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雙葉中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2019年度「雙葉中学校の国語」
攻略のための学習方法

知識

雙葉では、「漢字の書きとり」はもちろん、様々な「総合知識問題」が出題されている。さあどうするか? 当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚える。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する際、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。

これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。指定字数の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。直接出題されることも多いし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。

なお、「語彙力」「文法力」強化用テキストとしては、「言葉力1200」「言葉力ドリル」(共に学研)「でる順過去問 ことわざ・語句・文法」(旺文社)等がオススメ。

 

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で4500~6500字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を中心に読み進める。

「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだ。教えてくれなければ、自分から聞いてみるといった積極性もほしい。

その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。雙葉に限らず、他の学校(男女問わず)の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしたい。

解法

前述したように全ての「読解力」の基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。

たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして「解説」を聞いて納得した。以上終了ではダメ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

上記「攻略のポイント」で「雙葉対策」に触れた。が、その前に前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要がある。

では、何を「書く」か? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのもとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(雙葉の「長文記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。

次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。

ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(この段階では「マス目のない用紙」を使うこと)。
雙葉の「長文記述」は「100字程度」が目安なので、「最重要要素」+3つほどの「必要な要素」がメドだ。

意識

いついかなる場合でも、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。ただなんとなく机に向っていても時間の無駄。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが必要だ。

そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにして学習したい。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」に合致しているか? 「必要な要素」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。

50分という時間で解き進めていかなくてはならない雙葉では、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。
常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2019年度「雙葉中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問の(Ⅰ)は「随筆」で出典は岩合光昭「生きもののおきて」(文字数約3600字)、
    (Ⅱ)も「随筆」で出典は寺田寅彦「寺田寅彦――科学者とあたま」(文字数約1100字)。
小問は全21問(解答数38)。「選択肢」(「空所補充」「複数完全解答」、「内容合致」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(2問)、「意味記述」「換言記述」(「総合的知識問題」で各1問)、「説明記述」(全13問。「20字以内指定」2問と「120字以内指定」1問の他は全て「字数指定」なし)。2つの問題文を6分強で読み切り、設問を36~37分で解きたい。

大問は「韻文」(童謡の歌詞)、出典は文部省唱歌(作詞者不祥)「鯉のぼり」(文字数約100字)。
小問なし(解答数3)。「選択肢」のみ(複数解答)。4分程度で解きたい。

大問は「漢字の書きとり」(全7問)。3分弱で丁寧に終えたい。

【大問1】[2つの随筆の読解」(「説明記述」13問あり)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:43分
  • ★必答問題

(Ⅰ)アフリカ大陸。どこまでも果てしなく続くサバンナ地帯は、地球上で最も多くの野生を残し、人類が誕生した土地でもある――ダイナミックな自然の中で、多様な生命の営みを繰り広げる生きものたちの姿を、写真と文章で生き生きと描き出している。
本文では、実際に自分の目で観察すること、常識にとらわれず柔軟な視点を持つことが自然科学においては大切だと述べている。

(Ⅱ)科学は不思議を生み出すものである――森羅万象のすがたを語る科学的精神と芸術的センスが融合した珠玉の随筆集の1篇。
本文では、初めからダメにきまっているような試みを一生懸命続けることで、人は自然が示す「宝物」を拾うことができるので、科学者は頭が悪くなければならないと語っている。

(Ⅰ)は現在活躍している動物写真家、(Ⅱ)は戦前の日本の物理学者・随筆家による「随筆」でそれぞれの内容は異なっているが、どちらも「自然」について語っており、「自然」や「自然科学」に対する見方では共通するものがある。
(Ⅱ)は古い文章なので分かりづらい語句もあるが、「*注」を参照すれば理解できるはずだ。
小問の構成としては、[問一][問十一](Ⅰ)[問十二][問二十一](Ⅱ)の文章についてそれぞれ問われているが、[問二十]だけは両者を関連づけての問題になっている。

いかにも本校らしい、一筋縄ではいかない「説明記述」や難解な「総合的知識問題」なと、多彩な設問が並んでいる。以下、いくつかを確認してみたい。

[問三] 「理由説明記述」(字数指定なし、「70字ほど」の解答欄)。

傍線部(2)の「原始の人間はそんなことはなかっただろう」と「筆者が考えるのはなぜか」を説明する。

「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くことが肝要)。直前から、「そんなこと」=「結論を先に出して縛られるなど、考えることがパタン化(一定の法則を見い出す)してしまっていること」だと分かる。したがって、なぜ「考えることが一定の法則に縛られるのか」を説明することになる。

「直前直後」に手がかりを求める(「随筆」「小説」では「同一場面の直前直後に手がかり・ヒント」がある)。すると直後に「自分の目で見て自分で判断し、自分で一つ一つ覚えていかなければならない。命にかかわるようなことであれば、うかつに一般化することはできないはずだ」とある。「一般化」=「一定の法則」なので、この部分が「理由」になっていると読み取れる。あとは「過不足なく」まとめていけばいい。
たとえば、「一つ一つのことを自分の目で見て自分で判断しなければならず、命にかかわるようなことであれば、うかつに一般化することはできなかったはずだから。」(69字)といった「答え」になる。

ここで注意したいのは「時制」だ。「……なかっただろう」と「過去形」で問われているので、「答え」もそれに合わせ、「……できないはず」ではなく「……できなかったはず」としなければならない。

尚、「説明記述」では「最重要要素」(ここでは「理由説明」なので「直接的理由」となる)を必ず「文末」にすること。

<時間配分目安:1分半>

[問五] 「語句の空所補充選択肢」(全4問/6択)。

「総合的知識問題」。「副詞」の「意味・用法」の判別だ。本文中の【 1 】~【 4 】に「最もふさわしい語」を答える。

それぞれの空所の「答え」を確認していく。

「ゾウは何百メートルも向こうからやってくる別のゾウを識別できるのだから、それを【 1 】そばに来て」=「普通ならしないことを特別にする」という意味の選択肢(カ)「わざわざ」、

「ライオンは『なぜゾウはあんなに鼻が長いんだろう』なんて、【 2 】思わないだろう」=後にある「だろう」と呼応する「推量」の意味の(ウ)「おそらく」、

「野生動物の見方も、考え方も【 3 】変わってくる」=「かなり。相当」という意味の(オ)「ずいぶん」、

「(ガラパゴスゾウガメは大陸から流されてきたというのが定説だが)【 4 】ここにいたという考え方があってもいい」=「定説」に対する考えになるはずなので、(イ)「もともと」
がそれぞれふさわしい。

本校では、「オノマトペ」も含めて「副詞」の「空所補充」は頻出だ。微妙な「意味・用法」をも判別できるように確認しておくこと。

<時間配分目安:全問で2分以内>

[問六] 「内容説明選択肢」(4択)。

傍線部(4)「ぼくは思わず『深いな』と感心してしまった」について、「筆者はどういう点に『感心』したのか」を答える。

「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)をしたい。
ここでは、「感心した」の「原意」と各選択肢の「文末」とを照合し(「選択肢の説明」では「文末」に最重要要素が記されている)、結びつかないものを「消去」する。確認する。
(ア)「大人びたものだった点」、
(イ)「想像力を働かせたものだった点」、
(ウ)「見方に沿ったものだった点」、
(エ)「知識に基づくものだった点」。
どうだろうか? 「感心した」内容としては、どれもあてはまってしまう。したがって、残念ながら「消去」できないわけだ。そこで、「同一場面」に「手がかり」を求める。すると、直前に「確かに動物は食べることしか考えていないに違いない」とある。「確かに」と「感心」が結びつく。
ここで改めて選択肢をチェックすれば、「人間ではなく動物の見方に沿った」と説明されている(ウ)が「答え」だと判別できるはずだ。

本問では「消去」できなかったが、設問段階での「原意消去」は時間短縮のために必ず試みること。

<時間配分目安:1分半>

[問八] 「換言説明記述」(「20字以内」指定)。

傍線部(6)の「それ」が「指している内容」を「二〇字以内」で説明する。

典型的な「指示語換言」。「指示語が出たら前を見よ」が鉄則。確認すると、直前から「それ」=「ぼくが見ていた世代が取っていた同じ方法」だと分かる。直接的に指し示しているものは確かにそうなのだが、これでは「内容」としては不十分だ。
「同じ方法」とは何の方法なのかを、さらに前から読み解いていく。すると、「家族単位で群れを作っているゾウの、その家族ごとにある草の食べ方」が「同じ方法」だということが分かるはず。
したがって、たとえば、「ゾウの群れの家族ごとに同じ草の食べ方。」(19字)といった「答え」だ。

単純な「指示語換言」であっても、「指定字数」等の設問内容に応じて臨機応変に対応することが求められると心得よ。

<時間配分目安:1分半>

[問十] 「理由説明の抜き出し」(「1文のはじめの5字」指定)。

傍線部(8)「彼は、そんなことは考えたこともない、どんな本を見ても出ていない、と言う」について、「その原因にあたる部分」を「一文」で抜き出し、「はじめの五字」を答える。

「抜き出し」では、「抜き出し内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞り込んでいく。先ずは「内容」を捉えたい。最優先は「指示語」を開くこと。「そんなこと」=「(筆者がイギリスの有名な鳥類学者に報告した)サウスジョージア島のペンギンたちは左右の足の太さが違うということ」だと読み取れる。
つまり、「イギリスの鳥類学者が、筆者の報告したことを考えたこともない、どんな本を見ても出ていないと言う原因」が「抜き出し内容」となる。
この「原因」を考えるには、筆者がどのようにして「ペンギンたちの左右の足の太さが違う」が分かったかを、読み取ればいいことに気づきたい。直前で「(筆者は)来る日も来る日もペンギンを見ていた」と説明されている。ということは、「イギリスの鳥類学者」は「ペンギンを見ていない」ことが「原因」で、「考えたこともない、どんな本を見ても出ていない」と言ったことになる。そうした「内容」を探していくことになる。
「抜き出し範囲」は無論、「同一場面」だ。確認していくと、前段落冒頭に「人間の常識にとらわれずに観察すると、実にいろいろなことが見える」と述べる一方で、同段落の後半には「常識にとらわれ、自分をそれにはめて考えようとすると、見えるはずのものが見えなくなってくる。」という1文がある。まさに、「筆者」と「イギリスの鳥類学者」との対比ではないか。
したがって、「答え」は「常識にとら」。

尚、「抜き出し」では「候補」はひとつとは限らないので、必ず「抜き出し範囲」の全てを確認すること。

<時間配分目安:2分>

[問十四] 「語句の意味の選択肢」(4択)。「総合的知識問題」。

傍線部(12)「ややもすると」の「意味」として「正しいもの」を答える。

この言葉、知識として定着しているだろうか? なかなか難しいかも。その場合、前後の「文脈」から各選択肢を「消去」して判別するほかない。
(ア)「とかく」、(イ)「いっそ」、(ウ)「およそ」、(エ)「もっと」。
さあ、どうか? それぞれを「代入確認」すれば「答え」にたどり着くことはできる。が、手間も時間もかかる。「ややもすると(ややもすれば)」=「とかくある状況になりやすいさま。どうかすると」だと知ってさえいれば、瞬時に「答え」は(ア)と特定できる。

やはり本校では、「語彙力」に優れていることで圧倒的に有利になると心得よ。

<時間配分目安:30秒弱>

[問十七] 「語句の換言記述」(字数指定なし、「15字ほど」の解答欄)。

「総合的知識問題」。傍線部(15)の「しらみつぶしに」を「わかりやすく言いかえ」て答える。

流石(さすが)にこれは知っているだろう。少なくとも聞いたことはあるはずだ。「しらみつぶしに」=「物事をかたっぱしから残らず調べたり処理したりすること」だ。
「文脈」は「難関を一つ一つしらみつぶしに枚挙されて(=「いちいち数え上げられて」と「*注」にある)」となっている。前後のつながりも考えて、換言すること。
たとえば、「残らず調べたり処理したりして」(14字)となる。

本問のような「換言」や「空所補充」などの「記述」では、前後のつながりをしっかりと考えて、あてはまるように答える必要がある。

<時間配分目安:1分半>

[問二十(1)] 「別例の換言説明記述」(全2問。ともに「字数指定」なし、各「30字ほど」の解答欄)。

傍線部(a)「書卓の前で手をつかねて空中に絵を描いている人」・(b)「自然のまん中へ赤裸で飛び込んで来る人」とは、「(Ⅰ)の文章におけるペンギンの例ではだれに当たるか」、それぞれ説明する。

(Ⅰ)(Ⅱ)、2つの文章を関連づけて考察するという新趣向の問題だ。
「いくつかのテクストを関連させて思考する」という2020年度からの新たな「大学入試制度」を意識していることは間違いない。

では、手始めに(a)(b)それぞれが「どういう人」なのかを確認する。
(b)は分かりやすい。「自然と、何の先入観もなくそのまま向き合う人」だ。(a)はやや分かりづらいが、「*注」を参考にすると「机の前でうで組みをして、空中に絵を描いている」、
要は「実際に自然を見ないで頭の中だけで考えている人」のことになる。それらを踏まえて、「(Ⅰ)の文章におけるペンギンの例」の「同一場面」を読み解いていく。

[問十]で検証したように「ペンギンの例」では、「来る日も来る日もペンギンを見ていて、いろいろなことが見えた筆者」と、「実際のペンギンを見ずに常識にとらわれ、見えるはずのものが見えなかった鳥類学者」とが対比されていた。無論、(a)=「鳥類学者」で、(b)=「筆者」だ。あとは、簡潔にまとめていけばいい。
たとえば、「答え」は(a)=「実際のペンギンを見ずに、常識と頭の中だけで考えている鳥類学者。」(31字)・(b)=「先入観を持たず毎日ペンギンを観察し、いろいろな発見をする筆者。」(31字)といった「答え」になる。

「新傾向」の問題として定着するかも知れない。来年度以降に備えて、さまざまな文章などを組み合わせて多角的に考える練習をしておくことが求められる。

<時間配分目安:全問で5分>

【大問2】[韻文の読解](「童謡の歌詞」の内容)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:4分

童謡「鯉のぼり」の1番(第1連)から3番(第3連)までの全ての歌詞(しかも「文語」)が「問題文」となっている。
こうした出題形式は本校では初めてだし、他校でもほとんど類例のないものだ。歌ったことや聴いたことはあるだろうが、「文語」なので歌詞の細かな意味まではつかみ切れていないはずだ。
流石(さすが)本校といった、なかなか厄介な大問だ(小問はない)。検証してみよう。

[問] 「内容説明選択肢」(複数解答/6択)。

「歌詞の内容の説明」として「正しいもの」を「3つ」答える。

賢明な諸君であれば、「3番」まであって「3つ」答えるということは、それぞれで「ひとつ」ずつ答えて、「6択」であれば各「2択」だと見当がつくはずだ。そのように予想して、「歌詞」と「説明」を少しだけチェックすると、果たして選択肢の(ア)(カ)は順に、1番~3番の「歌詞」を2つずつ「説明」していることが分かる。確認したい。

1番(第1連)の「歌詞」は、「甍(いらか)の波と雲の波/重なる波の中空(なかぞら)に/橘(たちばな)かおる朝風に/高く泳ぐや鯉のぼり」。これについての各「説明」の「キーワード」に着目して正誤判別していく。
(ア)「海に見立てた大空」「鯉のぼりはゆうゆうと泳いでいる」⇒「雲の波/重なる波の中空」「高く泳ぐ」とある=適切、
(イ)「晴れたお正月の空」⇒「歌詞」のどこにも「正月」を表すものはない。そもそも「鯉のぼり」は「5月」だ=不適切。
以下同様に、

2番(第2連)「開ける広き其(そ)の口に/舟をも呑(の)まん様(さま)見えて/ゆたかに振(ふる)う尾鰭(おひれ)には/物に動ぜぬ姿あり」。
(ウ)「(子供たちは)大きく口を開けて見ている」⇒「広き其の口に/舟をも呑まん様見えて」=「広いその口に船をも呑みこむような」のは無論、「鯉のぼり」の「口」=不適切、
(エ)「風を尾まではらんで」「堂々としている」⇒「ゆたかに振う尾鰭」「物に動ぜぬ」とある=適切。

3番(第3連)「百瀬(ももせ)の滝を登りなば/忽(たちま)ち竜になりぬべき/わが身に似よや男子(おのこご)と/空に躍るや鯉のぼり」。
(オ)「滝を登って上からながめると」⇒「滝を登りなば/忽ち竜になりぬべき」=「(鯉のぼりが)滝を登るならば、そのまま竜になるはずだ」ということ=不適切、
(カ)「鯉のぼりは男の子に向かって、自分のように立派になれ、と言っているよう」⇒「わが身に似よや男子と」とある=適切。
ちなみにこの3番は、中国の故事「登竜門」を描写している。

「答え」は(ア)(エ)(カ)となる。

本問のような出題が定着するかどうかは別として、「韻文」については「表現技法」も含めてその「鑑賞法」を理解しておきたい。

<時間配分目安:4分ほど>

【大問3】[漢字の書きとり」(全7問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:3分

[問] 「漢字の書きとり」(全7問)。

示されている例文(1)~(7)の「カタカナ」を「漢字」で答える。

昨年度と比較するとやや難化したが、本年度が本校の標準レベルだ。特に注意すべきものを挙げる。
(2)「時代のスイイ」=「推移」⇒重要語句、「移り変わっていくこと」という意味も押さえておくこと、
(4)「豆やキビなどをザッコクという」=「雑穀」⇒「穀」の細部に注意せよ、
(5)「日本にキカしたお相撲さん」=「帰化」⇒これはなじみが薄いか? 「本人の希望により他国の国籍を取得しその国の国民となる」こと、
(6)「紙面をサッシンする」=「刷新」⇒これもなかなか手強い、「よくない状態を除き去って、気風を全く新しくすること」という意味も必須定着語句だ。

以上のすべてに即答できるくらいに「語彙力」を磨いておくこと。

<時間配分目安:全問で2分半>

攻略のポイント

●「国語」に自信のある首都圏最上位層が競い合う本校、生半可な対策では合格はままならない。しかし、ビビることはない。一歩ずつ地道な努力を重ねれば、必ず勝利できる。
「高い国語力」=「正確な読解力」、その基本は「解法」だ。様々な「設問」に対応した適切な「解法」を習得し、応用できるようにすることが「最善の攻略法」になる。
「国語」の合格ラインは非公表だが、70%は目指したい(過去11年間の「4科合計の合格最低得点率」は64.0%、本年度は62.3%)。

「説明記述対策」、いかなる「指定字数」にも対応できることが最大のポイント。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていく手法をマスターしたい。それぞれの「要素」を「20~30字程度」として、どのような「字数のパターン」でもまとめられるように徹底的に練習することが必要だ。

●本校では「高度な語彙力」や「文法」などの「総合的知識力」も問われる。本校を志望したその時点からあらゆる「知識」を独自に吸収するように努力することが重要(当然、塾での学習だけでは不十分)。
尚、まさに本年度出題された「韻文」や「文語」についても、一定程度の習得が必要となる。

「ひとつの大問に2つの文章」という新傾向の出題があった。両者を関連させて考察するという形式は、新たな「大学入試制度」に即している。来年度以降もこうした出題があり得るので、充分に練習しておくことが求められる。

●試験時間は50分。問題文のボリュームは全体で4500~6500字程度(本年度は約4700字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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