麻布中学校 入試対策
2020年度「麻布中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「知識」は一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。先ずは「語彙力」。麻布志望者はなぜか「語彙力」がないという傾向があるので、油断せず取り組んでほしい。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙力」は読解力につながるだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。特に、定番である「心情記述」を考えると、「心情語(心情表現)」に磨きをかけておきたい。「心情語」に限れば、テキストとしては「言葉力1200」(学研)がオススメ。
次に、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることはないが、「記述」には不可欠なのであなどってはいけない。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには8000字程度。しかも、解答時間は40分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。
出題は「小説」に限られているので、それに応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、ざっと読んでいく。「人物関係」「家庭環境」等の「状況設定」が複雑なものが多いので、前半はしっかり読みたい(「状況設定」は前半に述べられていることが多い)。
また、「心情」把握のために、「会話文」「地の文」それぞれの「心情表現」中心に押さえていく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみてもいい。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。麻布だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、少年・少女の成長物語で、「自立」「自由」「自分探し」といった哲学的テーマのものを選ぶといい。練習あるのみ。
そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい。
解法
「小説」特有の「解法」。そして、全ての文章に共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。特に、「心情に関する設問」がとても多いので、徹底的に習得しておきたい。
たとえば、「心情をめぐるスクエア」(「心情」は「セリフ」「ト書き」「動作」「情景」という4つの要素から多角的に読み取るという「解法」)等は必須だ。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「記述」は麻布の最大の合否ポイントだ。先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わっているかどうか等を確認しなくてはいけない。
何を「書く」か。「小説」の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その「小説」の「要約」を「テーマ」中心にまとめてみるのがとてもいい方法だ(麻布定番である最後の長文記述はその作品の「テーマ」に関する設問が多い)。100~150字程度で書いてみる。無論、内容は塾の先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。
次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけること。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要だ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、1つ当たりその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書きたいポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていく。「心情記述」「比喩換言記述」「情景説明記述」がよく出題されるので、それらを中心に練習しておきたい。
意識
重要ことは、常に何かを「意識」しながら学習することだ。何となく机に向っていてもダメ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切だ。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。麻布の問題では特に「設問」どうしが関連していることが多い。そのことを十分に「意識」すること。
また、「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことも、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2020年度「麻布中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
出典は宮下奈都「つぼみ」所収の「まだまだ、」(文字数約8700字)。
私たちにそっと寄り添い、ぶれない勇気を与えてくれる、6つの物語の一篇。
小問は全10問(解答数14)。内容は「説明記述設問」(9問。全て「字数指定」なし)、「選択肢設問」(2問)、「漢字の書き取り」(3問)。問題文は11分半ほどで読み切り、設問を48~49分で解きたい。
【大問一】「小説の読解」(「漢字の書き取り」と「選択肢」「説明記述」)
- 難度:標準
- 時間配分:60分
- ★必答問題
前へ進もうともがいている若き主人公たちの、みずみずしい世界のはじまり――私たちにそっと寄り添い、ぶれない勇気を与えてくれる6つの「これからの物語」の一篇。
本文では、活け花教室で中学時代の同級生である「朝倉くん」と再会した女子高生の「紗英(私)」が、「型」や「私らしい花」について思いを巡らし、自分自身を見つめながら心の成長を遂げていく姿が描かれている。
例年、「説明記述設問」では、「内容説明」「理由説明」「心情説明」がほぼ同じ程度の割合で出題されていたが、本年度は純粋な「心情説明」が出題されていない(例外なのか? 新傾向なのか? 要注意だ)。
尚、定番の「条件付き」の設問がいくつかある。無論、「条件」をいかに的確にクリアできるかが正否のポイントとなってくる。以下、具体的にいくつかの設問を検討してみたい。
※尚、本校では例年、「本文」全体に「5行ごと」に「行番号」が記されている。
[問一] 「漢字の書きとり」(3問)。
(a)「花材と華道具(かどうぐ)を籠(かご)にツんで自転車に跨(またが)ろう……」=「積(んで)」
⇒「文脈」を正確に読み取ること、
(b)「きれいですねぇ、なんてテキトウに誉(ほ)めて」=「適当」
⇒良い意味・悪い意味、ともに使われるので要注意、
(c)「フシギに思っていた」=「不思議」
⇒これは問題ないはず。
昨年度同様に平易なものばかり。だからこそ、油断せずに丁寧に記していきたい。無論、本校志望者は「全問正解」が必須だ。
<時間配分目安:1分以内>
[問二] 「内容説明記述」(字数指定なし。解答欄1行。1行=25~30字程度。以下同じ)。傍線部①「最初に見たときに気づかなかった」について、「『私』はどのようなことに『気づかなかった』のか」を説明する。
「同一場面」から「状況」を読み解いていきたい(「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」が大原則)。直前直後から、「私」は「朝倉くん」が「花を活けている」ところを見ており、その姿について「朝倉くんは,クラスで勉強していた姿より、校庭でボールを追いかけていた姿より、ここで花を活けている背中がいちばん凛々(りり)しい」と思っていることが分かる。したがって、たとえば、「朝倉くんは花を活けている姿がいちばん凛々しいということ。」(28字)といった「答え」になる。的確に「状況」を把握することが肝要。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「内容説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。傍線部②「紗英はお豆さんだからね、と笑う姉たちの声」について、「ここから『私』と姉たちの関係がどのようなものであったことがわかるか」を説明する。
「同一場面」で「状況」を確認する。直前から、傍線部は「幼い頃」のことだとすぐに分かる。また、3段落後には、「お豆さん」とは「小さくて、面倒をみてあげなきゃいけない子」ということで、「姉たちがなんでも引き受けてくれて」、「私」は「三姉妹の一番下」の「立場」を「喜んでいる子」で「のほほんと楽しかった」と説明されている。こうした内容から「関係」を「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「姉たちは三姉妹の一番下である『私』をかわいがり、なんでも面倒をみてくれ、『私』はのほほんと楽しんでいられたという関係。」(59字)といった「答え」だ。さまざまな「要素」を適切につなぎ合わせるようにまとめていくこと。
<時間配分目安:3分半>
[問七] 「条件付き換言説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。傍線部⑦「型を自分のものにしたい」について、「『型を自分のものに』するとはどういうことか」を説明する。「条件」は、「『型』がどのようなものかを明らかにしながら説明する」こと。
「換言説明」なので、「自分のものにする」をどのように言い換えて説明するかがポイントになる。直前直後から読み解いていく。前段落に「今は型を身につけるときなのかもしれない。いつか、私自身の花を活けるために」、同一段落には「型を身体に叩(たた)き込むよう、何度も練習する」とある。つまり、「自分のものにする」=「自分自身の花を活けるために、何度も練習して身につける」ということだ。
そして「条件」、「『型』がどのようなものか」は本文の随所で語られている。丁寧にピックアップしたい。179行目に「何百年もかけて磨かれてきた技」とあり、272行目では「数え切れないほどの先人たちの間で考え尽(つ)くされた定石」と説明され、297行目には「たくさんの知恵に育まれてきた果実みたいなもの」とある。これらをうまくつなぎ合わせて、最終的にまとめていくことになる。たとえば、「先人たちのたくさんの知恵に育まれて磨かれてきた技を、自分自身の花を活けるために、何度も練習して身につけるということ。」(58字)といった「答え」だ。
「換言説明記述」では、どの部分をどのように「言い換えるか」がカギになる。尚、本校に限らず、「条件」は「手がかり・ヒント」だと心得よ。
<時間配分目安:4分>
[問九] 「内容説明選択肢」(4択)。傍線部⑨「紗英の花は、じっとしていない。今は型を守って動かないけど、これからどこかに向かおうとする勢いがある」について、「ここで『朝倉くん』は、『私』の活け花についてどのように思っているか」を答える。
「選択肢問題」は「消去法」が大原則だ。先ずは「設問」だけで「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。傍線部は「朝倉くん」の言葉だ。したがって、「どこかに向かおうとする勢い」という表現の「原意」と結びつかないものを「消去」していく。
各選択肢の「文末」を確認する(「選択肢説明」のポイントとなる最重要要素は「文末」にある)。
(ア)「すばらしさに恐れをいだいている」、
(イ)「できばえに満足している」、
(ウ)「完成度にあせりを感じている」、
(エ)「可能性に魅力を感じている」。
「どこかに向かおうとする」のだから、「可能性」以外は「消去」だと判断できるはずだ。念のために、「魅力を感じているか」を確認する。直後で、「朝倉くん」は「俺、ちょっとどきどきした」と言っている。間違いない。他の部分の説明も特に誤ってはいない。よって、「答え」は(エ)だ。結果的に「一発消去」となった。「原意消去」、十分に活用すべし。
<時間配分目安:1分>
[問十(1)] 「条件付き内容変化説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。波線部「まだまだお豆さんでいられる」の「まだまだ」と、傍線部⑩「私もまだまだだ。いつか私だけの花を活けて、朝倉くんをはっとさせたい。姉のことなんか目にも入らないくらい私の花を見つめてくれたらいい」の「まだまだ」の「使い方のちがいから、自分に対する『私』の考え方がどのように変化していることがわかるか」を説明する。「条件」は、「本文全体をふまえて説明する」こと。
波線部にある「お豆さん」は[問三]で確認したように、「私」が「三姉妹の一番下」の「立場」を「喜んでいる子」で「のほほんと楽しかった幼い頃」のことで、自分自身に満足していたので、ここでの「まだまだ」は「もうしばらくの間は」という意味で使われていると判断できる。
それに対して傍線部では、異性として意識している「朝倉くん」が姉の「七葉」を見て「顔を真っ赤」にしたことを不満に思い、「私」は姉の弱点を並び立ててしまっている自分自身で見つめ直していることが、「本文全体」から読み取れる。つまり、ここでの「まだまだ」は、「人間として今は未熟だ」ということで、「もっと成長していきたい」と考えているわけだ。
こうした内容を的確にまとめていけばいい。たとえば、「三姉妹の一番下としてもうしばらくのほほんとしていたかった自分から、人間としての未熟な自分を成長させたいと変化している。」(59字)といった「答え」になる。
「変化説明記述」では、「変化後」だけを説明しても「変化」したかどうか不明なので、「A→B」と「変化の前後」をしっかりと説明する必要があることは記銘しておきたい。
<時間配分目安:5分>
攻略のポイント
●出題傾向は完全に確立しており、難易度もほぼ一貫している。合格ラインは35点ほどと推測できる(60点満点/過去12年間の「合格者平均得点率」は59.3%)。ちなみに、2020年度の4科目合計(200点満点)の合格者最低点は110点(55.0%)となっている。
●配点は「漢字」「選択肢」「抜き出し」が各2~3点、「説明記述問題」は各2~9点程度となっている。「漢字」「抜き出し」「選択肢」は平易なので、全問正解が基本。「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、どうにもピンとこない設問は「捨て問」にすること。勇気ある撤退は、結果として得策だ。そして、答えられる設問でいかに減点をなくすかが課題となる。「ポイントとなる要素」を外さずに「過不足なく」記す必要があるが、「設問条件」が「ヒント」になっている場合が多いので、正しく理解することを常に意識していたい。
●制限時間は60分。問題文のボリュームは6000~8000字(本年度は昨年度の増加傾向そのままに約8700字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要。
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