巣鴨高等学校 入試対策
2023年度「巣鴨高等学校の国語」
攻略のための学習方法
例年、論説文が出題される。論説文の特徴は何と言っても「主張の明確さ」と「論理展開の的確さ」であろう。論説文が入試問題として採用されるのは、その様な背景がある。事前の何らの準備もなく、入試本番で論説文を読んで問題に取り組んでも、適切な内容理解と設問への解答は望めない。当然ながら、事前の入念な準備は欠かせない。
それでは、どのような文章をどのように読めばよいのか。結論から言えば、論理的文章を丁寧に読み、自分の頭で考える、ということである。初見の文章であろうと、初めて触れる概念であろうと、書かれている内容をキーワード(何度も繰り返し使われている言葉)、表現(筆者ならではの独特な言い回し)を中心に整理することである。
事前の準備として、可能であれば、社会科学系、哲学系の書籍を読了することを勧めるが、時間的にも余裕がない受験生にとっては演習で行う「問題文」が最良の「読書」である。入試に扱われるような文章は、論理性にも優れ、極めて的確に解答を考えられるような文章になっている。
したがって、時間の余裕のない環境では「入試問題」を精読することが最高にして効果的な論説文対策の対処方法であろう。さらに、より自分の論理的思考力を向上させようと望めば、取り組んだ問題(論説文)について論点の流れを箇条書きで構わないので書き出してみることも有効である。これは、自分の頭の整理にもなるし、考えを文章としてまとめ上げる作業が効率よく可能となるはずである。
その際に、主観的意見や考えは極力排除し、あくまでも筆者の考えの流れに則した理解をするように努力すること。また、その様な作業を通じて習得して欲しい手法は「どのような手順とプロセスで結論に至るのか」と言いうことである。つまり「Aという事象にはBとCの背景が考えられる」という論理があった場合に、「何故Bなのか」、「何故Cなのか」を考えなければいけない。
その上、BまたはCという結論を導き出すために、どのような論理をあてはめているのか、をあぶり出すことである。たとえ、それが自分の考え方と異なっていたとしても、主観的な考え方は排除して筆者の考え方を忠実に辿ることである。
なかなか時間的な余裕はないだろうが、少ない時間を見つけては新聞やテレビのニュースなどを通じて「物事の捉え方・考え方」について、考える習慣を身に付けるべきである。特に、新聞に書かれている社説を毎日読み込むことも「論理的文章を読み込む」上では、最良の練習であろう。
とにかく、過去の入試問題における論説文や学校の授業で習う国語の教科書における論説文でも、その全てが自分の論理力を高めるための最高の教材であると自覚し、真剣に取り組むことが大事である。
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2023年度「巣鴨高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、論説文の総合問題<23分>
人生に関する哲学的論説文読解問題である。
大問2は、小説の読解問題<20分>
心情把握を主とした小説の総合読解問題である。
大問3は、古文読解問題である<17分>
古典文法、歴史的仮名遣い、内容把握が主な出題内容である。文学史も一題出題されるので主要な作品名と作者名は押さえておこう。
【大問一】人生に関する哲学的論説文の読解問題
- 時間配分:23分
出典は、『「コミュ障」のための社会学』(岩本茂樹著)である。
問1は、漢字問題である<2分>
標準的な漢字なので、完答を目指したい。「躍起」「行使」「衛生」「異議」「圧巻」である。
問2は、内容把握記述問題である<4分>
学校は「ルールや道徳などを学びながら、規範を守り理想とする人間像を身につけていく、そこにも権力が働いている」のであり、病院は「医学的見地から見た医師の言葉ゆえに、権力は医師にある」のである。つまり、どちらも「自らが主体的に自己を管理し規制していく近代社会の仕組み」が内在するのである。
問3は、内容把握選択問題である<2分>
本文には「囚人たちは常に監視者が見ているものとして自らの行動を規制していく」のであり、「囚人たちは常に監視者に見られている感覚」を有するのである。
問4は、内容把握抜出し問題である<3分>
本文に「個々人の主体性が剝ぎ取られている」のが現代社会である。つまり「主体的かつ充実した生」が失われているのである。
問5は、内容把握選択問題である<2分>
「奔走する」とはある目標に向かってひた向きに突き進む様子(一心不乱な様子)を表している。ここでは「健康寿命」が「目標」となってしまい「ただ長生きすること」だけが「生きる目的」となっていることである。
問6は、内容把握記述問題である<5分>
「減少していく若者にとって、…高齢者の増大が『負担』」と考えられ、「老人たちは哀れな存在だけにとどまらず、大きな負担」になってしまうのである。
問7は、内容把握抜出し問題である<2分>
本文に「『今、死んでしまうかもしれない』という意識があれば、チャンスが目の前に訪れたら必死で奪い取ろうとする」のである。
問8は、要旨把握選択問題である<3分>
『今、死んでしまうかもしれない』という意識を常に持ち、「自分が今しなければならないこと自覚して、…実行」することが大事なのである。
【大問二】小説の読解総合問題
- 時間配分:20分
出典は、『星条旗の聞こえない部屋』(リービ英雄著)。
問1は、漢字問題である<2分>
標準的な漢字の書取り問題である。「整然」「平衡」「呼称」「肯定」「蒸気」である。
問2は、心情把握選択問題である<2分>
「かれ」に丁重な挨拶を行うことにより、「かれ」をより一層混乱させることになるのである。
問3は、心情把握選択問題である<2分>
「『ますむら』はもう一度、ベンの顔と制服を見比べて、…何かを訊きかえしたいが、ベンに相当する呼称が思い当たらない」のである。
問4は、心情把握選択問題である<2分>
「ますむら」は「ベン」の存在をどのように考えているかを手掛かりにする。「ますむら」は「ベン」のことを「他者の存在」としてしか考えていないのである。
問5は、心情把握選択問題である<3分>
ベンは「ますむら」を自分の目標と考えているのである。ところが、一心に「ますむら」の仕事ぶりをまねることでいつしかベン自身が、ベンの存在を拒む「ますむら」のようになってしまったのである。
問6は、心情把握選択問題である<3分>
この表現は極めて丁寧な表現ではあるが、非常に形式的であるので「かつてW大学で覚えさせられた日本語教科書の『挨拶編』にあった一文句」と似ているのである。
問7は、心情把握記述問題である<6分>
直後にある「誰にでも答えるような、こだわりのない声」から状況を読み取る。「誰にでも」とは、ベンのことを他の働く仲間と同一視してくれたことを如実に表しているのである。
【大問三】古文(説話)の読解問題
- 時間配分:17分
出典は、『宇治拾遺物語』である。
問1は、歴史的仮名遣い問題である<1分>
「いみじう」を現代仮名遣い(ひらがな)に書き換える問題である。
問2は、古典文法問題である<2分>
「言った」という形にしたいので、「言ひ□□」の「□□」には過去の助動詞「けり」の連体形「ける」が入る。
問3は、現代語訳選択問題である<2分>
A「死なんとす」は「死にそうだ」、B「え待つまじ」は「待つことはできない」となる。
問4は、内容理解問題である<3分>
Ⅰは、荘子にとっての「今日食ふべき料の粟」は、鮒にとっての「一提ばかりの水」である。Ⅱは、荘子は「われ、いま二三日ありて、江湖といふ所に、遊びに行かんとす。そこにもて行きて放さん」といったのである。
問5は、現代語訳問題である<2分>
「いかでか」は「どうして~か、いや、~ない」という反語であり、「やんごとなき人」は「尊い人」のことである。
問6は、内容把握記述問題である<4分>
「…江湖へ行くなり。それが飛びそこなひて、この溝に落ち入りたるなり」とある。
問7は、内容把握選択問題である<2分>
「さらに益なし」とは「まったく意味がない」ということである。
問8は、文学史問題である<1分>
鎌倉時代の作品は『新古今和歌集』である。
攻略ポイント
論理的文章に関して、「自分の頭で考える」練習をしっかり積むことである。筆者がどのような主張を、どのような根拠(考え方)で、どこまでをどのように論理展開しているのかを、丁寧に的確に追い掛けてゆくスキルを高めることが大事である。
その際には、本問でもあてはまるように「キーワード」が極めて重要である。文章の初めの段落や最終的な段落に繰り返し使われている「ことば」を抽出する方法を身に付けることである。
途中の段落においても、筆者が『結論』らしき事柄の導入部分を瞬間的に見抜く力を向上させたい。そのためにも、日頃から身の回りの事象や社会の現象に対して、高い意識を持ち自分の考えを持つようにすることが大切である。
また、知識問題の分野(漢字、ことわざ、慣用表現、文法、文学史)も怠りなくしっかり押さえておきたい。