｢真面目メガネ｣のあだ名で呼ばれる小学３年生の｢守(まもる)｣が、東京から長野県菅平での２泊３日の林間学校に行き、学級委員として奮闘する姿を描いている短篇小説。
本文では、３年生になった４月の学級委員選びの様子と、林間学校での｢ユリ先生｣やクラスメイトとのやりとりやさまざまな出来事、そして、参加できなかった｢達哉(たつや)くん｣への思いなどが細やかに描かれている。いくつか馴染みのない言葉があろうが、｢※注｣を活用すれば内容は理解できるはずだ。
本年度の｢説明記述設問｣は、｢理由説明｣と｢内容説明｣が各３問、｢変化内容説明｣が１問だ。無論、定番の｢条件付き｣の設問がある。｢条件｣をいかに的確にクリアできるかが正否のポイントとなってくる。当然ながら、｢選択肢設問｣や｢抜き出し｣も抜かりなく。以下、具体的にいくつかの設問を検討する。
※尚、本校では例年、｢本文｣全体に｢５行ごと｣に｢行番号｣が記されている。

[問一]　｢理由説明記述｣(字数指定なし。解答欄２行、１行＝25～30字程度。以下同じ)
傍線部①｢他に誰も出ないでくれ｣について､｢守がそのように思うのはなぜか｣を説明する。
｢同一場面｣で｢状況｣を確認したい(｢小説は同一場面の直前直後に根拠あり｣が大原則)。直前から、学級委員を決める日に、｢守｣だけが立候補している｢状況｣だと分かる。次に、｢理由説明｣で大きな｢手がかり｣となる｢きっかけ･結果｣を確認したい。ここでは直後に｢結果｣として、｢(他に誰も出ないでくれ)という思いが、頭の中でぐるぐる回った｣とあり、続けて｢――学級委員、立候補しなさいね。お母さんの言葉が蘇(よみがえ)った。立候補はできたけれど、誰か別の人に決まってしまったらと思うと、急に不安になってくる｣と思いが述べられている。
こうした内容を｢理由｣として過不足なくまとめていきたい。たとえば、｢お母さんの言葉どおり学級委員に立候補したが、他の誰かが立候補してきて自分が選ばれなかったら困ると不安になっているから｡｣(59字)といった｢答え｣になる。
｢理由説明｣では｢直接的理由｣を｢文末｣とすること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞

[問四]　｢内容説明選択肢｣(４択)
傍線部④｢そう思って守は記録の文章を消しゴムで消した。代わりに『青々としたにおいがした』とユリ先生が言っていたことをそのまま書き込んだ｣について、｢この時点で守は自らの表現に対してどのように向き合っているか｣を答える。
｢選択肢問題｣は｢消去法｣が大原則だ。先ずは｢設問｣だけで｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡
本問は｢内容説明｣なので、傍線部の文末の｢ユリ先生が言っていたことをそのまま書き込んだ｣という動作の｢原意｣と結びつかない｢守の向き合い方｣を｢消去｣していきたい(ポイントとなる最重要要素は｢文末｣にある)。それぞれの選択肢の｢文末｣を確認する。
(ア)｢先生の反感を買わない表現を選ぼうと思っている｣､(イ)｢先生の表現を借りようとしている｣､(ウ)｢(あたりさわりのない表現で)その場をやり過ごそうとしている｣､(エ)｢自分の子供っぽさにうちのめされている｣｡｢先生が言っていたことをそのまま書き込んだ｣のだから、 (ウ)と(エ)は｢消去｣できると判別できなくてはいけない。次に、｢そう思って｣と｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢そう思って｣＝｢勢いで書いてしまった記録はふざけていると思われ、怒られてしまう気がして｣だと分かる。であれば、｢学級委員らしくあるべきだという期待に応えるため｣となっている(イ)は｢消去｣で、｢先生に怒られる可能性のある表現を用いてはならず｣とある(ア)が残ると判別できるはずだ。
念のために｢同一場面｣で他の部分の説明を確認する。特に誤ってはいないと判断できる。よって、｢答え｣は(ア)になる。
本問は｢２段階消去｣だったが、｢原意消去｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣での｢消去｣)、十分に活用すべきだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分強＞

[問五]　｢内容説明の抜き出し｣(｢14字｣指定)
傍線部⑤｢菅平の自然にしかないもの｣について、｢守が描きたいと思ったものは何か｣を｢十四字｣で抜き出して答える。
｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいくのが大原則。先ずは｢内容｣。設問のとおりで｢守が描きたいと思った、菅平の自然にしかないもの｣ということだ。｢抜き出し範囲｣は無論、｢同一場面｣が基本。｢同一場面｣は19行前にある(中略)の後から本文最後までだと分かる。相当に長いのだが、｢菅平の自然にしかないもの｣というのは｢ユリ先生｣の言葉であり、ここで初めて述べているので、傍線部以降を丁寧に探していく。すると、13行後に｢守は広場の真ん中に走り出した。この空は、菅平でしか見られない。両手に収まらないほど大きな空を眺めながら、守は確信した｣という部分がある。｢守｣が｢菅平でしか見られない｣と確信した｢空｣、｢内容｣も｢字数｣もＯＫだ。｢範囲｣をさらに探しても、他に候補はない。したがって、｢答え｣は｢両手に収まらないほど大きな空｣(14字)になる。
｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢抜き出し範囲｣の全てを確認することが肝要だ｡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分半＞

[問六]　｢条件付き内容説明記述｣(字数指定なし。解答欄３行)
本文中のＡ【　】、Ｂ【　】、Ｃ【 　】について、｢この場面で守はどのようなことをしようとしているか｣を説明する。
｢条件｣は｢目的がわかるように説明する｣こと。｢同一場面｣の指定箇所から｢状況｣を読み取っていきたい。
｢守｣は、｢菅平でしか見られない、両手に収まらないほど大きな空を眺めながら｣、｢ユリ先生｣の｢学校では見られないものを、絵にして持って帰りましょう｣という言葉とともに、｢骨折して林間学校に来られなくなってしまった『達哉くん』を思い浮かべた｣(Ａ【　】)。｢守｣は、｢達哉くん｣のことを考えながら｢絵の具を画用紙に塗り重ねると、本当に空を持って帰れるような気がした｣(Ｂ【　】)。｢守｣は、｢青空をよく見て、水彩絵の具を注意深く混ぜながら空を画用紙に写しとる(Ｃ【　】)。 こうした内容を、｢目的｣を明確にしながら過不足なくまとめていけばいい。たとえば、｢骨折して林間学校に来られなかった達哉くんに、菅平でしか見られない大きな空を見せたいという目的で、本当に空を持って帰れるように、水彩絵の具を注意深く混ぜながら空を画用紙に写しとること｡｣(91字)といった｢答え｣だ。
的確に｢状況｣を把握することが肝要。
尚、｢条件｣は｢手がかり･ヒント｣でもあると心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：５分＞

[問十一(１)]　｢姿勢変化説明記述｣(字数指定なし。解答欄３行)
｢この作品では、守は絵を描くことで自らの表現に対する姿勢が変化している｣が、｢絵を描く前後でどのように変化しているか｣を説明する。
[問六]で確認した｢青空の絵｣を描いた前後で、｢守の表現に対する姿勢｣がどのように｢変化｣したのかを読み解いていくことになる。以前は、自分で表現した記録の文章を消し｣｢代わりにユリ先生が言っていたことをそのまま書き込む｣ことや、｢飯ごう炊さんで作ったカレーがお母さんのよりおいしいと感じても、お母さんを悲しませてしまうと思って書かなかった｣ことなどが読み取れる。一方、以降は、｢描いた絵について自分自身で満足したり、先生の感想にも反論したり｣と｢人からの評価よりも自分の感じたままに表現することを大切にする｣ようになっている。
こうした｢姿勢の変化内容｣を的確にまとめていきたい。たとえば、｢以前は周りの人のことを考えて自分が感じたり思ったりしたことをそのまま表現することをしなかったが、以降は人からの評価よりも自分の感じたままに表現することを大切にする姿勢に変化した｡｣(89字)といった｢答え｣になる。
｢変化内容説明記述｣や｢相違内容説明記述｣では、｢ＡからＢ｣｢Ａ対Ｂ｣といったように、｢両者の対比｣が明確になるように説明することが肝要だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：５分＞

[問十二]　｢漢字の書きとり｣(４問)
(ａ)｢女子たちのモり上がる声が聞こえた｣＝｢盛(り上がる)｣⇒正解して当然。
(ｂ)｢少し体をチヂめた｣＝｢縮(めた)｣⇒｢文脈｣を正確につかみ、一画一画を丁寧に記すこと。
(ｃ)｢筆だけをゴムでタバねて｣＝｢束(ねて)｣⇒問題ないはず｡
(ｄ)｢カクセイ器越しに声を上げる｣＝｢拡声(器)｣⇒やや厄介か？ 知らなかった諸君は定着させておくこと。ちなみに、｢メガホン｣とも言う。
本年度を含めここ数年は平易なものが多い｡だからこそ、油断せずに細部に注意すること｡無論､本校志望者は｢全問正解｣が必須だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分＞