早稲田大学高等学院 入試対策
2022年度「早稲田大学高等学院の国語」
攻略のための学習方法
上位校の入試問題において、合格のための解答を確実に得るためには、何が必要か。特に、論説文などのようにより抽象性の高い場合に、「時間が足りなくて本文をじっくり読むことができなかった」、「時間が足りなく、最後の問題は本文を読まずに設問を『カン』で解いた」という受験生の『嘆きの声』を耳にする。なぜそのような状況になってしまうのか。いくつか原因は考えられると思うが、以下、何点かにわたって、論説文における合格答案作成のための対策を考えてみたい。
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①文章を読むスピードアップを図る
文章を読む速度は人によって異なり、もちろん、文章を読む速さが早ければ早いほどよいという訳では決してない。大切なのは、本文の内容をしっかりかつ確実に理解・把握しているかということである。どんなに文章を読む速さが早くとも、書いてある内容の理解が足りなければ設問に対して十分な合格答案を導けないことは言うまでもない。それでは、どうすれば文章読解の速度が上がるかと言えば、「緩急をつけた読解」がポイントである。「緩急」とは何か。一言でいうならば、「何が重要で、どこが読み流していいか」について、適切な判断を行い論説文を読むということである。具体的には、論説文において具体的例示の記載箇所、事実の列挙箇所についてはそれほど神経を使わずに読み進んでよいであろう。これらの個所は、筆者の考えを読み手により分かり易く理解できるための「解説」と考えてよいであろう。逆に、神経を使って読まなければならない、つまりじっくり読まなければならない個所は、筆者の考えや、結論が記載されている部分、具体的には「つまり」「したがって」などの接続詞によって導かれる個所に十分注意を払い読まなければならないのである。つまり、緩急をつけた読解というのは、流し読みで済ませる個所とじっくり深く読み込む個所を識別しながら読む方法である。そして、「深く読み込む」とは、指示語などが何を指しているのかを考えながら読む手法である。
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②筆者の主張を的確に迅速に把握する
筆者の主張を捉えるためには、文章の本質を見抜く力が必要であることは論を待たない。その「見抜く力」とは、具体的には「キーワード」をいち早く捉えることである。「キーワード」とは、繰り返される名詞(大概は抽象名詞)である場合が多く、この繰り返しの名詞には特に注意を払うことが必要である。この繰り返される「名詞=キーワード」を丸で囲んだり、傍線を引くことも一つの文章読解の手法であり、そのような作業を通じて文章全体の要旨が「目で見える」状態にすることが可能(=文章の視覚化)となる。この視覚化によって筆者の論旨の組み立てを目で見えるようになることができるようになるとともに、文章の流れがより簡便に把握できるようになるのである。その結果、筆者の「結論」を的確にあぶり出すことが可能になるのである。そのような作業の繰り返しの中で、高度で抽象的な文章の読解時間の短縮化のためのスキルが身に付くのである。
入試問題のような高度で抽象的な文章をいかにしたら迅速で確実に読みこなすことができるかについて考えてみた。しかしながら、究極的に重要なことは「自分の頭」で最後まで考えぬくことである。しっかり頑張ってもらいたい。
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2022年度「早稲田大学高等学院の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、教育に関する論説文読解問題<18分>。出題形式は、選択肢問題と記述問題(抜出し問題)。内容把握がメインの出題である。漢字の読み書き問題も3題出題されている。
大問2は、現代社会に関する論説文読解問題<20分>。出題形式は、選択肢問題と記述問題(抜出し問題)である。漢字の書き取り問題も3題出題されている。
大問3は、古文読解問題<12分>。古語知識、古典文法、内容把握、和歌の技法に関する問題である。
【大問一】教育(教育・心理学的分野)に関する論説文の読解問題
- 時間配分:18分
出典は、『コロナ後の教育へ』(著者:苅谷剛彦)。
長い間、日本は西欧先進国に追いつけ追い越せで「近代化」を進めてきた。その後、大学において主体性ある人材の育成が求められてきた。そのためには、学生の思考力を鍛え上げてゆく方法を蓄積していかなければならないのである。
(問一)漢字の読み書き取りに関する問題である<1分>。
標準的な漢字の問題である。完答したい。「模倣」は書けるようにしておきたい。
(問二)文章内容把握問題(本文抜出し)である<2分>。
「長い間、日本は西欧先進国に追いつけ追い越せで『近代化』を進めてきた」(60~70年代まで)のであり、その後80年代に「時代認識」が変わったのである。つまり「キャッチアップを完了したという意識」である。
(問三)文章内容把握問題(本文抜出し)である<2分>。
アクティブ・ラーニングは、「受け身の学びから、学生が自ら参加する主体的な学びに変える」ことで「主体的な個人の育成ができる」のである。しかし、日本におけるアクティブ・ラーニングは「理想論」に基づくものなのである。
(問四)内容把握本文抜出し問題である<2分>。
「話し合いと発表という形だけ」で「多くを書かせる課題なし」では、「思考力は育たない」のである。つまり「読んで書くという行為」が欠けているのである。
(問五)四字熟語問題である<1分>。
実質がともなわない名ばかりのことを「有名無実」という。
(問六)内容把握抜出し問題である<2分>。
「経済の停滞が長期化すると、財界や政府は大学を経済復興の要として位置づける政策」を取ったのである。
(問七)内容把握選択問題である<2分>。
「エセ」とは「似非」であり「見かけだけ」という意味である。「演繹的」とは「一般的原則から結論を導くこと」である。
(問八)内容把握抜出し問題である<2分>。
「社会の要請の中身」は、「政策の力点が未来」に照準されているのである。
(問九)内容把握抜出し問題である<2分>。
「経験を通して」とは「経験を積んで」ということである。一つ一つの事実・事象を積み上げて一般的な法則を導く手法を「帰納的」という。
(問十)本文要旨選択問題<2分>。
本文内容と合致しない選択肢を選ぶ問題である。「主体的に考え、主体的に対応できる資質や能力を日本の教育会」が備えていないので、「抽象的な論理の展開」が原因で「日本の大学の主体的な資質や能力を低下」させたわけではないのである。
【大問二】現代社会(社会学的分野)に関する論説文読解問題
- 時間配分:20分
出典は、『日本人と神』(著者:佐藤弘夫)。
(問一)漢字読み書き取り問題である<1分>。
基本的な漢字である。完答を目指したい。書き取りは「摂理」「懇談」である。
(問二)内容把握抜出し問題である<3分>。
「死後の世界へ向かう助走」とは、「重篤な病症に陥った患者」が「親族の介護を受けながら念仏の声に送られてあの世に旅立つシステム」のことである。
(問三)適語選択問題である<1分>。
「生者の世界から死を完全に排除しよう」としたのであり、これは生と死の完璧な分離を意味する。つまり生と死の間における往還(行き来)を不可能にするものである。
(問四)内容把握抜出し問題である<2分>。
前近代においては「人は死の恐怖を乗り越えることが可能」であったが、現代における生死観は「生と死を峻別する」ものであり、結果、人は「死の恐怖」を自覚するようになったのである。
(問五)内容把握抜出し問題である<3分>。
傍線3における「生と死の空間を截然と区別」するとは、「いまの日本では死は周到に隠蔽され、生々しい死体を直接目にする機会」がなくなってしまったのであり、「近代人にとって、死は現世と切断された孤独と暗黒の世界」になったのである。
(問六)内容把握選択問題<2分>。
現代社会において「大量のゆるキャラが誕生」している現象は、「小さなカミを創生しようとする試み」であり、それは「日本人が…信仰の薄い文化の中で暮らしている」わけではないのである。
(問七)内容把握抜出し問題である<2分>。
本文には「カミが公共空間を生み出す機能を停止したことに伴う人間間、集団間の緩衝材の消失であり、死後世界との断絶」であると筆者は述べている。
(問八)内容把握抜出し問題である<3分>。
本文には「ヨーロッパ世界から始まる近代化の波動は、…特権的存在としての人間をクローズアップする動き」であり、そのような状況の中で「偉大な役割」を担ったのが「近代に確立する人間中心主義としてのヒューマニズム」であると記載されている。
(問九)内容把握選択問題である<1分>。
筆者によれば「人間中心の近代ヒューマニズム」の絶対視するのではなく、さまざまな考え方と比較検討することが必要であると論じている。
(問十)内容把握選択問題<2分>。
本文によれば、近代社会ではカミを他者として排除はしていないのである。むしろ、「社会的な進化を達成」したのは、「人間中心主義のヒューマニズム」なのである。
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:12分
出典は、『今物語』。
(問一)古語理解問題である<1分>。
「やむごとなき人」は「高貴な身分の人」、「めでたく」は「すばらしく見事に」という意味である。
(問二)内容理解問題である<3分>。
文章中の発言の主語を答える問題である。三字以上五字以内という字数制限がある、「言ひければ」の主語は「今参りの侍」、「言はれけるに」の主語は「あるじ」である。
(問三)解釈選択問題である<2分>。
「水に鴛鴦を焼け」の解釈問題である。「水に浮かぶ鴛鴦の様子を焼絵で描いてみせよ」という意味である。
(問四)解釈選択問題である<1分>。
「水には鴛鴦をいかに焼くべき」の解釈問題である。「水の上に焼絵で鴛鴦を描くにはどのようにしたらよいのだろう」という意味である。
(問五)内容把握抜出し問題である<3分>。
「今参りの侍」の言葉である「水には鴛鴦をいかに焼くべき」が和歌の下の句になっており、「あるじ」の指示に従って上の句である「浪の打つ岩よりひをば出すとも」を詠んだのである。
(問六)和歌の技法に関する問題である<2分>。
「ひを」は「氷魚」と「火を」を意味する掛詞である。
攻略のポイント
論説文2題、古文からの出題であり、出題形式も選択肢問題が主要な出題形式である。特に、論説文の設問設定は、「適さないもの」、「合致しないもの」というものであり、いつものクセで「適したもの」を選択しないように気を付けなければならない。論説文においては、正確で迅速な読解力が合格のためには必要不可欠である。時間を決めて解答するという練習を日々の学習の中でしっかり行うことに留意してほしい。また、古文問題は標準レベルであるので、古典文法や古語知識は徹底的に押さえておくことが重要である。