※さまざまな｢地図｣の中でも、日本のすがたを一目で見ることができる｢日本図｣は最も一般的だ。ここでは江戸時代までの｢日本図｣に着目して考えている。

｢日本図｣のひとつで、奈良時代の僧侶･行基がつくったとされる｢行基図｣は長い期間にわたって書き写されてきたと考えられている。示されている｢図Ａ｣(江戸時代初期の｢行基図｣をもとにした｢日本図｣で、中に｢旧国名｣が記されている)からの出題。｢歴史｣単元の基本的知識が問われている。平易な大問なので、一気呵成に解き進めたい。｢説明記述｣の１問だけをチェックする。

[問４]　｢図についての条件付き内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢60字ほど｣の解答欄)。｢図Ａ｣を見ると、｢中国地方と中部地方の国名に『前』『中』『後』の文字が入っている国がある｣が、｢これらの国ぐにがどのような順にならんでいるのか｣を説明する。条件｣は｢２つの地方に共通することを説明する｣こと。｢図Ａ｣を確認すると、｢中国地方｣には｢備前｣･｢備中｣･｢備後｣、｢中部地方｣には｢越前｣･｢越中｣･｢越後｣の国名があるとすぐに気づく。もちろん、これらの｢旧国名｣は誰もが知っているはず。どのような共通性があるのか？ 知っていれば何の問題もないが、知らなくても考えれば分かる。それぞれ、｢備｣と｢越｣という文字は３つの国とも同じ⇒もともと｢ひとつの国｣を分けたと考えられる。その際に区別するために｢前｣･｢中｣･｢後｣で何かの｢位置関係｣を示した⇒改めて｢図Ａ｣をよく見る⇒｢都｣からの｢遠近｣の｢位置関係｣だと判断できるはずだ。こうした内容を適切にまとめていきたい。たとえば、｢もともとはひとつであった国を３つに分割し、それぞれの国を位置関係で区別するために都から近い順に前、中、後を国名につけた｡｣(60字)といった｢答え｣だ。｢私は知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えよ。

＜時間配分目安：３分＞

｢日本図｣のひとつで、18世紀後半に水戸藩の学者であった長久保赤水がつくった｢赤水図(せきすいず)｣。示されている｢図Ｂ｣(｢赤水図｣の全体)と｢図Ｃ｣(｢赤水図｣の一部)とその｢説明文｣からの出題。｢歴史｣単元の基礎的事項が問われている(｢｢地理｣単元１問あり｣。【大問１】同様にとても易しい。ここでも｢説明記述｣の１問だけを検証したい。

[問１]　｢下線部に関連する内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢30字ほど｣の解答欄)。｢説明文｣中の下線部①｢地域が色分けされて複製された｣について、｢複製した技術は浮世絵にも使われている｣が、それは｢どのような技術か｣を説明する。下線部と｢浮世絵｣を結びつけて考えたい。｢18世紀後半｣｢色分け｣｢複製｣⇒｢多色刷り｣の｢錦絵｣とすぐに結びつかなくてはいけない。どのような｢技術｣で｢多色刷り｣の｢版画｣を仕上げるのか？ 当然知っているはず。よって、たとえば、｢色ごとに異なる版木を使い、色を重ねながら刷る多色刷りの技術｡｣(30字)といった｢答え｣だ。｢与えられている情報｣と｢自らの知識｣とを結びつけて解き進めることが肝要だと心得よ。

＜時間配分目安：３分弱＞

｢18世紀後半の地図づくりには江戸時代にみられた学問の発達が大きく関わっているが、そのひとつである伊能忠敬の地図づくり｣についての｢リード文｣からの出題。｢空所補充選択肢設問｣｢事項記述｣｢説明記述｣などで、｢歴史｣単元の多角的な知識が問われている大問だ。１問混在している｢地理｣単元の小問がやや厄介。それを含めて、２つの｢設問｣を確認する。

[問３(１)]　｢下線部についての内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢60字ほど｣の解答欄)。｢リード文｣中の下線部③｢蘭学｣の中で、｢大きく発達したもののひとつは医学だった｣が、｢医師であった杉田玄白たちは、オランダ語の解剖書を図の正確さを知り、翻訳書を出版｣した。｢杉田玄白たちは、どのようにして、解剖書を図の正確さを知ることができたのか｣を説明する。｢解体新書｣のことだとすぐに分かる([問３(２)]の｢答え｣)。だが、｢図の正確さをどのようにして知ることができたのか｣となると、やや｢深知り知識｣が必要となる。しっかりと思い出したい。｢杉田玄白｣や中津藩の藩医だった｢前野良沢｣たちは、幕府の｢小塚原刑場｣で｢腑(ふ)分け｣(＝解剖)に立ち会っていたではないか。当然、その際に｢ターヘル･アナトミア｣の図の正確さを知ったはずだと考えられるだろう。そうした内容を｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢小塚原刑場で罪人の解剖に立ち会い、持参したオランダ語の解剖書の図と、実際に見た人体の臓器を比べることで知ることができた｡｣(60字)といった｢答え｣になる。やはり、本校では｢深知り知識｣も求められているというわけだ。

＜時間配分目安：３分強＞

[問４]　｢下線部についての選択肢設問｣(４択)。｢地理単元｣(｢理科｣？ ｢算数｣？)。｢リード文｣中の下線部④の｢緯度差１度の距離｣は｢約何kmか、もっとも近いもの｣を答える。尚、｢地球の半径は6370km、円周率は3.14｣とする。要するに｢計算問題｣だ。落ち着いて計算していきたい。｢地球の直径｣は6370km×２＝12740km⇒｢円周｣は12740km×3.14＝40003.6km⇒｢緯度｣は南北に90度ずつあり、円周全体では360度分⇒40003.6÷360＝111.12……⇒よって、｢答え｣は選択肢(イ)の｢111km｣になる。本校では、こうした｢ややこしい問題｣がまま出題される。決して難解ではないので、毛嫌いせずにチャレンジしたい。｢得点｣は貪(どん)欲にゲットすることが肝要だ

＜時間配分目安：１分強＞

前大問で紹介されていた｢伊能忠敬の地図(伊能図)がつくられた手順｣についての｢リード文｣および関連する｢絵図｣(１点)･｢地図｣(２点)･｢写真｣(４点)からの出題。｢地理｣単元の主に｢地図｣｢縮尺｣などに関する知識が問われている大問(｢歴史｣と｢その他｣各１問あり)。中には戸惑う問題もあるので、要領よく解き進めたい。２問だけ検討してみたい。

[問４]　｢下線部についての理由説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢60字ほど｣の解答欄)。｢リード文｣中の下線部④｢地図記号｣について、示されている｢図Ｅ｣(｢伊能図｣の一部)では｢←ｅ｣で示したところに｢小田原｣が描かれているが、３万6000分の１の地図とは異なり｢小田原｣には赤い線で四角形(□)が記されている。｢この四角形は城をあらわす記号｣だが、このように｢城を記号であらわしている理由｣を説明する。現在では｢地図記号｣を使って｢城｣を表すなど当たり前のことなので、｢理由｣といわれてもかえって悩んでしまうだろう。どう考えればいいのか？ ｢リード文｣に｢手がかり｣を求めたい。下線部④の１行前に｢図Ｅは、21万6000分の１の地図の一例｣と記されている。さらに、その前段落からは｢３万6000分の１の｢伊能図｣では、城がある場合は城の絵を描き、大名の名前もいれていた｣ことが分かる。つまり、｢３万6000分の１｣では｢城の絵｣であったものが、｢21万6000分の１｣では｢□｣という記号になったわけだ。であれば、｢理由｣は明白だ。｢縮尺が小さい｣(縮尺の分母が大きい)地図は、｢縮尺が大きい｣(縮尺の分母が小さい)地図と比べて、｢より広い範囲を表せるが、一方で細かい場所の表示には向いていない｣のだ。あとは、分かりやすくまとめればいい。たとえば、｢縮尺が小さい地図は、縮尺が大きい地図と比べてより広い範囲を表せるが、一方で細かい場所の具体的な表示には向いていないから｡｣(60字)といった｢答え｣だ。尚、｢リード文｣の下線部以外、｢問題文｣の細部、｢図表｣などの｢注意書き｣等々に｢手がかり･ヒント｣が潜んでいると心得よ。

＜時間配分目安：３分強＞

[問６]　｢下線部についての事項記述設問｣。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部⑥｢伊能忠敬の日本図｣について、示されている｢図Ｆ｣(｢伊能図｣をつなげたもの。日本全体を表している)には｢おもな街道｣が表されているが、｢『←ｈ』で示したと場所を江戸からの終点とする街道を何というか｣を答える。｢図Ｆ｣の｢←ｈ｣は現在の｢福島県南部｣を指し示していると分かるはずだ。ということは、｢日本橋⇔白河｣、｢答え｣は｢奥州街道(道中)｣だ。尚、｢五街道｣は本校に限らず頻出だ。｢起点･終点｣も合わせて必ず定着させておくこと。また、地図上で各経路を示せるようにもしておきたい。

＜時間配分目安：30秒強＞

※尚、[問１]は４点の｢測量器具｣の｢写真判別選択肢設問｣(考察問題)になっている。全く未知の｢器具｣ばかりに違いない。もちろん、しっかりと｢写真｣を観察すれば｢答え｣は出せるのだが、とても手間ひまがかかるので｢戦術的｣には｢捨て問｣で構わない。

｢小問なし｣の｢考察論述｣１問だけの大問。｢これまでの問題で読んだ文章や問、図Ａ～図Ｆを見返して｣、問いに答える。チェックしてみよう。

[問]　｢大問や図に関する条件付き理由説明考察論述設問｣(｢字数指定｣なし､｢200字ほど｣の解答欄)。｢歴史｣単元。｢伊能忠敬は、それまでの行基図や赤水図とくらべて、日本のすがたを正確にあらわした日本図をつくることができた｣が、それは｢どのような考え方をもって、どのように地図づくりを行ったからか｣を説明する。｢条件｣は｢江戸時代の後半に発達した学問や、伊能忠敬が行ったことをもとにしてまとめる｣こと。直接的には｢伊能図｣について問われているので、大問の３と４とを中心に、｢どのような考え方｣で｢どのように地図づくりを行ったか｣という視点で読み解いていくことになる。その際、｢条件｣である｢江戸時代の後半に発達した学問｣と｢伊能忠敬｣との結びつきにも着目したい。【大問３】からは、｢伊能が『緯度差１度の距離』を知りたいという気持ちから測量を始めた｣ことが分かり、そのための｢天体観測｣が可能になったのは、その当時、｢天文学｣を含む｢蘭学｣が発達したことが背景にあることも読み取れる。また、【大問４】からは、｢伊能が天文学の知識をいかして『さまざまな器具』を用いて測量を『正確』かつ『地道』に繰り返して、細部までも表した大きな地図をつくり、それらを縮めてつなぎ合わせることで『日本図』にした｣ことなどが分かるはずだ。こうした内容と｢自らの知識｣を多角的に結んで｢考察｣し｢論述｣していきたい。たとえば、｢江戸時代後半には天文学を含む蘭学が発達し、これを学んだ伊能忠敬は、緯度差１度の距離を知りたいという気持ちから、知識にもとづいた正確な測量を行おうという考え方をもって、さまざまな測量器具を用いて地道な作業を繰り返し、地球上における自分たちの位置と実地で実際に測量した結果などを総合し、先ず縮尺が大きくくわしい地図をつくり、それら正確な地図を縮めてつなぎ合わせることで日本図をつくるということを行ったから｡｣(201字)といった｢答え｣になる。尚、｢考察論述(長文説明記述)｣では、｢文脈｣を整理して分かりやすくまとめることが肝要だ。

＜時間配分目安：５分＞