｢音楽コンクール｣を心待ちにしている中学３年の｢わたし｣と、陸上部員の｢加藤くん｣、ふたりのほのかな恋心を描いた物語。
本文は、家の庭に生えている｢ゴリづらの木｣に邪魔をされ気まずい別れ方をしたその翌日の学校での場面。
分かりやすい文章で内容も容易に理解できるはずだ。｢抜き出し｣などに江戸川取手らしさが表れている。
以下、いくつかの｢設問｣を確認してみたい。

[問一]　｢語句の空所補充選択肢｣(４問/４択)
本文中の｢空所　　Ａ　　～　　Ｄ　　｣に当てはまる言葉を答える。
前後の｢文脈｣から内容を特定した上での｢語句の知識問題｣｡
選択肢は、
(ア)｢誇らしげに｣、
(イ)｢ごまかすように｣、
(ウ)｢うらめしげに｣、
(エ)｢取り繕うように｣｡
(イ)(エ)の｢意味｣が紛らわしいが、正確に理解してさえいれば｢文脈｣から特定できるはずだ。
｢答え｣としては、
　　Ａ　　＝｢(エ)｣、
　　Ｂ　　＝｢(ウ)｣、
　　Ｃ　　＝｢(ア)｣、
　　Ｄ　　＝｢(イ)｣。
｢正確な語彙力の養成｣に努めること。

＜時間配分目安：２分＞

[問二]　｢理由説明の抜き出し｣(１文指定)
傍線部１｢加藤くんは、逃げ出すように走り出した｣について、その｢理由｣が｢推測できる１文の最初の５字｣を抜き出す。
｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。
｢内容｣は｢逃げ出す理由｣｡｢推測｣とあるので直接的に｢理由｣は説明されていないということだ。
｢範囲｣は｢同一場面｣(｢小説は同一場面に根拠あり｣が｢小説｣の｢最重要解法｣)｡｢逃げ出す｣という｢動作｣の前にその｢きっかけ｣があるはずだ。
｢空所　　Ａ　　｣の直前に、｢自分のてのひらの上に重なっている加藤くんの手に気づいて、あわてて振りほどいた｡｣という１文がある。｢加藤くん｣が｢重ねた手｣を｢わたし｣が｢振りほどいた｣⇒｢加藤くん｣は｢拒否されたと感じる｣⇒｢逃げ出す｣、つながる。従って、｢答え｣は｢自分のての｣となる。
｢抜き出し｣では｢内容｣把握と｢範囲｣の絞り込みがポイントだ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問三]　｢熟語の読み｣(｢ひらがな｣指定)
傍線部２｢仏頂面｣の｢読み｣を答える。｢答え｣は｢ぶっちょうづら｣｡｢不機嫌な顔｣ということだ。知らなかった諸君は覚えておくこと。江戸川取手ではやはり、完璧な｢知識｣の定着が求められている。

＜時間配分目安：30秒以内＞

[問七]　｢内容説明選択肢｣(４択)
傍線部６｢さっそく先生に喧嘩を売ってるのか｣について、｢どういうことに対して言ったのか｣を答える。
傍線部は｢鶴野先生｣の｢セリフ｣で、その｢きっかけ｣は、｢わたし｣が｢薄茶色の後頭部(＝加藤くん)を盗み見た｣ことだ。つまり、｢(加藤くんを)盗み見た｣ことに対して｢言った｣ということになる。
｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡
各選択肢の｢文末｣(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)が、｢(加藤くんを)見た｣に結びつかないものを｢消去｣する。
選択肢は、
(ア)｢寝たふりをしていたこと｣、
(イ)｢加藤くんと一緒に帰ったこと｣、
(ウ)｢ふてくされた態度をとったこと｣、
(エ)｢先生の話を聞いていないように見えたこと｣｡
であれば、｢先生の方を見ていないこと｣を説明している(エ)以外は｢消去｣だと判断できるはずだ。(エ)は他の部分の説明も特に誤ってはいない。従って、｢答え｣となる。
｢原意｣で｢一発消去｣、時間をかけずに正解できる。十分に活用すべきだ。

＜時間配分目安：１分以内＞

｢この世界はどのように創造されたのか？｣という｢人類の歴史始まって以来の疑問｣、かつては｢宗教｣や｢哲学｣が｢答え｣を出していたが、現在では科学としての｢宇宙論｣の｢ビッグバン理論｣で説明できると述べている。
本来は難解な｢理論｣だが、平易な表現で説明されているので理解しやすいはずだ。
江戸川取手お得意の｢抜き出し設問｣が並んでいる。
それも含めて、いくつか検証してみる。

[問二]　｢語句の空所補充記述｣(｢漢字２字｣指定)
本文中の｢空所　　Ｘ　　 ｣に当てはまる言葉を答える。
｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要｣という｢重要解法｣)で｢手がかり｣を求める。
直前は｢世界の始まりや時の始まりについての神話は多いが｣、直後は｢　　Ｘ　　的広がりについては少ない｣となっている。つまり、｢多い｣⇔｢少ない｣という｢対の文脈｣になっており、前者は｢時(の始まり)｣で後者が｢　　Ｘ　　的広がり｣ということだ。
　　Ｘ　　は｢時｣と｢対｣であり｢広がり｣と結びつく｡であれば、｢時間｣⇔　　Ｘ　　＝｢空間｣だと考えたい。
｢文脈｣を踏まえた上で｢知識｣を活用していくことが重要だ。

＜時間配分目安：１分＞

[問五]　｢換言説明の抜き出し｣(３字指定)
傍線部２｢ビッグバン｣について、｢宇宙論におけるビッグバンを日本語に言い換える｣場合の｢言葉｣を抜き出す。
｢抜き出し内容｣はそのままのはずだが、わざわざ｢宇宙論における｣という前提があるのが気になる。
｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認すると、直前に｢さて｣とある。｢話題転換｣だ(｢接続詞｣には常に注意すること)｡つまり、これより前とは無関係ということだ。現に、前では｢経済用語としての『ビッグバン』｣が説明されている(そこに引きずられると戸惑うばかりで時間の無駄だ)｡
｢宇宙論｣としての説明は次段落以降なので、そこが｢抜き出し範囲｣になる。２段落目冒頭に｢ビッグバンという言葉はホイルの発明で｣｢安っぽい『大爆発』モデルとさげすんで呼んだのが最初｣とある。
つまり、｢ビッグバン｣を最初は｢安っぽい『大爆発』モデル｣と呼んだ⇒｢ビッグバン｣＝｢大爆発｣、｢字数｣も合致するので｢答え｣だ。
｢設問｣は正確に読み取り、勝手な｢誤解｣で｢自爆｣しないようにすること。

＜時間配分目安：２分＞

[問七]　｢内容説明の条件付き抜き出し｣(16字指定)
傍線部４｢宇宙年齢の矛盾｣について、筆者は｢どういう点を矛盾と述べているのか｣が分かる｢16字の最初の５字｣を抜き出す。
｢条件｣は｢宇宙年齢が～という点｡｣に当てはまるようにすること。
｢抜き出し内容｣は｢宇宙年齢が矛盾している点｣、｢範囲｣は｢同一意味段落｣(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落に根拠あり｣が｢基本的解法｣)｡
｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣から、｢宇宙年齢の矛盾｣＝｢ビッグバンモデルの難点｣と判明し、｢難点｣については傍線３の段落の最後に、｢宇宙の年齢が｣｢地上の岩石の年齢よりはるかに若い｣という｢決定的な難点があった｣と説明されている。これだ。｢字数｣も合致する。よって、｢答え｣は｢地上の岩石｣となる。
｢抜き出しの手順｣を着実に踏んでいくことが｢正解｣への近道だと心得よ。

＜時間配分目安：２分＞

老人が同じ思い出話を何度も繰り返すのは｢心残り｣に結びついているからだと指摘し、そこからその人の全体像が見えるとして、筆者自身の｢心残り｣のエピソードを述べている。
前半は心理学的な抽象的説明でやや戸惑うかも知れないが、後半は子どもの頃の具体的な出来事を述べていて分かりやすい。
江戸川取手の｢クライマックス｣、｢長文要約記述｣が最後に控えている。が、最初の｢漢字の読み｣に｢伏兵現る！｣といった手強さがある。
それらについて検討してみよう。

[問一]　｢漢字の読み｣(全５問)｡
傍線部
(ア)｢顕著｣＝｢けんちょ｣
はともかく、
(イ)｢四方山話｣＝｢よもやまばなし｣、
(ウ)｢愛惜｣＝｢アイセキ｣、
(エ)｢嘆息｣＝｢タンソク｣、
(オ)｢台詞｣＝｢セリフ｣
に関しては手が止まってしまわないか？ 無理もないのだが、改めて、江戸川取手では｢ハイレベルな知識｣が求められていると認識しておきたい。

＜時間配分目安：２分＞

[問七]　｢条件付き要約記述｣(80～100字以内指定)｡
｢筆者の思い出｣について述べている【 】部分を、｢出来事がよくわかるように｣要約する。
｢条件｣は、｢書き出し｣を｢私たち三人は｣とし、要約の中に｢Ａの名前｣｢窃盗の嫌疑｣｢後ろめたさ｣という言葉を入れること。
江戸川では避けて通ることのできない｢最後の関門｣であり｢鬼門｣。ここをクリアしなければ、門はくぐれない。
ただ、恐れることはない。｢範囲指定｣と｢条件｣が｢手がかり｣｢ヒント｣だ。
ここでは｢範囲｣は９段落に及ぶ。だが、｢出来事がよくわかるように｣とある。｢出来事｣に限定すれば後半の４段落だけだ。そこをまとめればいい。
そして、｢出来事｣なので、先ずは｢いつ｣｢どこで｣｢何が｣あったかを中心にして、｢Ａの名前｣｢窃盗の嫌疑｣｢後ろめたさ｣という｢キーワード｣でつないでいくことになる。
であれば、｢日曜日｣の｢デパート｣⇒｢窃盗の嫌疑｣をかけられる⇒｢誘導尋問作戦｣により、実際は何もしていない｢Ａの名前｣を｢口に出してしまった｣⇒｢自分のしでかしたこと｣の｢大きさがわかる｣⇒｢Ａ｣に対する｢後ろめたさ｣を抱えることになった。
こうした｢要素｣がつながるはずだ。あとは、｢過不足なく｣まとめればいい。
例年｢同じパターン｣での出題。当然ながら｢合格者｣となる江戸川取手志望者は万全の対策をして臨んでいる。
｢要約｣とは何かを正しく習得しまとめ方の｢解法｣を応用できれば、江戸川取手の｢鬼門｣は｢入学の門｣になるということだ。