作者の幼少期から青年期までの体験をもとにした、自伝的要素あふれる短編集。
未知の世界へのあこがれや､戦時下の死の影などが色濃く投影されている。
本文では、まだ行ったことのない海岸へ｢和一｣とともに初めて向かう｢浩｣が、海の美しさや怖さを感じたこと、地元の人々とのいさかいを通じて｢和一｣に対する見方が変わったことなどが描かれている。内容は分かりやすいが、｢比喩表現｣や｢情景描写｣を丁寧に読み取る必要がある。「設問」でもそうしたことが問われていく。
以下、いくつかを確認してみる。

 [問一①]　｢季節特定の選択肢｣(４択)
｢この文章の季節はいつごろか｣を答える。
｢情景描写｣｢セリフ｣｢ト書き｣｢地の文｣などから特定していく。冒頭に、｢浩｣の｢寒いなあ｣という｢セリフ｣がある。また、後半の波線部(ウ)直後には｢この秋の運動会のことも遠い思い出のようだった｣とある。
各選択肢を確認する。
(１)｢春の終わりから夏の半ば｣､(２)｢夏の終わりから秋の初め｣､(３)｢秋の終わりから冬の初め｣､(４)｢冬の半ばから春の初め｣｡
｢この秋｣なのだから、｢その年｣はまだ終わっていない。よって、｢答え｣は｢(３)｣になる。
尚、｢小説｣では、｢季節｣｢時｣｢場所｣｢人物｣などを特定できる部分を､｢問題文｣を読みながら予めチェックしておくといい。

＜時間配分目安：１分＞

[問二]　｢内容説明選択肢｣(４択)
傍線部(問二)｢浩はまだそこから向うへは行ったことがなかった｣について、｢『そこから向う』は『浩』にとってどのような所か｣を答える。
無論、傍線部だけでは判断できない。直前直後を確認する(｢小説｣では｢同一場面｣の｢直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡直後に｢そこには彼をこばもうとする空気があるようだった｣とある。各選択肢を確認する。
(１)｢岩が高く険しい危険な世界｣､(２)｢自分が行くことのできない世界｣､(３)｢子どもには行くにあたいしない世界｣､(４)｢父との大切な思い出がある世界｣｡
｢彼をこばもうとする｣のだから当然、｢答え｣は｢(２)｣だ。
｢直前直後｣の｢文脈｣を的確に読み取ることが、正解への早道になる。

＜時間配分目安：１分＞

[問三]　｢比喩換言説明選択肢｣(４択)
 傍線部(問三)｢引潮のようなものが作用した｣について、｢どのようなことを表しているか｣を答える。
｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則。そして、先ずは｢原意消去｣だ(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは典型的な｢比喩換言｣なので、｢引潮｣の｢原意｣で｢消去｣していくことになる。｢引潮｣＝｢潮が引く｣⇒｢下がる｣｢減る｣……､ということだ。各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。
(１)｢運んでいる｣､(２)｢やわらいだ｣､(３)｢進んだ｣､(４)｢後かいした｣｡
どうか？　無論、(２)以外は｢消去｣できなくてはいけない。(２)は前半の説明も特に誤っていない。ゆえに､｢答え｣だ。｢一発消去｣｡｢換言説明｣では｢原意消去｣が必須。

 ＜時間配分目安：１分以内＞

[問九]　｢比喩換言説明選択肢｣(４択)
 傍線部(問九)｢もどりながら彼は、波にもまれている海藻を見た｣について、｢『波にもまれている海藻』は何を表しているか｣を答える。
ここも｢比喩換言｣なので、当然｢原意消去｣から。
｢彼｣は｢見た｣のだから、各選択肢｢文末｣で､(２)｢自分｣と(３)｢自分の足｣は不自然なので｢消去｣｡さらに、｢もまれている｣という｢受け身｣ということは、(４)｢からんでくる玉浦の少年たち｣ではなく、(１)｢打ちのめされる和一の姿｣が｢答え｣だと判別できるはずだ。
｢原意消去｣では｢文脈｣｢文法｣も活用すること。

 ＜時間配分目安：１分＞

[問十一②]　｢比喩換言説明の空所補充抜き出し｣(｢語句｣指定)
 傍線部(問十一)｢その時のことを考えると、浩の胸にはひっそりと蜜のようなものが流れたが、そのこと自体はもう先行きの知れない興奮ではなかった｣について、｢どういうことか｣を説明した文の　　　　に入る｢ふさわしい語句｣を抜き出す。
説明文は｢浩にとって和一が 　　　　になったこと｣となっている。
｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。
｢内容｣だが、｢蜜のようなもの｣⇒｢先行きの知れる興奮｣｡そして、｢蜜のようなもの｣は｢その時のこと｣と結びついている。｢指示語｣なので開く(｢指示語｣が出たらすぐに開くこと)｡｢運動会での和一の活躍｣だと分かる。つまり、｢和一｣に対する｢興奮｣であって、それを｢知ることができるようになった｣ということは、｢浩と和一の関係｣に変化があったということだ。そのことは｢説明文｣の内容とも合致する。
次に｢抜き出し範囲｣だ。｢小説｣なので無論、｢同一場面｣だ。｢浩と和一の関係性｣を示す｢語句｣を探す。傍線部の直後に｢２人のやりとり｣があり、その後に｢浩にとって、和一は身近な人になっていた｣とある。｢身近｣､まさに｢関係性｣を示す｢語句｣だ。
よって、｢答え｣は｢身近｣となる。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全てを確認することを忘れずに！

 ＜時間配分目安：２分＞

｢世界一のエビ消費国｣日本は、その９割を輸入に頼りエビは輸入食品の中でも首位の座にあるが、一体どこでどのように獲られているのかについて調査を重ねてきた筆者が、日本とアジアとの知られざる関係を論じている。
本文では、日本人が第３世界から多くの天然資源や食糧などを輸入し、豊かさを享受していることの背景や問題点を考察している。｢論説文｣としては比較的分かりやすいが、理解するためには｢社会｣の知識(特に｢地理｣｢公民｣)が求められる。以下、いくつか検証する。

[問一]　｢条件付き換言説明記述｣(｢40字以内｣指定)
傍線部(問一)｢私たちの生活のありよう、私たちと第三世界との関係のありよう｣について、｢わかりやすく言うとどのようなさまか｣を説明する。
｢条件｣は｢同じ形式段落の中の言葉を用いる｣こと。先ずは、｢どのようなさまか｣の｢さま｣の｢原意｣を取り違えると分からなくなってしまうので要注意。｢さま｣＝｢様子｣｢ありさま｣だ。つまり、｢私たちの生活の様子｣と｢第三世界との関係のありさま｣ということ。｢条件｣である｢同じ形式段落｣の冒頭に｢私たちはエビだけでなく、多くの天然資源や食糧を第三世界で買付け、私たちの〝豊かな〟生活を享受している｣とある。まさに、ぴったりだ。したがって、｢字数｣に応じてまとめていく。
たとえば、｢私たち日本人が天然資源や食糧を第三世界で買付け、豊かな生活を享受しているさま｡｣といった｢答え｣になるはずだ。｢条件｣＝｢ヒント｣と心得よ。

＜時間配分目安：２分＞

[問四]　｢換言説明選択肢｣(４択)
傍線部(問四)｢バナナが大農園で、より〝工業的〟生産が可能なのに対し、エビは広い海、多くの漁民を相手にした産業である。資本の支配力が貫徹しにくい側面がある｣について、｢わかりやすく言うとどのようなことか｣を答える。
｢換言選択肢｣なので無論、｢原意消去｣。特に傍線部の｢貫徹しにくい｣にこだわって｢消去｣してみる。各選択肢の｢文末｣を確認する。
(１)｢違いが出てしまう｣､(２)｢複雑になってしまう｣､ (３)｢損失が出る｣､(４)｢管理することがむずかしい｣｡
｢しにくい｣＝｢むずかしい｣なのだから、｢答え｣は｢(４)｣だと判別できるはずだ。｢一発消去｣｡本問のように、｢傍線部｣や｢選択肢｣の説明が長いものでは、｢原意消去｣は特に有効だ。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問六]　｢自由説明記述｣(｢180字以内｣指定)
｢現在の日本ではウナギが獲れなくなってきつつあります。なぜこの問題が起こったのか、そしてこの問題に対してどのようなことができると思うか｣について、｢あなたの考え｣を｢自由｣に書く。
本校の｢定番｣にして｢最難関｣の｢自由説明記述｣だ。
｢自由……､自由｣といわれても、雲をつかむようで何も浮かばないはずだ。何か｢手がかり｣がほしい。ここでの｢手がかり｣は無論、｢ウナギ｣だ。｢獲れなくなってきつつある｣……､何か思いつかないか？　｢社会｣の｢時事問題｣で学習しなかったか？　そう、｢2014年６月､ニホンウナギが絶滅危惧種に登録！｣だ。なぜ、そうなったのか？　｢日本人はウナギが大好き｣｢完全養殖はできない｣等々⇒｢乱獲｣だと類推できるはずだ。｢本文｣で述べられていることも合わせて考えれば、そこから｢限られた資源だということも考えずに、欲望のままに食べている日本人｣といった｢問題点｣が浮かび上がるはずだ。そして、｢どのようなことができるか｣についても、｢本文｣で指摘されていることを踏まえ、｢考え｣をまとめたい。そうしたことを｢自分なり｣に述べていけばいい。
｢設問自体｣や｢条件｣などを｢手がかり｣｢ヒント｣にして、｢考え｣をまとめる練習をしておくこと。

＜時間配分目安：５分＞

｢総合的知識問題｣(６問)。
示されている(１)～(６)の文について、｢敬語の用い方の正しいものには○､そうでないものには×｣で答える。
本年度は意表をつく｢敬語｣だ｡当然、｢尊敬表現｣｢謙譲表現｣｢丁寧表現｣の区別で判別していく。
(１)｢雨は降っていらっしゃいましたか｣⇒｢雨｣に｢尊敬表現｣は不適切＝｢×｣(⇒｢降っていましたか｣が適切)､
(２)お名前様をちょうだいいたします｣⇒｢様｣と｢ちょうだい｣が不適切＝｢×｣(⇒｢お名前をうかがっております｣が適切)､
(３)｢父はいまテレビをごらんになっている｣⇒｢父｣に｢尊敬表現｣は不適切＝｢×｣(⇒｢見ております｣が適切)､
(４)｢先生をご招待もうしあげたい｣⇒｢先生｣に｢尊敬表現｣で｢私が招待する｣ので｢謙譲表現｣も適切＝｢○｣､
(５)｢冷めないうちにいただいてください｣⇒｢相手｣に｢謙譲表現｣は不適切＝｢×｣(⇒｢めしあがってください｣が適切)､
(６)｢いかがお過ごしですか｣⇒｢相手｣に｢尊敬表現｣なので適切＝｢○｣｡
本校｢定番｣の｢文法｣だけではなく、あらゆる｢知識｣を習得しておくこと。

＜時間配分目安：１分半＞

｢漢字の読み書き｣(12問)。
傍線部(１)～(８)の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直し、(９)～(12)の｢漢字の読み方｣を｢ひらがな｣で答える。本校にしてはやや平易｡注意すべきは｢書き取り｣の、(５)｢商売のサイカクがある｣(＝｢才覚｣)、(６)｢エキシャを建てかえる｣(＝｢駅舎｣)、(８)｢無実をリッショウする｣(＝｢立証｣)ぐらいだ。

＜時間配分目安：１分半＞