学習院女子中等科 入試対策
2016年度「学習院女子中等科の算数」
攻略のための学習方法
速読即解が目立つ女子上位校の中にあっては、じっくりと問題を読み解かせることに重きを置いた算数となっている。
問題を解くスピードに若干の不安を抱える生徒にはうってつけの学校である。
もちろん、スピードに自信がある生徒には余裕が増すだけなのでなお向いている学校と言える。
しかしながら、ある程度の学校難易度が示しているように合格点を取ることはそう容易ではない。
それは基本問題をすべて抑えていくことの難しさ、さらにこの学校独特の出題にその理由がある。
そこで対策が必要となる。
答案作成
まず、「答案用紙に式や考え方を書かせる」という点を述べておきたい。
おそらくふだんも線分図や面積図、表や図を書いて解いているものと思われるが、ここでは試験官に見せるものとしての答案作りを指導したい。
はじめに頭に浮かぶのは「どこまで書けば試験官の納得のいく式や考え方になるのか」ということだ。自分だけ分かれればよいような式や答えでは相手に伝わるのは難しいし、かといって参考書や問題集にある模範解答並みの分量ではどう見ても時間が足りなくなる。
ほどほどの記述量で相手に過不足なく伝わる答案作成にはどうしても演習が必要になる。そこで今すぐにでも始めてもらいたいのは「簡単な問題」の答案作成から始めよう、ということだ。
「AとBの和は30、差は4です。A、Bはそれぞれいくつですか」
というレベルでよい。はじめのうちは作成する側に余裕のある問題でよい。過去問レベルで急に答案作成となると無理がありすぎる。
ふだんなら暗算でも出来てしまうレベルでよいのでていねいに数行、図や式を書いて練習してみよう。
難易度は徐々に上げていけばよい。過去問での答案作成は寒くなったころでも十分間に合う。
数学などの数式には本来美しさが伴うものだ。誰に見せても美しいと思われる答案を作れるようになりたい。
作図問題
次は「作図問題」への対策。
通常の問題集では作図問題が軽視されていることが多い。どの学校でも出されるというわけではないからだ。
そこで家庭教師の先生などに作図問題をまとめてプリントにしてもらい、ある時期にまとめて演習してみるのがよい。
出される傾向は決まっているのでそれほど時間はかからないと思う。
ただし、作図問題の場合、演習を重ねても本番では解けそうもないレベルで出されることがあるので注意が必要だ。
計算問題
最後に「計算問題」の練習。
学習院女子に合格したい場合、どうしても確実に得点しておきたいのが冒頭の計算問題である。
しかし、計算問題は「自分でやっとけ」と言わんばかりに軽視される傾向にあり、意外と受験生の盲点になっている。しかも計算問題でミスすると、ひどいことをやったようにあちらこちらから指摘されイヤな思いをする。または解けたとしても、平成26年度の【大問1】(2)などを分配法則でまとめもせずに力ずくで解いて正解してもあまり意味がない。問題にはその問題に適した解き方と所要時間がある。10分もかけて正解を導いてもそれは正解とは言えない。
計算に工夫が必要とされる問題を選択して、正解よりも工夫することに重きを置いた時間を作ろう。受験生生活全体で2~3時間もやればある程度形になるだろう。ほとんどは例年出されるような計算であり、慣れが必要だが、慣れてしまえば整数の計算なのでそれほど厄介ではない。
過去問演習
過去問に取りかかるのは、上記の演習を十分こなした秋頃からでよい。
1回目はとにかく問題に当ってみて、この学校の難易度に触れておくこと。はじめから合格点などとれやしない。2・3ヶ月やってみて、60~70%取れれば十分である。
2回目は時間配分や答案作成に気を遣いながらできるだけ完璧な答案を心がけること。
3回目は受験直前に解いてみて、合格できる力を確認してから本番に臨もう。
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2016年度「学習院女子中等科の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問6、小問14というのは、練習を積んできた受験生にとっては適量といえる。式や考え方を書かせる学校ではあるが、時間にはある程度余裕が持てる。
じっくり考えて、正答に到達することは十分可能なので、あせらず問題文をよく読み、腰をすえて1問ずつていねいに問題に当りたい。
はじめに計算問題が、あとは標準~やや難度の高い文章題が並んでいる。
【大問Ⅰ】 計算問題
- 難度:易
- 時間配分:5分
(1)は、分数と整数の混合四則計算。「計算の順序」を守れていれば問題はなさそうだ。
(2)は「2016」を分数の分母にすえた逆算の問題。途中で約分が上手く行えれば例年よりはくみしやすかったと思われる。
【大問Ⅱ】 売買損益の問題(つるかめ算)
- 難度:易
- 時間配分:5分
- ★必答問題
仕入れた品物を2通りの価格で売って利益(売り上げ)が与えられているという典型的な売買損益のつるかめ算。「定価の4割引き」が仕入れ値を下回るので全体の値を売り上げに置き換えて問題を解く。ここは絶対に正解しておきたい。
【大問Ⅲ】 平面図形(底辺と面積の比)
- 難度:標準
- 時間配分:8分
- ★必答問題
【大問2】に引き続き、受験生なら、一度ならず二度も三度も解いたことがある問題。ただし(2)では図形内に引かれている線が交錯しているので注意して問題に当たりたい。
(1)はBD:DCをいったん求めてから改めてBF:FDを分けなおす。
(2)はBG:GE:EAを(1)同様求めてから、それぞれの三角形の割合をていねいに求める。
やや面倒ではあるが、ここもしっかりと正解しておきたい。
【大問Ⅳ】 2量の関係(タクシー料金・調べていく問題)
- 難度:標準
- 時間配分:10分
これまた教材などでよくお目にかかる問題であり、(1)のような基礎の確認が出来る設問まである。(2)以降は徐々に難度を上げている。
(2)では、きまりにしたがってx、yの等式を2つたて、消去算の考え方を使ってそれぞれ求めていく。はたしてこの設問を正解できたかどうか…
(3)はH市とS市のタクシー料金を調べ上げていくという問題で根気が必要になる、いかにも学習院女子らしい問題。
【大問4】がすべて正解できていれば算数については合格ラインにらくらく到達することだろう。
【大問Ⅴ】 平面図形の問題(回転移動の作図・求積)
- 難度:標準
- 時間配分:6分
- ★必答問題
直角三角形の頂点を中心に180度回転させた辺ACの軌跡を作図させた上でその面積を求めるという問題。学習院女子の算数に作図はつき物なので、過去問対策を十分に行っていればその中では平易な部類に入る。おうぎ形のそれぞれの半径も三角形の辺の長さそのものなので、正解も十分に見込める。
【大問Ⅵ】 規則性の問題(仕事算と周期算)
- 難度:やや難
- 時間配分:10分
相性のよい2つの文章題の内容を使った問題で、ラストを飾るにはちょうどよいレベルである。
(1)A、B、Cの仕事量の比と、全体の仕事量を求めておけば、なんなく正解できる設問である。
(2)からは周期算が導入されている。
全体の仕事量を1週間の仕事量で割り、「○週間とあまった仕事量」から問題を解くわけだが、(2)は仕事があまらず(3)は仕事があまる、と差別化が行われている。もちろん(2)のほうが解きやすいが「日曜日の存在」を扱い損なうと日づけが1日ずれる可能性がある。(3)ではあまった仕事量を月曜日から順番に消化していく。
難易度は高いものの、新傾向の問題ではないので解けた生徒も多くいることだろう。
攻略のポイント
本年度A入試の受験者平均点は64.1点と、最近では最も高い数値となっている。合格点は65~70点と考えると良い。
失点しやすそうな問いは、【大問3】の(2)、【大問4】の(3)、【大問6】の(2)(3)あたりかと思われる。ここ以外の失点を1・2問程度に抑えていければ合格ラインは超えられそうだ。超難問は見当たらないもののどの問題も中学受験のための勉強を積み重ねたからこそ解ける問題である。
合格するためのポイントとしては
・頻出分野の徹底的な演習
・図形など作図が必要な問題でも手が出るように
・式や考え方を相手に伝わるように書く練習
が必要になる。
3つめのポイントはあとに譲るが、難しい問題の演習は必要がないので、問題集で言う中程度の問題を多くこなしてスピードと勘を磨き、過去問で仕上げを行えば、算数が苦手な生徒でも決して手が出ない水準問題ではないので、思い切ってトライしてみよう。
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