早稲田大学高等学院 入試対策
2023年度「早稲田大学高等学院の国語」
攻略のための学習方法
上位校の入試問題において、合格のための解答を確実に得るためには、何が必要か。特に、論説文などのようにより抽象性の高い場合に、「時間が足りなくて本文をじっくり読むことができなかった」、「時間が足りなく、最後の問題は本文を読まずに設問を『カン』で解いた」という受験生の『嘆きの声』を耳にする。なぜそのような状況になってしまうのか。いくつか原因は考えられると思うが、以下、何点かにわたって、論説文における合格答案作成のための対策を考えてみたい。
① 文章を読むスピードアップを図る
文章を読む速度は人によって異なり、もちろん、文章を読む速さが早ければ早いほどよいという訳では決してない。大切なのは、本文の内容をしっかりかつ確実に理解・把握しているかということである。どんなに文章を読む速さが早くとも、書いてある内容の理解が足りなければ設問に対して十分な合格答案を導けないことは言うまでもない。それでは、どうすれば文章読解の速度が上がるかと言えば、「緩急をつけた読解」がポイントである。「緩急」とは何か。一言でいうならば、「何が重要で、どこが読み流していいか」について、適切な判断を行い論説文を読むということである。具体的には、論説文において具体的例示の記載箇所、事実の列挙箇所についてはそれほど神経を使わずに読み進んでよいであろう。これらの個所は、筆者の考えを読み手により分かり易く理解できるための「解説」と考えてよいであろう。逆に、神経を使って読まなければならない、つまりじっくり読まなければならない個所は、筆者の考えや、結論が記載されている部分、具体的には「つまり」「したがって」などの接続詞によって導かれる個所に十分注意を払い読まなければならないのである。つまり、緩急をつけた読解というのは、流し読みで済ませる個所とじっくり深く読み込む個所を識別しながら読む方法である。そして、「深く読み込む」とは、指示語などが何を指しているのかを考えながら読む手法である。
② 筆者の主張を的確に迅速に把握する
筆者の主張を捉えるためには、文章の本質を見抜く力が必要であることは論を待たない。その「見抜く力」とは、具体的には「キーワード」をいち早く捉えることである。「キーワード」とは、繰り返される名詞(大概は抽象名詞)である場合が多く、この繰り返しの名詞には特に注意を払うことが必要である。この繰り返される「名詞=キーワード」を丸で囲んだり、傍線を引くことも一つの文章読解の手法であり、そのような作業を通じて文章全体の要旨が「目で見える」状態にすることが可能(=文章の視覚化)となる。この視覚化によって筆者の論旨の組み立てを目で見えるようになることができるようになるとともに、文章の流れがより簡便に把握できるようになるのである。その結果、筆者の「結論」を的確にあぶり出すことが可能になるのである。そのような作業の繰り返しの中で、高度で抽象的な文章の読解時間の短縮化のためのスキルが身に付くのである。
入試問題のような高度で抽象的な文章をいかにしたら迅速で確実に読みこなすことができるかについて考えてみた。しかしながら、究極的に重要なことは「自分の頭」で最後まで考えぬくことである。しっかり頑張ってもらいたい。
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2023年度「早稲田大学高等学院の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は、現代社会に関する社会学的分野の論説文読解問題<20分>。
出題形式は、選択肢問題と記述問題(抜出し問題)。内容把握がメインの出題である。漢字の読み書き問題も5題出題されている。
大問二は、日本文化に関する論説文読解問題<18分>。
出題形式は、選択肢問題と記述問題(抜出し問題)である。漢字の書き取り問題も3題出題されている。
大問三は、古文読解問題<12分>。
古語知識、古典文法、内容把握に関する問題である。基本的古語文法知識があれば完答も可能である。
【大問一】現代社会(社会学的分野)に関する論説文の読解問題
- 時間配分:20分
出典は、『食の戦争』(著者:鈴木宣弘)。
本文の要旨:
「今だけ、金だけ、自分だけ」は、最近の世相をよく反映している言葉である。現代社会には、目先の自分の利益と保身しか目に入らない人々が多すぎるのである。食料問題をめぐる問題にも、様々な立場で将来の社会全体の長期的繁栄を考えた議論が行われなければならない。食料問題は、国民にとっての命綱なのであって、この命綱をどのようにして確保するべきかを真摯に今こそ考えなければならないのである。
(問一)漢字の読み書き取りに関する問題である<2分>。
標準的な漢字の問題である。完答したい。書き取りは「近視眼」「必需」「削」「銘」。読み取りは「真摯=シンシ」。
(問二)文章内容把握問題(本文抜出し)である<2分>。
「今だけ」とは、「目先」のこと「近視眼的な利害」のことしか考えない姿勢であり、「長期的なコスト」を「考慮しない」ことである。
(問三)文章内容把握選択問題である<2分>。
「『規制緩和を徹底すればうまくいく』という主張」の内容をしっかり把握・理解しよう。
(問四)内容把握選択問題である<3分>。
スイスでは「日本が伝統的に大切にしてきた助け合い、支え合う安全・安心な社会」を大切にしてきたが、それは「古来の伝統」とまでは述べていない。
(問五)内容把握抜出し問題である<2分>。
ヒュースケンの日記の中に「…この進歩はほんとうにお前のための文明なのか」とある。日本に持ち込まれたのはこの『進歩』である。
(問六)内容把握抜出し問題である<2分>。
ヒュースケンの日記の中に「彼らの重大な悪徳をもちこもうとしている」結果、「この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとして」いると記載されている。「この幸福な情景」とは、「国土のゆたかさ」であり「子供たちの愉しい笑い声」である。
(問七)内容把握抜出し問題である<2分>。
少し離れているが本文に「消費者にも、食の本物の価値をしっかりと認識して、それに正当な対価を支払うことが当然だという価値観を持ってもらうことが大事だ」とある。
(問八)内容把握抜出し問題である<3分>。
「国産をしっかり支えてこそ、実は長期的なコストは安くなるという認識」を持たなければならないのであり、その根底には「食料自給を放棄」してはならないのである。
(問九)本文要旨選択問題<2分>。
本文内容と合致しない選択肢を選ぶ問題である。「効率を追求していくこと」と「多数の人々の幸せな暮らし」は両立しうるのである。
【大問二】日本文化(文化人類学的分野)に関する論説文読解問題
- 時間配分:18分
出典は、『ともに食べるということ』(著者:福田育弘)。
(問一)漢字読み書き取り問題である<1分>。
基本的な漢字である。完答を目指したい。書き取りは「魅力」「苦行」、読み取りは「醸し=カモし」である。
(問二)内容把握選択問題である<2分>。
「いちどにいろいろな料理がだされて、各自が適当に食べていくというのが、日本の通常の食事様式だとすると、鍋というひとつの容器にすべてを入れて調理していく鍋料理は、まさに日本的な食べ方を集約した料理」なのである。
(問三)内容把握抜出し問題である<2分>。
「フランス料理では、比較的軽いものからより濃厚なものへと進む不可逆的な流れ」があり、「空間よりもそこで流れる時間の共有が必要不可欠」なのである。よってフランス料理は「時系列によって組織化された食事」なのである。
(問四)内容把握選択問題である<2分>。
懐石料理においても「飯に汁と采という基本の組み合わせは残っている」のである。
(問五)内容把握抜出し問題である<2分>。
「当時の武士たちの置かれた」状況は「いつ死ぬかわからない状況」なのであり、「飲食そのものを死への準備とみなす思想的基盤」をもっていたのである。
(問六)内容把握抜出し問題<2分>。
「日本では食事の豪華さとは…皿の数が多くなること」であり「本膳料理では…膳の数が増える。料理の内容」ではないのである。つまり「質ではなく量が増える」のである。
(問七)四字熟語問題である<1分>。
一生に一度しか出会わないほどの希少な機会のこと。一期一会である。
(問八)内容把握表現問題である<2分>。
懐石料理は「過度な豪華さを主眼として欲望の展開を誇示する当時の本膳料理」の対極にある。つまり、欲望を誇示しない=欲望を抑制するのが懐石料理なのである。
(問九)内容把握語句問題である<2分>。
「ケ」の対極にあるのが「ハレ」であり、「ハレ」とは「懐石に代表される特権的な時間としての食事」である。つまり「ケ」とは「特権的」ではない日常的なことなのである。
(問十)内容把握選択問題<2分>。
フランス料理には「メインディッシュという食事の中心」があるが、日本料理には「明確な中心」がないのである。しかしながら、だからといって日本料理がフランス料理より鮮度が劣るわけではない。
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:12分
出典は、『花月草紙』。
(問一)古語文法問題である<2分>。
「やむごとなき人の」の「の」は、主格を表す格助詞であるので、Bの「翁の」と同じである。
(問二)古語理解問題である<2分>。
2「かしこき人」は、「傑出した人」である。
5「をかし」は、「しみじみとして趣深い」
6「くらからぬ答へ」とは、「くらし」が「物事の道理が分からない」という意味であるので、「くらからぬ」とは「物事の道理が分かっている」という意味である。
(問三)内容把握抜出し問題である<3分>。
3 「釣り垂れてゐし翁」のことである。
4 「世をさけて隠れ棲む者」のことである。
(問四)解釈選択問題である<3分>。
「獣にあらで狩りに得し」とは、「狩りの機会」に獣の他に「有用な人物をも獲得」したということである。
(問五)内容把握選択問題である<2分>。
「この翁」は「仏道を極めた人物」ではないのである。子供の頃に寺で召使をしていたときに聞きかじった少しの知識で、会話をしただけである。
攻略のポイント
論説文2題、古文からの出題であり、出題形式も選択肢問題が主要な出題形式である。特に、論説文の設問設定は、「適さないもの」、「合致しないもの」というものであり、いつものクセで「適したもの」を選択しないように気を付けなければならない。論説文においては、正確で迅速な読解力が合格のためには必要不可欠である。時間を決めて解答するという練習を日々の学習の中でしっかり行うことに留意してほしい。また、古文問題は標準レベルであるので、古典文法や古語知識は徹底的に押さえておくことが重要である。