※日本でよく使われている｢くるま(車輪がついた乗り物)｣である｢自動車｣｢自転車｣｢オートバイ｣について、最も古くから使われていた｢自転車｣を中心に考えている。

｢地図の読み取り｣という｢地理｣単元を踏まえての｢考察問題｣(｢説明記述｣と｢複数完全解答｣の３問の｢選択肢設問｣)。｢表｣(ある都市を７つの地域に分けて、それぞれの地域の人々が用いる｢交通手段の割合｣を示したもの)と、｢図１｣(『表』と同じ都市で、色の濃淡で｢地表面の傾き｣を示している｢地図｣)からの出題。｢地図｣から｢地表面の傾き｣を読み取り、利用されている｢交通手段｣との関係を説明し([問１])、その上で｢交通手段｣と｢各地域｣の結びつけを選択する([問２])。

一見難解そうな問題なのだが、要は、｢地表面の傾きが急｣であるほど｢自転車｣の利用が減るという当然のことに気づきさえすればいいのだ。本校志望者であれば、瞬時に答えてしまいたい大問だ。

｢縄文時代～明治時代前半｣まで、｢自転車が使われるまでの乗り物の歴史｣についての｢リード文｣からの出題。基礎的な｢歴史｣単元の｢知識｣を問うものがほとんどなので、手際よく得点を重ねていきたいが、最後の｢説明記述｣(｢考察的要素｣あり)はやや厄介かも知れない｡それを含めていくつかの｢設問｣を考えてみる。

[問９]　｢下線部についての不適切選択肢設問｣(４択)。｢時期特定｣だ。｢リード文｣中の下線部⑨の｢1871年｣から｢西南戦争までの間に政府が平民について定めたこと｣として｢まちがっているもの｣を答える。

各選択肢の｢内容｣および｢時期｣を判別していく。

(ア)｢自由に刀を身に付けることを認めた｣

　　⇒｢平民｣は江戸時代に｢武士｣であった｢士族｣とは違うので、そもそも｢帯刀｣は認められていなかったことは知っているはずだ＝不適切

　　⇒尚、｢士族｣に対しても｢廃刀令｣が出されて(1876年)、｢西南戦争｣(1877年)につながったという｢流れ｣は押さえておくこと。

(イ)｢苗字(みょうじ)を名乗ることを認めた｣

　　⇒当然のことなのだが、それを定めた｢平民苗字許可令｣は｢1870年｣の発令＝不適切。

(ウ)｢軍隊に入ることを義務付けた｣

　　⇒｢1873年｣の｢徴兵令｣、誰もが知っている＝適切。

(エ)｢子どもを小学校に行かせることにした｣

　　⇒｢学制｣(1872年)により｢義務教育｣が始まったことは常識＝適切。

明確に｢まちがっているもの｣は(ア)だが、(イ)も｢時期｣として不適切となる。よって、｢答え｣は(ア)あるいは(イ)だ(ただし、学校からの｢訂正｣はない)。

尚、｢正誤判別｣では｢細部｣まで詳細に検討することが肝要だ。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問10]　｢下線部についての事項記述設問｣。｢リード文｣中の下線部⑩｢日本人が新しいくるまを発明｣について、｢この新しいくるまをなんというか｣を答える。

は？ という感じだろう。何らかの｢手がかり｣がほしい。下線部直前に｢そのころ(1871年ころ)、馬車にヒントを得て｣とある｡｢明治時代前半｣｢馬車｣、これらから思いつく｢乗り物｣といえば、そう、｢答え｣は｢人力車｣だ。

｢リード文｣では、｢下線部｣以外に｢手がかり･ヒント｣が隠されていると心得よ。

＜時間配分目安：30秒弱＞

[問11]　｢リード文に関する内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢100字ほど｣の解答欄)。｢(本大問の)問題文や問いに答えたことをもとに、江戸時代までと明治維新以降で、身分によって利用できる乗り物がどのように変化したか｣を説明する。

｢リード文｣を正確に読み取り、自らの｢知識｣も踏まえた上で｢考察｣していく設問だ。｢リード文｣からは｢平安時代には貴族が『牛車(ぎっしや)』を利用し、武士の時代には武士にとって『馬』が不可欠になり、明治時代になると平民も『馬車』に乗れるようになった｣といったような内容が読み取れる。そして、江戸時代までと明治時代以降の｢身分制度｣などについての｢知識｣を組み合わせて、｢身分によって利用できる乗り物の変化｣を適切にまとめていきたい。たとえば、｢江戸時代までは、牛車は貴族専用、馬には武士だけが乗るというように、身分によって利用できる乗り物が分かれていたが、明治維新以降は馬車や人力車といった乗り物を身分にかかわらず利用できるように変化していった｡｣(101字)といった｢答え｣になる。

与えられているさまざまな｢情報｣を多角的に結び付けて｢考察｣することが求められる。

＜時間配分目安：４分＞

｢図２｣(1900年以降の｢自転車｣｢オートバイ｣｢自動車｣の台数と人口の移り変わりを示したグラフ)からの出題。｢一般常識｣と｢グラフの読み取り考察｣、｢歴史｣単元からの出題(１問のみ)といった大問だ。｢統計資料の読み取り｣には｢正確さ｣が求められるが、他はとても平易だ。｢一般常識｣の１問だけを確認する。

[問１]　｢図についての空所補充事項記述設問｣(全３択)。

典型的な｢一般常識｣の問題なのだが、拍子抜けするほど｢あたりまえ｣のことが問われており、逆に不安になってしまうかも。｢図２｣について示されている｢説明文｣の空所( ａ )～( ｃ )に｢あてはまる言葉｣をそれぞれ答える。空所前後を確認して｢答え｣を出していく。

｢図２のＡのころ(1920～1930年)、くるまも荷車もいまのような( ａ )通行をすることになり｣

⇒今と同じだというのだから、｢自転車｣｢オートバイ｣｢自動車｣は当然、｢答え｣は｢左側(通行)｣に決まっている。

｢(1920～1930年ころ)交差点には( ｂ )が設置されはじめ、人による交通整理からかわっていった｣

⇒｢交差点｣での｢交通整理｣のために設置＝無論、｢答え｣は｢信号(信号機)｣。

｢こちら(歩行者)はのちに( ｃ )通行にかえられていまにいたっている｣

⇒現在、｢歩行者｣は？ もちろん｢答え｣は｢右側(通行)｣。

本校では近年｢一般常識｣がよく問われている。｢子ども｣であっても、｢社会の常識｣は意識する必要があるということだ。

＜時間配分目安：全問で１分強＞

｢明治時代以降、日本で使われ始めた自転車に関する歴史｣についての｢リード文｣からの出題。｢自転車｣に関する｢貿易や工業｣について、｢歴史｣単元の基本的事項が問われている。やや悩ましい設問だけを検討してみたい。

[問１]　｢下線部についての不適切選択肢設問｣(４択)。｢リード文｣中の下線部①｢欧米との不平等条約｣についての｢説明｣として｢まちがっているもの｣を答える。

各選択肢の｢キーワード｣で｢正誤判別｣をしたい。

(ア)｢イギリス｣｢陸奥宗光｣｢治外法権廃止｣

　　⇒｢1894年｣、｢日清戦争｣直前に外務大臣｢陸奥宗光｣が｢イギリス｣との交渉で｢治外法権撤廃｣、これは必須定着事項＝適切。

(イ)｢イギリス｣｢日露戦争直前｣｢関税自主権認める｣

　　⇒｢関税自主権｣は｢日露戦争後｣の｢1911年｣に、外務大臣｢小村寿太郎｣が｢アメリカ｣と交渉し認められたことは知っているはず＝不適切。

(ウ)｢アメリカ｣｢小村寿太郎｣｢関税自主権認める｣

　　⇒前述のとおり＝適切。

(エ)｢アメリカ｣｢岩倉使節団｣｢条約改正交渉｣

　　⇒｢岩倉使節団｣の大きな目的のひとつは｢不平等条約改正の交渉｣だということは常識＝適切。

したがって、｢答え｣は(イ)になる。

尚、｢不平等条約改正への道｣は頻出なので、｢交渉相手国｣｢時の外務大臣｣｢交渉内容｣をセットにして整理しておくことが肝要。

＜時間配分目安：30秒強＞

[問４]　｢リード文についての理由説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢25字ほど｣の解答欄)。｢リード文｣中の下線部④｢第一次世界大戦がおこると、日本国内で自転車の生産が進んだ｣について、｢その理由｣を説明する。

そんなことは知っているはずがない。当然だ。諦(あきら)めるか？ 否！ 考えよ。

先ずは｢リード文｣に｢手がかり｣を求める。直前は｢自転車を(欧米からの)輸入に頼る時代が続いた。ところが、……｣となっている。ということは、｢欧米｣からの｢輸入に頼る｣ことができなくなったので、｢日本国内での生産が進んだ｣わけだ。｢欧米｣から｢輸入できない｣、なぜか？ 流石(さすが)にもう分かったはずだ。｢第一次世界大戦｣の主な｢戦場｣は｢ヨーロッパ｣だったということ。よって、たとえば、｢戦場となったヨーロッパから輸入できなくなったから｡｣(25字)といった｢答え｣だ。

｢私は知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えよ。

＜時間配分目安：２分＞

｢図３｣(1920～2020年の自転車生産台数と輸入台数の移り変わりを示したグラフ)と、｢図４｣(1957～1973年の自転車生産台数の車種別(実用車･子供車･スポーツ車･軽快車･特殊車)割合の移り変わりを示したグラフ)からの出題。｢歴史｣単元、｢歴史｣を踏まえての｢統計資料読み取り考察｣、｢一般常識｣、各１問の｢説明記述｣という大問構成。２つの｢統計資料読み取り｣の組み合わせが必要となる問題について検証する。

[問２]　｢図に関する内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢75字ほど｣の解答欄)。｢図３｣と｢図４｣をみて、｢1960～1973年における自転車生産台数と車種別割合の変化｣を説明する。

それぞれの｢図｣を読み解いていく。｢図３｣からは、その期間に｢生産台数｣が一気に｢３倍以上｣も増加していることが分かる。そして、｢図４｣では、その間の｢車種別割合｣が当初は大部分を占めていた｢実用車｣が年ごとに減少し、｢1973年｣にはほんのわずかとなり、代わってそれ以外の｢車種｣がほとんどを占めるようになったことが読み取れる。

では、この期間に何があったのか？ ｢1960～1973年｣はまさに｢高度経済成長期｣だと気づかなくてはいけない。であれば、｢経済成長｣→｢所得の増加｣→｢消費意欲の高まり｣→｢需要の増加｣→｢自転車の多様な使い方｣……、などと考えられるはずだ。よって、たとえば、｢高度経済成長期に当たり、消費意欲の高まりで生産台数が一気に３倍以上にも増加し、自転車の多様な使い方によって実用車以外の車種が増えていったという変化｡｣(74字)といった｢答え｣だ。

｢変化の説明｣では、その｢理由｣や｢背景｣をも的確に説明する必要があると心得よ。

＜時間配分目安：４分弱＞

｢小問なし｣の｢説明記述｣１問だけの大問だ。チェックしてみよう。

｢大問に関する条件付き内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢150字ほど｣の解答欄)。

｢大問Ⅲ～Ⅴの問題文や問いに答えたことをもとに、自転車が明治時代から今日までどのように広まってきたか｣を説明する。｢条件｣は｢自転車の生産･輸入、自転車の使われ方の移りかわりとあわせて説明する｣こと。

３つの｢大問｣の｢リード文｣、｢統計資料｣、そして、各設問を｢自転車の広まり方｣といった視点で総合的に読み解き、整理した上で分かりやすくまとめたい。その際、｢条件｣を的確に反映させることが必要だ。たとえば、｢明治時代は大部分が輸入品で価格も高く、限られた人だけのものだったが、大正時代になると国内でも生産されるようになり、高度経済成長期には生産量が一気に増えて広く普及し、使われ方は、当初の警察や郵便などの実用的なものから、通勤･通学･買い物といった生活用へと変化し、価格の安い輸入品の需要が伸びていった｡｣(149字)といった｢答え｣になる。

｢長文説明記述｣では、｢文脈｣を整理して分かりやすくまとめることが肝要。

＜時間配分目安：６分＞