早稲田大学高等学院 入試対策
2021年度「早稲田大学高等学院の数学」
攻略のための学習方法
難関校攻略のための最重要事項は、問題演習において「最後まで自分の頭で考える」という姿勢である。自分の頭で考えるということは、安易に解答・解説に頼らないということでもある。問題を見て考えて解法への道筋が見えてこないと、すぐに解答・解説を読んでしまうことはないであろうか。この文章を読んでいる受験生の中にも、そのような経験をしたことがあるのではないだろうか。最後まで自分の頭で考え、たとえ正しくなくとも(ある時期まではその方がむしろ好ましいが)自分なりの答えを導くことである。そのようなプロセスを経て得られるものは、最後まで粘り強く問題を解きぬく「持続力」であり、正解を導く上での「的確な発想力」である。頑張っているのだが、なかなか難関校の数学の入試問題に全く手が出ない、という悩みを耳にする場合が多い。そのような受験生に多く見られる傾向としては、上記に述べたような安易に解答に依存してしまって、すぐに模範解答を見てしまうということである。さらに、模範解答を目で見て頭で納得して、決して鉛筆をもって紙に解法を書こうとしない。そのような学習姿勢を繰り返していても、難関校の数学対策には有効ではない。
それでは、以下に難関校の入試数学の受験勉強における重要項目について考えてみよう。
① 数学には「定石」がある
定石とは問題の解答を得るために必ず辿るべき「プロセス」である。つまり、そのプロセスさえ過たず正確に辿れば、必ず正解に辿り着けるということである。それでは、どのようにしたら正解を得るための「定石」を習得することができるのであろうか。ポイントは2つある。1つは、標準問題を何度も反復して演習をすることである。そして、回数を重ねるごとに、解答時間を縮めて瞬発的に問題を解く鍛錬を積むことである。その結果、初見の問題を見た瞬間に「解法のプロセス」が見えてくるのであり、どの方向へ第一歩を踏み出せば良いのかについて正確な判断ができるようになるのである。この「定石」を習得するための作業が、上位校の数学の入試問題を解く上では基礎力となる。その上に高度な問題演習における「正しい見通し」を立てられる「力」が付くのである。
② 導き出すべき「答え」から逆算する
設問で求められる状況があった場合、その状況が言える(成立する)ためには「何が言えなければならないのか」ということを考えるのである。例えば、四角形が円に内接していることを証明したい場合には、それを証明するために何を言えばよいのかを考えることである。そして、そのためには与えられた諸条件より何が言えるのかを考えるのである。つまり、与えられた四角形の∠ABC=90°であった場合、辺ACは四角形が内接する円の直径になっているということに気づき、発想を膨らませることができるか否かが勝負を分ける。つまり、ゴールから逆算してゆくとそれはスタートに辿り着けるのである。そのような手法をぜひ身に付けて欲しい。
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2021年度「早稲田大学高等学院の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】独立小問問題<10分>。資料の活用(標本調査)、2方程式の応用に関する問題である。
【大問2】関数(直線と放物線)に関する問題<13分>。座標平面上で平面図形の考え方や原理を持ち込めるかがポイント。
【大問3】空間図形(回転体)に関する問題<11分>。平面図形を回転軸に関して270°回転してできる立体の体積を求める問題。
【大問4】座標平面を用いた円と直線に関する問題<16分>。新傾向の問題である。座標平面上に、同じ半径の円を隙間なく並べた場合における直線y=ax+b(a、b≧0)との関係性についての問題である。
【大問1】独立小問問題
- 時間配分:10分
(1)資料の活用(標本調査)問題<5分>。
標本調査を行う場合の標本の選ぶ条件については、事前にしっかり押さえておく必要がある。今後、標本調査に関する問題の出題頻度は高まるものと思われる。
(2)2次方程式の応用に関する問題<5分>。
①2次方程式の解(=x軸との交点)に関する理解があれば十分正解に到達できるであろう。異なる2つの解をもつということは、解の公式の√の中が正の数であることを意味する。
②2次方程式の解が異なる2つの有理数である場合の条件について、解の公式の√の中に関する条件整理を行う。
【大問2】関数(放物線と直線)
- 時間配分:13分
(1)直線の傾きと切片を求める問題<3分>。
点A、Bはともにy=ax2上にあり、それぞれのx座標が−2、4であることから傾きmはaを用いて表わすことができ、このことより切片もaを用いて表わすことが可能である。
(2)円の中心の座標を求める問題<3分>。
線分ABの中点をMとしてMの座標を求める。ちなみに、点P(m、n)と点Q(s、t)の中点の座標は( m+s/2,n+t/2)となる。これはしっかり覚えておこう。
(3)円の半径を求める問題<3分>。
前問で求めた円の半径をrとする。図形の中に直角三角形ができるように補助線を引き三平方の定理をあてはめる。
(4)比例定数、条件に合う座標を求める問題<4分>。
前問でMの座標についてaを用いて表わしている。点Mと点Cのx座標はともに等しいことより解法への道筋が見えてくる。
【大問3】空間図形(回転体の体積)に関する問題
- 時間配分:11分
(1)平面図形(三角形)の回転体の体積を求める問題<3分>。
三角形を回転軸に関して270°回転させて得られる回転体の体積を求める。360°回転してできる立体の体積のになる。
(2)平面図形(五角形)の回転体の体積を求める問題<4分>。
五角形を回転軸に関して270°回転させて得られる回転体の体積を求める。360°回転してできる立体の体積の 3/4になる。
(3)平面図形(五角形)の回転体の体積を求める問題<4分>。
回転させる平面図形は平行四辺形であり、回転軸は平行四辺形の一つの対角線であり、辺と回転軸(対角線)は直交するという条件である。(1)及び(2)のように、360°してできる立体の 3/4 になるかどうかを考える。
【大問4】座標平面上の円と直線に関する問題
- 時間配分:16分
(1)与えられた条件に合致する値を求める問題<3分>。
N(a,b)の定義は、y=ax+b(a,b≧0)と座標平面上に並べられた半径の等しい円と共有点の個数である。この定義に従って、具体的に座標平面上でイメージを描くこと。
(2)与えられた条件に合致する値を求める問題<4分>。
前問と同様、設問の定義に従い座標平面上に円を描き問題をイメージ化する。
(3) 与えられた条件に合致する値を求める問題<4分>。
設問の条件(定義)に基づき、どのような事象になればN(3,b)=17となるかを考える。直線と円の関係をどのように処理するかがポイントとなる。
(4)与えられた条件に合致する値を求める問題<5分>。
前問同様、設問の条件を吟味すること。座標平面上に並べられた円において、三平方の定理が適用できる直角三角形を見つけ出し、かつ相似の考え方をあてはめられる三角形を考える。相似な三角形が見つけることができたら、対応する辺に関する相似比に関する比例式を考え内項の積=外項の積より求める答えを導き出す。
攻略のポイント
押さえておきたい分野的は、計算(方程式、式の値、整数の性質)、関数(1次関数・2次関数)、平面図形と立体図形、場合の数、資料の整理(標本調査)の分野である。ただし、合格点を取るためには、これらの分野の単純な演習スキルだけでは歯が立たないであろう。そのようなスキル演習が必要であり、問題解法の基礎になることは言うまでもない。大切なことは、そのスキル演習からさらに一歩踏み込み、数学的な原理理解(公式的発想)の質を深めることである。つまり、自分で公式の原理を理解し、公式が出てくるまでの解法のプロセスをしっかり把握した上で、自身で公式を導き出せるようにすることがベストである。小手先のスキル演習力の向上だけに目標を置くのではなく、問題の本質的な理解をベースに論理的に思考できる数学力をつけることが必要である。