早稲田大学高等学院 入試対策
2021年度「早稲田大学高等学院の国語」
攻略のための学習方法
上位校の入試問題において、合格のための解答を確実に得るためには、何が必要か。特に、論説文などのようにより抽象性の高い場合に、「時間が足りなくて本文をじっくり読むことができなかった」、「時間が足りなく、最後の問題は本文を読まずに設問を『カン』で解いた」という受験生の『嘆きの声』を耳にする。なぜそのような状況になってしまうのか。いくつか原因は考えられると思うが、以下、何点かにわたって、論説文における合格答案作成のための対策を考えてみたい。
① 文章を読むスピードアップを図る
文章を読む速度は人によって異なり、もちろん、文章を読む速さが早ければ早いほどよいという訳では決してない。大切なのは、本文の内容をしっかりかつ確実に理解・把握しているかということである。どんなに文章を読む速さが早くとも、書いてある内容の理解が足りなければ設問に対して十分な合格答案を導けないことは言うまでもない。それでは、どうすれば文章読解の速度が上がるかと言えば、「緩急をつけた読解」がポイントである。「緩急」とは何か。一言でいうならば、「何が重要で、どこが読み流していいか」について、適切な判断を行い論説文を読むということである。具体的には、論説文において具体的例示の記載箇所、事実の列挙箇所についてはそれほど神経を使わずに読み進んでよいであろう。これらの個所は、筆者の考えを読み手により分かり易く理解できるための「解説」と考えてよいであろう。逆に、神経を使って読まなければならない、つまりじっくり読まなければならない個所は、筆者の考えや、結論が記載されている部分、具体的には「つまり」「したがって」などの接続詞によって導かれる個所に十分注意を払い読まなければならないのである。つまり、緩急をつけた読解というのは、流し読みで済ませる個所とじっくり深く読み込む個所を識別しながら読む方法である。そして、「深く読み込む」とは、指示語などが何を指しているのかを考えながら読む手法である。
② 筆者の主張を的確に迅速に把握する
筆者の主張を捉えるためには、文章の本質を見抜く力が必要であることは論を待たない。その「見抜く力」とは、具体的には「キーワード」をいち早く捉えることである。「キーワード」とは、繰り返される名詞(大概は抽象名詞)である場合が多く、この繰り返しの名詞には特に注意を払うことが必要である。この繰り返される「名詞=キーワード」を丸で囲んだり、傍線を引くことも一つの文章読解の手法であり、そのような作業を通じて文章全体の要旨が「目で見える」状態にすることが可能(=文章の視覚化)となる。この視覚化によって筆者の論旨の組み立てを目で見えるようになることができるようになるとともに、文章の流れがより簡便に把握できるようになるのである。その結果、筆者の「結論」を的確にあぶり出すことが可能になるのである。そのような作業の繰り返しの中で、高度で抽象的な文章の読解時間の短縮化のためのスキルが身に付くのである。
入試問題のような高度で抽象的な文章をいかにしたら迅速で確実に読みこなすことができるかについて考えてみた。しかしながら、究極的に重要なことは「自分の頭」で最後まで考えぬくことである。しっかり頑張ってもらいたい。
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2021年度「早稲田大学高等学院の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、現代社会に関する論説文読解問題<19分>。出題形式は、選択肢問題と記述問題(抜出し問題)。内容把握がメインの出題である。漢字の読み書き問題も3題出題されている。
大問2は、現代文明に関する論説文読解問題<19分>。出題形式は、選択肢問題と記述問題(抜出し問題)である。漢字の書き取り問題も3題出題されている。
大問3は、古文読解問題<12分>。古語知識、古典文法、内容把握、現代語訳に関する問題である。
【大問一】現代社会(社会学的分野)に関する論説文の読解問題
- 時間配分:19分
出典は、『聖地巡礼』(著者:岡本亮輔)。
(問一)漢字の読み書き取りに関する問題である<1分>。標準的な漢字の問題である。完答したい。「由緒」の読み方は、「ゆいしょ」である。
(問二)文章内容把握問題(本文抜出し)である<2分>。
前近代社会は「宗教の存在が自明視」されていたのであり、「宗教を前提としていない世俗化社会」は「支配的な価値観や文化がない社会」なのである。
(問三)文章内容把握問題(本文抜出し)である<2分>。
「世俗化社会が進んだ」社会では、「合理的に考え、ふるまうこと」が求められるのであり、「生活の隅々」まで「合理性」が浸透しているのである。
(問四)内容把握本文抽出問題である<2分>。
「世俗化社会」では、「共同体意識や仲間意識といった共同性」が崩壊されてしまうのである。
(問五)内容把握問題である<2分>。
「宗教教団は、…教義を体系的に信者」に伝えようとするのだが、現代においては「個々人の需要に応じて宗教の一部が切り売りされることは珍しくなくなっている」のである。また、「宗教の私事化」において、宗教が「教義とは無関係に、個々人が特定の要素だけを選びとったり、他の宗教と組み合わせるための材料になる」つまり「自己流にカスタマイズされた私的な信仰」が増えるのである。
(問六)内容把握抜出し問題である<2分>。
「私的な信仰」が広がりつつあるのは、「メディアの拡充」である。
(問七)内容把握抜出し問題である<2分>。
「社会全体が共有する倫理や規範」として宗教は前近代社会では存在していたが、現代社会はその宗教に代替し「最低限のルールを定める法律」がその役割を担っているのである。
(問八)内容把握抜出し問題である<2分>。
「現代の訪問者は、テレビや雑誌を通じて雑多な宗教的情報を獲得」しているのであり、そのような聖地訪問者は「さまざまな物語を聖地に持ち込む」結果となり、それが「ノイズのように」考えられるのである。
(問九)内容把握本問題である<2分>。
本文の内容を精査して、「適切でない」選択肢を選ぶ。現在の聖地巡礼は、「新しい訪問者」も「伝統的な信仰心を持つ人々」も行っているのである。
(問十)本文要旨選択問題<2分>。
本文内容と合致しない選択肢を選ぶ問題である。近代社会は、「超越的存在を信じなくなる状況」に至ったのであり、社会の世俗化が進んだのである。合理性を重視する世俗化した社会で、宗教がどのように変遷していくのかを本文に従って判断する。
【大問二】現代文明(社会学的分野)に関する論説文読解問題
- 時間配分:19分
出典は、『街場の共同体論』(著者:内田樹)。
(問一)漢字書き取り問題である<2分>。
基本的な漢字である。完答を目指したい。「委ね」は「ゆだ・ね」と読む。
(問二)内容把握本文抜出し問題である<2分>。
「共同体の未来の世代がどうなるかについて何も考えない人たち」であり、「未来を勘定に入れる習慣を持たない人たち」なのである。
(問三)内容把握本文抜出し問題である<2分>。
「有用な資源は『フェアな競争』のよって争奪されるべき」であるという考え方では、「同時代の競争相手からだけではなく、そもそも競争に参加していない人、できない人たち」からパイ(=権利・権限)を奪ってしまうのである。
(問四)文章内容理解選択問題である<2分>。
Aは、リバタリアンは、社会の資源を「力ある個人が私有して当然」と考えているのであり、国家などの「公権力」がその一部を取り上げることを認めないのである。
Bは、Aを踏まえて考えると、「自己努力の成果たる資源を貧者」に「再分配」することを認めないのである。
(問五)内容把握選択問題である<2分>。
リバタリアンの考え方と合致しない選択肢を選ぶ。リバタリアンの考え方を受け入れたとしても、必ずしも「格差社会」の招来をもたらすものとは限らない。
(問六)四文字熟語問題である<1分>。
苦労して勉強に励むことであり、「刻苦勉励」である。
(問七)内容把握抜出し問題である<3分>。
フェアネスという観点に立ち、本文の内容を検証する。「長期的なスパン」で考えると「集団の存続」のためである。
(問八)文章内容選択問題である<2分>。
本文中の「パイ」とは、社会的なインフラ、権利(=権限)、資源、機会のことを指している。
(問九)要旨把握問題である<3分>。
本文の内容に合致しない選択肢を選ぶ問題である。「社会における公的資源の管理運営」、「社会的共通資本」、「近代市民社会の基礎的理念」などに関する本文の記述を検証する。
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:12分
出典は、清少納言『枕草子』。
(問一)古語理解問題である<2分>。
「ことわりなり」、「かなし」の意味を問う問題。前者は「理=もっともである」という意味、後者は「いとしい」という意味である。
(問二)内容理解問題である<2分>。
Aは、「宮仕へ所にも、親、はらからの中にても(=奉公先でも、親、兄弟の中でも)」、好ましく思われる「人」とそうではない「人」がいるのである。
Bは、「これを、かなしと思ふらむ」のは「親」であり、誰を「思ふ」のかを考えれば「子」となるであろう。
(問三)現代語訳選択問題である<2分>。
「人にさ思はれむとは思はむ」の現代語訳である。「思われようと考えるだろうか、いや、そうは考えない」という意味である。
(問四)現代語訳選択問題である<2分>。
「よき人」とは、「高貴な人、身分の高い人」のことである。「さらなり」とは、「言うまでもない」という意味である。
(問五)内容把握選択問題である<2分>。
「親なればぞかし」において、「親なれば」と「ぞかし」の間に入れる内容を選択する。親であるからこそ子のことを「いとしく」思うのである。
(問六)本文内容理解選択問題である<2分>。
変人=「物狂ひ」といえども、人に憎まれようとは思っていないのである。
攻略のポイント
論説文2題、古文からの出題であり、出題形式も選択肢問題が主要な出題形式である。特に、論説文の設問設定は、「適さないもの」、「合致しないもの」というものであり、いつものクセで「適したもの」を選択しないように気を付けなければならない。論説文においては、正確で迅速な読解力が合格のためには必要不可欠である。時間を決めて解答するという練習を日々の学習の中でしっかり行うことに留意してほしい。また、古文問題は標準レベルであるので、古文文法や古語知識はいうまでもなく、文学史なども徹底的に押さえておいてほしい。