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広尾学園中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2024年度「広尾学園中学校の社会」
攻略のための学習方法

[スライド式学習]

「地理」「歴史」「公民」と「時事問題」の「知識」を確実に定着させておく必要がある。「基礎的事項」は当然だが、相当細かな「知識」や「深い理解」も求められるので注意したい。テキストの「注」や「囲み説明」等もチェックしておくこと。ただ、人は忘れるものだ。時が経てば経つほど忘れる。ここに実は落とし穴がある。基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し、定着させたのか、その時期が問題となる。塾では通常、本格的な受験勉強が始まる5年生になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、6年生の夏休み前には終える。その後は「復習」となるが、そのメインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。6年生で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか? 実質的に1年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。広尾では「地理」単元に含まれる全ての分野から多数出題されるのだ。そこで、独自の「復習」が必要となる。塾での進度とずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある5年生の冬休みやその後の春休みを利用して徹底的に「地理」の「復習」をしておくことが勝利につながる。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用して、ライバルに差をつけておきたい。

[いもづる式学習]

「暗記事項」はそれぞれ単独に、単なる「一問一答方式」で定着させておいてもあまり意味がない。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられないからだ。そこで重要となるのが「いもづる式学習法」だ。「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習だ。ひとつの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。もし「用語(言葉)」としては覚えていても内容があやふやになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ついでにここでも「復習」できる)。また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。その上で、それらが結びつく背景(=「面」)も理解するようにする。このようにして改めて定着させた「事項」はどのような問われ方をしても「線」で結びつけて答えられることになる。さらに、単元もまたいでいるので、「単元融合問題」にも対応できるようになる。また、昨今頻出の「考察問題」でも「知識」をつなぎ合わせることができるようになる。

[手づくり式学習]

特に「歴史」単元の「復習」で必要となる。塾での「歴史」の学習は普通、「政治史」を軸とした「通史」として「時代別」「時代順」になっている。だが、広尾に限らず入試問題ではそうした単純なものは少ない。特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸で出題される。それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」~「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。さらに、その「年表」には「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」を対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられない問題が多いからだ。「年表づくり」を楽しみながらやってみよう。

[細部へのこだわり式学習]

必ず出題される「資料読み取り問題」や「設問文の内容を組み合わせて考える問題」。これらを考えるにあたって最も重要なことは、「資料」や「内容」をいかに正確に読み取るかということだ。資料や設問文に示されていることだけに基づいて「考えるヒント」を見つけ出す。とにかく「細部」にこだわって読み取ることが必要となる。そのためにはトレーニングが欠かせない。過去問等を用いて、資料の細かな「数字」や「項目」と「設問文の内容」を全て材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する訓練をするのだ。導き出せることについては、「解説」などに示されているので活用すること。こうした「細部へのこだわり学習」を続けることで、次第に資料や設問文に示された「手がかり・ヒント」が自然と浮かび上がるようになる。あとは自分の「知識」と結びつけて考えればいいのだ。

[意識継続式学習]

常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。漫然と机に向っていても意味がない。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切。そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習したい。本番では「30分」という制限時間の中で、重要な「設問条件」をクリアして答えなくてはいけないのだ。だからこそ、「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れる全ての段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。さらに、「時間」も「意識」すること。入試では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2024年度「広尾学園中学校の社会」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「地理」(「時事」2問の混在あり)。「地震・異常気象・感染症の流行」に関する出題。小問は全4問(解答数7)、「選択肢」(「組み合わせ」あり)、「事項記述」(漢字指定)。

大問は「歴史」。「『万博』と日本」についての「リード文」からの出題。小問は全7問(解答数7)、「選択肢」(「時期整序」、「不適切」、「複数完全解答」あり)、「事項・人名記述」(全て「漢字指定」)。

大問は「公民」(「歴史」1問の混在あり)。「紙幣とその肖像」についての「リード文」からの出題。小問は全8問(解答数8)、「選択肢」(「組み合わせ」、「複数完全解答」あり)、「事項・人名記述」(「漢字指定」あり)。

大問4-Ⅰは「考察問題」(「歴史」の要素あり)。「新井白石の政策」についての「資料」と「説明文」からの出題。小問なし(解答数1)、「考察論述」(1問。「字数指定なし」)。

大問4-Ⅱも「考察問題」(「公民」の要素あり)。「相続税」についての「説明文」からの出題。小問全2問(解答数2)、「計算記述」(1問)、「考察論述」(1問。「字数指定なし」)。時間配分は、「考察論述」は10分ほど、他は1問を1分弱で解くという超ハイペース。無論、圧倒的なスピード感とメリハリのある「戦術」が求められる。

【大問1】「地理」(「時事」2問の混在あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:6分

「地震・異常気象・感染症の流行」に関連する出題。「地形図」、「統計資料」、「日本地図」、「世界地図」、「説明文」などについて多角的に「地理」の知識が問われている(「時事」2問の混在あり)。見慣れない「資料」も多いはずで、戸惑うことは必至だ。ただ、ほとんどが「組み合わせ選択肢設問」なので、分かりやすい項目で一気に絞り込むことができるということを意識して落ち着いて解き進めたい。以下、いくつかを検討する。

[問2(ⅱ)] 「統計地図読み取り組み合わせ選択肢設問」(6択)。

「東日本大震災」を契機にして変化した「日本のエネルギーを取り巻く状況」に関して示されている「図5(Ⅰ)~(Ⅲ)」(液化天然ガス・原油・石炭それぞれの輸入先上位4か国を世界地図に塗りつぶしたもの)について、「各指標」と(Ⅰ)~(Ⅲ)との「組み合わせ」として「正しいもの」を答える。(Ⅲ)では「サウジアラビア」が塗られているので、すぐに「原油」だと特定できるはずだ。この段階で選択肢は(イ)か(エ)の「2択」になった。次に、「ロシア」と「インドネシア」が塗られている(Ⅱ)は「石炭」で、「マレーシア」・「カタール」が塗られている(Ⅲ)が「液化天然ガス」だと判別したい。したがって、その組み合わせになっている(イ)が「答え」だ。ちなみに、「液化天然ガス」・「原油」・「石炭」に関連する「統計資料」は昨年度も出題されているので、要着目だ。尚、「組み合わせ選択肢」では、自分が知っている「項目」で一気に絞り込むことが肝要だ。

                                   <時間配分目安:1分弱>

[問3(ⅱ)] 「統計資料に関する空所補充語句記述設問」(漢字指定)。

「1993年の冷害で米の生産量に深刻な被害が生じた」が、「冷害以外に米の生産に影響を与えた要因」について示されている「図7」(「米の生産量」と「1人当たりの精米供給量」の1990~2020年までの間の推移を表している)についての「説明文」中の空所  F  の「当てはまる語句」を「漢字」で答える。「図7」からは、「米の生産量」も「1人当たりの精米供給量」も1990年以降、右肩下がりだと読み取れる。そして、2か所ある空所部分は「(……年々減少している)背景として戦後から続く食生活の変化や、1971年より国が米の生産量の抑制を図るために行った  F  政策が関係していると考えられ……」「  F  政策は2018年には廃止され……」となっている。1971~2018年に行われていた「米の生産量の抑制を図るための政策」⇒無論、「答え」は「減反(政策)」だ。尚、「減反政策」は「米の生産調整」とも言い、具体的には「休耕」や「転作」によって進められたことも覚えておきたい。

                                   <時間配分目安:1分弱>

[問5] 「統計資料読み取り組み合わせ選択肢設問」(6択)。「時事」単元。

「新型コロナウイルス感染症の流行が観光業におよぼした影響」に関して示されている「図10」(2018~2022年のアメリカ・韓国・中国からの訪日外国人客数の推移を表している)について、図中の(L)~(N)と「国名」との「組み合わせ」として「正しいもの」を答える。「新型コロナウイルス感染症」が流行する前の2019年をチェックすると、「1位」が(L)、「2位」が(M)、「3位」は(N)となっている。「1位」=「中国」は常識で、選択肢は(オ)か(カ)の「2択」になる。残りの「アメリカ」・「韓国」であれば、後者が「2位」だと判別できるはずだ。よって、その組み合わせになっている(カ)が「答え」になる。尚、近年「インバウンド」(=訪日外国人観光客)の関連事項は「時事ネタ」の定番になっているので、常に注目していたい。

                                   <時間配分目安:1分弱>

[問1]は「能登半島の珠洲(すず)市」を示した「ハザードマップ」としての「地形図」からの出題。「地形図読み取り」は本校に限らず「地理単元」での定番なので、「地図記号」「等高線」「方位」「縮尺」等の「地形図」に関連する基礎的事項を完全に定着させておき、細部に注意して正しく読み取っていくことがポイントだ。

【大問2】「歴史」(「時期整序」あり)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:6分

「2025年、『大阪・関西万博』開催」という「時事ネタ」を切り口としての、「日本と『万博』との関わり」についての「リード文」からの出題。「幕末」から「現在」までの多種多様な「歴史的事項」が問われている。「深知り知識」が求められたり、判別が紛らわしい「正誤判別」があったりと一筋縄ではいかない大問だ。心して臨みたい。以下、少し検証してみたい。

[問2] 「下線部についての時期整序選択肢設問」(5択/複数完全解答)。

「リード文」中の下線部「幕府」について、示されている(ア)~(オ)の「歴代の徳川幕府が実施した政策」を「古い順に並べ替えて」答える。それぞれの「政策」の「キーワード」・「要点」で「時期」を特定していきたい。

(ア)「大名から1万石につき100石の割合で米を上納させた」⇒すぐさま、「上米の制」だと判断できる⇒「享保の改革」=「8代将軍徳川吉宗」。

(イ)「外国船が近づいたら、直ちに攻撃しろという法令」⇒「異国船打払令」のことだと特定できなくてはいけない=「11代将軍徳川家斉」。

(ウ)「商人の経済力を利用」「長崎貿易の拡大」「賄賂(わいろ)が横行」⇒「田沼意次の政治」と結びつくはず=「10代将軍徳川家治」。

(エ)「島原や天草」「農民たちが原城跡にこもり」「幕府が大軍で一揆を鎮(しず)める」⇒無論、「島原・天草一揆」=「3代将軍徳川家光」。

(オ)「株仲間解散」⇒老中水野忠邦の「天保の改革」で決まり=「12代将軍徳川家慶」。ということで、「答え」は(エ)→(ア)→(ウ)→(イ)→(オ)だ。「江戸時代」の出来事や政策は歴代の「将軍」と結びつけて覚えておきたい。尚、「年代整序」は「うろ覚えの年代」で整序するのではなく、「流れ」や「キーワード」を確認し、特定していくことが肝要。

                                   <時間配分目安:1分半>

[問4] 「下線部についての事項記述設問」(漢字指定)。

「リード文」中の下線部の「1938年」に制定された「戦争に必要な人や物資を、議会の承認なしに政府が利用できるようにした法律」を答える。即座に「答え」は「国家総動員法」だと出てこなくてはいけない。「1937年」=「盧溝橋事件」をきっかけに「日中戦争」始まる→「1938年」=「国家総動員法」制定→「1939年」=「ドイツのポーランド侵攻」をきっかけに「第二次世界大戦」始まる……。このあたりの「流れ」はしっかりと定着させておく必要がある。

                                   <時間配分目安:1分弱>

[問5] 「下線部についての選択肢および人名記述設問」(全2問/5択/漢字指定/複数完全解答)。「リード文」中の下線部「高度経済成長」について、示されている「この時期(1955~1973年)に総理大臣に就いていた人物」の「説明文(ア)~(オ)」で「正しいもの」を選んだ上で、その「人物名」を答える。先ずは、それぞれの「説明文」の「キーワード」から「総理大臣」を特定していきたい。

(ア)「『電電公社』『専売公社』『国鉄』の民営化」の実施⇒「三公社民営化」といえば「中曽根康弘」だと分かるはず。

(イ)「非自民8党派の連立内閣樹立」「『小選挙区比例代表並立制』導入」⇒これはすぐに「細川護熙(もりひろ)」だと特定できなくてはいけない。

(ウ)「湾岸戦争の戦費負担」「ペルシャ湾に自衛隊派遣」⇒「湾岸戦争」であれば「海部俊樹」と結びつけたい⇒その後「PKO協力法」につながっていく。

(エ)「日本列島改造」「日中国交正常化」⇒もちろん、「田中角栄」だ。

(オ)「日本社会党・自由民主党・新党さきがけの3党連立政権」「日本社会党の委員長」⇒「日本社会党」の「総理大臣」といえば「村山富市」しかいないと知っているはず。さて、時期はどうか? 必須定着年代としては、「非自民8党派連立内閣」=「1993年」、「湾岸戦争」=「1990年」、「日中国交正常化」=「1972年」。であれば、「答え」は選択肢(エ)と「田中角栄」ということになる。無論、「石油危機」(1973年)の時も同じだ。尚、「中曽根康弘」の「三公社民営化」は「1985~1987年」、「村山富市」は「阪神淡路大震災」(1995年)と結びつけておきたい。

                                   <時間配分目安:1分強>

[問7] 「下線部に関連する選択肢設問」(5択/複数完全解答)。

「リード文」中の下線部「沖縄国際海洋博覧会」に関連して、「日本の歴史と海」についての「説明文(ア)~(オ)」で「正しいもの」を「すべて」答える。それぞれの「説明文」の「キーワード」・「要点」で正誤判別していく。(ア)「縄文時代」「骨角器で漁業」「貝塚」⇒何の問題もない=正しい。(イ)「遣唐使」「初めは朝鮮半島の東沿いを北上する北路」⇒「朝鮮半島の東沿いを北上」では「中国」ではなく「ロシア」に向かってしまう=誤っている。(ウ)「平清盛」「厳島神社」「海の上の回廊」「世界文化遺産」⇒全てが合致していると判別できるはず=正しい。(エ)「琉球王国」「朱印船貿易」「明銭」⇒「朱印船貿易」は「江戸時代初期」に決まっている=誤っている。(オ)「江戸時代の水上交通」「日本海側→津軽海峡→江戸の東廻り航路」「日本海側→関門海峡→大坂の西廻り航路」⇒「河村瑞賢」が開いた航路として定着していなくてはいけない=正しい。したがって、「答え」は(ア)・(ウ)・(オ)になる。無論、尚、「すべて」を選ぶ「複数完全解答」では当然ながら、細心の注意を払う必要があると心得よ。

                                   <時間配分目安:1分強>

【大問3】「公民」(「歴史」1問の混在あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:7分
  • ★必答問題

「2024年7月、新紙幣発行」という「時事ネタ」を切り口とした、「紙幣変更や肖像の人物」についての「リード文」からの出題。「公民」単元の「経済」・「財政」・「政治」・「国際」などの分野の「基本的知識」を問う小問が並んでいる(「歴史」1問の混在あり)。手際よく解き進めたい大問だ。2問だけ確認してみたい。

[問7] 「下線部についての不適切選択肢設問」(5択/複数完全解答)。

「リード文」中の下線部「沖縄」について、「沖縄の戦後復帰と在日米軍基地に関する説明」として「誤っているもの」を「すべて」答える。各選択肢説明の「キーワード」「要点」で正誤判別していく。

(ア)「サンフランシスコ平和条約」「日本が独立を果たす」「以降も約10年間は沖縄ではアメリカの統治が続く」⇒「独立を果たしたのは1952年」・「沖縄の返還は1972年」⇒誰もが知っている必須定着年代=「20年間」にわたるアメリカの統治」=誤り。

(イ)「ベトナム戦争や湾岸戦争」「沖縄にいる米軍が戦争に出動」⇒周知のはずだ=正しい。(ウ)「普天間飛行場の移転先」「東京の横田基地に決まり、工事が始まっている」⇒「移転先」は「沖縄県内の辺野古」で、工事が始まっていることは周知のはず=誤り。

(エ)「現在日本にある米軍基地の約50%が沖縄に集中」⇒「約50%」ではなく「約70%」だと正確に判別したい=誤り。

(オ)「沖縄の米軍が日米地位協定で過度に守られている」「沖縄県民には反感を持っている人たちがいる」⇒米軍関係者が起こした事件では「日米地位協定」により自由な捜査ができないことがある=正しい。よって、「答え」は(ア)・(ウ)・(エ)だ。

                                   <時間配分目安:1分強>

[問8] 「下線部についての事項記述設問」。

「リード文」中の下線部「男女差別の解消に向けた取り組み」について、「男女が互いに人権を尊重しつつ、利益と責任をわかちあう社会の実現を目指す、1999年に制定された法律の名称」を答える。何やらややこしい説明がされているが、冷静に読み取れば、「答え」は「男女共同参画社会基本法」だと特定できるはずだ。この「法律の名称」はとても長たらしいので、正確に覚えることが肝要だ。尚、「男女雇用機会均等法」(1985年制定)と「男女共同参画社会基本法」(1999年制定)、どちらも「男女平等を目指す」という点では共通しているが,前者は「雇用に関してのみ規定」しているのに対して,後者は「社会活動全般に関して規定」しているという違いに注意したい。

                                  <時間配分目安:30秒強>

※尚、[問4]は「統計資料読み取り選択肢設問」(4択/複数完全解答)で、「プライマリーバランス」を判別する問題だ。設問内容が複雑で、計算も必要となる。とても手間ひまがかるので、「配点」を考えても戦術的には「あとまわし」にすべきだ。無論、「捨て問」でも構わない。

【大問4-Ⅰ】「考察問題」(「考察論述」1問)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:5分

「考察問題」(「歴史」の要素あり)。「考察説明記述」(1問)のみの大問だ。「新井白石の政策」についての「資料」と「説明文」からの出題。

[問] 「資料読み取りの条件付き考察説明記述設問」(全1問/「字数指定」なし/「90字ほど」の解答欄)。「考察問題」。

示されている「江戸幕府6代将軍徳川家宣と7代将軍徳川家継に仕えた新井白石の政策」は「どのような意図を持って行われたのか」を説明する。「条件」は「『資料1』を参考にして説明する」こと。「資料1」は「江戸幕府の初代から7代までの将軍の『就任時の年齢』『就任年』『将軍在任期間』」を示したものだ。「政策」と「資料1」を関連させて読み取って説明していくことになる。たとえば、「6代将軍は在任わずか3年で亡くなり次の7代将軍は3歳という幼さで就任したため、将軍の権威が落ちることを心配して、天皇家との結びつきを強固にして将軍と幕府の権威を高めようという意図。」(90字)という「答え」だ。設問の趣旨を正確に捉(とら)えた上で、あらゆる「情報」を駆使して「考察」することが肝要だと心得よ。

【大問4-Ⅱ】「考察問題」(「計算記述」と「考察論述」各1問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:6分

「考察問題」(「公民」の要素あり)。「計算記述」と「考察説明記述」、各1問の大問だ。あまり身近ではない「相続税」についての「説明文」と「計算方法」からの出題。「考察説明記述」を検証してみる。

[問2] 「条件付き考察説明記述設問」(全1問/「字数指定」なし/「90字ほど」の解答欄)。「考察問題」。

「戦争による必要から始まった相続税」には「『政府の税収増加』ということ以上に社会的に大きな意味があると言われている」が、「相続税があることによる社会における利点」を説明する。「条件」は「『固定』という言葉を必ず用いて説明する」こと。「説明文」からは「財産の少ない家の相続の場合は相続税を払う必要がない」ことや「累進課税制度により、相続する金額が多くなるほど税率が高くなる」ことなどが読み取れる。また、「計算方法」から「相続する財産に大きな違いがある場合、相続税があることで相続する財産の差が小さくなる」ことが分かる。こうしたことを踏まえて、さらに「条件」である「固定」と組み合わせて「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「生まれた家庭により経済的な格差が生じてしまうが、相続税の仕組みによって多くの財産を相続する人と相続する財産を持たない人との社会的な格差が固定されることを防ぐことができるという利点。」(90字)といった「答え」になる。「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。

攻略のポイント

「設問」に一筋縄ではいかない「クセ」がある。いかに「攻略」するか? 実直に、「基礎的事項」から「詳細事項」までを理解し(本校では相当な「深知り知識」も求められる)、定着させることが必要だ。その上で、「細部へのこだわり」と「知らない問題」への「対処法」も押さえておきたい。前者はいかに「細部」に着目して「判断」できるかであり、後者はいかに「知っていること」に結びつけられるかということだ。必ず、どこかに「手がかり」「ヒント」が隠されていることを心得ておきたい。

●「時事問題の攻略」もポイント。過去1年間程度の「時事ネタ」は、細大漏らさず確実に整理して覚えておく必要がある。さらに、それらに関連する「あらゆる事項(知識)」も全て復習すること。日々の「新聞」をしっかりと確認しておくことは不可欠だ。毎日全てを読み通せなくても、「見出し」「リード」は必ずチェックして、知らない「ネタ」があったら「スクラップ」しておくこと。

●「戦術」も必要になる。基本は「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も求められる。もちろん「単純ミス」は絶対にしてはいけない。本年度の「合格ライン」は5割強(学校公表の本年度「社会」の「合格者平均得点率」は「53.2%」)。「基礎的知識問題」で基礎点(5割程度)は獲得可能。あとは「本校対策」で勝ち取ること。

●「地理」では「地図」「地形図」「統計資料」等、「歴史」では「年表」「歴史史料(「図版」含む)」等がよく出題されるので、常にチェックしておくこと。無論、「統計資料」は必ず最新版を使いたい。「日本のすがた」(矢野恒太記念会編集)が分かりやすくてオススメだ。

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