・基本文法を覚え、少しでも多くの古文に触れて頭を慣らしておかなければならない。配点も2割ほどと高いので、最低でも半分は正解できるくらいの力はつけておきたい。
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2019年度「昭和学院秀英高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
長文読解は論説文3400字・小説4000字の計7400字ほどであった。これに古文570字ほどが加わり、文量が多くなっている。
長文記述は50~60字で4問。ここだけで12~15分ほどは要するであろうから、最初の漢字や知識問題を素早く済ませ、なるべく多くの時間を記述問題に残したい。古文も10分ほどみておいて全体の時間配分を考えたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:20分
人間はそれぞれの言語に固有の方法で知覚世界を文節し、世界を構造化していると述べている。
1. A隔たり B魅了 C衝突 D織りなされた E蓄積
2.C. 「言葉以前」を「青いあるいは~と判断する以前」言い換えているので「すなわち」。
D. 「~というものを考えることができるでしょうか」(むしろ)逆の「~という考えも成り立つと思います」
3. 「言葉は一断面で経験全体を代表させようとするもの」とある。もとの経験そのもの
を単純な言葉で代表させてしまうということであろうから、選択肢イがよい。
4. 前の段落の最後の「言葉になる以前の体験をそれ自体として取り出すことができるか」
をもう一度言っている。つまり「言葉無しで表せるか」ということである。
5. 「『として』のなかに言葉が働き出ている」とある。言葉をもって現実を認識しているのであるから、オが選べる。選択肢イは、過去に経験のないことでも「そのようなものとして」「前もって獲得している世界理解の枠組みが関与」すると書かれていることと合わない。
6. 「考えるための、あるいは考えたもの(あらかじめ存在している思索)を表現する(形を与える)ための道具」とあるので、エを選ぶ。
7. 最後から2番目の段落の末尾に「先ほど言葉によって世界の見え方が決まると言ったのは、そういうことです」とある。「そういうこと」は直前の「日本語やドイツ語などそれぞれに固有の仕方で知覚世界を文節し、世界を構造化している」を指しているので、ここを中心にまとめればよい。
8. まず、生物として「感覚器官による文節」を行っており、さらに人間特有の「言語による文節」も行っている点を「二重」と言っているのである。
9. 「見慣れないものを見たり聞き慣れないものを聴いたり」した場合を説明している段落の内容が、選択肢ウと合う。
【大問二】小説の読解
- 時間配分:20分
トンネル工事の工法の発案者として現場に当たっていた主人公は、責任者としての行いに疑問を抱きつつも工事を進める。
1. Ⅰ 「身じろぎ」は体を少し動かすこと。
Ⅱ この場合は、専門的な火薬係ではない人夫頭がダイナマイトの装填を行ったことを言っているので、「慣れていない・不器用な」などが良い。
2. 「お前たち玄人」⇔「素人のおれたち」という対比である。
3. 作業員ではない主人公が危険を冒して行くと言っている勇気を意気に感じて、人夫頭として自分も責任を負わなければならないと思った。
4. 「ホースを投げ出」しているので、爆薬を仕掛け終えて退避する場面である。
5. その作業を熟知しているはずの人夫頭の緊張にこわばる表情を見て、主人公も作業の危険性をいまさらながら実感しているのである。
6. 新たな不安は、爆破が上手くいかなかった場合の工事の進捗や人夫たちの不安の増大といったことに関しての、自分の仕事上の責任が果たせるのかという心配である。
7. まずは、爆破が上手くいったのでこれからの作業が安全に行えるという安心感があるだろう。しかしそれは爆破作業の素人である主人公の勇気によるものであり、爆破のプロとして臆病になっていたことへの若干の恥ずかしさもともなっていると思われる。
8. ここで主人公は自分の行為が「根津と同じ類のもの」ではないかと疑念を持っている。※(注)を読むと、根津が周囲から信頼を抱かれた行為は善意だけではなかったことが書かれている。おそらくは「人夫」たちを動かすために尊敬される必要があり、それを計算した行動だったのでないかと想像される。自分の行為にも、そうした「作為」があるのではないかと自問しているのである。
9. 文章の終盤で、自分の行動には人夫たちを働かせるための作為があったのではないかと考えているので、選択肢エが合っている。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
生まれ持った宿命に逆らい、ない物ねだりでさまよい生きる愚を戒めている。
1. 思ふやう→おもうよう
2. 貧しいという現実に「このように縁がない。思っていたのとこうも違うとは。他の場所へ行って、前世からの因縁を試してみよう」と旅に出ようとした。
3. 「やは+ある(連体形)」で「どうして~あろうか、いや~ない」という反語になっている。「そのような者がいるはずはない」
4. 「このような(貧報の冠者=貧乏神的な存在)がついていたのでは、どこへ行ったところでしかたない・無駄である」
5. 「このようなことは、(世の中に)同じようにあることだろう」。「このような」は僧がどこか別の場所に行けば事態が好転するのではと考えたこと=「もしやもしやと走り求め」の部分と同じ。
6. 僧は夢で自分の宿命を悟ったあとは「外心」を改めた、とある。
7. 『発心集』は『方丈記』などと同じ時期に書かれた説話集。鎌倉時代なので、徒然草(鎌倉時代末期)が選べる。
攻略のポイント
記述問題で配点の2割強を占めている。同じくらいの字数で日本語に破綻がないようにうまくまとめる練習を積んでおくこと。
今年度選択肢は5択にもどったが、いたずらに答えを迷わせるような意地悪なものではないので、読解力をつけて臆せず自分が正解と思うものを選べばよい。
古文も中学生向けに素材文のレベルを下げてくれるわけではないので、高校生中級くらいを目指す気持ちで高校用の教材で勉強しておくのがよい。
問題文も含めて字数は多いので、常にスピードを意識して学習すること。