桐蔭学園高等学校 入試対策
2017年度「桐蔭学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「桐蔭の選択肢」で勝利するための鍵は、「問題解説」でも触れたように「消去」の際に「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、桐蔭などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。前述のとおり塾での学習でも不十分なので、「独習」をする他ない。
「古文単語」では「大学入試基礎レベル」(300語程度)を定着させ、「文語文法」は「動詞」「形容詞・形容動詞」は当然として、「助動詞」「助詞」の「意味・用法・接続」、さらに「敬語」までも理解しておく必要がある。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「高校用」の「ステップアップノート30——古典文法基礎ドリル」(河合出版)や、「古文単語」定着用として「重要古文単語315」(桐原書店)などが推薦できる。
速読
全てで6000字程度(「選択肢説明」ではそれ以上)を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。桐蔭に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐蔭の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題があり、難易度も高い。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2017年度「桐蔭学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「総合的知識問題」。
「漢字問題」(全5問/「同音異字」判別)、「慣用句」(全3問/「用法」判別)、「口語文法」(全2問/「意味・用法」判別)。5~6分で解きたい。
大問二は「論説文」、出典は佐伯真一「戦場の精神史 武士道という幻影」(文字数約5500字)。
小問は全13問(解答数15)。「内容説明」「理由説明」「文脈非合致」「空所補充」「段落分け」「本文内容合致」。問題文は7分強で読み切り、設問を20数分で解きたい。
大問三は「古文」、出典は大石千引「野乃舎随筆」(文字数約1560字)。小問は全8問(解答数11)。「内容説明」「理由説明」「主語特定」「本文内容合致」。15分ほどで解きたい。
【大問一】総合的知識問
- 時間配分:
「総合的知識問題」。「漢字問題」「慣用句」「口語文法」、多彩な「知識問題」が並ぶ。「漢字問題」と「慣用句」は例年以上に難易度が高い(来年度以降への布石か? 要注意)。以下、その2問を確認する。
[問1]「漢字の同音異字判別選択肢」(全5問/各4択)。
[A]~[E]の各文の傍線部の「カタカナ」と「同じ漢字」をそれぞれ答える。「文脈」から「同音異字」の熟語を特定し、各選択肢の「同じ漢字」を判別する。厄介だ。「5問」ではあるが、結局「25の熟語」が分からなくてはいけないということだ。
[A] 「情報をソウサする」=「操作」、各選択肢は、(1)「イラストをソウニュウする」=「挿入」/(2)「彼はセッソウがない」=「節操」/(3)「壁のトソウ」=「塗装」/(4)「ソウゴウ的に判断」=「総合」⇒「答え」は「(2)」。「挿入」は悩ましいが、「消去法」で判別可能。
[B] 「マグロのランカク」=「乱獲」、(1)「賞金のカクトク」=「獲得」/(2)「カクメイ的なアイデア」=「革命」/(3)「米のシュウカク」=「収穫」/(4)「あれこれとカクサクする」=「画策」⇒「答え」は「(1)」。「獲」と「穫」との判別、「画策」はハイレベルだ。
[C] 「カエルのセイタイ」=「生態」、(1)「マンションのタイシン性」=「耐震」/(2)「ジュウタイに巻きこまれる」=「渋滞」/(3)「タイボウの夏休み」=「待望」/(4)「アクタイをついてしまう」=「悪態」⇒「答え」は「(4)」。「同音異義語」に注意したい。
[D] 「作品のボウトウ」=「冒頭」、(1)「オウボウな振る舞い」=「横暴」/(2)「最上階からのチョウボウ」=「眺望」/(3)「部屋のボウオン」=「防音」/(4)「命がけのボウケン」=「冒険」⇒「答え」は「(4)」。ここは問題ないはず。
[E] 「力を充分にハッキ」=「発揮」、(1)「「キテンの利いた対応」」=「機転」/(2)「本来のキドウ」=「軌道」/(3)「合唱コンクールでシキを担当」=「指揮」/(4)「田舎にキセイ」=「帰省」⇒「答え」は「(3)」。「軌道」はやや悩むか?
平易から難解まで、本校ではあらゆる「漢字力」が問われると心せよ。
<時間配分目安:2分以内>
[問2]「慣用句の用法の選択肢」(全3問/各4択)。
示されている[A]~[C]の「慣用句の使い方」として「適切なもの」をそれぞれ答える。「慣用句」の「意味・用法」と「文脈」の判別能力が問われている。なかなか手強い。
[A] 「気の置けない」。「相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい」ということだが、逆の意味だと思っている人が多いので、要チェック! 「答え」は(2)の「周囲は気の置けない人たちばかりだから遠慮はいらない」となる。
[B] 「流れに掉さす」。「好都合なことが重なり、順調に事が運ぶ」こと。「水をさす」と混同し、「流れに逆らって勢いを失わせる」という意味で用いるのは誤り。「答え」は(2)の「戦略が流れに掉さす形となりその企業は順調に成長した」だ。
[C] 「高をくくる」。これは定番なので誰もが「大したことはないと見くびる」ことだと知っているはず。「答え」は(1)の「勝てると高をくくったことで手ひどい目に会った」になる。
本校では、「ことわざ」「故事成語」「四字熟語」なども含めて、「高度な語彙力」を培っておく必要がある。
<時間配分目安:1分半>
【大問二】論説文
- 時間配分:
「武士道」が唱えるのは武士の潔癖な倫理・道徳だが、武士は本当に正々堂々と戦い、卑怯な行いを嫌ったのだろうか?――。「平家物語」や「太平記」など、「軍記物語」の数多くの「だまし討ちシーン」を分析し、謀略と虚偽を肯定する戦場独特の倫理感覚を明らかにしている。
本文では、虚偽やだまし討ちを否定するいわゆる「武士道」が一般化したのは江戸時代以降だと明らかにし、当時の「武」のあり方について論じている。歴史上の「人物」や、「古典」「漢籍」が頻出しておりとても読みづらく、内容を理解するのは至難の業だ。「※注」も活用して何とか食らいついてほしい。
「設問趣旨」が把握しにくいものが多く、そもそも何を答えればいいのかさえ悩んでしまう問題もある。「選択肢消去」、「空所補充」や「段落分け」なども曲者だ。難問ぞろいの大問。以下、いくつかを検証する。
[問1] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「『天下の大道』と何とか折り合いをつけようとする」について、「どういうことか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)をしたい。
ここは「換言説明」なので、傍線部「文末」の「折り合いをつけようとする」の「原意」と結びつかない各選択肢の「文末」を「消去」する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。だが、全てが「何とか説明しようとする、ということ」となっているので不可能。
次に、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)に「消去」の「手がかり」を求める。直前に「『兵は詭道なり』が、非難の対象になりやすい言葉であることを意識しつつ」とある。
つまり、「兵は詭道なり」を「意識」することが前提だ。改めて、各選択肢を確認する。が、残念なことにここでも全ての選択肢が「兵は詭道なり」について言及している。ダメだ。ただ、確認の段階で何かに気づいたはずだ。そう、「兵は詭道なり」の出典を、選択肢(1)(4)は「孫子」としているが、(2)(3)は「士鑑用法」だ。
ここで2択になった。「同一意味段落」をチェックする(「論説文」では「同一意味段落に根拠・手がかりあり」が「最重要解法」)。①段落から「孫子」だと判明するので、(2)(3)は「消去」でいい。残りでは、傍線部が「『天下の大道』と何とか折り合いをつけようとする」とあるので、「『兵は詭道なり』と」なっている(1)は「消去」できるはず。よって、「答え」は(4)だ。
面倒かも知れないが、「解法」に則して「段階的消去」をしていくことが実はショートカットになることもあると心得よ
<時間配分目安:2分半>
[問3] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(2)「なお、さらに後代の室鳩巣『駿台雑話』は、『兵は詭るも道なり』と読む『ある兵家の説』を聞いて『一笑を発し』たと述べ、『詭』と『詐偽』の相違などを説いている」について、筆者はこのことに言及することで、「どういうことを表そうとしたのか」を答える。
先ずは「原意消去」。各選択肢の「文末」を確認したい。「兵は詭道なり」は時代が下ると、(1)「広く受け入れられるようになった」、(2)「一笑に付されるものになった」、(3)「『詭』と『詐偽』を混同したものと見なされるようになった」、(4)「さらに受け入れられなくなった」。筆者は、「後代の室鳩巣は、『兵は詭るも道なり』を聞いて『一笑を発し』た」と言及しているのだから当然、(2)以外は「消去」できるはずだ。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は(2)でいい。
結果、「一発消去」だ。「選択肢設問」では最初に「原意消去」を試みることが肝要。
<時間配分目安:1分半>
[問4] 「空所補充選択肢」(4択)。
本文中の空所 Y に「補うもの」を答える。本設問を「見た」瞬間に、実は「2択だ!」と気づきたい。各選択肢の冒頭が「戦場」か「平時」の2つに分かれているのだ。どちらなのか? ここで判別したい。空所直前には「闘戦詐術」とあり、直後には「戦に臨みて敵に応ずるときは……」とある。
なので「戦場」、よって、(3)(4)は「消去」。次に、改めて空所前後を確認する。「素行が否定したのは『もっぱら闘戦詐術を論ずる』ことであって、『闘戦詐術』そのものではない。 Y のである」となっている。つまり、「否定したのは闘戦詐術を論ずることで闘戦詐術そのものではない」ということが空所の内容になる。
したがって、(1)の「詭詐を用いること自体を肯定したわけではない」ではなく、「詭詐を用いること自体を否定したわけではない」となっている(2)が「答え」だ。「選択肢説明」を概観し、選択肢どうしで括(くく)れないかをチェックすることも必要な「戦術」だ。
<時間配分目安:2分>
[問9] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(6)「江戸時代にもそうした兵法家が絶えてしまったわけではなく、それなりに命脈を保っていた」について、このことに基づいて、筆者は「どういうことを主張しようとしているか」を答える。
「原意消去」から。「命脈を保っていた」の「原意」と、各選択肢の「文末」が結びつかないものを「消去」する。(1)「多かった」、(2)「間違いなく存在していた」、(3)「受け入れられなくなった」、(4)「主張するようになった」。「命脈」=「生命。生命のつながり」ということは知っているはず。それを「それなりに保っていた」のだから無論、(2)以外は「消去」可能。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は(2)となる。ここも「一発消去」! 畏るべし「選択肢設問」!
尚、本問では直接は関係なかったが、傍線部には「そうした」という「指示語」がある。基本的に「指示語が出てきたらすぐに開くこと」が原則だと意識しておきたい。
<時間配分目安:1分以内>
[問10] 「文脈についての不適切選択肢」(5択)。
⑧段落の(ⅰ)~(ⅴ)の中で、「文脈」に「合わないもの」を答える。「文脈」とは「文章の流れの中にある意味内容のつながり具合」なので、「文と文の論理的関係」を読み解いていくことになる。(ⅰ)~(ⅴ)は選択肢(1)~(5)に対応している。
各選択肢の要点で、「論理的関係」から「つながり」の整合性を確認していく。(1)「日本の武道はきれいごとをいってはいられない」⇒(2)「偽り、相手をだまさないと戦いには勝てない」⇒(3)「味方をだまし、敵国をひっくり返して奪い取るのもかまわない」⇒(4)「それは日本の武道ではない」⇒(5)「日本は武国だから、正直で手ぬるいことはやらない」。(4)以外は、「日本の武道はきれいごとではない」という「論理」で一貫していることが分かるはずだ。それに対して(4)は「それは」と(3)を指示しながら、「日本の武道ではない」と否定しているのだから、「つながり」の整合性がないことになる。
よって、「答え」は(4)。このように「文脈合致」を直接問う設問は珍しいが、あらゆる問題において「文脈」が鍵となることは言を俟たないと心得よ。
<時間配分目安:1分>
【大問三】古文
- 時間配分:
江戸時代後期の国学者で、「栄花物語」や「大鏡」の研究にすぐれた業績を挙げた筆者の随筆。本文では、妻を病気で亡くした板木彫りの職人が、死んだ人に会えるという山へ行き、そこで妻の幽霊となって現れたという女と出会い、やがて一緒に仲良く暮らすことになったということを語っている。
ほとんどの設問が「内容解釈」だった昨年度とは違い、本年度は、「現代語訳」「内容解釈」「主語特定」などといった「古文の王道」の問題が並んでいる。以下、いくつか検討してみよう。
[問1] 「現代語訳選択肢」(4択)。
傍線部①「いかにもして今一度、失せたる妻に逢ひみばや」について、「現代語訳」を答える。「現代文」同様に「原意消去」をしたい。ここでポイントとなるのは、「文末」の「逢ひみばや」だ。「逢ひ見る」(=「下一段活用」の「動詞」の「未然形」か「連用形」で、意味は「対面する」)+「ばや」(=「自己願望」を表す「未然形接続」の「終助詞」。「接続助詞」の「ば」と「係助詞」の「や」という可能性もあるが、ここは「文末」なので「終助詞」)。ということで、「逢ひみばや」=「対面したい」。
各選択肢の「文末」を確認する。(1)「会うことができるだろうか」、(2)「会ってみたい」、(3)「会おう」、(4)「会うことができようか」。よって、「答え」は(2)。「選択肢設問」での「原意消去」の重要性は「古文」も「現代文」と同じだ。尚、「重要古文単語」や基礎的な「文語文法」は必ず習得しておくこと。そうでないと、本校レベルには対応できない。
<時間配分目安:1分>
[問2] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部②「松五郎かたへなる、杉の木の陰に、やをら隠れて、うかがひけるを」について、「松五郎」がこのようにしたのは「なぜか」を答える。
「文脈」を確認する。2文前に「ただ妻の幽霊と思ふも、心あてなりけり」とある。「妻の幽霊だと思うが、当て推量だった」という内容。つまり、「当て推量」だったから、「妻の幽霊」かどうかを「隠れてうかがっていた」わけだ。各選択肢は、(1)「妻に再会できた喜びを伝えたい」、(2)「妻なのかどうかを間近で確かめたい」、(3)「江戸に連れ戻す機会をねらっていた」、(4)「何の目的で自分の前に現れたのかを明らかにしようとした」。
したがって、「答え」は(2)だ。「古文」でも無論、「文脈」をたどって「内容解釈」に結びつけていくこと。
<時間配分目安:1分半>
[問6] 「主語特定選択肢」(全4問/5択)。
波線部(A)「聞きつるに」・(B)「慕ひ給ひて」・(C)「喜び給ひぬらん」・(D)「いざなひてよ」について、れぞれの「主語」を答える。本校に限らず、「古文」では定番の「主語特定」の問題。
各選択肢は、(1)「松五郎」、(2)「松五郎の亡くなった妻」、(3)「あるじ」、(4)「あるじの妻」、(5)「女」。各波線部を確認していく。
(A)は直前に「女も心落ちゐて、(松五郎に対して)うちほほゑみていふやう(=女も心が落ち着いて、微笑んで言うには)」とある⇒「答え」は(5)。(B)は(A)の続きの「女の言葉」で、「(妻の)亡きあとまでも、かく『慕ひ給ひて』」となっている⇒「女」は、「妻を亡くした松五郎」に話しているので、「答え」は(1)。(C)も「女の言葉」の続きで、「喜び給ひぬらん(=喜びなさるでしょう)」の後は「かかる夫をもたれたる女こそ」とある⇒「かかる夫」は「松五郎」なので、「もたれたる(持ちなさった)女」は「亡くなった妻」、よって、「答え」は(2)。(D)も「松五郎」に対する「女の言葉」で、「今は御江戸に、もろともに『いざなひてよ(=誘ってよ。連れて行ってよ)』」⇒「連れて行く」のは「松五郎」、したがって、「答え」は(1)となる。「主語特定」の問題では「文脈」はもちろんだが、「敬語」や「助詞」の「と」などにも着目すること。
<時間配分目安:2分半>
[問7] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部⑥の「あまえいたく」は「ひどく恥ずかしく思う」という意味だが、「松五郎」は「何についてこのように思ったのか」を答える。ちなみに、「あまえいたく」は「ク活用」の「形容詞」の「あまえいたし」の「連用形」。
さて、「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「手がかり」を確認すると、直前は「かかる夫をもたれたる女こそ、うらやましけれなどいひければ、男も」となっている。[問6]で分かったように、「かかる夫」=「松五郎」で、「もたれたる女」=「亡くなった妻」に対して「女」が「うらやましけれなどいひければ」ということだ。
ここでは「接続助詞」の「ば」に着目する。直前が「伝聞過去・詠嘆」の助動詞「けり」の「已然形」である「けれ」になっている(「已然形」の「語尾」は「エ段」が多い。ただし、「下二段活用」では「未然形」も「エ段」なので要注意)。「ば」が「已然形接続」の場合は「順接確定条件」(「~ので」「~と」などと訳す)だ。なので、現代語訳すると「うらやましいなどと言ったので」となる。
つまり、「亡くなった妻」に「松五郎」のような「夫」がいたことを、「女」が「うらやましい」と言ったことに対して「ひどく恥ずかしく思った」ということだ。よって、「亡き妻への誠実さを女が高く評価したこと」となっている(4)が「答え」。「接続助詞」の「ば」は頻出で、「現代語訳」の際にとても重要だ。「未然形接続」の場合の「順接仮定条件」(「~ならば」などと訳す)も含めて確実に覚えておくこと。
<時間配分目安:2分半>
攻略ポイント
●判別が紛らわしい「選択肢設問」。どのように「攻略」するか? 各選択肢全体を対象として検討していたのでは混乱するばかりだ。そこで威力を発揮するのが「ブロック消去」。「最後のブロック」から「消去」していくわけだが、具体的な「消去」の「根拠」は、「設問内容」に応じた「解法」の適用がポイント。従って、基本的「解法」を完全に習得し、的確に応用できるようにしておくことが重要だ。限られた「時間」でいかに「解法」を用いて解いていくかが、合否を分ける。
●「古文」の「攻略法」も重要だ。もちろん、「中学レベル」の学習ではとても追いつかない。中堅クラスの「大学入試」に対応できなくてはならない。「古文重要単語」や「文法」、「古典常識」まで幅広い「知識」が求められる。
●あらゆることが問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。 直接的な出題は無論、問題文の内容理解でも「高度な語彙力」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要。学校や塾での学習だけでは全く不十分。「独習」は欠かせない。
●「解答形式」にも注意が必要だ。全て「マークシート」なので、「解答」を記入する際には十分に確認すること。「マークシート」に慣れておくことが肝要。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意を要する。問題文は全体で5000~6000字ほど(本年度は増えて約7100字)。当然、速く正確に読み取ることが必須条件となる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。