桐朋高等学校 入試対策
2019年度「桐朋高等学校の国語」
攻略のための学習方法
設問は記述問題が大半(約95%)である。迅速で正確な読解力が求められるのはもちろんであるが、ここではどのような学習を行えば、合格できる「記述力」が習得できるかについて考えてみたい。
読解力は記述力が基礎となる
合格点を取るための記述内容にするためには、その前提として「正確な読解力」が求められる。その読解力を得るためにも「記述力」が必要なのである。言い換えれば、「読解力」は内容のあるしっかりとした「記述力」がその基礎となっているのである。つまり、自分の考えを過不足なく「まとめられる力」とは、展開する論理を明確にしたうえで読み手に説得力を与える力である。そのような文章を書ける能力は、物事を論理的に考えられる能力のことであり、そのような能力は正確で確実な読解力につながるからである。そのような記述力に裏付けられた読解力こそが、受験にとっては必須な「読解力」となる。
自分の考えをまとめてみよう
自分の考えをまとめるという作業は、簡単なようで実は難しい。「今日は何をしようか」、「今日の昼ごはんは何を食べようか」というレベルにおいて、自分の考えを「まとめる」という作業は、皆さんは日常的に行っているであろう。しかし、そのようなレベルでの考えをまとめる作業と、あるテーマに対する自分の考えや主張をまとめる作業では、その質において大きな隔たりがあるのは言うまでもない。その隔たりとは何か。前者は「自分」が納得するか否か、後者は「他人」が納得するか否かの違いである。言い換えれば、前者は「主観的」であり、後者は「客観的」でなければならない。受験における自分の考えをまとめるポイントは、「客観性」が不可欠な要素である。そして、客観性とは不特定多数の人たちが納得できるか否かがその指標となる。そのための一つの効果的な手法としては、「具体例を例示する」ことも有効である。そのような手法を用いることによって、自分の主張の正当性を裏付け、説得性を増すことも可能になるのである。
実際に文章を書いてみよう
本当の意味で「記述力」を高めるには、実際に文章を書いてみることである。初めから、本格的な記述・論述問題に取り組むことも必要かもしれないが、まずは日頃考えていることを文章にしてみることを勧める。その際には、まず「テーマ」を決めること。文章を書く上で、漫然と文章をダラダラ書いてみても、受験における合格水準の記述力は身につかない。やはりテーマを決めて、初めは100~150字の文章を書いてみよう。書き出しは「自分は、○○について……と考える」と結論を初めに述べるようにしよう。そうすることによって、読み手は書き手の主張に引き込まれるのである。そのような字数の文章を15~20編書くことにより、自身の文章力は確実に高まり内容も濃いものになる。そのうえで、ハイレベルの記述式入試問題の演習を繰り返してゆくことが、確実に記述式問題の合格答案を作成する結果をもたらしてくれるのである。
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2019年度「桐朋高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、言語学的分野に関する読解問題である<25分>。「日本語」の持つ「グレーゾーン(曖昧さ)」に関して、その対極にある「英語」との比較を踏まえて、文学的表現領域に関する随筆文である。
大問2は、文化人学的分野に関する読解問題である<25分>。筆者のエチオピア滞在経験を通じて見えてくる「日本文化の特性」に関する随筆文である。
【大問1】
- 時間配分:25分
曖昧な日本語と明朗会計な英語との比較を通じて、日本における「詩」の特性を抽出する随筆読解総合問題。出典は、アーサー・ビナード著『もしも、詩があったら』。
(問一)語句に関する問題である<2分>。「相場」に関する意味を問う問題である。
(問二)ことわざに関する問題である<2分>。「○○が花」の箇所で、○○は「言わぬ」であることが判明する。
(問三)内容把握記述問題である<4分>。本文にあるように筆者は、「言語を習得」するためには「よくわかる細やかな言葉に変身」させることが必要であると述べている。
(問四)内容把握選択問題である<1分>。「鬼ごっこ」の「鬼」とは、その実態が不明なものである。
(問五)内容把握選択問題である<1分>。本文後半に「タッチされたみたいに、立場ががらりと変わる」という記述から適切な選択肢を選ぶ。
(問六)内容把握記述問題である<3分>。「Old Age の変身」とは、本文中に引用された『古今和歌集』の和歌に出てくる「翁」に注目すること。
(問七)内容把握記述問題である<2分>。「ifのばね」の「if」とは「もしも」という意味である。
(問八)内容把握記述問題である<2分>。本文を流れている基調は「鬼ごっこ」であり、「鬼」になるということは「立場」がガラッと変わり「変身」を遂げるということである。
(問九)内容把握記述問題である<5分>。「if」は仮定の力であり、勇気のない作者が仮定の力を借りて、どのように変身するかを考えること。
(問十)漢字の読み書き問題である<3分>。どれも標準的な問題である。完答を目指したい。
【大問2】
- 時間配分:25分
筆者のエチオピア滞在中に体験した経験を踏まえて、それまであまり感情的にならなかった自分と、生活のすべてが他人との関わり合いの中にあるエチオピア人とのギャップを通じて、見えてくる日本文化の特性についての随筆である。松村圭一郎著『うしろめたさの人類学』。
(問一)内容把握記述問題である<2分>。筆者のエチオピアでの生活は、「毎日が喜怒哀楽に満ちた」「人との関わりのなか」での生活だったのである。
(問二)内容把握選択問題である<2分>。エチオピアと日本の違いから筆者は驚いたのである。
(問三)内容把握記述問題である<7分>。
- エチオピアへ行く前と日本へ帰って来てからで、筆者はどのように自分自身を捉えているのかを考える。
- エチオピアから戻った筆者は、自分自身のことを物足りなく感じていることが本文よりうかがうことができる。
(問四)内容把握記述問題である<4分>。自分の考えを自由に作文させる問題である。「簡潔に述べよ」という条件があり、どの程度まで書くかについて考慮しなければならない。
(問五)内容把握記述問題である<2分>。自国の文化と異なる文化に接触したとき感じる「違和感」とは、「カルチャーショック」である。
(問六)内容把握記述問題である<2分>。筆者が日本に戻ってきたとき、関西国際空港からの帰りのバスの中で筆者は「何に」驚いたのか。本文中のその箇所の直後に「できるだけストレスを感じないで済むシステム」について言及している。
(問七)内容把握記述問題である<3分>。「感情」に関する筆者の言及は、「言葉の感情」、「感情が身体的な生理現象」、「感情が社会的な文脈」という3ヶ所にある。
(問八)内容把握記述問題である<1分>。「もののあわれ」という言葉の意味を考えると適切な選択肢が理解できるだろう。
(問九)内容把握記述問題である<2分>エチオピア人にとって、「人が海へと落下」してゆく様のどのような点が、笑いを誘ったのかを文脈を探りながら考えること。
攻略のポイント
大問2題とも随筆文である。迅速で正確な読解力が求められる。文脈を丁寧にたどることはもちろんであるが、日頃の受験勉強においてどのような手法で勉強に取り組めば、合格できる読解力が身につくのであろうか。一つの答えとしては文章の「見える化」であろう。日頃の文章読解において、重要だと思う箇所に傍線を引いたり、段落又は文中にある接続詞(順接・逆説に注意しながら)に印をつけるなどしながら読解することである。そのような作業を積み重ねてゆくうちに、合格できる読解力が身につくのである。