※｢私たちは自然界に存在するさまざまなエネルギーを利用して生活しているが、なかでも生活に欠かせない『石炭』がどのように利用されてきたか｣について考えている。

｢『石炭』は江戸時代から利用されており、外国との関係でも重要だったということに関するリード文｣からの出題。｢歴史｣中心の｢総合問題｣(｢地理｣｢時事｣｢その他｣が各１問ずつある)｡

｢選択肢設問｣(｢不適切｣あり)､｢事項･地名･人物名記述｣､｢説明記述｣(｢字数指定｣なしの１問)と多彩な小問が並ぶが、基礎的なものが多く、配点比率も全体の約半分を占めているので、手際よく得点を重ねていきたい大問だ。以下、いくつかを確認してみよう。

[問１]　｢下線部についての選択肢設問｣(４択)。｢歴史｣単元。

｢リード文中｣の下線部①｢筑前国続風土記｣について､｢筑前国｣とは｢おおむね現在のどの県にあたるか｣を答える。

本校に限らず定番の｢旧国名シリーズ｣だ。本校志望者であれば、当然押さえているはずだ。｢筑前国｣＝｢福岡県の北半分｣(同南半分は｢筑後国｣)⇒｢答え｣は選択肢(ウ)｢福岡県｣だ。

ちなみに他の選択肢の､
(ア)｢岡山県｣＝｢備前･備中･美作(みまさか)｣､
(イ)｢福井県｣＝｢若狭･越前｣､
(エ)｢宮城県｣＝｢陸前｣｡
その他の｢旧国名｣についても、不安な諸君は地図上の位置と共に確認しておく必要がある。

＜時間配分目安：30秒＞

[問３]　｢下線部についての統計資料読み取り地名記述設問｣。｢歴史｣単元。

｢リード文中｣の下線部③｢1854年、日米和親条約で下田と函館が開港し、1858年、日米修好通商条約で横浜や長崎などが開港｣について､示されている｢表｣は1867年の｢函館港｣｢横浜港｣｢長崎港｣で取り引きされた｢主要輸出品の輸出額の順位｣を(ア)～(ウ)で表したものだが、(イ)は｢どの港か｣を答える。

｢幕末｣の｢主要輸出品｣が｢生糸･茶｣で｢主要輸出先｣は｢イギリス｣だったことは誰もが知っている常識だ。しかし、港別の｢輸出品｣となると、定着などしているはずがない。難問か？　否､｢知っていること｣から判別はできるはずだ。
(ウ)の｢第１位｣は｢昆布｣､当然ながら｢函館港｣｡残りはどうか？　
｢第１位｣は(ア)が｢生糸類｣で(イ)が｢茶｣｡これらでは悩むかも知れないが、｢第２位｣が(ア)｢蚕卵紙｣､(イ)｢石炭｣⇒九州北部の炭鉱地帯⇒｢答え｣＝｢長崎港｣だと結びつくはずだ｡

自分が直接知らないことであっても、定着している｢知識｣を駆使して結びつけていくことができると心得よ。

＜時間配分目安：１分＞

[問７]　｢リード文中の空所補充事項記述設問｣。｢歴史｣単元。

｢リード文中｣の空所部〔 ⑦ 〕に｢あてはまる燃料｣を答える。

空所前後は｢第二次世界大戦のころには、新しい軍艦などは、〔 ⑦ 〕を燃料とするようになりました｣となっている。えっ、｢燃料｣？　と一瞬戸惑うか？　だが、そこは冷静に判断していきたい。
｢文脈｣から｢石炭の次の燃料｣だということは明白なのだから、｢答え｣＝｢石油｣と即答できなくてはいけない。

｢社会｣であっても｢国語｣同様に、前後の｢文脈｣から読み取ることが肝要だということだ。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問９(２)]　｢下線部についての選択肢設問｣(４択)。｢歴史｣単元。

｢リード文中｣の下線部⑨｢群馬県の〔 ⑦ 〕(＝｢富岡｣⇒(２)の答え)に官営の製糸場が建てられた｣について､｢この製糸場の建設を指導した人物は、どこの国の技術者か｣を答える。

｢1872年｣に設立された｢日本初の官営模範工場｣で｢世界遺産｣にも登録されている｢富岡製糸場｣のことは誰でも知っている。が、｢どこの国の技術者が指導したか｣となると曖昧(あいまい)な諸君がいるやも知れぬ。
当時、｢殖産興業｣のスローガンを掲げていた明治政府は、｢フランス人技師ブリューナ｣の指導でフランス製の機械を導入したのだ。したがって、｢答え｣は選択肢(ウ)｢フランス｣だ。

尚、｢模範工場｣であった｢富岡製糸場｣では、士族の子女を中心とした｢女工｣が技術を学び､後に全国各地にその技術を広めていったことも理解しておきたい。

＜時間配分目安：30秒＞

[問12]　｢リード文中の空所補充選択肢設問｣(４択)。｢歴史｣単元。

｢リード文中｣の空所部〔 ⑫ 〕に｢あてはまる語句｣を答える。

空所前後は｢大都市から離れた山岳地帯で大規模に〔 ⑫ 〕発電を行い､送電することもこのころ(＝第一次世界大戦の頃)から盛んになっていきました｣となっている。要は､｢第一次世界大戦当時｣の｢発電方法｣を答えるのだが、即答できる諸君はそうはいないのではないか。
そこで、何らかの｢手がかり｣がほしい。｢大都市から離れた山岳地帯｣とある。当時、｢原子力｣や｢自然エネルギー｣などはないに決まっているので、｢水力｣｢火力｣のどちらかだ。わざわざ｢山岳地帯｣と記されているのだから、｢答え｣は選択肢(イ)｢水力｣になる。

日本での｢発電｣は明治時代に始まり、当初｢火主水従｣(｢火力発電｣中心)であったものが、大正時代には｢水主火従｣となり(1912年が転機｡水力発電所の大型化や遠距離送電が可能になった)､戦後の｢エネルギー革命｣以降､｢石炭｣から｢石油｣中心の｢火主水従｣へと推移し、1973年の｢石油危機｣を契機に｢原子力｣を含めたさまざまなエネルギー源による｢ベストミックス｣へと転換したが、2011年３月11日の｢東日本大震災｣及び｢福島第一原発事故｣を経て､｢再生可能エネルギー｣やこれまでになかった｢シェールガス｣などの普及による分散型電源である｢スマートミックス｣に変換していった。

こうした経緯についても押さえておくことが肝要だ。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問15]　｢下線部についての地名記述設問｣。｢時事｣単元。

｢リード文中｣の下線部⑮｢台所、風呂などで使う都市ガスは、石炭から作られなくなってきています｣について､その結果｢石炭ガス工場の跡地がさまざまな形で利用されている｣が､｢2018年に築地から移転した市場の場所｣を答える。

典型的な｢時事問題｣だ。なので当然知っているはずだ。｢答え｣は｢豊洲｣。
江戸時代から｢日本橋｣にあった｢魚市場｣､｢関東大震災｣での被災をきっかけに1935年に東京都中央区築地に東京市中央卸売市場が開設された。その後80余年を経て老朽化により江東区豊洲に移転したということは知っておく必要がある。

＜時間配分目安：１分＞

｢国内産の石炭と輸入された石炭の量の移り変わり｣(表１)･｢鉄鋼生産量の移り変わり｣(グラフ３)･｢電力会社の発電量の移り変わり｣(表２)･｢電力会社発電量の移り変わり｣(グラフ４)という４つの｢統計資料｣に関して、｢地理｣｢公民｣｢その他｣が問われている。

｢統計資料｣についてのみの小問で構成されているというなかなか珍しい大問だ。本校最大の特色である｢作業問題｣(グラフ作成)が冒頭に待ち構えている。以下、いくつかの｢設問｣を考えてみる。

[問１]　｢統計資料読み取りのグラフ作成設問｣(全２問)｡｢その他｣｡

本校特有の｢作業問題｣だ。｢表１｣の項目にある｢原料炭｣は｢製鉄の原料となる石炭｣､｢一般炭｣は｢発電燃料などに使用される石炭｣だが、｢解答用紙のグラフ｣の例を参考にして、｢国内産の石炭｣と｢輸入された石炭｣の量が分かるように｢グラフ１｣を、また、｢原料炭｣と｢一般炭｣の量が分かるように｢グラフ２｣を完成させる｡

｢表１｣の項目は｢国内原料炭｣･｢国内一般炭｣･｢輸入原料炭｣･｢輸入一般炭｣で、｢1955年｣～｢2015年｣の10年ごとの｢量｣の推移が記されている。また、｢解答用紙のグラフ｣は｢縦軸｣が｢量｣･｢横軸｣が｢年度｣の｢棒グラフ｣となっていて､｢単位｣も｢表１｣と同じだ。
したがって、｢グラフ１｣には｢国内原料炭｣＋｢国内一般炭｣と｢輸入原料炭｣＋｢輸入一般炭｣、｢グラフ２｣には｢国内原料炭｣＋｢輸入原料炭｣と｢国内一般炭｣＋｢輸入一般炭｣をそれぞれ記入すればいいことになる。

本校必出の｢作業問題｣､本校志望者はとにかく｢過去問｣を練習し、慣れておくことが必須だ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問４]　｢統計資料読み取りの選択肢設問｣(４択)｡

示されている｢グラフ３｣(鉄鋼生産量の移り変わり)と、｢[問１]で作成したグラフ｣から｢読み取れること｣を答える。｢その他｣｡

典型的な｢統計資料読み取り｣だ。こうした問題で肝要なことは、先入観や知識にとらわれずに、表示されている｢資料｣の純粋な｢数字｣等の事実と、各選択肢の説明とを厳密に照合することだ。
本問では、｢選択肢の説明｣は全て｢鉄鋼生産量の移り変わり｣と｢作成したグラフ｣との｢相関関係｣に関するものだ。仮に自らが｢作成したグラフ｣に不安がある諸君は(そうした本校志望者は皆無だと思うが)､要は｢表１｣と照合すればいい。
結果として、｢鉄鋼生産量の移り変わり｣は｢国内産と輸入された原料炭の量の合計｣のみと｢相関関係｣が認められることが明らかなので、｢答え｣は(ウ)になる。

どれだけ虚心坦懐に｢数値｣をチェックできるかが決め手だと心得よ。

＜時間配分目安：１分＞

[問５(２)]　｢統計資料についての原因説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢90字ほど｣の解答欄)。｢公民｣単元。

示されている｢グラフ４｣(電力会社発電量の移り変わり)について、｢2005年に約３割だった原子力発電の割合は2015年には大きく落ち込んでいる(ほぼ０%)｣が､｢その原因として考えられること｣を説明する。

｢2005～2015年｣に｢原子力発電｣に関連する何かがあったということだ。当然ながらすぐに｢2011.３.11東日本大震災→福島第一原子力発電所のメルトダウンという重大事故｣が思い浮かぶはずだ。
だが、それだけ説明すればいいのか？　｢福島第一原発｣の操業不能だけで全国の｢原子力発電の割合｣が｢ほぼ０%｣にまで落ち込むのか？　｢90字ほど｣の解答欄を考慮しても､それだけでは不十分なはずだ。したがって、｢福島第一原発事故｣をきっかけとしてのその後の｢原子力発電｣の状況を踏まえて、説明する必要がある。
たとえば、｢2011年３月の東日本大震災による福島第一原子力発電所の重大事故をきっかけとして､原子力発電の危険性への不安から全国の原子力発電所の操業が停止し、その後わずかしか再開されていないという原因｡｣(92字)といった｢答え｣だ。

ちなみに、現在(2019年８月)稼動中の全国の原発は５基。
尚、｢説明記述｣では、｢指定字数｣に応じて述べるべき｢必要要素｣を加減する必要がある。

＜時間配分目安：３分半＞

[問６]　｢統計資料読み取りの不適切選択肢設問｣(４択)｡

｢石炭火力の発電｣について、｢これまでに見た表やグラフ｣から読み取れることとして｢まちがっているもの｣を答える。

本大問の｢４つの統計資料｣全てとの照合が求められていることには注意したい。無論、｢不適切設問｣だということにもだ。そして、各選択肢の説明が､｢量｣と｢割合｣の両方に言及していること考慮しなくてはいけない。
｢４つの統計資料｣は全て｢量｣の数値なので、｢割合｣に関しての正誤判別では自ら｢計算｣する必要があるわけだ。｢割合計算｣自体は決して難解ではない(ただし面倒だ)｡
手間を惜しまず正確に｢計算｣しさえすれば、｢答え｣は(イ)だと判別できるはずだ。

｢量と割合との混在｣は｢統計資料読み取り設問｣では定番なので、常に留意する必要がある。

＜時間配分目安：２分半＞

大問Ⅰの｢リード文｣とⅡの｢統計資料｣､そして、それぞれの｢設問｣を踏まえての出題。｢総合｣問題。

小問はなく｢論述｣１問だけの大問だ。｢リード文｣や｢統計資料｣を正しく把握し、｢設問｣での｢情報｣をも加味した上で、｢考察｣していきたい。

[問]　｢ここまでの大問を踏まえての条件付き論述設問｣(｢字数指定｣なし､｢250字ほど｣の解答欄)。

｢明治時代から現在まで、石炭の使い道はどのように変わってきたのか｣をこれまで解いてきた問題や解答をもとに説明する。｢条件｣は｢今はなくなった使いみちと、今もある使いみちをあげながら説明する｣こと。

｢リード文｣からは｢明治時代以降､石炭が蒸気機関の燃料などのエネルギー資源や、製鉄の原料として使われてきた｣ことが分かる。また、｢統計資料｣からは｢高度経済成長期には製鉄の原料として需要が増えたが、エネルギー革命を経て石油が石炭に代わり、燃料としての需要は低下、その後、1980年代以降は火力発電用として再び使用量が高まり、現在もその傾向が続いている｣ことが読み取れるはずだ。
そうしたことを的確にまとめていけばいいのだが、｢条件｣を満たすことを忘れてはいけない。
｢明治時代にはあったが、今はなくなった使いみち｣としては｢鉄道や船などの蒸気機関の燃料｣があり、｢今もある使いみち｣は｢製鉄の原料｣だ｡

｢設問内容｣から臨機応変に大問全体を捉えて｢考察｣し、その上で自ら｢文脈｣を整理して説明する能力が求められている。
新たな大学入試制度を見据えたこうした問題はここ数年定着してきているので、しっかりと練習しておくことが必須だ。