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江戸川学園取手中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2018年度「江戸川学園取手中学校の国語」
攻略のための学習方法

[知識]
「江戸川取手の国語」での攻略ポイントのひとつが、「総合的知識問題」。
さて、どうするか? 当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ずは「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚える。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。また、過去問や演習問題を実施する際、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。指定字数の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。直接出題されることもあるし、「要約記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも「要約内容」が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「語彙力」「文法力」強化用テキストとしては、「言葉力1200」「言葉力ドリル」(共に学研)「でる順過去問 ことわざ・語句・文法」(旺文社)等がオススメ。

[速読]
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で10000字以上。解答時間は60分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。こうした手法によって、江戸川取手おなじみの「抜き出し問題」にも的確に対処できるようになる。これらのコツは塾でも教えてくれるはず。教えてくれなければ、自分から聞いてみるという積極性がほしい。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
江戸川取手に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしたい。

[解法]
前述したように、江戸川取手の「難問」に勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。
そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして「解説」を聞いて納得した。以上終了ではダメ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。
「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

[記述]
「江戸川取手の要約記述対策」は前述の通りだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。
そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要がある。では、何を「書く」か? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。80~100字で書いてみる(当然、江戸川取手の「要約記述」を意識する)。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「要約記述」で得点を左右する「段落の中心文」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「中心文」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。

[意識]
どのような状況でも、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。なんとなくと机に向かっていても無駄。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが必要。
そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」するようにして学習したい。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」に合致しているか? 「細部」は大丈夫か? 「必要な要素」は満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。
60分という時間で解き進めていかなくてはならない江戸川取手では、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2018年度「江戸川学園取手中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「小説」、出典は榊一郎「カタナなでしこ」(文字数約3300字)。小問は全7問(解答数10)。「抜き出し」「空所補充」(合わせて解答数7)、「選択肢」、「漢字記述」、「総合的知識問題」(「慣用句」など)。問題文は4分強で読み切り、設問を12~13分で解きたい。

大問は「論説文」、出典は羽生善治・NHKスペシャル取材班「人工知能の核心」(文字数約2800字)。小問は全9問(解答数14)。「抜き出し」「空所補充」(合わせて解答数11)、「選択肢」、「総合的知識問題」(「難解語句」「慣用表現」など)。問題文は3分半ほどで読み切り、設問を15分程度で解きたい。

大問も「論説文」(6つの「図表」添付)、出典は香取照幸「教養としての社会保障」(文字数約2400字)。小問は全10問(解答数14)。「抜き出し」「空所補充」(合わせて解答数4)、

「選択肢」、「数字記述」、「説明記述」(「10字以内」指定)、「本文要約記述」(「80~100字以内」指定)。問題文は3分程度で読み切り、設問を20数分で解きたい。

【大問一】「小説の読解」(「総合的知識問題」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:17分

高校生の「千鶴」は、祖父の形見の中に一振りの刀身だけの「日本刀」を見つけ、同級生の「紗和子」「鏡美」「音々」と一緒に、無くなってしまった「刀の拵(こしら)え」を創作することになる――大切な何かを見つけたり、見失ったり、繋(つな)がったり、離れたり、女子高生が「初めて」に挑戦する青春小説。本文では、「鏡美」が、「秀俊」のもとで刀の「鍔(つば)」づくりを学び、完成させるまでの様子が描かれている。分かりやすい文章なので、内容は理解できるはず。「空所補充」「抜き出し」が連なり、「理由説明」の「選択肢設問」も3連続という特異な設問構成だ。以下、いくつかを確認してみたい。

[問一] 「語句の空所補充選択肢」(全3問/3択)。「総合的知識問題」。
「文脈」からの「語句の意味」の判別だ。本文中の空所部 A  C を埋める「適切な語句」を答える。

各選択肢は、(ア)「唖然」、(イ)「当然」、(ウ)「平然」。各空所前後の「文脈」から「答え」を特定していきたい。

「秀俊は……焼き入れもやって A 、と考えている様子なので鏡美としては『それって何?』とも尋ねにくかった」⇒「鏡美が尋ねにくかった」のは「秀俊が当然だと考えていたから」だと判断できるはずなので、 A (イ)だ。

「(鏡美は)秀俊がガスバーナーと小型のボンベを持ってきたのを見て、 B となった。……秀俊は、……鏡美が驚いていることのほうが不思議そうであった」⇒「鏡美」は「驚いている」ので、「思いがけない出来事に驚き、あきれて声も出ないさま」を表す「唖然」がふさわしい。 B (ア)

「秀俊は C とそう言った」⇒無論、残りは「平然」しかないのだが、念のために確認する。すると、ここは「文脈」以前に、「文」として「平然」以外はあてはまらないことが分かる。よって、 C (ウ)となる。

尚、本問での「語句」はさほど難解ではないので、本校志望者は誰もが知っていなくてはいけない。

<時間配分目安:3問で1分半>

[問二] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「何やら嬉しそうに笑った」について、「それはなぜか」を答える。

「選択肢設問」は「消去法」が原則。
先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、「嬉しそうに笑った」ことの「直接的理由」として結びつかないものを「消去」することになる。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(ア)「おかしかったから」⇒「嬉しそうに笑った」、
(イ)「わかったから」⇒「嬉しそうに笑った」、
(ウ)「感じたから」⇒「嬉しそうに笑った」、
(エ)「意気込んだから」⇒「嬉しそうに笑った」。
「笑った」のであれば当然、(ア)以外は「消去」だ。最終確認として、(ア)の他の部分の説明をチェックする。

「鏡美が誤った知識を常識だと言っているのが」とある。「傍線部一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で「文脈」を確認すると、直前は「……、一瞬、秀俊は眼を輝かせて鏡美を見つめ……」となっている。あれれ、「誤った知識を常識だと言っている」ことに対して、「眼を輝かせて見つめ……」という反応はいくらなんでも不自然だ。ここで、ハタと気づかなくてはいけない。そもそも、「嬉しそうに」「笑った」のだ。「おかしくて」「笑った」のではなかった。みごとにひっかかったということだ。

結果、(ア)は逆に「消去」で、他の選択肢の「文末以外」を確認することになる。(イ)「(鏡美が)思った以上に前向きになっている」、(ウ)「(鏡美が)言い訳をしている」、(エ)「鏡美の知識が中途半端」。「眼を輝かせて見つめ……」「嬉しそうに」「笑った」のだから無論、(ウ)(エ)は「消去」できるはずで、したがって、「答え」は(イ)となる。たまにはこのようなこともあるが、「選択肢設問」では「原意消去」が大前提であることには変わりない。
尚、本校に限らずこうした「ひっかけ問題」はあり得るので十分に注意すること。

<時間配分目安:2分半>

[問四] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(3)「鏡美は感心した」について、「それはなぜか」を答える。

当然、「原意消去」から。ここも「理由説明」なので、各選択肢の「文末」と照合し、「感心した」「直接的理由」として結びつかないものを「消去」していく。
(ア)「感激したから」⇒「感心した」、
(イ)「片付いたから」⇒「感心した」、
(ウ)「実感したから」⇒「感心した」、
(エ)「実際に感じられたから」⇒「感心した」。

「感心した」のだから、(ア)(イ)は「消去」で問題ない。ここで2択になった。残りの他の部分の説明を確認する。(ウ)「自分にもしっかり実力がついていると」、(エ)「知識として知っていたことが」。「傍線部一文一部の法則」でチェックすると、直前に「確かに手応えが違うように感じて」とある。であれば、「答え」は(ウ)ではなく(エ)だと判別できるはずだ。「原意消去」→「解法消去」、本問では「段階的消去」を活用した人になる。

<時間配分目安:1分強>

[問六] 「漢字の空所補充記述」(「漢字1字」指定)。「総合的知識問題」。「慣用句」。
傍線部(5)「□の泡」の空所を埋める「適切な漢字一字」を答える。

この時点で、「答え」は「水」と断定したい。本校志望者であれば、「努力・苦心がすべてむだになること」という意味の「水の泡」は知っていて当然だ。念のために空所前後を確認すると、「苦労が、□の泡になる」となっているのでOKだ。本問は、本校が求める「語彙レベル」の典型だ。もし定着していなかった諸君がいるならば、「知識」が不足していると認識し、精進せよ。

<時間配分目安:30秒>

[問八] 「比喩表現の換言抜き出し」(「6字」指定)。
傍線部(7)の「良い感じに伸びていた鼻」とは、「鏡美のどのような心情を表現した言葉か」を「六字」で抜き出して答える。

「抜き出し」では、「抜き出し内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞り込んで探していくことがポイントだ。
先ずは「内容」の把握だが、傍線部は「比喩表現」でここだけでは分かりづらい。「傍線部一文一部の法則」で「文脈」を確認すると、直後に「秀俊の一言でへし折られた」とある。「伸びていた鼻」が「へし折られた」となれば、「鼻が高い」という「慣用句」を思い浮かべられるはずで、「伸びていた鼻」=「得意になっていた」という内容だと判断できる。
次に「範囲」だが、「同一場面」となる(「小説」では「同一場面」の「直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。丁寧に「同一場面」を探していく。すると、傍線部の「会話のやりとり」の前半に、「彼女(鏡美)の顔が、何だか、おもしろいし、誇らしい気分にもなれた」という部分がある。「字数」も合致する。ここだ。「答え」は「誇らしい気分」だ。「抜き出し」では、「内容把握」→「抜き出し範囲特定」という順序で探していくことが肝要。

<時間配分目安:1分半>

【大問二】「論説文の読解」(「総合的知識問題」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:19分

もはや人間は「人工知能」に勝てないのか? そもそも勝たなくてはいけないのか――「AI(人工知能)」をテーマとしたテレビ番組の「NHKスペシャル『天使か悪魔か――』」の取材をもとに、天才棋士・羽生善治が「人工知能」と真正面から向き合い、その核心に迫っている。本文では、「人工知能」と「創造性」の関係、「人工知能」が「時間」の概念を獲得できるかについて論じている。タイムリーなテーマであり、内容も分かりやすい。「空所補充」と「理由説明選択肢」が連続し、それらの中に「総合的知識問題」が混在している大問だ。いくつかの「設問」を検証してみる。

[問二] 「漢字の空所補充記述」(「漢字1字」指定)。「総合的知識問題」。「語句の意味」。
傍線部(1)「□機質」の空所を埋める「適切な漢字一字」を答える。

これはすぐにはピンとこないかも知れない。空所前後を確認する。「全てのプロセスが、『計算』されているように思えて」と直前にあり、直後は「に感じられ、あまり面白いとは思わなかったりします」となっている。「全て」が「計算されている」→「面白くない」、ここから、「無機質」という「語句」が思い浮かぶかどうかだ。
本来、「無機質」=「炭素以外の元素からなる化合物」のことで「生物の性質を有さない」という意味だが、「人間味がない」とか「ぬくもりを感じさせない」などといった意味で用いられる場合がある。よって、「答え」は「無」となる。本校が求める「高度な語彙レベル」を思い知らされる問題だ。無論、知らなければ「捨て問」でも構わない。

<時間配分目安:30秒>

[問四] 「理由説明の不適切選択肢」(4択)。
傍線部(3)「とても興味深く感じます」について、「その理由」として「誤っているもの」を答える。

ここは「不適切選択肢」なので、「消去」すべきものが「答え」になる。「理由説明」なので、各選択肢の「文末」と照合し、「興味深く感じ」る「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したいが、全ての選択肢の「文末」が「可能性がある」と同じになっているので無理だ。「文末以外」を照合することになるので、「傍線部一文一部の法則」で確認すると、直前に「こうして、ある絵画から膨大な特徴が抽出されることは」とある。
「指示語」があるので開く(「指示語」が出たらすぐに開くこと)。「こうして」は段落冒頭なので、前段落全ての内容を指し示す。確認すると、前段落の冒頭にも「こんなふうに」という「指示語」がある。「二重指示語」だ。もちろん、それをも開く。

まとめると結局、「こう」=「人工知能が描いたレンブラントの『新作』が発表されたことで、鑑賞の仕方は変わってくる可能性がある」だと判断できる。では、どのような「可能性」なのか? 「同一意味段落」から読み解いていく(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。

確認すると、
「人間にはできない方法で人工知能が絵画作品を見ている」(①)、
「新しい美術が生まれてくる」(②)、
「今までとは別の『美意識』を生み出す」(③)、
これらの「可能性」だと分かるはずだ。
ここで、各選択肢の「文末以外」と照合していく。
(ア)「新しい美術が生まれてくる」=②、
(イ)「今までとは別の『美』を生み出す」=③、
(ウ)「画家本人にのみ創造性が存在する」=×、
(エ)「人間とは異なる絵画の見方が存在する」=①。したがって、「答え」は(ウ)だ。

「不適切選択肢」だということを絶対に勘違いしないこと。

<時間配分目安:2分強>

[問九] 「漢字の空所補充記述」(「漢字1字」指定)。「総合的知識問題」。「慣用句」。
傍線部(8)「腑に□ちる」の空所を埋める「適切な漢字一字」を答える。

これは誰もが即答できなくてはいけない。「腑に落ちる」なので、「答え」は「落」。無論、「納得がいく」という意味。尚、[問六]が同種の問題で、傍線部(5)「煎じ□める」は、ほとんどの諸君は初見に違いない。「答え」は「煎じ詰める」(=「行き着くところまで考えを進める」)だが、さすがにこれは「捨て問」でいい。

<時間配分目安:30秒>

【大問三】「論説文の読解」(新機軸の「図表」添付、「長文記述」あり)

  • 難度:
  • 時間配分:24分
  • ★必答問題

大きな曲がり角に差しかかっている日本の「社会保障制度」――市民一人ひとりの自立と自己実現を支えるための制度が置かれている現状について率直に論じている。本文では、「社会保障」と「経済」との関係を多面的に考察することが不可欠だと指摘している。
「社会」の「公民分野」のような内容で、しかも、「統計資料(グラフ)」を含めた「図表」が6つも添付されており、その「読み取り」までも問われている。「思考力」「判断力」「表現力」が重要視される、新たな「大学入試制度」を意識しているに違いないが、受験生としては戸惑うこと必至だ。
そして、最後には恒例の「長文説明記述問題」(本年度は「本文要約記述」)が控えている。以下、いくつか検討してみよう。

[問一] 「漢字の書きとり」(全5問)。

昨年度同様、本年度は「標準レベル」の難易度だ。注意すべきものを挙げれば、
波線部(ア)「センタン医療」=「先端」(「端」の細部に要注意)、
   (イ)「市場規模は90兆円になるとスイケイされ」=「推計」(「文脈」を的確に読み取ること)、
   (ウ)「社会保障をドガイシした産業政策」=「度外視」(これは難解だ。「問題にしないこと。無視すること」
     という意味も押さえておきたい)。
本校の「漢字」に備え万全の準備が不可欠だ。

<時間配分目安:5問で2分弱>

[問二] 「表現の空所補充記述」(「10字以内」指定)。
本文内で示されている「図表5-2」の中の空所       A        を埋める「適切な表現」を「十字以内」で答える。

同図表の表題は「国民負担率と経済成長率の関係」で、図表の「縦軸」が「経済成長率」(低↓・↑高)、「横軸」が「国民負担率」(低←・→高)で、「日本」をはじめとする先進9カ国の「位置」が「点」で示されているグラフになっている。そして、空所部は「グラフから読み取れる特徴」を表した「見出し」の一部で「国民負担率が高いからといって、経済成長率が       A   。」となっている。

「社会」の「統計資料読み取り問題」のように、「グラフ」を正確に読み解いていく。「グラフ」の中の特徴的なポイントに着目したい。たとえば、「国民負担率」が最も高い(70%強)「デンマーク」の「経済成長率」が「2.0%」なのに対して、「国民負担率」が2番目に低い(40%強)「日本」の「経済成長率」は「1.3%程度」となっている。つまり、「国民負担率」と「経済成長率」がともに「高い」こともあり得るということだ。あとは、空所部分の「文脈」に応じて簡潔にまとめればよい。

たとえば、「低いとは限らない」といった「答え」だ。示されている「資料」の特徴的な点に着目して読み取ることが肝要だ。無論、「国語」の問題なので、「文脈」を考慮することも忘れてはならない。

<時間配分目安:2分半>

[問五] 「数字の空所補充記述」(「1桁の数」「算用数字」指定)。
傍線部(4)「第□位」の空所を埋める「適切な一桁の数」を「算用数字」で答える。

空所前後は「医療福祉の増加率は50%を超え第□位です」となっている。本文だけを読み解いても「第何位」かは全く不明だ。が、次文に「実人数で言えば10年間で238万人の雇用を新たに創出しています(図表5-6)」とある。そう、( )が「参考資料」というわけだ。そこで、「図表5-6」を確認する。
「主な産業別就業者数の推移」を「増減割合」で示した「グラフ」で、確かに、「医療・福祉」の「増加率」は「51.6%」となっている。同「グラフ」で他産業と比較すると、断トツのトップであることが一目瞭然だ。よって、「答え」は「1」になる。「本文」と「資料」との連関に注目することが肝要だ。

<時間配分目安:1分弱>

[問八] 「表現の空所補充抜き出し」(「漢字2字」指定)。
本文内で示されている「図表5-7」の中の空所  C  を埋める「適切な表現」を「漢字二字」で抜き出して答える。

同図表の表題は「社会保障の機能強化による経済効果:地域経済の活性化」で、「年金」「医療」「福祉その他」の「社会保障の機能強化」による「経済効果」を示した「図」の中に、「年金」の「効果」の説明として「年金による所得移転で地域の所得・  C  の下支え」とある。

何を「支え」ているのか? 「図」からは読み取れない。そこで、「本文」だ。「図表5-7」について説明している「意味段落」をチェックする。すると、「高齢者の消費を支える年金が地域経済を支え」とある。
つまり、「年金が高齢者の消費を支え」ていることになる。したがって、「答え」は「消費」だ。ここでも、「資料」⇔「本文」の関係性から「思考」し「判断」することが求められていたことになる。

<時間配分目安:2分>

[問十] 「条件付き本文要約記述」(「80~100字以内」指定)。
「本文」を「八十字以上百字以内」で「要約」する。

「条件」は、「社会保障」・「負担」・「産業」の「三語を入れる」こと。本校では避けて通ることのできない「最後の関門」であり「鬼門」。ここをクリアしなければ、本校の門はくぐれない。ただ、恐れることはない。「設問」と「条件」が「手がかり」「ヒント」だ。

最初に確認しておきたいことは、本文は「論説文」なので、「要約」は当然、「論旨」中心にまとめていくことになる。そして、「論説文」の「論旨」は「序論部」または「結論部」、あるいは「両方」でまとめられているということだ。

そこで、先ずは「序論部」を確認してみる。すると、冒頭に「長い間、社会保障は『負担』だというのが常識でした」とあり、「経済や産業と社会保障の関係は多面的に考える必要がある」といった内容が述べられている。もうすでに、「条件」である「社会保障」・「負担」・「産業」の3語が登場してきている。また、「結論部」では「社会保障は経済を動かし、景気の下支えをしているので、『負担』だけを見る従来の思考を改め、産業・雇用に与えている影響にも目を向け、社会保障と経済との関係を多面的に考察することが不可欠だ」と論じられている。ここでも、「社会保障」・「負担」・「産業」の関係が述べられている。

こうした内容を「過不足なく」まとめていけばいい。
たとえば、「長い間、社会保障は負担だというのが常識だったが、社会保障は経済を動かし景気の下支えをしているので、今後は産業や雇用に与えている影響にも目を向け、社会保障と経済との関係を多面的に考察することが不可欠だ。」といった「答え」になる。

定番の「要約などの長文説明記述」に対して、本校志望者は万全の対策をして臨んでいる。したがって、「要約とは何か」を正しく習得し、まとめ方の「解法」を応用できれば、「鬼門」は「入学の門」になるということだ。

<時間配分目安:5分以内>

攻略ポイント

「要約などの長文説明記述」が最大のポイント。ただ、「出題パターン」が定着しているので、十分に対策可能だ。具体的な「攻略法」は「問題解説」で若干触れたが、要するに「解法」を習得、定着させて、応用できるまで練習を繰り返すということだ。本校の「合格ライン」は7割弱(過去3年間の合格者平均得点率は71.8%、本年度は一気に上昇して79.8%)。1問だけで全体の1割ほどもの配点(本年度は15点)がある「要約などの長文記述」での取りこぼしは許されないと心得よ。

●本年度新機軸として出題されたのが、「図表」が付された「読解問題」。前述のように、明らかに2020年度から新たに導入される「大学入試制度」を意識した出題だ。もちろん、来年度以降の出題も予想される。したがって、新たな「攻略法」へ向けての対策が求められることになる。最重要視される「思考力・判断力・表現力」を養成していきたい。

●「抜き出し問題」の「対策」も怠ってはならない。「抜き出すべき内容」を的確につかみ、「抜き出し範囲」を特定した上で、「条件」に合致した部分を探す。「条件」=「ヒント」ということを念頭に置き、「時間」の浪費をせぬよう的確な「解法」を使うこと。

●「総合的知識問題」に対処することも忘れないこと。「高度な語彙力」を含め「あらゆる知識」が問われる。本校を志望したその瞬間から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必要だ。塾での学習だけでは全く不十分なので、「独習」は欠かせない。

●試験時間は60分。問題文のボリュームは全体で8000~9000字程度(本年度は約8500字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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