学習院女子中等科 入試対策
2020年度「学習院女子中等科の国語」
攻略のための学習方法
物語の読解と記述問題
素材文は物語。例年、10~15問の記述問題・数問の言葉の知識の問題・20問の漢字の読み書きで構成されるという、記述問題と漢字に特化した特徴のある試験となっている。
記述問題は字数の指定がない。解答欄の大きさから考えて40~60字程度でまとめることを想定して作問されているようである。
素材文は受験生の年齢に合わせて、設定や内容が理解しやすいものが使われている。文量は5000~7000字ほど。さほど多くはないが、記述に時間を取られることを考えると、なるべく早く読み終えたい。
これだけ記述問題が多いと気後れしてしまう人もいるかも知れない。素材が論説文であれば本文から適切な部分を抜き出してまとめることで答えになる場合も多いのだが、物語文ではそうもいかない。人物の気持ちは言動に含まれていたり、情景によって暗示されていたりと、直接には書かれていないことが多い。読み手の心情把握の実力が問われる。
ただし、素材文自体や設問の内容自体は、けっして難しすぎるということはない。小学六年生として素直に感じ取れることを、適切な文章力でまとめれば良いのである。
物語の読解
まずは物語や小説をたくさん読んで文学的文章に多く触れることである。比喩や情景描写など、物語でよく用いられるさまざまな技法には特に注意して十分に慣れておこう。
読書経験を通して、読解の訓練を積み重ねよう。まずは場面分け。時間・場所・登場人物の変化などで場面の変わり目をマークする。回想や想像など、過去や未来の場面が含まれる場合などは時系列を整理して混乱しないように注意する。
一番のポイントは人物の言動や情景描写から、その心情を理解すること。物語の読解で訊かれるのは多くはこの部分であろう。人物の性格が異なれば同じ行動でもその意味が異なってくる。どのような気持ち・考えか、その理由は何か、重要点には傍線を引くなどして目立つようにしておこう。
そして全体としての主題は何か。読んだ部分を簡潔にまとめてあらすじをつくり、そこに人物の気持ちを当てはめていくとわかりやすいだろう。
今後も出題傾向に大幅な変更が無いと仮定すれば、物語の読解を徹底して練習しておくことが対策の第一となる。
記述力の養成
解答のほぼ全てを記述で答えなければならないのは、やはり大変である。「人物の気持ち」や「情景が何を表しているか」を「説明」しなければならない。文中にあるのは手がかりや素材なので、自分でうまくまとめなければならないのである。
物語の場合は「心情+その理由」というパターンが一番多いだろう。「~という理由・原因で、~という気持ち・考えになった」という2点を常に意識しよう。読んでいる最中に「なぜなのか」と「どんな気持ち・考えなのか」を丁寧に考えるくせをつけたい。
40~60字ほどでまとめる問題が多いので、いろいろな物語を読んで、読んだ部分の人物の心情や情景を、字数で説明する練習をするとよいだろう。頭で考えるだけでなく、実際に書いてみることが大事である。
その際、ひととおり書いて終わりではなく、文法がおかしくないか・内容に破綻がないか・誤字脱字はないかなどセルフチェックできるよう練習して、本番で無理なく実行できるように頭に染み込ませよう。
漢字の読み書き
20問の出題は他の学校と比べてもかなり多い。配点で2割を占めているので落とすわけにはいかない。さほど難しい漢字ではないが、読みはやや難しいものも見られるので、少し重点的に練習しておくとよい。全問正解で得点を稼ぎたいところである。
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2020年度「学習院女子中等科の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
漢字の読み書き20問・言葉の知識が数問・40~60字ほどの記述問題が10問という例年通りの形式の出題となっている。
文量は7000字程度。読みに10~12分・漢字は5~7分ほどで終えるとして、記述1問につき3分程度かけられる計算である。書く分量が多いので「書くスピード」といったものも必要になってくる。
【大問一】小説の読解
- 難度:難
- 時間配分:43分
- ★必答問題
「日向」グループに属していた主人公だったが、朱里との仲に亀裂が生じたことをきっかけに「日向」「日陰」と人間関係に境界線を引いて本音を押し殺していた自分を省みて、もっと自由に人と話し向き合いたいと考えるようになる。
問1 それまで仲良くしていた朱里との間で「何かがずれ始め」た。原因は朱里が「日陰」と認定しているしおりと主人公が仲良くしたことで、朱里はそれが気に入らず主人公を無視し始め、二人の気持ちに隔たりが生じている。
問2 ここ数日、朱里が応援旗の制作をさぼって隣のクラスの部活仲間と過ごしている。主人公がしおりと仲良くすることは気に食わないのに、自分は他のクラスの友人と作業をさぼって遊んでいる。その身勝手さ、不誠実さに主人公は不快を感じているのである。
問3 朱里のサボリを本当は指摘して改めさせたい。だが、折から朱里との仲が不安定になっていて、ここで強く朱里を非難してしまったら決定的な亀裂が生じ、グループから追い出されてしまうかもしれないと恐れて、はっきり言えない。そのようなはっきりものを言わない主人公の性格を、朱里は自分に都合よくとらえて「やさしい」と表現したのであろう。
問4 赤という目立つ色を強調することで、旗の制作が失敗の危機にさらされていることがまずは示されている。さらに、この日に大きな事件が起こることが直前で宣言されているので、その事件が起こることを予感させる不穏な空気・暗示にもなっている。
問5 「順を追って」とあるので、事件前の二人の様子から記述する。朱里の機嫌を損ねて無視されている状態で、朱里のサボリの問題が発生した。主人公はそうしたことについてははっきりと言わず、気持ちを抑えている。しかし、松村の失敗を朱里が「ロコツな物言い」で無神経にとがめた。サボっていたくせにそんな態度で、制作にともに励んできた仲間を傷つける発言をする朱里に我慢の限界に達したのである。
問6 もともと、朱里の自分を無視する態度や、作業をサボる姿勢に不信感を持っていた。松村の失敗は単に、主人公が思い切るきっかけに過ぎなかった。
問7 他の人も思ってはいたが口に出さなかった事実を、主人公がはっきりと朱里に突きつけ、松村をかばった。その後、皆で協力して旗のデザインを修正し仕上げていった。そのような過程を経て仲間としての意識が育まれ、打ち解けていったのだと考えられる。
問8 「日向」は活発で人間関係も派手でクラスでも目立つ明るいグループ、「日陰」は地味で大人しくどちらかと言えば暗い人たち、朱里はそのようにクラスを「日向」と「日陰」に分け、「日陰」であるしおりと主人公が仲良くするのが気に食わなかった。主人公も「日向」のグループから外されることを当初は恐れていて、朱里にはっきりものを言えなかったのだと考えられる。「日陰」の側に行くことを恥ずかしいことと考えていたのだろう。それは主人公自身も人間を「日向」「日陰」で線引きしていたことを意味している。
問9 問8も参照。朱里に本心をぶつけたことで、自分も人を線引きしていたのだとはっきり意識された。「花びらの舞う空の中を、悠々と泳いでいく大きなクジラ」の絵に「どこにでも行けそうな自由さ」を主人公は感じている。それは、これからは人間関係に境界線など引かず、自由に本当の気持ちを伝えて付き合っていきたいという気持ちのイメージであろう。
【大問二】漢字の読み書き
- 難度:標準
- 時間配分:7分
① 閣議――内閣が意思を決定する会議。総理大臣とすべての国務大臣とで構成される。
② 認可――適当と認めて許可すること。
⑤ 歴然――まぎれもなく、はっきりしているさま。
⑥ 意味深長――言動や表現に、深い趣や含蓄があるさま。
⑧ 単刀直入――遠回しでなく本題に入り要点をつくさま。
⑪ 査定――金額・等級などを調査して決定すること。
⑫ 飼料――家畜に与えるエサ。
⑭ 納(める)――迷ったら「納税」を思い浮かべよう。
⑯ きこつ――信念を守る強い意気。
⑰ はっぷん――「奮発」も同じ意味で使える。
攻略のポイント
とにかく記述の分量が多いので、書く事に抵抗を感じないように十分な経験を積んで慣れておくことが大事である。40~60字程度でまとめられるように感覚をつかんでおこう。素材が物語文なので、普段から小説や物語を多く読む習慣がある人は当然有利であろう。年齢相応の話でよいので、なるべく多くの本に触れておこう。
漢字に重点が置かれている点も考慮して、しっかり練習しておくこと。ここで大きく失点するレベルでは合格はおぼつかない。
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