桐光学園高等学校 入試対策
2021年度「桐光学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「理由説明」にしても「記述」にしても、「桐光の国語」で勝利するための鍵は、「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「桐光の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提として為すべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(桐光の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使うこと)。
速読
「現代文」全体で8000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
桐光に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐光の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。
「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。
今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。
が、桐光などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。また、「漢文」でも同様に「基本的事項」は定着させておくこと。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2021年度「桐光学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一 は「漢字の書きとり」。小問はなく解答数5。2分以内で丁寧に終えたい。
大問二は「論説文」、出典は野家啓一「歴史を哲学する――七日間の集中講義」所収の「過去の実在・再考」(文字数約2200字)。小問は全7問(解答数10)。「選択肢」(「空所補充」、「組み合わせ」、「内容合致」あり)、「説明記述」(「字数指定なし」1問)。問題文は3分弱で読み切り、設問を17~18分で解きたい。
大問三 は「小説」、出典は講談社「決戦! 本能寺」所収の伊東潤「覇王の血」(文字数約2500字)。小問は全7問(解答数7)。「選択肢」のみ(「不適切」、「内容合致」あり)。問題文は3分強で読み切り、設問を13~14分で解きたい。
大問四 は「古典」、出典は「古文」が編者未詳「注好選」 上 第九十七(文字数約200字)、「漢文」は作者未詳「琱玉集」(文字数140字)。小問は全5問(解答数6)。「選択肢」(「内容解釈」、「内容合致」あり)、「説明記述」(「字数指定なし」1問)、「返り点記入」。10分程度で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:2分
- ★必答問題
本年度、「漢字問題」がひとつの大問として独立した(来年度以降も要注意)。内容は「書きとり」だけで、難易度は昨年度よりもアップした。ただ、本校としては「標準レベル」なので「全問正解」といきたい。
[問] 「漢字の書きとり」(全5問)。示されている各文の二重傍線部の「ひらがな」を「漢字」に直す。確認する。(1)「友達がえんぽうからやって来た」=「遠方」⇒何ら問題ないはず。(2)「人間はげんこうの一致を目指すべき」=「言行」⇒「言行一致」という「四字熟語」としても定着が必須。(3)「諸外国ときょうちょうし」=「協調」⇒「同音異義語」に要注意。(4)「努力がとろうに終わった」=「徒労」⇒やや難解か? 「無益な苦労」という意味も押さえておきたい。(5)「プレゼントをふんぱつする」=「奮発」⇒「文脈」を正確に読み取ること。本校では「高度な語彙力」が求められていると心得よ。
【大問二】
- 時間配分:20~21分
「過去」はどのようにして知りうるのか?――私たちは「過去」を想い起こしたり、その痕跡などから「歴史」に迫ろうとするが、「歴史的事実」とされるものは何なのかを、「客観的事実」についての視点から論じている。本文では、この世にあった出来事は「過去物語り」のネットワークに組み入れられて初めて「過去にあった」出来事となると指摘し、過去命題はそれによって「真の過去」になると論じている。「哲学論」で難解な語句もあるが、「※注」を活用して内容を理解したい。馴染みの薄い設問内容があり、やや解きづらい大問だ。心して臨みたい。以下、いくつか確認する。
[問一] 「空所補充の語句選択肢」(全4問/4択)。本文中の空所 A ~ D に「入る言葉」を答える。選択肢は「接続詞」と「副詞」、本校に限らず定番の問題だ。「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意しなくてはいけない。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所の「答え」を確認していく。 A には「逆接」の「接続詞」である(イ)「しかし」、 B には「転換」の「接続詞」である(エ)「では」が入り、 C には「論じる必要のないほど、はっきりしているさま」を表す「副詞」の(ア)「もちろん」、 D には「順接」の「接続詞」である(ウ)「それゆえ」がそれぞれあてはまる。「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は必出だ。失点は致命傷になると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
[問二] 「理由説明記述」(「字数指定」なし。「50字ほど」の解答欄)。傍線部(1)「われわれ現代人もこの酋長(しゅうちょう)を笑えないだろう」について、「なぜ『笑えない』のか」を説明する。当然ながら、先ずは「酋長」の何を「笑えない」のかを確認する必要がある。「同一意味段落」に「手がかり」を求めたい(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。直前から、「酋長」は狩りに出かけた部族の青年の成功を祈って踊り続けるのだが、狩りはすでに終わって事の成否が定まった後も、帰ってくるまでその幸運を祈っていることだと読み取れる。もう「結果」が出ているはずの「過去の出来事」について、「未来のこと」のように「祈っている」のは確かにおかしいのに、「われわれ」がそれを「笑えない」のはなぜか? さらに、「同一意味段落」を読み解いていく。直後で、「われわれ」も「列車などの事故の報を聞いた後」で「乗り合わせた家族の無事」を祈っているはずだという説明がされている。要は、「われわれ」も「酋長」と同様のことをしているので、「酋長」のことを「笑えない」と分かる。あとは、こうした内容を整理して「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「われわれも酋長と同じで、すでに結果が定まっているはずのことでも、未知のこととして祈ることがあるから。」(50字)といった「答え」だ。尚、「説明記述」では「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を必ず「文末」とすること。
<時間配分目安:2分半>
[問三] 「内容説明選択肢」(4択)。傍線部(2)「『後の祭り』を祈る」について、「それはどのようなことか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」を試みたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここでのポイントはもちろん。「後の祭り」という「ことわざ」だ。「時機遅れで、むだなこと。手遅れ」を表すことは誰でも知っているはず。つまり、傍線部は「手遅れでむだになることを祈る」ということになる。ここで、各選択肢の内容の「要点」と照合し、「消去」していきたい。
(ア)「(祈ることで)目の前の不幸に対して精神を安定させる」
(イ)「(祈ることで)自分の社会的立場を示そうとする」
(ウ)「(祈ることで)自身の努力を周囲に訴えようとする」
(エ)「(祈るという行為で)すでに起きた過去を改変しようとする」。
さあ、どうだろうか? 「消去」できるか? 「手遅れになることを祈る」ということは、「過去に対する思い」だと分かる。であれば、「過去」に言及している(エ)以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。全文を「同一意味段落」で確認する。特に誤っている部分はない。よって、「答え」は(エ)でOKだ。やや微妙な判別が求められたが、結果的に「一発消去」だ。「選択肢消去」では「原意消去」が最優先だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問五] 「内容判別グループ分け組み合わせ選択肢」(4択)。波線部(a)~(e)を「内容の上で二つのグループに分けた場合」の「組み合わせ」を答える。あまり見聞きしたことのない問題かも知れない。先ずは下線部をチェックする。(a)「いまだ誰にも知られていない過去」、(b)「『過去にあった』出来事」、(c)「『過去』の確定」、(d)「『過去物語り』の制作」、(d)「『過去自体』や『神の眼』」。さて、どう考えていけばいいのか? 「根拠・手がかり」は「同一意味段落」にあるので、確認する。(a)以外は「同一意味段落」だと分かる。各波線部の「キーワード」に着目して読み解いていく。この世にあった出来事は「過去物語り」のネットワークに組み入れられて初めて「『過去にあった』出来事」となり、「過去の『確定』」がなされることが読み取れるはずだ。ということは、(b)・(c)・(d)は「同じグループ」だと判断できる。各選択肢でこれらを同グループとしている「組み合わせ」は(イ)だけだ。(a)・(e)が「同じグループ」となるが、「誰にも知られていない」⇒「神」のみぞ知る⇒「神の眼」と結びつくので、「答え」は(イ)でいい。「未知の設問内容」に対しても動じずに、的確な「解法」を用いて解き進めば必ず道は開けると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
【大問三】
- 時間配分:17~18分
1958年6月21日、戦国時代でいちばん長い夜だった「本能寺の変」。天下人目前の信長を、討った男と守った男――野心と業にまみれた男たちのそれぞれの生きざまを、7人の作家が独自の視点で紡ぎ出している作品集の一篇。本文では、「織田信長」が些細(ささい)なことから家臣の「明智光秀」に暴力を振るい、けがを負わせた現場を見た「織田源三郎勝長(信房)」が「光秀」に近づき、「信長」を討つ密約を結んだ様子が描かれている。「歴史小説」で馴染みのない語句もあろうが、「※注」を使えば内容は分かるはずだ。小問は「選択肢設問」のみだが、中にはやや判別が紛らわしいものもある。以下、いくつかを検証する。
[問一] 「状況説明選択肢」(4択)。傍線部(1)「胸底から頭をもたげようとする何かを、源三郎は力ずくでねじ伏せた」について、「この時の『源三郎』についての説明」を答える。先ずは「原意消去」をしたい。ここでは「力ずくでねじ伏せた」の「原意」と結びつかない「状況」を「消去」していきたい。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。(ア)「強く意識している」、(イ)「積極的に受容しようとしている」、(ウ)「何とか忘れようとしている」、(エ)「思いを抱いている」。「力ずく」=「無理やり、強引に」、「ねじ伏せる」=「強引に押さえつける」ということは知らなくてはいけない。「強引」が重なっている「原意」なのだから、「強く」とある(ア)以外は「消去」できるはず。念のために、「同一場面」で他の部分の説明を確認する(「小説」では「同一場面」に「ヒント・手がかり」がある)。特に誤ってはいない。よって、「答え」は(ア)だ。「原意」に忠実であれば悩むことはないわけだ。
<時間配分目安:1分以内>
[問四] 「心情説明選択肢」(4択)。傍線部(4)「源三郎は『勝った』と思った」について、「この時の『源三郎』の気持ち」を答える。無論、「原意消去」から。「心情説明」なので、「勝った」の「原意」と結びつかない「心情」を「消去」する。各選択肢の「文末」を確認する。(ア)「自分は勝てるだろう」、(イ)「許されないことであろう」、(ウ)「成功するであろう」、(エ)「焦らしてやろう」。さあ、どうか? 「勝った」と思った⇒(ア)と(ウ)以外は「消去」だと判別できる。2択になった。次に、「同一場面」から「状況」を読み取り、「消去」を続ける。直後に「猜疑心(さいぎしん)の塊で、決して人を信じず、誰にも騙(だま)されない信長だが、自らの息子にだけは、隙を見せたのだ」とある。であれば、「殺害計画が露見せずに済んだのだから」と説明されている(ア)は「消去」で、「信長からの信頼を得ることも出来たので」とある(ウ)が残ると判別できるはず。「同一場面」から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かるので、「答え」は(ウ)になる。本問は「2段階消去」が求められたが、「原意消去」が最優先だということは揺るがない。
<時間配分目安:2分半>
[問五] 「理由説明選択肢」(4択)。傍線部(5)「源三郎に返す言葉はない」について、「この時の『源三郎』はなぜこのような意識を持ったのか」を答える。「原意消去」をするのだが、ここは「理由説明」なので、「『返す言葉はない』という意識を持った」ことの「直接的理由」として結びつかない「選択肢」を「消去」していく。「文末」と照合する。(ア)「感服したから」⇒「『返す言葉はない』という意識を持った」、(イ)「感心したから」⇒「『返す言葉はない』という意識を持った」、(ウ)「滑稽に思えたから」⇒「『返す言葉はない』という意識を持った」、(エ)「感嘆したから」⇒「『返す言葉はない』という意識を持った」。「滑稽」は即「消去」だと決めていい。他はどうか? なかなか「消去」しづらい。そこで、「理由」につながる「きっかけ」を「同一場面」で確認したい。直前で、「源三郎」は「信長」に対して「恐れ入りました」と言っている。「感服」・「感心」・「感嘆」、それぞれの「原意」を厳密に捉えれば、「恐れ入りました」と直結するのは「感服」だと判別できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。したがって、「答え」は(ア)になる。やや手間がかかったが、「原意」を的確につかむことで紛らわしい「選択肢」にも対処できる。
<時間配分目安:2分半>
【大問四】
- 時間配分:10分程度
「問題文〈甲〉」(古文)は平安時代の説話集。「今昔物語集」の典拠のひとつと考えられる。上・中・下の三巻で、上巻は中国故事、中巻は仏とその弟子の事績、下巻は動物にまつわる説話を収めている。「問題文〈乙〉」(漢文)は中国唐代に作られた私撰の類書の一種で、さまざまな書物に見える逸話を分類して配列している。尚、「問題文〈甲〉」は「問題文〈乙〉」を原典としている。本校の「古典」は近年、難化傾向だ。本年度は「漢文の句法」までもが問われている。いくつか検討してみよう。
[問一] [古文]「指示内容説明記述」(「字数指定」なし。「20字ほど」の解答欄))。〈甲〉の傍線部(1)「かくのごときこと」について、「どのようなことを指しているか」を説明する。もちろん。ポイントは「かくのごとき」だ。「かく」=「このように。こう」という意味の副詞、「の」=格助詞、「ごとき」=「比喩」「例示」の助動詞「ごとし」の連体形。つまり、「このようなこと」という「指示語」なので開く。直前から、「この」は「三荊(けい)、花落ち葉枯れたり」の部分を指していると分かるはず。「現代語訳」をする。「枯れたり」=下二段活用の動詞「枯る」の連用形+「完了・存続」の助動詞「たり」の終止形。ちなみに、「荊」=「一年を通して花を咲かせる薔薇(ばら)」と説明されている。よって、「三本の荊の花は落ちて、葉が枯れた」となる。したがって、たとえば、「三本の荊の花は落ちて、葉が枯れたこと。」(19字)といった「答え」だ。本問レベルの「古文」の「基本的文法」は必ず習得し定着させておくこと。
<時間配分目安:2分半>
[問三] [漢文]「返り点記入」。〈乙〉の傍線部(3)「共 議 分 居 家 之 資 産」に、「共に居家の資産を分かつことを議す」という訓読を参考にして「返り点」を記入する(「送り仮名」は不要)。訓読から考えて、「共」→「居」→「家」→「之」→「資」→「産」→「分」→「議」の順に読むと分かるはずだ。したがって、「答え」は「共 議レ 分二 居 家 之 資 産一」(*「レ」「二」「一」が「返り点」)となる。「返り点」「書き下し文」は「漢文」の「基本のキ」で、当然ながら「再読文字」や「置き字」などについてもしっかりと習得しておくことが肝要。尚、「書き下し文」では「付属語(助動詞・助詞)」を「平仮名」とし、当然、「歴史的仮名遣い」で表記すること。
<時間配分目安:1分>
[問四] [漢文]「内容解釈選択肢」(4択)。〈乙〉の傍線部(5)「不レ 如二 樹 木一 也。」(*「レ」「二」「一」は「返り点」)について、「その解釈」を答える。即座に「A 不レ 如(若)レ B」という「句法」が思いつかなくてはいいけない。「AハBニ如(=若)しカず」と読み、「AはBに及ばない」という意味だ。傍線部は「(人は)樹木に如かざるなり。」となる。よって、(ウ)「この木には及ばない」が「答え」になる。「漢文」ではやはり、重要な「句法」は押さえておく必要がある。
<時間配分目安:1分半>
攻略のポイント
- ●「多種多様な設問内容」。どう対処するか?無論、「設問内容」に応じた「解法」の適用だ。基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくことが重要。それによって、「得点力」を安定させたい。本校の「合格ライン」は6割ほど(過去8年間の「SAコース」男女合計の「合格最低得点率」の平均は61.0%。本年度は62.5%)。「解法」の応用で、「失点」「減点」を防いでいきたい。
- ●「字数指定なし」の「説明記述」。いかに「過不足なく」まとめ、「攻略」するか? 「裏ワザ」などないので、愚直に「記述」の「練習」を続ける他ない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターし、「内容」の優先度が高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「20~100字程度」の「解答欄」と幅があるので、どのような「字数」にも対応できるように練習しておくことが肝要だ。
- ●「古文」「漢文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「古典常識」も「日本史」を含めてなじんでおくことが必要になる。「漢文」でも、「返り点」「訓点」「書き下し文」「基礎的句法」などの基本的知識は押さえておくこと。
- ●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は「現代文」で8000字程度(本年度は減少して約5000字)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。