麻布中学校 入試対策
2021年度「麻布中学校の理科」
攻略のための学習方法
麻布中理科の満点は40点、長めの解説・データ・資料をもとに答える問題が中心である。基本知識を身につけることは当然。理科のみならず、他教科の知識を必要とする出題も見られる。
麻布中理科攻略のために必要なことは、日頃からの貪欲な知識の吸収があげられる。テキストに書かれてある知識だけでなく、ニュースで取り上げられる科学的な情報、身のまわりの自然や科学に興味を持つ姿勢が求められる。さらに言うと、それらの情報に対して自分なりの意見や考えを持ち、それをまとめるくらいの姿勢が欲しい。
問題の形式はあるテーマについてのリード文・データ・資料などを基にした設問に答えていくものが中心。そのテーマがユニークな点が1つの特徴でもあるが、持っている知識と提示されている情報に従って考えれば解答可能なものが中心である。
対策としては、知識が固まった秋以降に同タイプの問題演習に時間をかけることが必要である。過去問はもちろんだが、家庭教師に相談したうえで問題の選択を行うこともお薦めしたい。問題演習に際しては、時間も意識しながら取り組んで欲しい。
各分野の学習方法は以下の通り。
<分野毎の学習法>
生物分野 本年度は植物の種の運ばれ方がテーマであった。近年では、ニホンウナギ・動物の生殖活動・ヤンバルクイナなどがテーマとして取り上げられている。いずれも高度な知識を求めるものではなく、書かれてある情報を読み取りながらそれをヒントにして解答していくタイプの問題が中心である。この分野の学習方法としてまずは、テキストに書かれてある基本知識を早い段階で身につけることと合わせて、日頃から生物に関わるニュースや情報に興味の眼を向けて欲しい。遺伝や生殖、ウイルス・免疫など最近話題のニュースなどもテーマとして十分取り上げられる可能性がある。また、問題演習としては、一問一答形式の問題だけでなく、記述問題を含む総合的な問題演習に時間をかけたい。
地学分野 本年度は氷期と日本人の祖先がテーマで、地理や歴史の要素も含んだユニークな出題であった。ここ数年では、タイタン(土星の衛星)、岩石の風化、月の動き等がテーマとして取り上げられた。この分野においても、細かい高度な知識を問う問題よりも、与えられた情報に基づいて解き進める力が要求されている。とは言っても、天体・気象・地層・岩石等の基本的知識は夏までに完全に身につけて頂きたい。今後は、地震や火山、集中豪雨、日食や月食などがテーマとして取り上げられる可能性がある。天体や気象に関するニュースにも注意を怠らないで欲しい。
物理分野 本年は手回し発電機を中心とした電気についての出題であった。ここ数年では、光、電気、ものの運動、などに関する出題が見られた。単純な力のつり合いの計算というよりも、書かれてあるテーマを読みながら解き進めていくタイプの出題が中心である。この分野の学習方法としてまずは、力のつり合い、電気、光、音などの基本知識や性質は確実に理解すること。力のつり合いの計算問題も大切であるが、電気や光の性質の出題の可能性がかなり高いと考えて学習して欲しい。また、電気や光に関連する機器、発電など我々の暮らしと関連する内容についての出題も考えられる。日頃から科学に興味を持つことが大切である。
化学分野 今年度はものの溶け方と拡散に関する出題であった。ここ数年では、お菓子やコーヒーについて化学と結びつけて考えるといったユニークな出題が多い。この分野の学習方法としてまずは、溶解度と濃さ、水溶液や気体の性質といった基本知識は確実に身につけること。その上で、実験を通して考えさせる問題や記述を含む総合問題の演習に時間をかけて欲しい。過去問や同タイプの問題を家庭教師等に選択してもらい取り組んで欲しい。
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2021年度「麻布中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問数は4題、小問数は30題程度で40点満点。試験時間は50分で例年通りであった。適語を答える問題、記号選択問題が中心で、記述問題も含まれている。複雑な計算を必要とする問題は見られなかった。問題量がやや多く、問題文の読み取りや記述問題にかかる時間を考えると、50分というテスト時間は決して長くない。過去問や同タイプの問題演習は時間を意識して取り組んで欲しい。
【大問1】 植物の種の運ばれ方
- 難度:標準
- 時間配分:10分
- ★必答問題
問1 タンポポの種は風で運ばれやすいつくり、センダングサの種は動物のからだにつきやすいつくりになっている。
問2 オオバコの特徴についての選択肢問題。
問3 シシトウの辛さ・実の数・種の数についての調査結果を分析する選択肢問題。かなり紛らわしい選択肢があるので慎重に考える必要あり。
問4 記述問題。問題文を読むと、「鳥の仲間はカプサイシンによる辛さをほとんど感じない」と書かれてある。従って、トウガラシの実は鳥の仲間に食べられやすい。
問5 選択肢問題だがすべて選択する必要があり、やや紛らわしい。鳥は歯がなく、種が消化されずに糞として出される。また、鳥は飛ぶことにより種を遠くに運んでくれる。
植物の種の運ばれ方に関する出題。多少の知識は必要だが、問題文の読み取りをしっかり行い、書かれてある情報を基に考えることができるかどうかがポイント。選択肢問題の「すべて選び」が2問あり、いずれも迷う可能性あり。落ち着いて考えて欲しい。今回の入試の【大問1】~【大問4 】において、この【大問1】で確実に得点を稼ぎたい。満足に得点できなかったときは、同タイプの問題演習の中で、落ち着いて情報を読み取る練習を行って欲しい。
【大問2】 氷期・日本人の祖先
- 難度:難
- 時間配分:12分
問1 氷期が続く理由の説明で記号2者択一問題。日射が弱くなり氷が増えると、その氷は太陽光を反射するので、気温が下がる。
問2 氷期の終わりからの気温上昇についての理由説明問題。日射が強くなり海水温が上がると、海水に溶けきれなくなった二酸化炭素の温室効果により、気温が上昇する。
問3 海の面積:陸の氷のある部分の面積=7:3×0.2=35:3 海の高さが120m高くなったことより、その体積を120×35より4200とすると、溶ける前の氷の体積は4200÷10×11より4620 4620÷3 を計算して四捨五入すると、氷の厚さは1500m。
問4 現在より海水面が120m低かったときの海岸線を図に示す問題。
問5 問題文中に「約15000年前に終わった最後の氷期」とある。選択肢の中でこの時期に該当するのは土器しか考えらない。
問6 北海道・本州・沖縄・大陸に住む人々の特徴と近縁関係についての文章を完成させる選択肢問題。
問7 日本列島やその周辺に住む人々の由来を示した図の選択問題。問題文中のヒントとなる部分を読み取ること。「本州に住む人々は沖縄や大陸の人々と近縁」「最近になって海を渡って大陸からやってきた人々の子孫」が大きなヒントになる。
氷期や日本人の祖先についての出題。基本的な知識はもちろん必要だが、問題文の説明や図を読み取る力とそれを利用して考える力が必要。問3の計算問題、問6・7が特に難問。逆に、それ以外の小問で正答しておきたい。
【大問3】 ものの溶け方と拡散
- 難度:やや難
- 時間配分:13分
問1 濃さ10%の食塩水のつくり方、選択肢問題。
問2 水溶液の一般的な性質についての選択肢問題。
問3 一度水の中で拡散したインクは元の状態に戻らない→覆水盆に返らず
問4 8個の箱の中から●が入る場所を2か所選べばよいので、8×7÷2より、28通り。
問5 問題文中の「膜を通して野菜の内部にある水分が食塩のある外部に移動します」より、この膜は水は通しやすく食塩は通しにくい。
問6 問題文中の説明より、食塩が水に溶けると食塩の存在できる空間が広がり、状態の数が増える。
問7 キャベツの外部より内部の方が高いので、外部から内部に水が移動する。水を含んだキャベツの食感が「シャキシャキ」となる。
問8 水に溶ける粉をまくことにより、雪が融けやすくなり、融雪温度が低くなる。
問9 食塩が溶けている海水は、純粋な水に比べて凝固点が低くなり、0℃では凍らない。
濃さ・水溶液の性質等基本知識は必要であるが、問題文に書かれてある「拡散」についての考え方が理解できるかどうかがポイントとなる出題。ことわざ(国語)、場合の数(算数)も含めた総合力が試される出題。
【大問4】 電気・手回し発電機
- 難度:やや難
- 時間配分:15分
- ★必答問題
問1 電子レンジなどの家庭電化製品は、持ち運びの必要がなく、高い電圧を必要とするので、電気の供給源をコンセントにしている。
問2 近年では、家庭の屋根に設置したソーラーパネル等でも作られている。
問3 電池を直列につなぐと豆電球は明るく光る。並列に2個つないでも、電池1個の時と明るさは変わらない。
問4 間違いやすい選択肢問題。手回し発電機をゆっくり回したとき、豆電球は光ってなくても、わずかに電気は流れている。
問5 豆電球が完全に消えた、ということより、2つの乾電池を同じ極どうしをつないだことと同様の状況になったと推測できる。
問6 実験結果についての考察選択肢問題。「豆電球が消えた」→電流が減った、「Aと同じ速さで回転させた」→より強い電池としてのはたらきをするようになった、と考えられる。
問7 回転していた手回し発電機を手で止めてしまうと、この発電機は電池としての働きをしなくなり、単なる導線と同じになったと考えてよい。
問8 Aを回転させた時にゆっくり回転を始めたBを同じ向きにAと同じ速さで回転させると豆電球が暗くなったことから、BをAと逆向きに回転させると豆電球は明るく光ると考えられる。
問9 回転の速さが速い=流れる電流は少ない に注意。かかった時間が同じでも、流れる電流の多い方が電池の消耗度合いは大きい。
問10 洗濯機の電気使用効率に関する問い。
手回し発電機を中心とした電気に関する出題。手回し発電機や電気回路に関する基本知識は必要。その上で、問題文に書かれてある実験とその結果の読み取り力と考察力が試される出題。問10までと問いの数が多いこともあり、今回の理科の入試で大きな位置づけを持つ。
攻略のポイント
本校理科の入試問題は、与えられた資料・データ・解説文を理解し、それらを活用して解答する問題が中心となっている。テキストで学習する程度の理科の基本知識は必要で、知識があれば解答可能な問題も含まれるが、本校の理科では、その知識をどう活用するかが重要になる。
基本知識を確実に身につけることは麻布受験生として当然である。それに加え、身のまわりの自然や科学的現象・ニュースで取り上げられる科学や自然に関する情報に興味の目を向け、知識の蓄積を図ることも必要である。
問題演習としては、過去問や長めの問題文やデータ・資料を読み取った上で答えるタイプの問題を中心に取り組んで欲しい。解答に際しては、なぜその答えなのかを常に考えることが大切である。
また、国語・算数・社会と他教科の基本知識が必要となる問題も見られるが、これに関しては本校受験生であれば特別な対策は不要であろう。
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