昭和学院秀英高等学校 入試対策
2023年度「昭和学院秀英高等学校の国語」
攻略のための学習方法
〇長文読解
例年、説明的文章・文学的文章の各1問ずつが出題されている。素材文の字数はおよそ計8000字。
漢字5~6問・接続詞や慣用句などの言語事項が数問、合わせて出されている。
やはり70~90字ほどある記述問題は手間がかかる。論説文・小説の両方で出題があるので、それぞれの記述のまとめ方に慣れておこう。
〇記述問題
論説文の場合、本文中の言葉・文章の他の表現への変換や詳しい説明が主になるが、各段落の要点にまとめられている場合が多いだろう。傍線部の前後・段落の最初と最後は注意すべき最重要点である。まず同じ意味段落の中で適当な箇所を探すということもセオリーであろう。
形式段落→意味段落への整理・各意味段落の要約(この際、内容を短いタイトルにしてつけてしまうとわかりやすい)・段落ごとのつながり・各段落の要旨の把握、そして全体の要約へといたる。解答の際の手間を省くためにも、上記の重要点を印・傍線で目立つようにしておくことは大変有効である。
およそ20~30字程度で一つの事柄がまとめられる場合が多いので、80字であれば3点くらいの内容を抽出してつなげれば形よくまとまるだろう。
小説の場合、心情の説明がやはり多くなる。場面・登場人物の転換があればその箇所を正確に分けておく。人物の言動や表情からその時の心情を考える。特に心情に大きな変化があった場面は要チェック。情景にも注意しながら本文で描かれているテーマを読み取る。
文学的文章の場合、文中にはっきりと説明されていないことも多い。その場合、普段から多くの小説・随筆を読み、人間のさまざまな気持ちを体験しておくことが何よりもよい勉強になるので、ぜひ読書に勤しんでいただきたい。
〇選択肢問題
本校の選択肢の問題は5択になっていて、答えを絞るのに手間はかかるが、それぞれの選択肢の内容ははっきりしており、無理に迷わせるようなものではない。本文をしっかり読み取れていれば正解を選べるはずである。
〇漢字・その他
漢字は基本的なものが5~6問程度出題される。その他、品詞やことわざ・慣用句などの言語事項も数問。高校受験用の問題集などを1冊しっかり仕上げておこう。
〇古文
単語に注釈はついているが、現代語訳などはついていないので、ほぼ大学レベルとも言える難しさである。内容は現代人にも理解しやすいものが選ばれているようなので、古典に慣れていれば読み取れるであろう。
ただし、そのためには中学校で習う量では全く足りない。高校初級~中級レベルの教材で、重要単語・基本文法を覚え、少しでも多くの古文に触れて頭を慣らしておかなければならない。配点も2割ほどと高いので、最低でも半分は正解できるくらいの力はつけておきたい。
また、2023年度では漢文の問題(返り点の付け方)も1問含まれている点、留意しておかれたい。
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2023年度「昭和学院秀英高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
長文読解はおよそ論説文3400字・小説4300字で計7700字ほどであった。これに古文300字ほどが加わり、文量が多くなっている。
長文記述は90字で2問。ここだけで10~12分ほどは要するであろうから、最初の漢字や知識問題を素早く済ませ、なるべく多くの時間を記述問題に残したい。古文も10分ほどみておいて全体の時間配分を考えたい。
【大問一】漢字の読み書き
- 時間配分:2分
1 委嘱 2 常軌 3 知己 4 ひけん 5 ほう(じる)
【大問二】論説文の読解
- 時間配分:16分
デザインは人の行為の本質に寄り添って行われるべきであり、デザイナーはこころざしを持ってかたちを作り環境をなすという着想を常に忘れてはならないと説いている。
1 Ⅰ. デザインとは「計画的、意識的に作る=生み出すだけの思想」ではなく、「本質を考える思想」でもあると書かれていることから、選択肢アの「気づく」という表現が合う。
Ⅱ. おそらくは太古の昔から存在が知られていた幾何学原理である四角が現代でも多く使われているということを「古典的」と言い表したのである。
Ⅲ. 「用具の形の根拠を長い暮らしの積み重ねのなかに求める」「暮らしの営みの反復がかたちを育む」とある。そのもののかたちは人の動き・使い方により「必然的」に決定されてきたということである。
2 薬缶をボールに例えている部分に注目。デザインが人の行為に寄り添っていないと暮らしも文化も成熟しない。柳宗理の薬缶に説得力があるのは、そのデザインが「人の行為の普遍性を表象している」からなのである。
3 「四角とは、人間にとって手を伸ばせばそこにある最も身近な最適性能あるいは幾何学原理だった」→選択肢オが合う。
4 四角や円などの「簡潔な幾何学形態は、人間と世界の関係のなかに合理性に立脚した知恵の集積を築いていく基本」となることを説明するための例としてボールを挙げているので、選択肢ウの「楕円形になった経緯」は論点がずれている。
5 エ. 鉛筆に六角形が使われるのにも四角や円と同様の合理的な理由があると述べているので、合っている。
6 ボール=球という幾何学形態は「合理性に立脚した知恵の集積を築く基礎」となった。それは「富の蓄積や経済の勃興をめざすだけでは得られない豊かさ」を人間にもたらした。そのように、人の行為の本質に寄り添い暮らしや文化を成熟させてくれるようなデザインを我々はできているだろうか、という筆者の問いかけなのである。
【大問三】小説の読解
- 時間配分:20分
自分が受けているいじめを軽くするために友人を巻き込もうとした罪悪感で引きこもりを経験した主人公。そんな自分に神職を務める資格はないと宮司に打ち明けると、宮司は人は誰でも心に魔を持っていると諭し、固まった心をほぐしてくれた。
1 Ⅰ. ものがたい――実直で律儀である・物事に慎み深い。
Ⅱ. くだけた――堅苦しくなく、打ち解けた感じ。
2 魔を「退治する」と自分の中の弱さに「対峙する」とを並べている。
3 (A) いじめの告発が皆に知られていないかと「びくびく」しながら。
(B) 告発メールを読んだクラスのみんなが「ちらちら」自分を見てくる。
4 「夕暮れの教室」はみさきの机にハエ入りのビニール袋を入れようとしたときの光景である。それを「あのとき」と思い出しているので、 ウ にもどせばうまく収まる。
5 いじめを回避するため友達に矛先を向けさせようとした自分は自己中心的で浅はかだった。そのことを告白した主人公に対し、宮司は「真面目に引きこもったのでしょうね」などと、通常の反応とは異なる褒めともとれる受け答えをしてきた点を「焦点を外すように」と表現しているのである。
6 「小さな光が見えたような気がした」とある。宮司のことばを聞いて、閉塞していた主人公の心に出口の方向が垣間見えた気持ちになったのであろう。その少しの変化を指摘している選択肢イが良さそうである。
7 ウ. ウイルスも魔も人が弱っているときにつけ込んで入ってくるという共通点を例えている。
オ. 体内の細菌が他の細菌から身を守ってくれるのと同様に、魔も人間を守ってくれることがあり、ある程度持っていた方が良いと述べられているので、合う。
8 人は誰でも魔を持っており、それを認めることで強くなれるという郡司の訓(おし)えに、主人公は「暗闇に小さな光がともった」ような気持ちになっている。罪悪感にさいなまれるだけだった意識から抜け出す手がかりを示してくれた宮司に感謝の念を覚えている。
【大問四】古文の鑑賞
- 時間配分:12分
自国の芸術には造詣があるだけにかえって、中国人には漢詩は難しく和歌は易しいと感じ、日本人には和歌は詠みづらいが漢詩は作りやすいと思ってしまう。しかし、どちらも簡単であるということはないのである。
1 ① 漢詩 ② 和歌
2 「詩も歌もどちらも奥が深いことに変わりないであろう」
3 (日本人の場合は)「歌はこの国の言葉」(A)であるからこんなふうに詠んだら「歌」(B)にはならないと、詠む人もそれを鑑賞する人も自信があるが、「詩はもろこしの言葉」(C)なのでそこそこに作っても良い出来だとほめてもらえる。
4 ア. 自国の芸術である和歌については、詠む側も鑑賞する側も造詣があるので良し悪しを判断する自信がある、ということである。
5 反語表現。「どちらが簡単であろうか。いや、どちらも簡単ではない」
6 「性を修むる」において「性」から返るので「修」に返り点(レ点)が付く。「性を修むる」の次に「所以なり」を読むので、「性修」に一点、「所以」に二点が付く。結果、「修」には一点とレ点が付くことになる。
攻略のポイント
記述問題で配点の2割を占めている。同じくらいの字数で日本語に破綻がないようにうまくまとめる練習を積んでおくこと。
2019年度から選択肢は5択にもどったが、いたずらに答えを迷わせるような意地悪なものではないので、読解力をつけて臆せず自分が正解と思うものを選べばよい。
古文も中学生向けに素材文のレベルを下げてくれるわけではないので、高校生中級くらいを目指す気持ちで高校用の教材で勉強しておくのがよい。
問題文も含めて字数は多いので、常にスピードを意識して学習すること。