巣鴨高等学校 入試対策
2021年度「巣鴨高等学校の国語」
攻略のための学習方法
例年、論説文が出題される。論説文の特徴は何と言っても「主張の明確さ」と「論理展開の的確さ」であろう。論説文が入試問題として採用されるのは、その様な背景がある。事前の何らの準備もなく、入試本番で論説文を読んで問題に取り組んでも、適切な内容理解と設問への解答は望めない。当然ながら、事前の入念な準備は欠かせない。
それでは、どのような文章をどのように読めばよいのか。結論から言えば、論理的文章を丁寧に読み、自分の頭で考える、ということである。初見の文章であろうと、初めて触れる概念であろうと、書かれている内容をキーワード(何度も繰り返し使われている言葉)、表現(筆者ならではの独特な言い回し)を中心に整理することである。
事前の準備として、可能であれば、社会科学系、哲学系の書籍を読了することを勧めるが、時間的にも余裕がない受験生にとっては演習で行う「問題文」が最良の「読書」である。入試に扱われるような文章は、論理性にも優れ、極めて的確に解答を考えられるような文章になっている。
したがって、時間の余裕のない環境では「入試問題」を精読することが最高にして効果的な論説文対策の対処方法であろう。さらに、より自分の論理的思考力を向上させようと望めば、取り組んだ問題(論説文)について論点の流れを箇条書きで構わないので書き出してみることも有効である。これは、自分の頭の整理にもなるし、考えを文章としてまとめ上げる作業が効率よく可能となるはずである。
その際に、主観的意見や考えは極力排除し、あくまでも筆者の考えの流れに則した理解をするように努力すること。また、その様な作業を通じて習得して欲しい手法は「どのような手順とプロセスで結論に至るのか」と言いうことである。つまり「Aという事象にはBとCの背景が考えられる」という論理があった場合に、「何故Bなのか」、「何故Cなのか」を考えなければいけない。
その上、BまたはCという結論を導き出すために、どのような論理をあてはめているのか、をあぶり出すことである。たとえ、それが自分の考え方と異なっていたとしても、主観的な考え方は排除して筆者の考え方を忠実に辿ることである。
なかなか時間的な余裕はないだろうが、少ない時間を見つけては新聞やテレビのニュースなどを通じて「物事の捉え方・考え方」について、考える習慣を身に付けるべきである。特に、新聞に書かれている社説を毎日読み込むことも「論理的文章を読み込む」上では、最良の練習であろう。
とにかく、過去の入試問題における論説文や学校の授業で習う国語の教科書における論説文でも、その全てが自分の論理力を高めるための最高の教材であると自覚し、真剣に取り組むことが大事である。
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2021年度「巣鴨高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、論説文の総合問題<21分>。現代社会に関する論説文読解問題である。
大問2は、小説の読解問題<23分>。心情把握を主とした小説の総合読解問題である。
大問3は、古文読解問題である<16分>。古典文法、内容把握が主な出題内容である。文学史も一題出題されるので主要な作品名と作家名は押さえておこう。
【大問1】現代社会に関する論説文の読解問題
- 時間配分:21分
出典は、『サル化する世界 -ポピュリズムと民主主義について-』(内田樹著)である。
筆者が述べる「サル化」とは一体何かを考えながら本文を読むこと。「『今さえよければ、自分さえよければ、それでいい』と思い込む人たちが多数派を占め」ることを筆者は「サル化」と呼んでいるのである。
問1は、漢字問題である<2分>。標準的な漢字なので、完答を目指したい。c「イホウ」とは外国のことであるので「異邦」となる。e「アナドル」は「侮る」となる。侮辱の「侮」である。
問2は、内容把握記述問題である<4分>。傍線①における「そうはゆかない」の「そう」とは、前段にある「術語(注・専門用語)の定義は、ふつう同一カテゴリーに属する他の語との差異に基づいて理解される」を指している。この個所で言及している「他の語」とは「対義語」のことであり、筆者は「ポピュリズムについては、その対義語が何であるかについての合意がまだ存在していない」としている。
問3は、内容把握抜出し問題である<4分>。筆者は「『一意的に定義されていない語』が頻用される場合」において、「『これまでの言葉ではうまく説明できない新しい事態』が発生」していると論じている。
問4は、内容把握選択問題である<2分>。筆者は「時間意識の縮減」を「平たく言えば『サル化』」といい、「『朝三暮四』のあのサルである」と指摘する。このサルは「未来の自分が抱え込むことになる損失やリスクは『他人ごと』」だと思っている。このような態度を「自己同一性を未来に延長することに困難を感じる未成熟(「今さえよければ、それでいい」)のこと」であると筆者は論じているのである。
問5は、内容把握選択問題である<2分>。「自分さえよければ、他人のことはどうでもいい」ということは、結論的には「(そのような社会で暮らすと)『私』が生き延びられる確率」は低くなるのである。
問6は、内容把握記述問題である<4分>。「サル化」とは「今さえよければ、自分さえよければ、それでいい」という考え方である。そして、その対極に位置する「倫理」とは、「他者とともに生きるための理法」であり、「今ここにはいない自分を。あるいは過去の自分を…『自分の変容態』として、受け容れること」なのである。
問7は、要旨把握問題である<3分>。本文の内容に即し4人の生徒の発言中で、本文要旨に適さない選択肢を選ぶ問題である。
【大問2】小説の読解総合問題
- 時間配分:23分
出典は、『球の行方』(安岡章太郎著)。
問1は、漢字問題である<2分>。標準的漢字の問題である。完答を目指してほしい。「片隅」「親戚」「身構える」もしっかり書けるようにしておくこと。
問2は、内容把握選択問題である<2分>。傍線箇所の「得意に」なったことは、「自分もいつの間にか弘前弁で話ができるようになって、…店の人との…通訳の役をつとめる」ことができるようになったことである。一方、「母を…面白がらせた」とは、そのような「自分」を母が頼もしくも嬉しく思っていたことである。
問3は、内容把握選択問題である<2分>。「安もののシャープペンシル」とは何を譬えているのかを本文に即して考える。弘前弁(方言)を語る環境の中で「標準語を語る自分」は、何か特別な存在であるかのような感覚を抱いているが、実際にはこの「安もののシャープペンシル」と同じで、特別なものでも何でもないのである。
問4は、心情把握記述問題である<8分>。「私」にとって野球とは「高級なハイカラな競技であり…英語や標準語の会話をかわしながら楽しむもの」と思っているのである。したがって、弘前弁で「ンだ、やるべす」とFにいわれたとき、「ガッカリしたような心持」になったのであり、Fのことを見下す気持ちになったのである。
問5は、内容把握選択問題である<3分>。「立派なグローブとバット」を持っていた「私」は野球ができなかったのである。「ノックの球が飛んでくるたびに、…眼をつむって、足許の地べたに自分の体ごと転がってしまう」のであり、そのようなみじめな姿をFたちに見られてしまい、恥ずかしい気持ちで一杯になったのである。
問6は、内容把握選択問題である<3分>。「私」はFに貸したのは「立派なグローブ」であり、Fがそのグローブを「私の知らない年上の男の子」に渡してしまったことに「私」は、不快感を抱いているのである。
問7は、心情把握選択問題である<3分>。「私」は、「グローブもバットも取り上げられた…自分自身の姿が…見っともなく、格好のつかない哀れなもの」に思えたのである。そして、「不意に隠れるように、近くにあった松の木に飛びついて、てっぺん目がけて上りはじめた」のである。その木のてっぺんからは「Fや…子供たちが、…信じられないぐらい小さく遠のいて」見えたのである。「小さく遠のいて」見えたという部分に、「私」の「孤独感」が読み取れる。
【大問3】古文(説話)の読解問題
- 時間配分:16分
出典は、『宇治拾遺物語』である。
問1は、古典文法選択問題である<2分>。係り結びの法則など基本的な古典文法の知識を確実に押さえておくこと。
問2は、内容理解選択問題である<2分>。「いとけない」とは、「稚し」であり「幼い」という意味である。
問3は、仮名遣い・本文内容把握記述問題である<6分>。
(1)の現代仮名遣いを問う問題は、「やう」を現代仮名遣いに直す問題である。「やう」は「よう」になる。
(2)「父」が難波の浦で目にしたのは、「大きなる魚の背中」に乗った「童」でありそれは「四つばかりなる児」であったのである。
問4は、現代語訳選択問題である<2分>。「はかなきものに思ひける」とは、「死んだものだと思っていた」ということである。
問5は、内容理解選択問題である<3分>。父は難波の浦で、大きな魚の背中に乗った子どもを見つけ、「しかるべき縁」があったのだと考え、その子どもを大切に育てたのである。
問6は、文学史の問題である<1分>。出典となった「宇治拾遺物語」と同じジャンルに属する作品を選択する問題。「宇治拾遺物語」は説話集である。
攻略のポイント
論理的文章に関して、「自分の頭で考える」練習をしっかり積むことである。筆者がどのような主張を、どのような根拠(考え方)で、どこまでをどのように論理展開しているのかを、丁寧に的確に追い掛けてゆくスキルを高めることが大事である。
その際には、本問でもあてはまるように「キーワード」が極めて重要である。文章の初めの段落や最終的な段落に繰り返し使われている「ことば」を抽出する方法を身に付けることである。
途中の段落においても、筆者が『結論』らしき事柄の導入部分を瞬間的に見抜く力を向上させたい。そのためにも、日頃から身の回りの事象や社会の現象に対して、高い意識を持ち自分の考えを持つようにすることが大切である。
また、知識問題の分野(漢字、ことわざ、慣用表現、文法、文学史)も怠りなくしっかり押さえておきたい。