桐蔭学園高等学校 入試対策
2018年度「桐蔭学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「桐蔭の選択肢」で勝利するための鍵は、「問題解説」でも触れたように「消去」の際に「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、桐蔭などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。前述のとおり塾での学習でも不十分なので、「独習」をする他ない。
「古文単語」では「大学入試基礎レベル」(300語程度)を定着させ、「文語文法」は「動詞」「形容詞・形容動詞」は当然として、「助動詞」「助詞」の「意味・用法・接続」、さらに「敬語」までも理解しておく必要がある。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「高校用」の「ステップアップノート30——古典文法基礎ドリル」(河合出版)や、「古文単語」定着用として「重要古文単語315」(桐原書店)などが推薦できる。
速読
全てで6000字程度(「選択肢説明」ではそれ以上)を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。桐蔭に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐蔭の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題があり、難易度も高い。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2018年度「桐蔭学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「総合的知識問題」。小問は全4問(解答数10)。
「漢字問題」(全5問/「同音異字」判別)、「慣用句」(全1問・複数完全解答/「用法」判別)、「四字熟語」(全3問/「漢字の空所補充」判別)、「敬語」(全1問・複数完全解答/「用法」判別)。7~8分で解きたい。
大問二は(「論説文」、出典は「『環境を守る』とはどういうことか」(尾関周二/環境思想・教育研究会編)所収の大倉茂「カブトムシから考える里山と物質循環――『自然の社会化』と『コモンズ』」文字数約4900字)。小問は全8問(解答数12)。
「内容説明」「換言説明」「空所補充」「本文内容合致」「総合的知識問題(語句の意味)」。問題文は6分半ほどで読み切り、設問を20数分で解きたい。
大問三は「古文」、出典は編者未詳「宇治拾遺物語」(文字数約700字)。小問は全9問(解答数10)。
「語句の意味」「現代語訳」「内容説明」「理由説明」「本文解釈」など。15分弱で解きたい。
【大問一】「総合的知識問題」
- 時間配分:
「漢字問題」は例年と比較して平易で、「四字熟語」もさほど問題はないはずだ(本校志望者であれば、両問ともに全問正解したい)。だが、「慣用句」と「敬語」の「用法」判別は「複数完全解答」であり、なかなかの曲者だ。以下、その2問を確認したい。
[問2]「慣用句の用法の選択肢」(全1問/6択/複数完全解答)。
示されている(1)~(6)の「慣用句の使い方」として「適切なもの」を「全て」答える。「慣用句」の「意味・用法」と「文脈」の判別能力が問われている。「複数完全解答」だけに相当手強い。
(1)「ほしい服があったが、値段を見て二の足を踏んでしまった」⇒「二の足を踏む」とは「思い切れずに迷う。ためらう。しりごみする」こと → 適切。
(2)「ぼくはあの店に顔が立つから、みんなで行こうよ」⇒「顔が立つ」とは「世間体を保つ。よい評判を受け続ける」こと → 不適切。
この例文では「顔が利く」(=「信用や力があるために相手に対して無理が言える」)がふさわしい。
(3)「重苦しい雰囲気の中、彼女が話の口を切った」⇒「口を切る」とは「話を始める。最初に発言する」こと → 適切。
(4)「今回、彼は木で鼻をくくるようなぬかりのない行動に終始した」⇒「木で鼻をくくる」とは「きわめてそっけない態度、冷淡な態度をとる」こと → 不適切。
この例文では「目から鼻に抜ける」(=「非常に利口で賢い。物事の判断がすばやく抜け目のない」)がふさわしい。
(5)「彼の横柄な態度に、周囲の人はみな目を細めた」⇒「目を細める」とは「顔中にほほえみを浮かべる」こと → 不適切。
この例文では「眉をひそめる」(=「心配事や、他人の嫌な行為に不快を感じて顔をしかめる」)がふさわしい。
(6)「そんなにはっきりと批判したら、角が立つ」⇒「角が立つ」とは「他人との間が穏やかでなくなる」こと → 適切。
したがって、「答え」は(1)(3)(6)になる。
「慣用句」「ことわざ」「故事成語」などは本校の定番、確実に定着させておくこと。
<時間配分目安:1分半>
[問4]「敬語の用法の選択肢」(全1問/5択/複数完全解答)。
示されている(1)~(5)の「敬語の使い方」として「適切なもの」を「全て」答える。「文脈」から、的確に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」を判別していかなくてはいけない。厄介な問題だ。
(1)「どうぞケーキをいただいてください」⇒「いただく」は「謙譲語」、ここは相手の動作→ 不適切。
この例文では「尊敬語」の「めしあがる」が適切。
(2)「明日こちらからうかがいます」⇒「うかがう」は「謙譲語」、ここは自分の動作 → 適切。
(3)「傘はわたしの方でお返しになっておきますので、ご心配なく」⇒「お~になる」は「尊敬語」、ここは自分の動作 → 不適切。
この例文では「謙譲語」の「いたします」が適切。
(4)「さきほどそちら様からご質問申し上げた件について、お答えいたします」⇒「申し上げる」は「謙譲語」、ここは「質問した」のは相手の動作 → 不適切。
この例文では自分の動作として「いただく」が適切。
(5)「あなたが心配されるのももっともです」⇒「~される」は「尊敬語」、ここは相手の動作→ 適切。
「敬語」については苦手な諸君が多いので、しっかりと復習し理解しておくことが肝要。
<時間配分目安:1分>
【大問二】「論説文」
- 時間配分:
1980年代以降、環境問題に取り組むための学問として発展し次々と細分化していった「環境学」、今こそ、そもそも「環境を守るとは?」といった根本を考えることが必要なのではないだろうか――若手研究者が、「カブトムシ」「クジラ」「原発」といった具体的なものから環境思想を論じている。
本文では、「カブトムシ」を「商品」としている社会は、持続可能な物質循環を断ち切っていると問題提起し、人間と自然を「商品」として扱わない生活や文化の実践を積み上げ、新しい物質循環の単位を構想すべきだと指摘している。「入門書」という位置づけなので内容は分かりやすいはずだ。
本年度は例年になく平易な問題が多い。それだけに失点は許されない。決して油断はせぬように。以下、いくつかを検証する。
[問1] 「語句の空所補充選択肢」(全4問/6択)。
本文中の空所《ア》~《エ》にあてはまる「語」を答える。各選択肢の「語」は「接続詞」と「副詞」。「接続詞」では、「逆接」はともかく、それ以外には十分に注意する必要がある。
「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。
単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、「段落冒頭」の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので留意すること。
各空所に入る「語」を確認していく。
《ア》には「説明・補足」(換言)の「接続詞」である(4)の「つまり」、
《イ》には「転換」の「接続詞」である(1)の「では」、
《ウ》には「添加」の「接続詞」である(6)の「そして」、
《エ》には「逆接」の「接続詞」である(2)の「しかし」がそれぞれあてはまる。
「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は本校に限らず定番中の定番、絶対に失点しないこと。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問3] 「具体例の内容説明選択肢」(4択)。
傍線部①「フィルターを通して、自然を眺めている」について、「星空を眺めるという具体例」においては、「どのようなフィルターを通して、何を眺めているのか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則で、先ずは「原意消去」(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)からなのだが、ここは「具体例」についての問題なので適用できない。
そこで、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)に「手がかり」を求める。
直前に「このようにわれわれは」とある。「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。「このように」=「冬空に三つの一直線に並んだ星を見るとオリオン座だと即座に反応するように」だと分かるはずだ。
各選択肢を確認する。
(1)「星のまとまりという自然のフィルターを通して、神話の世界を眺めている」、
(2)「星座という自然のフィルターを通して、星のまとまりを眺めている」、
(3)「神話の世界という文化のフィルターを通して、星座を眺めている」、
(4)「星座という文化のフィルターを通して、星を眺めている」。「星を見る」と「オリオン座だと即座に反応する」ということは、「オリオン座」=「星座」を「通して」、「星」を「眺める」わけだ。
よって、「答え」は(4)だ。「具体例」についての問題だが、本問では「文脈」から読み解くことができたということだ。
<時間配分目安:1分半>
[問4] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部②「文化による自然の社会化」について、「どのようなことを意味しているか」を答える。ここは「換言説明」なので、先ずは「原意消去」から。
傍線部「文末」の「自然の社会化」の「原意」と結びつかない各選択肢の「文末」を「消去」する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
各選択肢は、
(1)「自然と人間社会とを密接に結びつけること」、
(2)「四季折々の文化を形成すること」、
(3)「自然を社会の中に位置づけること」、
(4)「異文化を認め合うこと」。
「自然の社会化」なのだから、(2)(4)はすぐに「消去」できるはず。次に、「傍線部(空所部)一文一部の法則」を確認すると、一文の冒頭に「ここまで論じてきたように」とある。「ここまで」とあるので、「同一意味段落」を読み解いていく(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。前段落から、「文化を通して自然を見る」⇒「自然の社会化」だと判断できる。
したがって、「文化を通して自然を敬う」となっている(1)ではなく、「文化を通して自然を見る」となっている(3)が「答え」となる。
「解法」に則して「段階的消去」がショートカットになると心得よ。
<時間配分目安:2分>
[問5] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部③「人間と自然の関係は一変する」について、「どのように変わったというのか」を答える。ここは傍線部そのものについて問われているのではないので、設問段階での「原意消去」は不可能。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」から、「人間と自然の関係」は「産業革命後の化石燃料に依存した都市の生活」において「一変する」ことが判明する。
では、どのように変わったのか? 「同一意味段落」を確認すると、「われわれが自然を支配する」⇒「人間にとっての環境としての自然が大きく拡大」⇒「われわれは普通の生活をしながら、地球の反対側の自然を破壊する」……、こういった構図が浮かび上がってくる。
各選択肢の「文末」を確認したい。
(1)「地球規模で自然を破壊するようになった」、
(2)「自然から独立するようになった」、
(3)「理不尽に自然を破壊するようになった」、
(4)「(自然を)自分たちの社会に取りこむようになった」。
「地球の反対側の自然を破壊する」ように変わったのだから当然、(1)以外は「消去」できなくてはいけない。(1)の前半は「人間が自然を一方的に利用し」⇒「われわれが自然を支配」ということにつながるので、「答え」は(1)でいい。
結果的に「一発消去」だ。「選択肢設問」では最初に「原意消去」を試みることが肝要。
<時間配分目安:1分半>
[問8] 「論旨説明選択肢」(4択)。
「筆者は、『なぜカブトムシがスーパーや百貨店で売られているのか』という考察を通して、どのような問題点を指摘しているか」を答える。
本校志望者であれば、本問が他の設問とは異なっていることにすぐに気づくはずだ。
そう、傍線部について問われているのではなく、本文の「論旨」そのものが問われているのだ。
「論旨」となれば、考察対象は「序論部分」と「結論部分」となる(本文は「尾括型」なので主として「結論部分」)。「結論部分」である「最終段落」を確認すると、「論旨」の眼目(キーワード)が「物質循環」だとすぐに分かる。
よって、選択肢説明の中で「物質循環」に触れていない(1)(2)は論外だ。そして、筆者は「強調しておきたい」こととして「人間と自然の物質循環に入った亀裂を修復する」と提起している。「物質循環に入った亀裂」=「問題点」に他ならない。
そうなると、「新たな物質循環の単位を構築することを阻害している」とある(4)ではなく、「人間と自然とのあいだの物質循環を不可能にしている」という(3)が「答え」だと判別できる。
本問のように「傍線部」を問われていない場合や、「序論部」「結論部」について問われている場合は、「論旨直結」と捉えることが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
【大問三】「古文」
- 時間配分:
鎌倉初期の説話集。全15巻で197話を収録。「貴族説話」「仏教説話」「民間説話」などが収められている。軽妙な和文脈で民衆の生活感情や人間性を語り、仏教的色彩が濃い。
本文は巻第一ノ十六の「尼、地蔵を見奉ること」。例年は「内容解釈」と「仮名遣い」という設問構成だが、本年度は「仮名遣い」はなく、「語句の意味」「人物判別」「現代語訳」「内容解釈」等と多彩な設問が並んでいる。以下、3問を検討してみよう。
[問3] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部③「あはれ、嬉しきことかな」について、「尼」がこのように感じた「理由」を答える。
「文脈」を確認する。傍線部は「尼」の言葉だが、直前に「といへば」とある。
注目すべきは「ば」だ。誰もが知っていなくてはいけないほど重要な「接続助詞」。「已然形接続」か「未然形接続」かによって意味が異なる。
ここでは、直前が四段動詞「いふ(=言う)」の「已然形」である「いへ」になっている(「已然形」の「語尾」は「エ段」が多い。
ただし、「下二段活用」では「未然形」「連用形」も「エ段」なので要注意)。「ば」が「已然形接続」の場合は「順接確定条件」(「理由」や「単純接続」の意味で、「~ので」「~と」などと訳す)だ。
したがって、「~と言うので」となる。つまりはこれが「理由」ということになる。
各選択肢の「文末」は、
(1)「分かったから」、
(2)「教えてくれたから」、
(3)「言ったから」、
(4)「知ったから」。
無論、「答え」は(3)となるはずだ。
念のために確認する。傍線部の直前は、「尼」に出会った「博打」(=「ばくち打ち」)の言葉で、「地蔵の歩かせ給ふ道は、我こそ知りたれば、いざ給へ、あはせ参らせむ」(=「地蔵が歩きなさる道は私が知っているので、さあいらっしゃい、会わせ申し上げよう」)となっている。
選択肢(3)は「地蔵菩薩に会わせてくれると博打が言ったから」なので、やはり「答え」で間違いない。
重要な「文語文法」が定着しているかどうかが最大のポイントだ。
<時間配分目安:1分半>
[問4] 「現代語訳選択肢」(全2問/各4択)。
傍線部④「やがて率(ゐ)て奉(たてまつ)らむ」 ・ ⑦「えもいはず」について、それぞれの「意味」を答える。
④の「やがて」は副詞で「すぐに。そのまま」という意味(口語の「そのうち。いずれ」という意味とは全く違うので要注意。文語でそうした意味で用いられるのは近世以降)。
また、「率」は上一段動詞「率る」の連用形で、意味は「連れる。引き連れる」。
よって、「答え」は「すぐに地蔵菩薩のところへお連れいたしましょう」とある選択肢(3)だ。
⑦のポイントは「え~打消し表現」になる。この場合の「え」は副詞で、「とても~できない」という意味。なので傍線部は「とても言えない」となり、「答え」は「言葉では言い表せないほど」とある選択肢(1)。
「重要古文単語」や基礎的な「文語構文」は必ず習得しておくこと。特に、同じ言葉でも口語とは意味が異なるものは必須だ。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問6] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部⑤「親どもは心得ず」について、「どのようなことに対して『心得ず』だったのか」を答える。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「手がかり」を確認すると、直後に「などこの童を見むと思ふらむと思ふほど」とある。現代語訳をしたい。文頭の「など」は副詞で「なぜ。どうして」という疑問、「見む」の「む」はここでは「意志」の助動詞(「む」には他に「推量」「適当・勧誘」「婉曲」「仮定」の意味がある)、「思ふらむ」の「らむ」は「現在推量」の助動詞だ。
よって、「どうしてこの子どもを見ようと思うのだろうと思うとき」という訳になる。
また、直前は「尼は地蔵見参らせむとて居たれば」(=「尼は地蔵菩薩を見申し上げようと思って、座っているので」)となっている。であれば、「尼がなぜ自分たちの子どもに会いたいと思っているのかということ」と説明されている選択肢(3)が「答え」だと判別できる。
尚、「居たれば」の「居」は上一段動詞「居(ゐ)る」の連用形で、「座っている。じっとしている。留まっている」という意味。口語の単に「存在する」ということとは大きく意味が異なっているので確実に覚えておくこと。
<時間配分目安:2分>
攻略のポイント
●判別が紛らわしい「選択肢設問」。どのように「攻略」するか? 各選択肢全体を対象として検討していたのでは混乱するばかりだ。
そこで威力を発揮するのが「ブロック消去」。「最後のブロック」から「消去」していくわけだが、具体的な「消去」の「根拠」は、「設問内容」に応じた「解法」の適用がポイント。
従って、基本的「解法」を完全に習得し、的確に応用できるようにしておくことが重要だ。限られた「時間」でいかに「解法」を用いて解いていくかが、合否を分ける。
●「古文」の「攻略法」も重要だ。もちろん、「中学レベル」の学習ではとても追いつかない。中堅クラスの「大学入試」に対応できなくてはならない。「古文重要単語」や「文法」「構文」、「古典常識」まで幅広い「知識」が求められる。
●あらゆることが問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。 直接的な出題は無論、問題文の内容理解でも「高度な語彙力」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要。学校や塾での学習だけでは全く不十分。「独習」は欠かせない。
●「解答形式」にも注意が必要だ。全て「マークシート」なので、「解答」を記入する際には十分に確認すること。「マークシート」に慣れておくことが肝要。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意を要する。問題文は全体で5000~6000字ほど(本年度は約5600字)。当然、速く正確に読み取ることが必須条件となる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。