早稲田実業学校高等部 入試対策
2017年度「早稲田実業学校高等部の国語」
攻略のための学習方法
語彙力
語彙力については、どちらのご家庭からも、似たような質問を受ける。「どのように語彙を増やしたらいいですか?」という質問は、学習方法を、求めている。「語彙力はどれくらい必要になるのですか?」という質問は、目安を求めている。
語彙の学習方法については、まずは王道はないと知っておこう。語彙はいきなりは増えず、
日ごろから品質の高い言葉に触れておくことが、大事になる。具体的には、読書をすることと、言葉を調べる習慣を持つことが、有効だ。どちらもできていない生徒は、当然、語彙量が少なく、受験では不利になってきた。語彙は、すべての基礎になるので、読解力や記述力よりも、優先したい。
語彙の目安については、早稲田実業の志望者は、まずは漢字検定を2級まで取っておこう。そのあと、もし余裕があるのであれば、類義語・対義語・文法・文学史などの問題集を、それぞれ1冊仕上げておきたい。
読解力
早稲田実業は、文学・哲学分野からの出典が多い。したがって、これらの分野の入門書や小説を、読書に選んでおくとよいだろう。日常ではあまり用いられない「メディア」「現実」「記号」などの言葉を、自分で説明できるようになっておきたい。
また、最近では「読書が大事とわかってはいるが、どの本を選んでいいのかわからない」という家庭が増えてきた。書籍の販売点数が増し、かつ書籍が消費財として扱われるようになったからだろう。そのような状況に対応するために、毎年、担当した生徒には、ブックリスト(受験までに読んでおくべき本の一覧)を提供している。早めに声をかけてもらえれば、生徒の読解力を計画的に育てていくことができる。
教養の獲得
早稲田実業の水準の文章ともなると、読解には、教養が必要となる。
例えば【大問2】では、メディア論の教養が必須となっている。メディア論において、現実とは、情報によって構築されたものとして、扱うことができる。地図という記号を通して、人間は現実の世界を解釈し、再構成している。このような視点においては、「現実」と「リアル」と「仮想現実」が、異なる審級で、議論されていることに注意しよう。
学校の出題傾向に合わせて、毎年、読解教養の講座を、オーダーメイドで作成している。期間は3か月。受験本番前に、どのような文章が出題されても、読めるようになっておこう。特に、過去問を解くたびに、読解の得点が不安定になっている受験者は、声をかけてほしい。
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2017年度「早稲田実業学校高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
試験時間は60分で、得点は100点満点だ。大問が3つで、現代文が2問、古典文が
1問の構成となっている。
文量は標準的なので、読解時間は十分にある。先に知識問題を埋めてしまって、最後に記述を清書する順番がよいだろう。
【大問1】 長文読解(物語文 約5500字)
- 時間配分:22分
出典は、奥田英朗の「沈黙の町で」であり、学校生活を送る少女の、嫉妬への配慮が題材になっている。
思春期の生徒の心の機微を扱かった物語が、近年は選ばれるようになってきている。読解のためには、文学的な表現に、慣れておきたい。
(1)と(2)受験者の語彙力を試す設問だ。全問正解できなかった場合は、漢字と慣用句を復習しておこう。
(6)朋美が抱えている問題が、どのようなものなのか、注意が必要だ。朋美は、「ソフトボール部のエースになれるかどうか」ではなく、「平穏な学生生活を送れるかどうか」を、より重視していることを読み取りたい。
【大問2】 長文読解(説明文 約2700字)
- 時間配分:28分
出典は、松岡慧祐の「グーグルマップの社会学」であり、情報がテクノロジーによって媒介されることで、私たちの現実にどのような影響があるのか、考察している。
記号論は、受験では頻出の分野なので、読解のために、しっかりと教養を獲得しておきたい。
(1)空欄を埋めながら、文章全体の内容を、要約していく。文章全体を何度も見返していると、時間がかかりすぎてしまう。あらかじめ文章を読みながら、段落ごとに表題をつけておくと、見返す時間を省略できる。
(4)筆者の述べている「正しい地図」と「誤った地図」を、しっかりと読み取りたい。
「誤った地図」は、地図の目的に合わない内容が描かれている。道案内を目的する地図が、正しく道を表示できなければ、その地図は「誤っている」ことになる。
【大問3】 長文読解(古文 約600字)
- 時間配分:10分
出典は、「日本霊異記」だ。鷲に誘拐された赤子と、幾年を経て、再会する物語で、話の筋は理解しやすい。
(1)古文教養として、日本の旧国名を押さえておこう。
(4)古文では、主語が省略されることが多い。主語を補って読む訓練をしておこう。
(10)古文教養として、日本の文学史を整理しておこう。
攻略ポイント
受験者の合否を分けるのは、語彙力と読解力になる。
語彙力は、設問で直接に問われる場合もあるが、読解力の支えとして、高い水準のものが要求されている。そもそも、しっかりとした書き言葉に慣れておかなければ、読解ができない。また、読解力は、いくつかの文章のなかから、意味を正確に分析できるようになっておきたい。
普通の国語の授業で読解力を鍛えながら、もう一方で、高度な文章に対応するための、教養講座を3か月は受講しておくことを推奨する。