筑波大学附属高等学校 入試対策
2016年度「筑波大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「筑附の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。
それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か?「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(筑附の長めの「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。
書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使いたい)。
解法
「記述」「選択肢」「抜き出し」、その他の問題も含め「筑附の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵するボリュームの問題文を読まなくてはならない。
全体で6000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。
しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
筑附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「直接出題」だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われることになる「総合的知識」。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。
「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。
また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2016年度「筑波大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は村瀬学「宮崎駿の『深み』へ」(文字数約2400字)。
小問は全8問(解答数10)。「選択肢」、「漢字の書きとり」、「総合的知識問題」、「語句記述」、「説明記述」(全4問。「30字以内」指定2問、「10字以内」「40字以内」指定各1問)。
問題文は3分強で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問二は「小説」、出典は三浦しをん「舟を編む」(文字数約4200字)。
小問は全9問(解答数11)。「選択肢」、「総合的知識問題」、「説明記述」(全3問。「50字以内」指定1問と、「字数指定なし」2問)。
問題文は6分ほどで読み切り、設問を20分強で解きたい。
[大問一]
- 時間配分:
世界的に評価されている「宮崎アニメ」、「風の谷のナウシカ」から「千と千尋の神隠し」まで、主人公はいったい何を食べ、何を産み出したのか? 「有機体的サイクル」から「宮崎アニメ」を考察し論じている。
本文では「となりのトトロ」を題材にして、「ただの風景」が「物語」をはさむことによって急に「興味深いもの」に見えてくるということを指摘している。さほど難解な語句もなく理解しやすいはずだ。
「複雑な設問条件」がある「説明記述」や、「クイズ」のような「語句(地名)記述」などに本校らしさが表れている。
それも含めて、以下、いくつか検討してみたい。
[問二]「条件付き内容説明記述」(「10字以内」指定)。
傍線部②「見えない」について、「ここではどういう意味で用いられているか」を説明する。
「条件」は「本文中の語句を用いる」こと。
傍線部だけではなんのこっちゃ分からない。そこで、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で「手がかり」を探す。
直前は「野山はそこにあるのですが、それは『ある』だけでは」となっている。また、前文から「野山」=「自然」だということが分かる。
つまり、「自然」は「ある」だけでは「見えない」ということだ。
どういうことか?「同一意味段落」から読み解いていく(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠」「手がかり」がある)。ここでは、傍線部の次段落までが「同一意味段落」だと判断できるはずだ。
確認する。すると、次段落の最後に「そこにあるというだけで、主人公たちの心にとまる『自然』にはなっていません」とある。「『ある』だけでは『心にとまる自然』ではない」のだ。であれば、「心にとまる」=「見える」ことだ。
従って、たとえば、「心にとまらない。」が「答え」になる。
「設問」に即した「解法」を用いることが肝要だ。
<時間配分目安:2分>
[問四]「語句の意味の選択肢」(4択)。「総合的知識問題」。
傍線部④「茶化したような話」について、「茶化す」の「意味」を答える。流石、難易度は高い。
見聞きしたことはあるやも知れぬが、その「意味」となるとどうか? 「まじめな話を冗談めかしてしまう」ということだ。
従って、「答え」は(ウ)の「まじめなことを、冗談めかしてからかうように言うこと」だ。
本校では「完璧な語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
[問五]「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部⑤「ある批評家が、『となりのトトロ』は『中尾佐助の提唱する照葉樹林文化』を描いているなどというとしたら、それはおかしなことをいっていると思います」について、「なぜ『おかしい』のか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここでは「理由説明」なので、「直接的理由」での「消去」となる。無論、ここでの「おかしい」は「面白い」ではなく、「普通ではない」ということだと即座に分かるはず。
そこで、各選択肢の「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)を「直接的理由」として、「普通ではない」に結びつくかどうかで「消去」したい。
(ア)「主張することになるから」⇒「普通ではない」、
(イ)「誘導することになるから」⇒「普通ではない」、
(ウ)「強制することになるから」⇒「普通ではない」、
(エ)「説明することになるから」⇒「普通ではない」。
「普通ではない」のだから、「誘導」と「強制」以外は「消去」できなくてはいけない。(イ)(ウ)の2択だ。
そして、(イ)は「批評家」、(ウ)は「見た一人一人」について説明している。であれば当然、「答え」は「(イ)」だと判別できるはずだ。
「解法」に則して段階的に「消去」していくこと。
<時間配分目安:1分半>
[問六]「内容説明記述」(「30字以内」指定)。
傍線部⑥「『物語』」について、「『アルルの跳ね橋』における『物語』とは何か」を説明する。
先ずは、「物語」と「アルルの跳ね橋」とがどのように関連しているのかを、「傍線部(空所部)一文一部の法則」などから確認する。
傍線部の直前直後から、「ただの風景」が「物語」をはさむと「興味深いものに見えてくる」ことの、一つの「例」として「アルルの跳ね橋」が挙げられていると分かるはずだ。
また、「同一意味段落」から「物語」=「知識」だということも分かる。では、ここではどのような「物語」(=「知識」)があるのか?
「アルルの跳ね橋」を説明した段落に「ゴッホによって絵に描かれ『アルルの跳ね橋』と名づけられたばかりに」「『貴重な橋』になってしまう」とある。ということは、もう分かったに違いない。
たとえば、「ゴッホが絵に描いて、『アルルの跳ね橋』と名づけたということ。」といった「答え」になるはず。
「段落相互関係」や「文脈」に着目することが重要。
<時間配分目安:2分>
[問七]「条件付き具体例の事項(地名)記述」(字数指定なし、「10字ほど」の解答欄)。
傍線部⑦「さまざまな物語を含んだ名称」について、「逆に『物語を含まない地名』の例を自分で考えて一つ」答える。
「条件」は、「実在の地名でも架空の地名でも構わない」ということ。
本校特有の「複雑な設問条件」で、しかも、「自分で考えて」となっているので戸惑ってしまうに相違ない。が、ここは冷静に、単純に考えを進めていきたい。
先ずは、「物語を含む地名」とはどのようなものかを、「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認する。
すると、「ただの森を『つか森』(「『となりのトトロ』に登場する森」=「*注」)と呼び、神の棲む森にしたり」「『竜神の池』とか『黒狼の谷』とか」、「地名の由来」(=「物語」)を連想させる「名称」だと分かる。
であれば、「地名の由来」(=「物語」)を連想させない、単に順序を示す「数字」や「地形の形状」を表す「地名」を答えればいいとなるはずだ。
たとえば、「一番町」「丸池」などといった「答え」になる。
「設問」に惑わされずに解いていくこと。
<時間配分目安:1分>
[問八]「漢字の書きとり」(全3問)。
例年と比較するととても平易だが、それでも「本校の漢字」では、前後の「文脈」から内容を特定した上で、適切な漢字を当てはめる必要がある。
波線部
(a)の「田舎道をエンエンと走る」=「延々(と)」、
(b)の「巨木が中心になっているイッタイ」=「一帯」、
(c)の「モケイを作って」=「模型」。
「同音異義語」等、細心の注意を払うこと。
<時間配分目安:1分以内>
【大問二】
- 時間配分:
玄武書房で辞書「大渡海」の編集(=「編む」)をしている「馬締(まじめ)」は、個性的な編集部の面々の中で「言葉」という絆を得て、人生が優しく編み上げられていく――「言葉への敬意」「不完全な人間たちへの愛しさ」を謳いあげ、「本屋大賞」を受賞し大ベストセラーとなった作品。
本文では、「馬締」と他の部署への異動が決まった「西岡」とのやりとりが描かれている。分かりやすい文章だが、「心情の機微」や本校特有の「複雑な問題文」には注意したい。
以下、いくつか考えてみよう。
[問一]「語句の意味の選択肢」(2問/各4択)。
「総合的知識問題」。流石、本校、難易度は高い。
波線部(A)「いたずらに」、ここでは「徒ら」(=「無駄」)であって「悪戯」(=「悪ふざけ」)ではないことに注意したい(「古文単語」の「いたづらなり」を知っていれば問題なし)。
「答え」は、選択肢(ア)の「無駄に」。
波線部(B)「難しいひと」、「難しい」には「難解である」以外にもいくつかの「意味」があるということを知っているかどうかだ。「ひと」を修飾しているのだから、「不機嫌である」の「意味」だと判断したい(無論、「文脈」からでもつかめないことはないが)。
なので、「答え」は、(ウ)の「機嫌がとりにくい人」。
本校ではやはり、「完璧な語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
[問四]「心情説明選択肢」(4択)。
傍線部③「西岡は脱力した」について、「このときの西岡の心情はどのようなものか」を答える。
無論、先ずは「原意消去」。ここは「心情説明」なので、「脱力」の「原意」と結びつかない「心情」を「消去」したい。
各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「あきれている」、
(イ)「気力をなくしている」、
(ウ)「好奇心を失っている」、
(エ)「がっかりしている」。
「脱力」=「力が抜けて、ぐったりしてしまう」のだから、(ア)(イ)以外は「消去」できるはず。
次に、何が「きっかけ」で「脱力」したのかだ。直前に「洒落ですよ」という「セリフ」がある。
であれば、「答え」は、「理解し難いものだったために」とある(イ)ではなく、「たわいないものだったために」の(ア)だと判別できなくてはいけない。
「小説」では、「セリフ」や「動作」などの「きつかけ」に着目することが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問七]「条件付き内容説明記述」(「50字以内」指定)。
傍線部⑥「そんなふうに考えたことはありませんでした」について、「馬締は西岡のどのような考え方に対してそう述べているのか」を説明する。
「条件」は、「西岡が辞書に言葉を採用する基準として、どのような考え方をしているのかという視点で説明する」こと。複雑な「設問内容」と「条件」、まさに、本校の真骨頂だ。
「説明すべき内容」以前に「設問の趣旨」を正確に理解する必要がある。難問だ。こういうときは、とにかく単純化していくこと。
「設問」及び「条件」から、「説明すべき内容」は「『辞書に言葉を採用する基準』についての『西岡の考え方』」だと分からなくてはいけない。
そして、それは「そんなふう」という「指示語内容」になる。だが、その「内容」も一筋縄ではつかめないから厄介だ。
「そんなふう」は、傍線部より前の「馬締」と「西岡」との全ての「やりとり」を示しているのだ。その中から、「辞書に言葉を採用する基準」に関するものをピックアップしなくてはならない。
「やりとり」の前半に「文脈から言葉の意味を推測しやすい」⇒「わざわざ辞書で調べる必要性は低い」、中頃には「知らなければ、まったく意味が汲み取れないから」「どうしても記載が必要」、後半には「辞書を眺めている」「そいつ」がある項目を「発見」して「心強く感じるはずだ」といったような「セリフ」がある。
従って、それらを整理して「考え方」としてまとめていくことになる。
たとえば、「文脈から意味を推測しづらいということだけではなく、使う人がどう感じるかも考慮すべきだという考え方。」といった「答え」になる。
確かに難しい。「設問内容」や「条件」を整理して、何とかまとめていきたい。
<時間配分目安:3分半>
攻略ポイント
●「複雑な設問内容及び条件」と「字数の壁」が立ちはだかる「説明記述」、いかに「攻略」するか?
無論、「設問」と「条件」を正確に理解することが最優先。その上で、実直に「記述練習」を続ける他はない。
正否の分岐となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターし、各「要素」を「10~20字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。
それによって、本校のどのような「字数指定」にも対応できるようにしておきたい。
●「曲者」が多い「選択肢設問」などにはどう対処するか?
どれだけ「解法」を的確に用いることができるかがポイント。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要。
そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。それによって、「得点力」が安定することになる。
●「総合的知識問題」も決して侮れない。
直接出題は少ないとしても、「内容理解」のためにも当然、「高度な語彙力」を含め「あらゆる知識」が必要になる。
本校を志したその時点から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ(学校や塾での学習だけでは全く不十分)。
「合格ライン」は70%程度(学校非公表。推定)。「知識」での「失点」は致命的になると心得よ。
●試験時間は50分。問題文のボリュームは6000字程度。
他の上位校と比較して決して多くはないが、やはり、速く正確に読み取ることが求められる。
分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。