早稲田実業学校高等部 入試対策
2019年度「早稲田実業学校高等部の国語」
攻略のための学習方法
ハイレベルの入試問題対策で一番重要なことは、的確で迅速な文章読解能力である。受験生からは、試験時間が足りなくて問題文をすべて読み込むことができなかった、と嘆く声をよく聞く。
なぜ、時間内で試験問題を読み込むことができなかったか。特に、論説文などのようにより抽象性の高い場合に、そのような状況になるようである。いくつか原因は考えられると思うが、以下、何点かにわたって、論説文における対策を考えてみたい。
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文章を読むスピードが遅い
- 文章を読む速度は人によって様々である。早ければよいという訳では決してない。いくら早くとも、書いてある内容の理解が足りなければ設問に対して十分な合格答案を導けないことは言うまでもない。どのようにすれば、文章読解の速度が上がるのか。結論から言えば、「緩急をつけた読解」ということになる。それでは、文章読解上の「緩急」とは何か。一言でいうならば、論説文では具体的例示の記載箇所、事実の列挙箇所についてはそれほど神経を使わずに読み進んでよいであろう。逆に、神経を使って読まなければならないのは、筆者の考えや、結論が記載されている箇所、具体的には「つまり」「したがって」などの接続詞によって導かれる文章である。つまり、文章読解で緩急をつけるということは、流し読みで内容を理解する個所とじっくり深く読み込む(指示語などが何を指しているのかを考えながら読む)箇所を識別しながら読む方法である。
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何が筆者の「結論」であるかを見つけるポイントとは
正確な読解力に欠かせないのは、文章の本質を見抜く力である。キーワードは何か。繰り返される名詞(大概は抽象名詞)は特に注意を払うことが必要である。この繰り返される「名詞」はとても重要であり、具体的に設問文を読む際に、この名詞を丸で囲んだり、傍線を引くことによって文章全体の要旨が「目で見える」状態にすることが可能(=文章の視覚化)となる。この視覚化によって筆者の論旨の組み立てを目で見えるようになることが可能になり、文章の流れがより簡便に把握できるようになるのである。そのような作業を経て筆者の「結論」を明確にあぶり出せることが可能になるのであり、日頃の学習においてもそのようなアプローチを心掛けると、入試問題のような高度で抽象的な文章の読解時間の短縮化にもつながるのである。
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記述対策も事前に十分行っておくこと
文章を読んで自分の考えを50~60字でまとめる練習は、日頃から十分行う必要がある。文章の要旨や自分の考えを指定された字数でまとめ上げるのは、しっかりとした練習を積まないと入試本番で慌ててしまうことになる。論理の組み立て方、結論の導き方、説得力ある文章表現力の向上など、これらのスキルは実際に文章を数多く書いてみなければ身に付かない。したがって、ハイレベルな文章読解用の記述用問題集をしっかり仕上げておくことが必要であり、また、誤字・脱字にも気を付けなければならない。そのような意味でも、文章を頭の中だけでイメージするのではなく、実際に鉛筆をもって紙に文章を書くという作業を丹念に行っておく必要がある。
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2019年度「早稲田実業学校高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、小説読解問題<22分>。出題形式は、選択肢問題と記述問題。
大問2は、コミュニケーションに関する論説文読解問題<19分>。漢字、記述式問題(60字程度)、内容把握問題。
大問3は、古文読解問題<19分>。古文知識、古典文法、内容把握、文学史に関する問題。
【大問一】小説読解問題
- 時間配分:22分
出典は、『逆ソクラテス』(著者:伊坂幸太郎)。
(問一)慣用句・四字熟語に関する問題である<1分>。
太鼓判を押す、という慣用句は基本知識として押さえておきたい。
「豪放磊落」の意味を問う問題である。
(問二)文章内容理解問題である<2分>。
安斎が思いついた「次の作戦」とは何かを本文の文脈を丁寧に辿り、誰がどの様な考えで何をやろうとしていたのかを把握すること。
(問三)内容把握選択問題<2分>。
「鼻で笑う声」という表現から、久留米先生の心情を読み解くこと。
(問四)内容把握問題である<2分>。
本文の内容をしっかり把握し、「安斎の盛り上がりに水を差す」行為が何かを考えること。「盛り上がり」がなんであるかがポイント。
(問五)内容把握選択問題である<2分>。
打点王氏の性格を本文からしっかり把握すること。打点王氏は平然としていたのである。
(問六)文章把握記述問題である<3分>。
草壁が自信を持ち始め、「水を補給された植物」のようであったのである。
(問七)文章内容問題である<2分>。
「草壁の素振りはなかなか上手だな」と感心したのは、背景に「プロ野球選手が褒めた」という事情がある。
(問八)文章内容選択問題である<3分>。
草壁が打点王氏に褒められて自信をつけていた状況を正確に押さえておくこと。
(問九)内容把握記述問題である<3分>。
草壁がプロ野球選手になったら、自分たちにこんな合図を送ってくれと言って、安斎はどのような行動をとったかを考えること。
(問十)主題選択問題<2分>。
本文の主題を選択する問題である。草壁が徐々に成長してゆく過程を踏まえて考えること。
【大問二】社会学的分野であるコミュニケーションに関する論説文読解問題
- 時間配分:19分
「わたし」と「他人」の区別を通じたコミュニケーションに関する論説文読解問題である。出典は、『社会学 わたしと世間』(著者:加藤秀俊)。
(問一)漢字書き取り問題である<1分>。
基本的な漢字である。完答を目指したい。
(問二)内容把握選択問題である<2分>。
「偏見」や「差別」という言葉は、通常よい意味では使われないが、本文の中ではそのような意味で使われているのかを考える。
(問三)内容把握選択問題である<3分>。
傍線1の「ラッキョウの皮」という言葉がどのような意味で使われているかをしっかりと把握すること。そのうえで、波線の一つ一つについて検証を行う。
(問四)文章内容理解記述問題である<4分>。
「プロフィール」は、人を判断する際に用いられる基準である。実際の本人と違っていた場合でも、それを確認する術がないので、それを無視するわけにはいかないのである。
(問五)内容把握記述問題である<9分>。
「わたし」という劇で、世間はわたしと他者とを区分するが、その区分の基準が社会的分類であり、そのような中で他者に承認されることによって「何」が証明しようとしているのかを考えること。
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:21分
出典は、『義残後覚』。
- (問一)現代語訳選択問題<2分>。
「肯ける」は、承服するという意味。
(問二)古典知識選択問題である<1分>。
「越中」は、富山県である。
(問三)古典文法選択問題である<2分>。
A・CとBとの区分で考えること。Bは「時間の程度」を表す。
(問四)内容把握選択問題である<2分>。
「女わらんべ」とは女のこどものこと。
(問五)内容把握抽出問題である<3分>。
本文の「すはや城中は死用意しけるぞ」という個所から考察する。
(問六)内容把握選択問題である<1分>。
直前にある「降参して城をわたし、一命をなだめ候ふように」から判断する。
(問七)現代語訳選択問題である<2分>。
「同じて」は同意して、「調のふ」とは話が整った、まとまったという意味である。
(問八)内容理解問題である<3分>。
本文の流れに従って、「味方」と「敵方」を明確にする。
(問九)内容把握選択問題である<2分>。
「人玉」とは人の魂のことであり、ひとたびは死を覚悟して城を飛び出していったが、交渉の結果、死ななくともよくなったことで、再び「人玉」は戻ってきたのである。
(問十)内容把握問題である<2分>。
城へ戻ってきた人玉の「何」がおびただしかったのか。
(問十一)文学史問題である<1分>。
江戸時代に成立した作品ではないものを選択する文学史の問題である。
攻略のポイント
論説文、小説、古文と全てのジャンルからの出題であり、出題形式も選択肢問題、記述問題と万遍なく出題されている。特に、記述対策はしっかり行っておくこと。60字前後で記述する練習をしっかり行っておくことが重要である。また、論説文などの内容把握においては、正確で迅速な読解力が求められる。日頃の学習の中で、時間を決めて解答するという練習をしっかり行い、時間内で正確に解答できる「技術」を身に付けることが重要である。また、知識問題として、漢字、文学史、古語知識などもしっかり押さえておくこと。