｢上下水道･鉄道といった『公共のもの』の歴史的状況や現在の課題など｣についての｢リード文｣からの出題。｢公民｣｢歴史｣｢地理｣単元の基礎的問題から｢思考問題｣まで、｢地図｣、｢統計資料｣、｢図表｣、｢図版｣などに関しての難易とりまぜた小問が並んでいる。｢思考論述｣はもちろん、｢説明記述｣でも深い｢思考力｣が求められているので注意したい。以下、いくつかの｢設問｣を検証したい。

[問１]  ｢空所補充の人名･事項記述設問｣(全２問)｡｢歴史｣単元。｢リード文｣中の空所部(１)(２)にあてはまる｢人物名｣と｢適切な語句｣を答える。空所部前後の｢文脈｣から、それぞれの｢答え｣を特定していく。｢(江戸時代になると)たとえば、(１)が城下町としてつくった仙台には……｣⇒｢江戸時代｣の｢仙台｣＝｢仙台藩｣⇒無論、｢答え｣は｢伊達政宗｣だ。｢歴史｣単元の必須定着事項なので、できて当然。｢(江戸のまちでは)便所がくみ取り式で、排泄物(はいせつぶつ)は周辺の村で(２)として活用され……｣⇒｢江戸のリサイクル｣のことは知っているはず⇒｢排泄物｣＝人の｢糞尿(ふんにょう)｣を｢周辺の村｣(農村)で活用するのだから、そう、｢答え｣は｢肥料｣。本校では、こうした基礎的な問題は絶対に外してはならない。

＜時間配分目安：全問で２分弱＞

[問２(２)]　｢図についての選択肢設問｣(４択)。｢地理｣単元。｢リード文｣中にある｢図１｣(宮城県の地図。県内のおもな河川が示されている)について、図中の(Ａ)～(Ｄ)は東日本大震災の津波被害を後世に伝えるための施設や｢津波遺構｣の場所を示したものだが、(Ｂ)にあたるものの｢名称とその説明文｣を答える。｢名称とその説明文｣それぞれの｢キーワード｣で場所を特定していきたい。選択肢(あ)｢閖上(ゆりあげ)の記憶｣…｢仙台平野の海岸近く｣⇒｢仙台平野｣に面している(Ｄ)だとすぐに分かる。(い)｢大川小学校｣…｢人口堤防のそば｣｢多数の小学生が被害にあった｣⇒｢大川小学校｣を知識として知っていれば別だが、｢場所の手がかり｣は不明⇒保留。(う)｢３がつ11にちをわすれないためにセンター｣…｢仙台市内にある｣⇒｢仙台湾｣近くの(Ｃ)だと判別できる。(え)｢気仙沼向洋高校(旧校舎)｣…｢リアス海岸の港に近い位置｣⇒｢気仙沼｣で｢リアス海岸の港｣であれば(Ａ)に決まっている。結果として(Ｂ)以外は判別できたことになる。よって、｢答え｣は｢保留｣だった(い)になる。尚、｢私が知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えること。また、｢選択肢設問｣では｢消去法｣を十分に活用したい。

＜時間配分目安：１分強＞

[問５(１)]  ｢下線部についての条件付き理由説明記述設問｣(字数指定なし､｢25字ほど｣の解答欄)｡｢歴史｣単元(｢思考要素｣あり)。｢リード文｣中の下線部(ウ)｢明治時代には他の設備や制度と同じく、水道事業も近代化が始まります｣について、｢明治政府は税金をかけて『表１』のような官営施設を建設し、殖産興業政策を行い、しばらくして、こうした施設は民間に払い下げられた｣が、｢なぜ明治政府は『表１』で挙げられた施設をつくったのか｣を説明する。｢条件｣は｢施設で生産されたものを考えて説明する｣こと。早速、｢表１｣の施設をチェックする。｢品川硝子(ガラス)｣･｢札幌麦酒(ビール)醸造所｣･｢播州葡萄(ブドウ)園｣･｢神戸阿利襪(オリーブ)園｣。こうした施設がつくられた理由など誰も知らない。そこで｢思考｣する。｢ガラス｣･｢ビール｣･｢ブドウ｣･｢オリーブ｣⇒｢官営施設｣ということはそれまでは日本になじみの薄かった｢西洋のもの｣⇒｢殖産興業｣なので｢明治時代前期｣⇒政府は｢近代化｣｢西洋化｣を進める＝｢欧化政策｣……。このように｢思考｣をつなげていきたい。あとは簡潔にまとめるだけだ。たとえば、｢近代化のために欧化政策で西洋化を進めていたから｡｣(24字)という｢答え｣だ。多角的に｢自らの知識｣をつなげて｢思考｣していくことが肝要だ。

＜時間配分目安：３分半＞

[問７]　｢下線部についての空所補充組み合わせ選択肢設問｣(６択)。｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部(オ)｢水道は国や地方公共団体が責任を負わなくてはならない｣について示されている｢文章｣(水道事業に関する現在の省庁ごとの役割分担)の空所(Ａ)～(Ｃ)にあてはまる｢省庁の組み合わせ｣として｢正しいもの｣を答える。空所前後は、｢上水道は水質が重要だとして(Ａ)が、下水道は都市計画に関係するため(Ｂ)が、工業用水は(Ｃ)がそれぞれ担当し……｣となっている。候補の省庁は｢環境省｣･｢厚生労働省｣･｢総務省｣･｢国土交通省｣･｢経済産業省｣。知っている事項で特定していきたい。たとえば、(Ｃ)の｢工業用水｣⇒｢産業｣に結びつくので｢経済産業省｣だ。この段階で選択肢は(う)か(か)の２択になった。(Ｂ)はともに｢国土交通省｣。(Ａ)は(う)が｢総務省｣で(か)は｢厚生労働省｣⇒｢水質｣なので無論、｢厚生労働省｣だ。したがって、｢答え｣は(か)になる。尚、｢組み合わせ設問｣では、分かりやすい事項で一気に選択肢を絞り込むことが肝要だ。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問８]  ｢下線部についての条件付き内容説明記述設問｣(字数指定なし､｢50字ほど｣の解答欄)｡｢思考問題｣。｢リード文｣中の下線部(カ)｢都市化がすすむなか、その原則(＝水道は国や地方公共団体が責任を負わなくてはならない)では限界があるという声があがっていました｣について、｢都市化がすすむと、市町村単位の水道事業ではどのような問題がおこるか｣を説明する。｢条件｣は｢示されている『図２』をみて気づくことを説明する｣こと。先ずは｢条件｣である｢図２｣をチェック。水道を川から取水している｢Ａ市｣と、隣接する｢Ｂ町｣(井戸から取水)の模式図で、｢都市化がすすむ前と後｣がしめされている。｢前｣では両市町の｢市街地｣がそれぞれの｢幹線道路｣沿いのみにあるが、｢後｣では｢Ａ市｣の｢市街地｣が拡大し｢Ｂ町｣にまで越境していることに気づく。こうなると、どのような問題が起こるのか？ 下線部の｢原則｣によれば水道はそれぞれの｢市町村｣で整備することになる⇒両市町にまたがっている地域の整備はどうするのか？⇒両市町の間で｢整備方法｣｢費用負担｣｢給水量分配｣などをめぐって主張が対立する可能性⇒整備が遅れ住民が困る状況が生じる……。このような問題が考えられるはずだ。あとは、内容を整理して過不足なくまとめていきたい。たとえば、｢市町村にまたがって市街地が広がると、各市町村で整備方法や費用負担をめぐって対立が生じるといった問題。｣(50字)という｢答え｣だ。｢設問｣｢リード文｣｢図版｣等々、与えられているあらゆる情報を組み合わせて｢思考｣する必要があると心得よ。

＜時間配分目安：４分＞

[問９]  ｢下線部についての統計資料読み取り内容説明記述設問｣(字数指定なし､｢80字ほど｣の解答欄)｡｢思考問題｣。｢リード文｣中の下線部(キ)｢日本の水道事業も21世紀になって民営化が本格的に検討され始め｣について、｢民営化が本格的に検討され始めた背景には、近年の水道事業が抱えているいくつかの問題がある｣が、示されている｢『図３』･『図４』から読み取れる問題｣を説明する。尚、設問には｢水道の料金収入は使用料に応じて決まり、水道の維持管理費用は家屋や建物の数に関わって増減する｣と付記されている。それぞれの｢図｣を確認し問題点を洗い出す。｢図３｣は｢日本の水道管の管理状況｣(｢管路経年化率｣と｢管路更新率｣の2007～16年の経年変化を示した折れ線グラフ)⇒前者は｢水道管の総延長にしめる耐用年数を超えた水道管の割合｣のことで、6.3%から15.1%へと増加。後者は｢水道管の総延長にしめる新しくつけかえた水道管の割合｣のことで、約0.9%から約0.8%へと減少している⇒｢耐用年数を超えた水道管が多くなっている一方、古い水道管がそのまま使われているものが多い｣ということが読み取れる。｢図４｣は｢日本の人口･世帯数の変化と2015年時点の予測｣(1980～2040年の経年変化を示した折れ線グラフ)⇒前者は2005年以降減少に転じ、予測でも2040年まで減少し続けている。後者は2025年頃までは増加し、その後は減少していくと予測している⇒｢人口減少で水道使用量が減ることで料金収入は減少するが、世帯数はあまり減らないことで維持管理費用はかかり続ける｣ことが読み取れる。こうした内容を整理して過不足なくまとめていきたい。たとえば、｢人口減少で水道料金収入は減少し続ける一方、世帯数はあまり減らずに維持管理費用はかかり続け、耐用年数を超えた水道管のつけかえも費用的に難しい状況が続くという問題｡｣(80字)という｢答え｣だ。｢統計資料読み取り｣では、自分勝手な解釈をするのではなく、とにかく｢数字｣や｢傾向｣｢特徴｣などを正確に読み取ることが大前提になる。

＜時間配分目安：４分＞

[問10(１)]  ｢下線部についての理由説明記述設問｣(字数指定なし､｢30字ほど｣の解答欄)｡｢思考問題｣。｢リード文｣中の下線部(ク)｢地方公共団体が水道事業の最終的な責任を持ちながらも、経営自体は民間企業に任せて効率化できる仕組みづくり｣について、示されている｢図５｣のような形で｢公共施設の運営を民間企業の資金や技術を利用してサービスの向上につなげようとする動きがある｣が、｢地方公共団体と民間企業の運営契約が長期(20～30年間)なることが多い理由｣を説明する。こうした仕組みは｢ＰＦＩ｣(プライベート･ファイナンス･イニシアチブ)と呼ばれ、｢公共施設等の設計･建設･維持管理および運営に、民間企業の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図る｣もので、法律が整備されており全国各地のさまざまな分野で実施されている。｢図５｣は｢水道事業における民間企業の運営例｣を示した模式図だ(尚、次に示している図は設問の｢図５｣を簡略化したもので実際とは異なっているので、あくまでも｢参考図｣としてとらえてほしい)。

さて、なぜ｢運営契約が長期になる｣のか？ ｢リード文｣全体からも分かるように、｢水道事業｣はあくまでも｢公共サービス｣であって、｢もうけ｣(利潤)を出すことは想定されていない。一方で民間企業は｢利潤追求｣が最大の目的だ。したがって、いかに民間企業が事業を効率化できたとしても｢利潤｣をあげるためには他の事業に比べて長期間を要することは必然だ。また、設備工事や維持管理を考えても、長期的な運営計画が求められることも推測できる。こうした要因によって｢運営契約が長期になる｣わけだと｢思考｣したい。たとえば、｢確実に利潤をあげ安定した運営には長期的な見込みが必要だから｡｣(30字)という｢答え｣だ。なかなかの難問だ。｢思考力｣を究める練習が不可欠だと心得よ。

＜時間配分目安：４分半＞

[問11]  ｢下線部についての長文思考論述問題｣(｢100～120字以内｣指定)｡｢思考問題｣。定番の｢本校最後の関門｣だ。下線部(ケ)｢公共のもののあり方について考えることは、わたしたちがどのような社会を目指すのかを考えることであるともいえるでしょう｣について、｢文中にあるように、現代の社会では公共のもののあり方が問われている｣が、｢国や地方公共団体が担うのか、民間企業にゆだねるのかに関わらず、わたしたちがどこまでを公共のものとして『みんな』で支え合うか、どこから個人の問題と考えるのかが問われているが、個人で抱えているようにみえる問題でも『みんな』で支えることで解決するものもある。そのような問題を一つ挙げ、それを解決できるような『みんな』で支える仕組み｣を考え、｢100～120字｣｣で論述する。｢(受験生が)考える仕組み｣なので無論、何を論じてもいいわけだ。ただ、｢何でもいい｣となるとかえってどうしていいか分からなくなるものだ。そこで、｢問題文｣や｢リード文｣、そして、ここまでの小問なども全て｢手がかり･ヒント｣と捉え、先ずは何か糸口を見つけたい。本問では、とても長い｢設問内容｣が突破口になるはずだ。｢個人で抱えているようにみえる問題｣⇒｢子育て｣や｢介護｣、そして、最近特に問題になっている｢ヤングケアラー｣(本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。十分な教育が受けられないといった問題がある。｢時事ネタ｣でもある)……。たとえば、こうした問題を思いつきたい。｢『みんな』で支えることで解決する新たな仕組み｣⇒現在の｢社会保障制度｣では不十分⇒｢人やお金が行き届くような国の制度･仕組み｣(公助)、また、｢地域のコミュニティで支えるような仕組み｣(共助)……。たとえば、こうした｢仕組み｣が考えられるはず。こうした要領で｢君の考え｣を進めていって論述していけばいい。その際、｢問題文｣や｢条件｣に即して｢論述の形式｣をあらかじめ定めておくとスムーズに論じられる。本問では、｢～といった問題を解決するための、～といった新たな仕組み｣といった具合だ。このように、受験生各自が設問に応じて具体的に思考して論述をまとめていきたい。お約束の本校の｢長文思考論述問題｣では、｢問題文｣や｢条件｣を突破口として考えていくことが求められている。尚、｢時事ネタ｣がテーマになることが多いので、常にアンテナを張っておくことが対策にもつながると心得よ。

＜時間配分目安：全問で５分半＞