桐朋高等学校 入試対策
2021年度「桐朋高等学校の国語」
攻略のための学習方法
設問は記述問題が大半(約90%)である。迅速で正確な読解力が求められるのはもちろんであるが、ここではどのような学習を行えば、合格できる「記述力」が習得できるかについて考えてみたい。
①読解力は記述力が基礎となる
合格点を取るための記述内容にするためには、その前提として「正確な読解力」が求められる。その読解力を得るためにも「記述力」が必要なのである。言い換えれば、「読解力」は内容のあるしっかりとした「記述力」がその基礎となっているのである。つまり、自分の考えを過不足なく「まとめられる力」とは、展開する論理を明確にしたうえで読み手に説得力を与える力である。そのような文章を書ける能力は、物事を論理的に考えられる能力のことであり、そのような能力は正確で確実な読解力につながるからである。そのような記述力に裏付けられた読解力こそが、受験にとっては必須な「読解力」となる。
②自分の考えをまとめてみよう
自分の考えをまとめるという作業は、簡単なようで実は難しい。「今日は何をしようか」、「今日の昼ごはんは何を食べようか」というレベルにおいて、自分の考えを「まとめる」という作業は、皆さんは日常的に行っているであろう。しかし、そのようなレベルでの考えをまとめる作業と、あるテーマに対する自分の考えや主張をまとめる作業では、その質において大きな隔たりがあるのは言うまでもない。その隔たりとは何か。前者は「自分」が納得するか否か、後者は「他人」が納得するか否かの違いである。言い換えれば、前者は「主観的」であり、後者は「客観的」でなければならない。受験における自分の考えをまとめるポイントは、「客観性」が不可欠な要素である。そして、客観性とは不特定多数の人たちが納得できるか否かがその指標となる。そのための一つの効果的な手法としては、「具体例を例示する」ことも有効である。そのような手法を用いることによって、自分の主張の正当性を裏付け、説得性を増すことも可能になるのである。
③実際に文章を書いてみよう
本当の意味で「記述力」を高めるには、実際に文章を書いてみることである。初めから、本格的な記述・論述問題に取り組むことも必要かもしれないが、まずは日頃考えていることを文章にしてみることを勧める。その際には、まず「テーマ」を決めること。文章を書く上で、漫然と文章をダラダラ書いてみても、受験における合格水準の記述力は身につかない。やはりテーマを決めて、初めは100~150字の文章を書いてみよう。書き出しは「自分は、○○について……と考える」と結論を初めに述べるようにしよう。そうすることによって、読み手は書き手の主張に引き込まれるのである。そのような字数の文章を15~20編書くことにより、自身の文章力は確実に高まり内容も濃いものになる。そのうえで、ハイレベルの記述式入試問題の演習を繰り返してゆくことが、確実に記述式問題の合格答案を作成する結果をもたらしてくれるのである。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2021年度「桐朋高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、随筆に関する読解問題である<27分>。外国人に対する差別発言を耳にした「わたし」は、その発言の不適切性を指摘することに対する「正しさ」に溺れることなく、「言葉にするべきことを言葉にする」うえでの「責任の果たし方を模索」しているのである。
大問2は、詩の鑑賞に関する総合問題である<23分>。課題となっている詩の内容を確実に把握し理解することは当然として、心情理解もしっかり行うことができるようにしておくこと。
【大問1】随筆に関する読解総合問題
- 時間配分:27分
随筆に関する読解総合問題。出典は、温又柔著「やわらかな『棘』と、『正しさ』の震え」。
(問一)熟語の構成に関する問題である<1分>。「欠落」と同じ構成を持つ熟語を選択する問題。「欠落」の熟語構成は、同じような意味の漢字を組み合わせているのである。
(問二)慣用句に関する問題である<2分>。「耳を疑う」「息を吞む」「水を打ったよう」の慣用句は常識として確実に覚えておくこと。
(問三)内容把握に関する選択肢問題である<2分>。韓国人であるということだけで差別発言をしていた男児を傍にいた母親はたしなめることもなく、むしろ話題の家族に関する悪口を発言し始めたのである。そのような「母親のようす」を「わたし」は不快に思っているのである。
(問四)内容把握抜出問題である<3分>。男児たちが差別的な発言をしているのは、そのような差別的思想を持っている母親に育てられたからだと「わたし」は考えているのである。
(問五)内容把握適語問題である<2分>。空欄に適語を記入する問題。「わたし」は差別的発言に対する「憤り」についてフォークを投げつけるという行動に表わしたのである。その音に気がついた母親が「わたし」を見たとき、「わたし」は母親を「にらみつけた」のである。
(問六)内容把握選択問題である<1分>。母親の差別的発言に対して「憤り」を感じ、差別発言をしているという自覚が母親にないことに怒りすら覚えている。「わたし」は高ぶる気持ちを何とか抑えようとしている。
(問七)心情把握記述問題である<4分>。差別的な発言に対し異を唱えた「わたし」の行動は、その指摘の方法も含めて適切であったかどうか揺れている。「わたし」の指摘を受け入れた母親も決して根は悪い人ではないのであると感じ、「わたし」はむしろ余計なことをしてしまったのではないかという嫌悪感を抱いているのである。
(問八)文脈理解問題である<2分>。与えられた一文を本文中の適切な個所に入れる問題。本文中に「…どんな顔をしたらいいのか分からなかったのだろう」とある。この次に与えられた「あるいは、わたしがうっとうしかったのか」を入れると、本文の「いずれにしろわたしは」につながる。
(問九)内容把握記述問題である<4分>。「その痛み」とは何かを考える。「痛み」とは同じ日本人の外国人に対する対差別的発言に心を「痛め」ていることであり、「気づかないふり」とはそのような差別的発言を耳にしても、その発言内容の不適切さを指摘するのでもなく「見て見ぬふり」をすることである。
(問十)内容把握記述問題である<4分>。外国人に対する差別発言に異を唱えた「わたし」は自分がとったその行動は「正しい」と感じているのである。しかし、いくら自分が正しいと思っていても、相手が受け入れてくれなければ理解してもらうことはできない。また、「溺れる」とは自分の主張が正しいと思いを強くすることであり、その思いを前面に押し出すことにより相手のことを考慮しなくなってしまうことである。
(問十一)漢字の書き取り問題<2分>。「戸惑」「処世」「励」「瞬間」「頑」などどれも標準的な漢字である。完答を目指そう。
【大問2】詩の鑑賞文に関する総合読解問題
- 時間配分:23分
詩の鑑賞文に関する総合読解問題。出典は、長谷川宏著『幸福とは何か』。
(問一)詩の技法に関する問題である<1分>。詩の技法には、擬人法が使われていない。擬人法とは、「人間でないのもの」を「あたかも人間であるかのように表現」する技法である。
(問二)内容把握問題である<2分>。「幸福」は「手をのばせば」掴めるものなのである、と本文にある。したがって、「特別なものじゃない」のである。
(問三)内容把握選択問題<3分>。「きみ」という二人称を用いることで、作者と一対一の心の交流が可能になるのである。「幸福」は日常的な何でもないようなもの(=テーブルの上の胡椒入れ)に見出されるのである。
(問四)心情把握記述問題である<4分>。一年ぶりの「友人(=蟇)」との再会を待ちわびている「きみ」は、「友人(=蟇)」も同じように心待ちにしている様を感じてうれしくなったのである。
(問五)内容把握抜出問題である<3分>。「場面」とは、「友人(=蟇)」も自分との一年振りの再会を喜んでいる様を感じている場面であり、「自分のうちに取りもどす」とは、その場面を感じたときの幸福感を詩に描くことで、再び青の幸福感を感じることができたのである。
(問六)内容把握抜出問題である<4分>。詩人が発した言葉(詩の中の表現内容)を読者一人ひとりに実体験して欲しいと作者は思っているのである。
(問七)内容把握記述問題である<6分>。「朗誦」とは、詩の言葉を自分自身の声をもって読む行為である。そのような行為によって、「詩の書き手と読み手」は「一人であること」が「意識され」るのである。結果として、「ことばを媒介にしてたがいの経験と心情」が「重なり合うことが感じられる」のである。
攻略のポイント
迅速で正確な読解力が求められる。文脈を丁寧にたどることはもちろんであるが、日頃の受験勉強においてどのような手法で勉強に取り組めば、合格できる読解力が身につくのであろうか。一つの答えとしては文章の「見える化」であろう。日頃の文章読解において、重要だと思う箇所に傍線を引いたり、段落又は文中にある接続詞(順接・逆説に注意しながら)に印をつけるなどしながら読解することである。そのような作業を積み重ねてゆくうちに、合格できる迅速で確実な読解力が身につくのである。