フェリス女学院中学校 入試対策
2019年度「フェリス女学院中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「フェリスの国語」には、「文法」「漢字の読み書き」は無論、種々の「総合知識問題」が出題される。さあどうするか? 当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚える。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する際、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。字数制限の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が意外と多い。単独の大問として出題されるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法的」に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
ちなみに、「語彙力」「文法力」強化用テキストとしては「言葉力1200」「言葉力ドリル」(共に学研)、「でる順過去問 ことわざ・語句・文法」(旺文社)等がオススメ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で5000~6000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだ。教えてくれなければ、自分から聞いてみること。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。フェリスに限らず、他の学校(男女問わず)の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしたい。
解法
フェリス特有の「読解問題」に対応するための基本は、やはり「解法」をいかにうまく使うかということ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。
「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして「解説」を聞いて納得した。以上終了ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておく。解き方に迷ったらその「ノート」を確認して、確実に応用できるようにする。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
先ずは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要がある。
では、何を「書く」か? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をすることがとてもいい方法だ。200字程度で書いてみる (フェリスおなじみの「長文記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「最も重要な要素」や「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最も重要な要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(この段階では「マス目のない用紙」を使う)。
意義
いつ何時も、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。なんとなく机に向っていても時間の無駄。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが必要だ。
そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」に合致しているか? 「必要な要素」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。
50分という時間で解き進めていかなくてはならないフェリスでは、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2019年度「フェリス女学院中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「小説」、出典は梅崎春生「魚の餌(えさ)」(文字数約4300字)。
小問は全13問(解答数16)で、出題形式は「選択肢」(「表現効果」、「複数解答」あり)、「抜き出し」(1問)。問題文は6分弱で読み切り、設問を13~14分で解きたい。
大問二は「論説文」、出典は岡田暁生「音楽の聴き方――聴く型と趣味を語る言葉」(文字数約1500字)。
小問は全5問(解答数5)で、出題形式は「選択肢」、「抜き出し」(1問)、「説明記述」(全2問。「40字以内指定」と「字数指定なし」の各1問)。「長文自由論述」(「200字以内指定」1問)。問題文は2分ほどで読み切り、設問を20数分で解きたい。
大問三は「総合的知識問題」(全2問)。
「文法」(「助動詞」「助詞」の「意味・用法」)。1分半ほどでクリアしたい。
大問四は「条件付き短文創作」(「30字以内指定」1問)。3~4分程度でクリアしたい。
大問五は「漢字の読み書き」(全8問)。2分ほどで丁寧に終えたい。
【大問1】「小説の読解」(「選択肢設問」のみ)
- 難度:標準
- 時間配分:20分
- ★必答問題
太平洋戦争中。徴兵に落ちて、故郷でふらふらしている頃、「僕」は毎日、近くの防波堤に魚釣りに行っていた。そこで出会った貧しい身なりの2人の子どもたち。ある時、彼らは「僕」の餌を盗んだ――子どもを相手に大人の「僕」がどうしてジタバタしてしまうのか? 「戦争」「徴兵」「余所者(よそもの)の存在」……、何かによって突き動かされる「僕」の心の機微を繊細に描いた作品。
時代背景ゆえの「心情」の揺らぎを的確に読み取ることは難しい。「説明記述」こそ出題されていないが、小問が13も連なり、なかなか手強い大問になっている。以下、いくつかを確認してみる。
[問二] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(問二)「えさ屋で買うゴカイが、つぶがそろって生きがよければ、僕の心はおどる」について、「なぜか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が基本となる。先ずは、「原意消去」したい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、「直接的理由」での「消去」になる。
各選択肢の「文末」(「選択肢説明」の最も重要な要素は「文末」に記されている)⇒「だから」⇒「心はおどる」と、直接的に結びつかないものを「消去」したい。確認する。
(1)「活力をあたえられる気がするから」⇒「心はおどる」、
(2)「うれしさがこみあげてくるから」⇒「心はおどる」、
(3)「気持悪く感じないですむから」⇒「心はおどる」、
(4)「ほこらしい気分になるから」⇒「心はおどる」。
「心がおどる」⇒「喜びや楽しい期待のために、心がわくわくする」ことなので、(1)(2)以外は「消去」できるはずだ。
次に、「同一場面」から「間接的理由」を捉えていく(「小説」では「同一場面」に「根拠・手がかり」がある)。次文に「身もだえするゴカイにつり針をさすのは、一種のふしぎな快感があった」とある。よって、「新せんなゴカイが手に入ればあらゆる魚がつれると思うと」となっている(2)ではなく、「いきいきとしたゴカイを自分の思い通りにできると思うと」とある(1)が「答え」だと判別できる。
「選択肢設問」では、こうした「原意消去」からの「段階的消去」が必要となる場合もあると心得よ。
<時間配分目安:2分>
[問三] 「状態説明選択肢」(4択)。
傍線部(問三)「盗ったな! 僕ははっとあたりを見回した」について、「このときの『僕』の説明」として「ふさわしいもの」を答える。
無論、先ずは「原意消去」から。本問では傍線部の「僕」の「動作」から読み取れる「状態」と結びつかないものを「消去」する。各選択肢の「文末」は、
(1)「だれが盗ったかあわてて確かめようとした」、
(2)「犯人を見つけてやると息巻いていた」、
(3)「いきどおりを覚えた」、
(4)「子供たちのしわざだととっさに確信した」。
「盗ったな!」という「心の声」は近くにいるはずの「犯人」の目星がついているから発したに違いなく、だからこそ「はっとあたりを見回した」わけだと判断できるはず。であれば、(4)以外は「消去」できる。が、一応前後を確認してみる。
すると、直後に「その子供たちは、内側の方にこしかけている」とある。「その子供たち」という「指示語」は、「盗ったな!」という「言葉」の対象を指し示していることになるので、間違いない。
他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(4)でいい。結果的に「一発消去」だ。
「原意消去」、確実に応用できるように練習しておきたい。
<時間配分目安:1分半>
[問四] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(問四)「ふり返って僕をながめていたらしい小さい方の子供の視線と、僕の視線がパッと合った。急におびえた表情になって、視線を外らして、すこし身体を兄の方にずらすようにした。兄の方は、だまってつり糸を垂れたまま、じっとうきをながめている」(111字)について、「『僕』はこのときの『兄弟』の様子をどのように見ているか」を答える。
「原意消去」から始めるのだが、傍線部があまりに長いので(111字もある)整理したい。
「僕」の「兄弟の様子」の「見方」として、「兄の方」については何の変化も表現されていないが、「小さい方の子供」(=弟)に関しては、「僕の視線がパッと合った」とき「急におびえた表情になって、視線を外らし」と、確実に変化を「見て」いる。
したがって、その「変化」=「おびえた表情になった」という「原意」で「消去」できるはずだ。
各選択肢説明は前半で「弟」、後半で「兄」に対する「僕の見方」が記されている。したがって、「前半」の「弟」に対する「見方」に着目し「消去」する。確認する。
(1)「あわてふためいており」、
(2)「不安で泣き出しそうになっており」、
(3)「僕が気の毒でいたたまれなくなっており」、
(4)「恐怖感で逃げ出したくなっており」。
「おびえた表情」なのだから、明確に(4)以外は「消去」できるはずだ。
「兄」については「気を張っている」と説明されている。それは、傍線部の「だまって」「じっと」「ながめている」という表現と合致する。よって、「答え」は(4)になる。
複雑な「傍線部」や「選択肢説明」はできるだけ簡潔に「分ける」ことが肝要。「分かる」とは「分ける」ことなのだ。
<時間配分目安:2分>
[問五-③] 「象徴表現の抜き出し」(「1文の最初の5字」指定)。
傍線部(問五)「向こうも内心ジタバタしているが、別の意味でこちらもジタバタしている」について、「このときの『子供たち』と『僕』の様子を象徴的に表している一文」を本文中から抜き出して、「最初の五字」で答える。
「抜き出し設問」では、「抜き出すべき内容」を特定してから「抜き出し範囲」を絞り込んでいく。
先ずは「内容」だ。まさに傍線部そのもので、「向こう」もこちらも「ジタバタ」している「様子」の「象徴的な表現」が、「抜き出すべき内容」になる。
次に「範囲」は当然、「同一場面」だ。ここでの「同一場面」は、傍線部の段落までの7段落。「ジタバタ」=「慌てたり焦ったりする様子」⇒「動揺している」状態の「象徴的な表現」を探していく。
すると、2段落前の後半に「子供のえさ箱の中には、僕のと大体同じ型の同じ大きさのゴカイが、グニャグニャともつれ合っていた。」という1文がある。「グニャグニャともつれ合っていた」という表現は、「慌てたり焦ったり」して「動揺している」複雑な心情が絡み合っている「様子」を、「象徴的」に表わす「表現」としてふさわしいと分かる。
しかも、「向こう」=「子供のえさ箱の中」、「こちら」=「僕のと大体同じ型の同じ大きさのゴカイ」と、双方の「心情」だということも示されている。
「抜き出し範囲」に他に「候補」は見当たらないので、「答え」は「子供のえさ」になる。
こうした「オノマトペ」などの「比喩表現」の「換言抜き出し」は頻出だ。しっかりと練習しておくこと。
<時間配分目安:1分以内>
[問八] 「状態説明選択肢」(4択)。
傍線部(問八)「次の瞬間、その自分のやり方が急にあらあらしく僕に反発してきた」について、「このときの『僕』の説明」として「ふさわしいもの」を答える。
最初に「原意消去」をしたい。ここでは「急にあらあらしく僕に反発」という表現の「原意」と各選択肢の「文末」を照合して、結びつかないものを「消去」する。
(1)「いやけがさしてきた」、
(2)「悲しくなってきた」、
(3)「ゆううつな気分がますます強まってきた」、
(4)「腹立たしくなってきた」。
「あらあらしく」「反発」であれば、「怒り」以外には結びつかない。よって、(4)以外は即「消去」だ。
確認のために「指示語」を開くと、「その自分のやり方」=「子供たちにえさを再び盗まれないように、無意識に自分のえさ箱を引き寄せていたやり方」だと分かる。
(4)では「(子供たちを)警かいし、こっそりえさをかくすようにした自分自身のいくじのなさが情けなく」とも説明されている。これも本文と合致しているので、「答え」は(4)で構わない。
見事に「一発消去」だ。「原意消去」は実に便利だが、本文の「文脈」との最終確認を忘れてはいけない。
<時間配分目安:1分弱>
【大問2】「論説文の読解」(「長文自由記述」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:23分
音楽の聴き方は全く自由だが、誰かからの影響や何らかの傾向なしに聴くことは不可能だ。それならば、自分はどんな聴き方をしているのかについて自覚的になることだ――聴き方の「型」を知り、自分の感じたことを言葉にしてみることで、音楽の世界が広がっていくと論じている。
本文では、音楽を「着メロ」のように細切れにして使う現在の風潮を批判している。やや難解な語句もあるが、「注」を活用することで内容は理解できるはずだ。
「説明記述」、「選択肢」、「抜き出し」、そして、最後に本校最大の難関である「長文自由論述」が待ち構えている。以下、いくつか検証してみよう。
[問一] 「換言説明記述」(「字数指定」なし、「20字ほど」の解答欄)。
傍線部(問一)の「不可逆にして不可分の一つの時間」とは、「どのような時間のことか」を説明する。
先ずは「何の時間」なのかをつかみたい。「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部」や「空所部」が「一文の一部分」である場合、「傍線部」や「空所部」以外が「重要な手がかり・ヒント」)で確認する。直前から「音楽の時間」だと分かる。
次に、ここは「換言説明」なので、「不可逆」と「不可分」についてどのように「換言」できるのかを読み解きたい。「同一意味段落」をチェックしていく (「論説文」では「同一意味段落」に「手かがかり・根拠」がある)。3行前に「音楽を細切れにすることへのためらいの気持ち」とある。「細切れ」を「ためらう」⇒「音楽は細切れにはできない」=「不可分」だと読み取れる。しかし、「不可逆」の方は的確な説明がされていない。ということは、「原意」で「換言」する他ない。
「不可逆」=「再びもとの状態に戻れないこと」。当然知っているはずの言葉だ。以上の「換言内容」を簡潔にまとめていくことになる。
たとえば、「戻したり細切れにしたりできない音楽の時間。」(21字)といった「答え」だ。
「換言説明記述」では、「文脈」からの読み取りだけではなく「語彙力」が必要になる場合があると心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「換言説明抜き出し」(「5~10字以内」指定)。
「三輪眞弘」は本文で「着メロ」について、傍線部(問三)「シグナルみたいなもの、パブロフの犬みたいなもの」と言っているが、「筆者はどのような言葉でいっているか」、その「言葉」を本文中から「五字以上、十字以内」で抜き出して答える。
典型的な「比喩換言抜き出し」だ。「抜き出すべき内容」は、「シグナル」と「パブロフの犬」という「比喩」の「原意」になる。「シグナル」=「信号。合図」は誰でもが知っているが、後者は厄介だ。が、「注」があるので活用したい。
「パブロフの犬」=「旧ソ連のパブロフが、イヌに一定の音を聞かせたときに食物をあたえ続けると、後にはこの音を聞かせただけでもだ液が出ることに気づいた」説明されている。
これらの「原意」と同じ「筆者の言葉」が「内容」となる。
「抜き出し範囲」は無論、「同一意味段落」。探していくと、次段落後半に「音楽は三輪の言う『パブロフの反射反応』=『シグナル』に堕してしまう」とあり、その2行後では「音楽のすべてが単なる刺激/反応に還元されてしまったら」と述べられている。ここだ。
筆者は、「三輪の言う『パブロフの反射反応』=『シグナル』」を「単なる刺激/反応」と言い換えている。さらに直後には「ただのシグナル=モノ」という表現があるが、こちらは「字数」は合致しても、「パブロフの犬」に相当するものがないので不適切だと分かる。
したがって、「答え」は「単なる刺激/反応」だ。
「※注」は本文内容の理解のためだけではなく、「解法」でも重要な役割を果たすと記銘せよ。
<時間配分目安:1分半>
[問五] 「条件付き長文自由論述」(「200字以内」指定)。
「テレビ・ラジオのコマーシャルソングや電車の発車メロディーのような、一部分だけを用いた音楽」について、「あなたの考え」を「二百字以内」で論じる。「条件」は「良い点と悪い点の両方を挙げながら論じる」こと。
本校の定番、本年度は「考察」だ。「自由論述」であり「あなたの考え」なので、無論、どのような「内容」にするかは自由。しかし、自由……、自由だからこそ、雲をつかむようで何も思い浮かばないかも知れない。ただ、本年度は「身近でよく耳にする音楽」がテーマなので、何か具体的な「曲」を思い浮かべ、そこから「考察」をふくらませていけばいい。
その際に注意すべきは「条件」だ。「良い点」と「悪い点」の両方を挙げるということを意識する必要がある。
「悪い点」については、本文で筆者が「音楽という不可逆にして不可分の一つの時間を細切れにすると、音楽=生命ではなく、ただのシグナル=モノになってしまう」と批判していることを参考にできるはずだ。そして、自らの「考察」を的確に「文章」として自由に論述していけばいい。
「長文自由論述」は必出。
本校志望者は、「設問自体」や「条件」などを「手がかり」「ヒント」にして、「考察」「感想」や「創作」を「180~200字以内」でまとめる練習を重ねておくことが肝要。
<時間配分目安:6分>
【大問3】「総合的知識問題」(文法)
- 難度:易
- 時間配分:2分
3年連続で本年度も本校恒例の「文法」問題。
ただ、昨年度の「文の組み立て」と異なり、「助動詞」「助詞」の「意味・用法」の判別といったオーソドックスなものだ。
(A)は助動詞「れる・られる」の「受身」「可能」「自発」「尊敬」という「4つの意味」の判別で、誰もが正解して当然のものだ。
(B)だけを検討する。「学校の門の前で待ち合わせしよう」について、下線部と「言葉の働き」が「同じであるもの」を答える。
「で」には「格助詞」と「接続助詞」があるが、ここは「場所」を表す「格助詞」だとすぐに分かるはず。各選択肢の「で」を判別していく。
(1)「雨が降りそうであわてて帰った」⇒「様態」の助動詞「そうだ」の連用形の「活用語尾」、
(2)「君は一人ではない、友がいる」⇒「断定」の助動詞「だ」の連用形、
(3)「たのんでおいた本がようやく届いた」⇒接続助詞「て」が前の動詞の「撥音便」に合わせ濁音になったもの、
(4)「子どもたちは公園で遊んでいる」⇒「場所」を表す「格助詞」=「答え」だ。
ひとつの「単語」なのか「単語の一部」なのかといった判別も適切にできなくてはいけないということだ。
繰り返しになるが、本校では「文法」が必出だ。「文」「文節」「単語」のあらゆる内容を完璧に理解し、確実に定着させておくことが必須。
<時間配分目安:全問で1分弱>
【大問4】「条件付き短文創作」(新機軸)
- 難度:やや難
- 時間配分:3分
本年度新出の「条件付き短文創作」(「30字以内」指定)。
「『たとえ』『断じて』という言葉を両方用いて三十字以内の文」を創作する。「たとえ」「断じて」という2語を用いることが「条件」だ。
これらの言葉の「原意」を的確に押さえているかが、成否のカギとなる。
その意味では「知識問題」でもあるわけだ。で、「たとえ」=「比喩」「例」を表す名詞と、後に「とも」「ても」「にせよ」などを伴って「仮定の成立を認めた場合でも、それに影響されない結果が展開される」ことを表す副詞がある。
どちらの「用法」でも構わないが、「短文」にするには副詞の方が使い勝手がいいはずだ。
「断じて」=「何が何でも。必ず」、「(後に打消しの語を伴って) どうしても。決して」を表す副詞だ。こうした「意味・用法」を踏まえた上で、的確に「短文」をつくっていきたい。
たとえば、「たとえ何度失敗しても断じてあきらめない気持ちを持ち続けたい。」(30字)といった「答え」だ。
新傾向としての「短文創作」が定着するかも知れないので、来年度以降に向けてしっかりと備えることが肝要だ。
<時間配分目安:3分半>
【大問5】「漢字の読み書き」(全8問)
- 難度:標準
- 時間配分:2分
- ★必答問題
傍線部(1)~(5)の「カタカナ」を「漢字」に直し、(6)~(8)の「漢字の読み方」を「ひらがな」で答える。
昨年度は平易だったが、本年度は標準的難易度。本校志望者は当然「全問正解」が望ましいが、さて……。注意すべきものとしては、
(2)「約束をシツネンする」=「失念」⇒これは難しいかも、
(3)「長年のコウセキをたたえる」=「功績」⇒「部首」に要注視、
(5)「シガイチの中心」=「市街地」⇒「文脈」を読み取ること、
(6)「定期券を拾得する」=「しゅうとく」⇒「捨」(しゃ)と混同しないこと、
(8)「山の頂」=「いただき」⇒無論「ちょう」ではない。
「漢字」に関しては、絶対に「抜け落ち」がないようにすること。
<時間配分目安:2分>
攻略のポイント
●「正確な読解力」はもちろん、「設問内容」に対応して考えなければ「正答」へは結びつかない。そこで重要となるのが「解法」だ。
「設問」ごとの的確な「解法」を習得し、応用できるようにしなくてはいけない。特に「小説」では、「比喩表現」の「換言説明」が頻出なのでしっかりと練習しておくこと。
合格ラインは非公表だが、「受験者平均点」(過去11年間で64.4%、本年度は62.0%)から判断すると70%以上はめざしたい。
●必出の「総合知識問題」にも対応する必要がある。特に定番の「文法」は詳細にわたるので注意すること。
塾によっては詳しく学習しない場合があるので、本校を志望した瞬間から独自に努力することが重要となる。
●「180~200字ほどの長文自由論述問題」の攻略も忘れてはならない。「自由」といっても「条件」がある。それを「ヒント」として考える練習を重ねておきたい。
尚、この小問は配点が「10点」あるので、「白紙で0点」だけは避けたいが、手間ひまがかかるので、効率を考え「後回し」にするというのも戦術としてはあり得る。
●本年度、「条件付き短文創作」の出題が新出した。本年度はさほど難易度は高くなかったが、「新傾向」の出題として、時間配分も含め考慮する必要がある。
●試験時間は50分だが、決して余裕はない。問題文のボリュームは全体で5000~6000字程度(本年度は約5800字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
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