桐蔭学園高等学校 入試対策
2022年度「桐蔭学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「桐蔭の選択肢」で勝利するための鍵は、「問題解説」でも触れたように「消去」の際に「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、桐蔭などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。前述のとおり塾での学習でも不十分なので、「独習」をする他ない。
「古文単語」では「大学入試基礎レベル」(300語程度)を定着させ、「文語文法」は「動詞」「形容詞・形容動詞」は当然として、「助動詞」「助詞」の「意味・用法・接続」、さらに「敬語」までも理解しておく必要がある。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「高校用」の「ステップアップノート30——古典文法基礎ドリル」(河合出版)や、「古文単語」定着用として「重要古文単語315」(桐原書店)などが推薦できる。
速読
全てで6000字程度(「選択肢説明」ではそれ以上)を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。桐蔭に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐蔭の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題があり、難易度も高い。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2022年度「桐蔭学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問は「漢字問題」。小問なし(解答数6)。「同音漢字」の判別。3分ほどで解きたい。大問は「論説文」、出典は中村桃子「『自分らしさ』と日本語」所収の「アイデンティティ表現の材料としての『ことば』」(文字数約4200字)。小問は全9問(解答数9)。「内容説明」「換言説明」「理由説明」「空所補充」「具体例判別」「本文内容合致」「論述方法判別」など(「不適切」「組み合わせ」あり)。問題文は5分程度で読み切り、設問を20分ほどで解きたい。大問は「古文」、出典は作者未詳「今昔物語集」(文字数約1600字)。小問は全10問(解答数13)。「内容解釈」「内容説明」「理由説明」「主語特定」「本文内容合致」など(「組み合わせ」あり)。22分程度で解きたい。以上は、全て「マークシート方式」の「選択肢設問」。
【大問一】
- 時間配分:3分
「同音漢字の判別選択肢」(全6問/各4択)。示されている[A]~[F]の各文の傍線部の「カタカナ」と「同じ漢字」をそれぞれ答える。各文の「文脈」から傍線部の熟語を特定し、各選択肢で「同じ漢字」を判別する。なかなか厄介だ。「6問」ではあるが、結局「30の熟語」が分からなくてはいけないということだ。本年度は例年より平易だ。よって、「全問正解」が必須。
[A] 「発言のイト」=「意図」、各選択肢は、(1)「寄付を求めるシュイ書」=「趣意」/(2)「突然ヘンイ」=「変異」/(3)「野犬の群れにホウイされた」=「包囲」/(4)「新しい病原体がモウイをふるっている」=「猛威」⇒「答え」は(1)。全ての熟語、意味も含めて何の問題もないはずだ。
[B] 「受賞を記念してコウエンをおこなう」=「講演」、(1)「イベントはエンキ」=「延期」/(2)「ネットでの不用意な発言がエンジョウを呼んだ」=「炎上」/(3)「エンガン漁業」=「沿岸」/(4)「注目を集めるためのエンシュツ」=「演出」⇒「答え」は(4)。悩みそうな熟語はない。尚、「講演」「公演」「好演」「後援」……、「同音異義語」は頻出だ。
[C] 「取引をチュウカイする」=「仲介」、(1)「カイシンの当たりのホームラン」=「会心」/(2)「カイブツといわれた選手」=「怪物」/(3)「高齢者のカイジョ」=「介助」/(4)「努力すればよかったとカイコンにくれる」=「悔恨」⇒「答え」は(3)。「悔恨」がやや厄介か? 「過ちを後悔して残念に思うこと」だ。未定着の諸君は復習が必須。
[D] 「犯人をケンキョした」=「検挙」、(1)「キョシュをお願いします」=「挙手」/(2)「城をキョテンにする」=「拠点」/(3)「キョダイな古墳」=「巨大」/(4)「申し出をキョゼツ」=「拒絶」⇒「答え」は(1)。「拠点」と「拒絶」、確実に押さえておくこと。
[E] 「ジュンジ帰宅してよい」=「順次」、(1)「役員に選出されたが、ジタイした」=「辞退」/(2)「選挙でジテンになる」=「次点」/(3)「ジヒ出版」=「自費」/(4)「珍しいことだとジモクを集めた」=「耳目」⇒「答え」は(2)。「耳目を集める」(=人々の注目を集める)は頻出なので、要注意。
[F] 「メイシンにとらわれない理性的な思考」=「迷信」、(1)「ヒメイが聞こえた」=「悲鳴」/(2)「確信がもてずにコンメイしている」=「混迷」/(3)「ドウメイを組む」=「同盟」/(4)「天からのシメイだと自覚」=「使命」⇒「答え」は(2)。no problem。
平易から難解まで、本校ではあらゆる「漢字力」が問われると心せよ。
【大問二】
- 時間配分:
「ことば」には内容を表現するだけではなく、「その人らしさ」を表現し、話している人同士の関係を作り上げる働きがある――「ことば」の背後にある社会の規範や価値観を解き明かす「社会言語学」の知見から、「名前」「呼称」「敬語」「方言」「女ことば」といった観点を通して、「ことば」で「自分」を表現するとはどういうことかを考察している。本文では、私たちは意味と結びついたさまざまな「記号」を通して「アイデンティティ」を表現するが、その中で最も体系化され、誰もが利用できる材料が「言葉」であると論じている。「社会言語学」の論考だが、分かりやすく論じられており、内容は理解できるはずだ。多種多様な「設問内容」の小問が並んでいる。ひねりのきいた問題が多いので、覚悟を決めて解いていきたい。以下、いくつかを検証する。
[問1] 「空所補充の語句組み合わせ選択肢」(4択)
本文中の空所に「当てはまる語」の「組み合わせ」を答える。候補の語句は「接続詞」と「副詞」だ。こうした「空所補充」は本校に限らず、定番の問題だ。「接続詞」では、「逆接」はともかくそれ以外には十分に注意すること。同じ「逆接以外」だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所に「当てはまる語」を確認する。は「選択」の接続詞「あるいは」だとすぐに特定できるはず。には「逆接」の接続詞「しかし」、は「例示」の副詞「たとえば」、そして、には「換言」の接続詞「つまり」が入ると分かるに違いない。よって、「答え」はその「組み合わせ」である(2)になる。本問は平易だったが、判別が紛らわしい場合もあるので、必ず全ての候補を「代入確認」してみること。 尚、「組み合わせ選択肢」では、自分が分かりやすいもので一気に「消去」してしまうことが肝要だ。
<時間配分目安:全問で1分>
[問2] 「内容説明選択肢」(4択)
傍線部①「私たちは、人と関わり合うことで、その時々にさまざまなアイデンティティを表現している」について、「アイデンティティについて説明したもの」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則なので、先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「内容説明」なので、「その時々にさまざまなアイデンティティを表現している」の「原意」と結びつかない「内容説明」を「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合していく(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。(1)「(場面によって)アイデンティティは異なっていることに注意が必要なものである」、(2)「(アイデンティティが同時に表現されるため)十分気を付けて区別する必要があるものである」、(3)「三種類以上のアイデンティティの区別が存在するものである」、(4)「場面ごとに異なるアイデンティティが強調されるものである」。さあ、どうだろうか? 「さまざまなアイデンティティ」を「表現している」とあるのだから、「注意が必要」・「区別する必要」・「区別が存在する」は即「消去」で、「強調される」が残ると判別できなくてはいけない。念のために、他の部分の説明を「同一意味段落」で確認する(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。特に誤ってはいないので、「答え」は(4)になる。本問は各選択肢の説明が「150字ほど」もある。全てを丁寧に照合していたら、いくら時間があっても足りはしない。「原意消去」を活用すれば驚異の「一発消去」だ。この解法に習熟することが合格へのショートカットだと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問3] 「理由説明選択肢」(4択)
傍線部②「アイデンティティ表現に利用することができる材料は、無限にある」について、「なぜか」を答える。無論、「原意消去」から。ここは「理由説明」なので、「材料は、無限にある」の「直接的理由」として、各選択肢の「文末」が結びつくかどうかで「消去」する。照合してみる。(1)「さまざまなものを媒介として伝えることができるから」→「材料は、無限にある」、(2)「(視覚記号の)種類がたくさんあるから」→「材料は、無限にある」、(3)「多様な可能性をもっているから」→「材料は、無限にある」、(4)「複合的な意味をもっているものを使う必要があるから」→「材料は、無限にある」。 判別できるか? 「材料」が「無限にある」ということは、「さまざまなものを媒介として伝えることができるから」と説明されている(1)以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。「同一意味段落」で他の部分の説明を確認しても特に誤ってはいない。したがって、「答え」は(1)でOKだ。本問も「一発消去」で即答だ。「理由説明」でもやはり、「原意消去」は即効性があるということだ。
<時間配分目安:1分強>
[問5] 「具体例不適切判別選択肢」(4択)
傍線部④「会話に関わるさまざまな人物を『ことば』を使い分けることによって造形している」について、ここでの「その具体例」として「あてはまらないもの」を答える。「具体例」なので、「原意消去」は無理? 否、可能だ。チャレンジしてみよう。「会話」「『ことば』を使い分ける」という「原意」に結びつかない「具体例」を「消去」することになる。「不適切」だということを意識して、各選択肢の正誤判別をしていきたい。(1)「外国の街角で日本語を話すことで、日本人というアイデンティティを表現すること」⇒「会話」でもなければ、「ことば」の「使い分け」もしていない=不適切。(2)「『だ』『です』のような文末詞をつかって、自分の話し相手との関係を表現すること」⇒「だ」・「です」の「使い分け」、「話し相手」なので「会話」も成立している=適切。(3)「会話に登場する人を『あの人』と呼ぶか、『あいつ』と呼ぶかでその人の人物像を表現すること」⇒一目瞭然、「会話」も「ことば」の「使い分け」も成立=適切。(4)「京都出身でない人が京都弁を使うことで、女性らしさのアイデンティティを表現すること」⇒「京都弁を使う」のは「使い分け」、「使う」以上「相手」がいるはずで「会話」にもなっている=適切。したがって、「答え」は(1)となる。「具体例判別」も「比喩換言判別」も、先ずは「原意消去」を徹底させよ。尚、本文内容を的確に捉え、「具体例」にあてはめるという設問は本校に限らずひとつのトレンドなので、「一般論」⇔「具体論」を常に意識して、しっかりと練習しておくことが肝要だ。
<時間配分目安:1分強>
[問9] 「論述方法判別選択肢」(4択)
「この文章における論の進め方」を答える。「論の進め方」? こうした設問内容は初見の可能性がある。だが、本文は「論説文」なので要は「論述方法」が問われていると判断できるはずだ。当然、「消去法」で解き進めていくので、先ずは110字前後ある各選択肢の説明内容を概観する。すると、それぞれが本文の「序論部」→「本論部」→「結論部」と順を追って「要点」を説明していることが分かる。無論、もっとも重要な「文末」部分からチェックしていく。「結論部分」についての説明だ。(1)「『言語資源』という概念で一括りにしようとしている」。(2)「『言語資源』」という観点からことばを分析している」。(3)「『言語資源』という概念を導き出している」。(4)「『言語資源』という視点からとらえようとしている」。本文の「結論部分」(本文最後から4つの形式段落)での「言語資源」に関する内容を読み取る。「ことばを『言語資源』とみなす視点が重要」と指摘していると分かる。であれば、(2)と(4)以外は即「消去」できなくてはいけない。次に「序論部分」の説明で「消去」したい。選択肢の最初の部分の説明を確認する。(2)「筆者はまず、アイデンティティのいくつかの側面について述べ、そのうちの一つの側面について考察を深めることで……」。(4)「筆者はまず、アイデンティティの多様な側面について述べた後……」。本文の「序論部分」(本文冒頭からの4つの形式段落)で、筆者は「アイデンティティの3つの側面」を指摘しているが、「そのうちの一つの側面について考察を深めること」はしていないと読み取れる。よって、(2)は「消去」となる。念のために、「本論部分」の説明を確認しても特に誤ってはいないと判断できる。「答え」は(4)でOKだ。本問のように、受験生にとって新たな趣向の設問内容であっても、これまでに習得してきた「解法」を適宜応用することで解き進めればいいわけだ。
<時間配分目安:2分半>
【大問三】
- 時間配分:
「古今著聞集」「宇治拾遺物語」とともに「日本三大説話集」のひとつで、平安時代末期に成立した「今昔物語集」(ちなみに、昨年度は「古今著聞集」だった)。「今ハ昔」という書き出しで、「天竺」(インド)・「震旦」(中国)・「本朝」(日本)の仏教説話が紹介され、そのあとに諸々の物話が続いている(全31巻。1059話)。本文は巻第二十八ノ第四十四「近江国の篠原の墓穴に入りし男の語」。昨年度の「古文」は「理由説明」と「内容説明」に特化した設問内容だったが、本年度は例年同様の「主語特定」「内容解釈」「理由説明」「本文内容合致」等、多種多様な小問が並んでいる。難易度は本校の標準レベル。以下、いくつか検討してみよう。
[問1] 「主語特定判別選択肢」(全4問/4択)
二重傍線部(a)~(d)の「動作の主語」をそれぞれ答える。本校に限らず定番の「主語特定」だ。各選択肢は、(1)「もとの男」・(2)「今の者」・(3)「鬼」・(4)「神」だ。(a)と(c)は直前の「文脈」から比較的容易く「主語」を特定できる。それぞれ確認したい。(a)の「召せ」(=召し上がれ)は、直前から「神」の対しての言葉だと分かる。無論、「召しあがる」のは「神」だ⇒「答え」は(4)⇒尚、「召す」が「尊敬」の敬語動詞だと知っていれば、その対象は「神」しかいないと即断できる。(c)の「餅を食ひたるに」(=餅を食べたので)は、「もとの男」が「思っている内容」だ⇒「答え」は(1)。(b)の「入りて候(さふら)ふなり」(=入っているのです)は、直後に「と言ひて」とあり、カギカッコで括られているので、冒頭を確認すると「今来たる者、……人の声にて言ふよう」となっている⇒「答え」は(2)。(d)の「このことを語りて」(=墓穴での出来事を話して)は、「もとの男」が「思っていること」だとすぐに読み取れ、直後には「(人里に行きて)人などを具して来たらむ」(=人里に行って、村人などを引き連れてやって来るだろう)とある。「む」という「推量」の助動詞が用いられているということは、「話す」のは「もとの男」ではないと判別可能⇒「答え」は(2)。「古文」では「主語」が省略されることがとても多い。「わざわざ記さなくても分かる」ので「省略」しているのだ。したがって、前後の「文脈」や「敬語」などから特定していけばいいと心得よ。
<時間配分目安:全問で3分半>
[問3] 「内容解釈選択肢」(4択)
傍線部②「音もせでかがまり居たれば」について、「男はどうしたのか」を答える。無論、傍線部の「主語」は「男」だ。「品詞分解」をして「現代語訳」していく。「音/も/せ/で/かがまり/居/たれ/ば」⇒名詞「音」+係助詞「も」+サ行変格活用の動詞「す」(=する)の未然形+「打消し接続」の接続助詞「で」+ラ行四段活用の動詞「かがまる」(=屈む)の連用形+ワ行上一段活用の動詞「居る(ゐる)」(=座る。じっとしている)の連用形+「完了・存続」の助動詞「たり」の已然形+「順接確定条件」(~から・ので/~すると。ここでは「単純接続」)の接続助詞「ば」⇒「音も立てずに身を屈めてじっとしていると」と訳せるはずだ。各選択肢の「文末」と照合する。(1)「相手をおどかして身を守ろうとした」、(2)「気づかれないように身をひそめようとした」、(3)「生きた心地がせず気を失ってしまった」、(4)「気づかれた時のために場所を譲ろうとした」。当然ながら、「答え」は(2)になる。「現代語訳」の前提となる「品詞分解」はしっかりと練習しておくこと。
<時間配分目安:2分>
[問8] 「理由説明選択肢」(4択)
傍線部⑥「墓穴を出でて行きける」について、「男が夜明け前に墓穴を出ていったのはなぜか」を答える。先ずは、「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求める(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法。「内容読解」の解法は基本的に「現代文」と同じだ)。2行前に「『もしうかがひもぞする』と思ひければ」とある。[問3]で確認した「順接確定条件」(「理由」・「単純接続」)の接続助詞「ば」がある。したがって、この部分が「直接的理由」になっていると分かるはずだ。「品詞分解」をして「現代語訳」をする。「もし/うかがひ/も/ぞ/する/と/思ひ/けれ/ば」⇒副詞「もし」+ハ行四段活用の動詞「うかがふ」(=こっそりのぞく)の連用形+係助詞「も」+係助詞「ぞ」(前の「も」に続いて「もぞ」と用いると「懸念用法」となり、「~したら困る」と訳す)+サ行変格活用の動詞「す」(=する)の連体形+格助詞の「と」+ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形+「伝聞(間接)過去」の助動詞「けり」の已然形+「順接確定条件」(=~から・ので。ここでは「理由」)の接続助詞「ば」⇒訳すと「もしこっそりのぞいていたら困ることになると思ったそうなので」となる。各選択肢の「文末」を確認したい。(1)「(逃げた男が)袋を置いていったのが気味悪かったから」、(2)「(逃げた男が)様子をうかがっているかもしれないことを恐れたから」、(3)「墓穴にこれ以上とどまることが耐えがたかったから」、(4)「旅を続けようと思ったから」。もちろん、(2)が「答え」だ。「古文」といえども、「現代語訳」をすれば「現代文」として解き進めればいいと心得よ。
<時間配分目安:2分弱>
攻略のポイント
●判別が紛らわしい「選択肢設問」。どのように「攻略」するか? 各選択肢全体を対象として検討していたのでは混乱するばかりだ(「100字以上」の説明もままある)。そこで威力を発揮するのが「ブロック消去」。「最後のブロック」から「消去」していくわけだが、具体的な「消去」の「根拠」は、「設問内容」に応じた「解法」の適用がポイント。したがって、基本的「解法」を完全に習得し、的確に応用できるようにしておくことが重要だ。特に、「原意消去」が最優先となる。限られた「時間」でいかに「解法」を用いて解いていくかが、合否を分ける。
●配点比率が高い「古文」(本年度はなんと「現代文」と同じで44%)の「攻略法」も重要だ。もちろん、「中学レベル」の学習ではとても追いつかない。中堅クラスの「大学入試」に対応できなくてはならない。「古文重要単語」や「文語文法」「古典常識」まで幅広い「知識」が求められる。特に「文法」では「助動詞」「助詞」の「意味・用法」、「接続」が肝要なので、徹底的に習得しておくこと。
●あらゆることが問われる「総合的知識問題」も決して侮れない。直接的な出題は無論、問題文の内容理解でも「高度な語彙力」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要。学校や塾での学習だけでは全く不十分。「独習」は欠かせない。
●「解答形式」にも注意が必要だ。全て「マークシート」なので、「解答」を記入する際には十分に確認すること。「マークシート」に慣れておくことが肝要。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意を要する。問題文は全体で5000~6000字ほど(本年度は約5800字)。当然、速く正確に読み取ることが必須条件となる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。