学習院女子中等科 入試対策
2020年度「学習院女子中等科の算数」
攻略のための学習方法
速読即解が目立つ女子上位校の中にあっては、じっくりと問題を読み解かせることに重きを置いた算数となっている。
問題を解くスピードに若干の不安を抱える生徒にはうってつけの学校である。
もちろん、スピードに自信がある生徒には余裕が増すだけなのでなお向いている学校と言える。
しかしながら、ある程度の学校難易度が示しているように合格点を取ることはそう容易ではない。
それは基本問題をすべて抑えていくことの難しさ、さらにこの学校独特の出題にその理由がある。そこで対策が必要となる。
答案作成
まず、「答案用紙に式や考え方を書かせる」という点を述べておきたい。
おそらくふだんも線分図や面積図、表や図を書いて解いているものと思われるが、ここでは試験官に見せるものとしての答案作りを指導したい。
はじめに頭に浮かぶのは「どこまで書けば試験官の納得のいく式や考え方になるのか」ということだ。自分だけ分かれればよいような式や答えでは相手に伝わるのは難しいし、かといって参考書や問題集にある模範解答並みの分量ではどう見ても時間が足りなくなる。
ほどほどの記述量で相手に過不足なく伝わる答案作成にはどうしても演習が必要になる。そこで今すぐにでも始めてもらいたいのは「簡単な問題」の答案作成から始めよう、ということだ。
「AとBの和は30、差は4です。A、Bはそれぞれいくつですか」
というレベルでよい。はじめのうちは作成する側に余裕のある問題でよい。過去問レベルで急に答案作成となると無理がありすぎる。
ふだんなら暗算でも出来てしまうレベルでよいのでていねいに数行、図や式を書いて練習してみよう。
難易度は徐々に上げていけばよい。過去問での答案作成は寒くなったころでも十分間に合う。
数学などの数式には本来美しさが伴うものだ。誰に見せても美しいと思われる答案を作れるようになりたい。
作図問題
次は「作図問題」への対策。
通常の問題集では作図問題が軽視されていることが多い。どの学校でも出されるというわけではないからだ。
そこで家庭教師の先生などに作図問題をまとめてプリントにしてもらい、ある時期にまとめて演習してみるのがよい。
出される傾向は決まっているのでそれほど時間はかからないと思う。
ただし、作図問題の場合、演習を重ねても本番では解けそうもないレベルで出されることがあるので注意が必要だ。
計算問題
最後に「計算問題」の練習。
学習院女子に合格したい場合、どうしても確実に得点しておきたいのが冒頭の計算問題である。
しかし、計算問題は「自分でやっとけ」と言わんばかりに軽視される傾向にあり、意外と受験生の盲点になっている。しかも計算問題でミスすると、ひどいことをやったようにあちらこちらから指摘されイヤな思いをする。
または解けたとしても、平成26年度の【大問1】(2)などを分配法則でまとめもせずに力ずくで解いて正解してもあまり意味がない。問題にはその問題に適した解き方と所要時間がある。10分もかけて正解を導いてもそれは正解とは言えない。
計算に工夫が必要とされる問題を選択して、正解よりも工夫することに重きを置いた時間を作ろう。受験生生活全体で2~3時間もやればある程度形になるだろう。ほとんどは例年出されるような計算であり、慣れが必要だが、慣れてしまえば整数の計算なのでそれほど厄介ではない。
過去問演習
過去問に取りかかるのは、上記の演習を十分こなした秋頃からでよい。
1回目はとにかく問題に当ってみて、この学校の難易度に触れておくこと。はじめから合格点などとれやしない。2・3ヶ月やってみて、60~70%取れれば十分である。
2回目は時間配分や答案作成に気を遣いながらできるだけ完璧な答案を心がけること。
3回目は受験直前に解いてみて、合格できる力を確認してから本番に臨もう。
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2020年度「学習院女子中等科の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が7,小問11は例年なみの分量である。昨年度問題の易化にともない受検者平均点が暴騰したことを受けて、本年度は例年並みの平均点に戻った。ただし、【大問7】以外は受験生にとってさほど難しい問題には思われない。
したがって、記述式の学校ではあっても時間不足に陥ることなく【大問7】に十分に時間をかけられるよう解き進めていくことが可能だろう。
【大問1】計算問題(分数の四則計算)
- 難度:易
- 時間配分:6分
- ★必答問題
小数も混じっているもののすぐに約分されてしまうので、あとは通分に気をつけて計算を行っていけば良い。時間をかけてていねいに行いたい。
【大問2】計算問題(記号のあてはめ)
- 難度:易
- 時間配分:6分
- ★必答問題
式の途中に□があり、等号の左と右で数値が同じになるように記号(+-×÷)のいずれかをあてはめて答える問題。
等号の右辺は分母が45(5×9)の分数なので、左辺「7×8÷9」のところから「9」はつくれるとして「5」は「3×4□5」の□に÷をあてはめて作るしかない。実際に「÷」を入れて左辺を計算すると右辺と値が同じになる。あっけない…
【大問3】年齢算
- 難度:標準
- 時間配分:6分
- ★必答問題
線分図で解ける基礎的な問題とは違い、問題の条件にあてはまる年を①とおいて、「33+①=(5+1+②)×2」という等式をたて①あたりを求めていく中程度の難易度を持つ問題である。学習院女子では、式を立てて解く年齢算がよく出されるので過去問をちゃんと勉強してきた生徒には「易」レベルと言って良い問題だっただろう。もう少し難しくても受験生たちは解けると思われるのだが…
【大問4】規則性(交点の問題)
- 難度:標準
- 時間配分:6分
問題文が文字だけで、ヒントになるような図が与えられていないところは好感が持てる。交わる点が最も少ないときは「すべての直線が1点で交わる」ときなので、ポイントは最も多くなるときの個数である。
直線の数を1本、2本、3本、4本…と増やしていくと、交点は最大で0個,1個,3個,6個…と規則的に増えていく。例えば、直線が4本のときは「1+2+3=6」となるので、直線が100本のときは「1+2+3+4+…+98+99」と考えられる。あとは等差数列の「和の公式」を使って求めれば良い。
【大問5】速さ
- 難度:易
- 時間配分:6分
- ★必答問題
昨年度の「速さ」の問題も平易で残念な思いをしたが、本年度の問題も負けず劣らず平易である。「速さ」を覚えたての小5の生徒にはうってつけの問題かもしれない。
Aさんは「0.3時間を30分」と考えている箇所が間違いで、
Bさんは「時速3.6kmを分速に直すと分速216m」というところが間違っている。そこを修正して計算し直せば正しい出発時刻も求まってしまう…
この問題のレベル自体が間違っているのではないか。
【大問6】時計算
- 難度:易
- 時間配分:6分
- ★必答問題
時計算を苦手とする生徒は少なくないかもしれないが、これだけ基本に忠実な問題であれば間違えるのは難しいだろう。10時ちょうどのときの長針と短針の間の角300度を長針と短針の1分間あたりに動く速さの差で割って、あとから30(分)をひけばよい。(2)は設問としては珍しい内容だがレベルは平易なままである。中心角の取り扱いさえ間違えなければこれも容易に解答可能だ。
【大問7】水そうとグラフ
- 難度:やや難
- 時間配分:14分
最後に来てようやく骨が折れる(少しだけ)大問が登場した。時間はたっぷりあるので、少なくとも(1)のア~エに入る数字は答えておきたい。
(1)水そうの容積を求めて10cm3でわればまずエは求まる。
また、3つのコップは底面積が同じなので、グラフからコップに入れている時間を読み取り、高さの低い方からコップの高さの比は7:10:15となる。次に「15」の高さまで水が入るのにかかった時間は450秒なので、そのときの水の体積「10×450」を底面積「10×30」で割ると高さは15(cm)…アとなり、これが比15にあたるのでそのまま答えになり、同時に10…イと7…ウも答えとなり(1)が解決する。
(2)では、コップの中の水はそのまま残るので水そうの容積からコップ3個分の体積をひいてそれを50でわると答えが求まる。
(3)では今度は逆にコップの中にははじめから水が入っているのでそれ以外の部分の体積を13cmまで求め、最後に50でわればよい。
作業の細かい問題ではあるが出題のされ方は典型的である。コップに水を入れている途中で穴から水がこぼれる、とか、コップの底面積がすべて異なる、など条件がもっと複雑であればやりがいのある問題になっただろうに残念だ。
攻略のポイント
本年度A入試の受験者平均点は50.3点と昨年度よりも26.5点も下がり、ここ数年では最も低い平均点となった。しかし問題の難易度が高くなったと思われず、普段しっかりと勉強を積んでいれば平均点を大きく上回る点数が取れたはずである。
その平均点に関しては、2017年度は47.3点、2018年度は61.9点、2019年度は76.8点と安定しないもののテストに向かう姿勢に変わりはない。それは、基本的なレベルの問題をしっかりと正解することだ。平均点が低い年は基本レベルが少なく、本年度はそのほとんどが基本レベルの問題だったと言うことだ。本年度であれば、【大問1】~【大問3】、【大問5】・【大問6】は確実に正解しておきたい。また、【大問4】の考え方は身につけておきたいところだ。
来年度もまた標準的な大問が並ぶつくりになるだろうから、テスト中の基本問題をしっかり正解して合格点をその手につかもう。
最後に、合格するためのポイントとして
・ひん出分野の徹底的な演習
・図形など作図が必要な問題でも手が出るようにしておこう
・式や考え方を相手に伝わるように書く練習
をあげておく。
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