雙葉中学校 入試対策
2014年度「雙葉中学校の社会」
攻略のための学習方法
[スライド式学習]
「雙葉対策」では「地理」「歴史」「公民」全単元・全分野と「時事問題」(単独での出題は少ないが「多角的思考」には不可欠)の「知識」を確実に定着させることが最優先。「基礎的事項」はもちろん、細部にわたる「知識」や「深い理解」も必要なので、テキストの「注」や「囲み説明」等のチェックも重要。完璧な「知識定着」が欠かせないのだが、悲しいことに人は忘れるもの。時が経てば経つほど忘れる。ここに落とし穴がある。基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し定着させたのか、その時期が問題となる。
塾では通常、本格的な受験勉強が始まる５年になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、６年の夏休み前には終える。その後は「復習」となるが、メインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。６年で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか？ 実質的に１年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。「地理」での「深い知識」が必要な雙葉では絶対に許されない。
そこで、独自の「復習」が必要となる。塾での学習時期とはずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある５年の冬休みやその後の春休みを利用して徹底的に「地理」の「復習」をしておくことがポイントだ。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用するといい。さらに、その後も定期的に「地理」の理解を深めるような学習を内緒で続けておくことで、ライバルに差をつけておこう。
[いもづる式学習]
全ての単元に共通だが、「暗記事項」はそれぞれ単独(要は「一問一答方式」)で定着させても無意味だ。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられない。ましてや、雙葉攻略のポイントである「多角的思考」など絶対に無理だからだ。
そこで重要となるのが「いもづる式学習法」。「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習法だ。１つの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。もし「言葉」としては覚えていても「内容」があいまいになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ここでも「復習」できる)。また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。その上で、それらが結びつく背景(＝「面」)をも理解するようにする。このようにして改めて暗記し定着させた「事項」はどのような問われ方をしても、「線」で結びつけて答えられることになる。さらに、単元もまたいでいるので、多様な問題にも対応できる。無論、「多角的思考」にも「いもづる式学習法」は力を発揮する。
[手づくり式学習]
特に「歴史」単元の「復習」で必要となる。塾での「歴史」の学習は通常、「政治史」を軸とした「通史」として「時代別」「時代順」になっている。しかし、雙葉などの上位校ではそうした単純なものはない。特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸で出題される。
それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」～「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。さらに、その「年表」には「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」も対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられない問題が多いからだ。「年表づくり」を楽しみながらやってみよう。
[細部へのこだわり式学習]
「攻略のポイント」でも指摘したが、「雙葉対策」で欠かせないのが「細部へのこだわり」だ。「多角的思考」をするに当たっての前提は無論、それぞれの「要素」をいかに正確に読み取るかということ。そこから「考えるヒント」を見つけ出す。そのためには「細部」にこだわって読み取ることが必要となる。当然、トレーニングが欠かせない。過去問や練習問題等を用いて、各「要素」の細かな「意味」「資料の数字」や「関連事項」などを全て材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する練習をしなくてはいけない。導き出せることについては、過去問や問題集の「解説」に示されているはずなので活用する。
こうした「細部へのこだわり学習」を続けることで、次第に様々な「要素」から着目すべき「手がかり」が自然と浮かび上がるようになる。後は自分の「知識」とつなげて考えればいい。
[意識継続式学習]
いついかなるときも、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。漠然と机に向っていても無駄なだけ。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切。そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習したい。
雙葉の入試本番ではたった30分という制限時間の中で、様々な「要素」を考え「条件」をクリアして答えなくてはならない。だからこそ、「設問」を正しく理解しているか？ 「要素」は全て確認したか？ 「他の設問」との関連は大丈夫か？「条件」を満たしているか？ つまらないミスはないか？ といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。当然、「時間」も「意識」すること。入試では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2014年度「雙葉中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問１は「歴史」。「日本の歴史の中での女性が果たした役割をテーマとしたリード文」に関しての問題。小問は全14問で解答数18。「事項記述」「選択肢」「説明記述」(２問で字数指定なし。それぞれ20～30字程度の解答欄)。
大問２は「地理」。「日本の人口や産業というテーマ」に関しての問題。小問は全５問で解答数12。「事項記述」「選択肢」。
大問３は「公民」(一部「時事的要素」あり)。「基本的人権と個人の多様性をテーマとしたリード文」に関しての問題。小問は全６問で解答数８。「事項記述」「選択肢」「説明記述」(１問で字数指定なし。30～40字程度の解答欄)。
解答数が多く「説明記述」もあるので時間勝負となる。「事項記述」「選択肢」が２分で３問程度、「説明記述」は各２分程度のペース配分でいきたい。
【大問Ⅰ】歴史分野
- 時間配分：16分
「卑弥呼、紫式部、津田梅子など女性の活躍を通じて、縄文時代から第二次世界大戦までの様々なことがらを説明したリード文」からの出題。
内容は、「歴史史料」「文学史」「年代整序」「正誤判定」「目的説明記述」等、幅広い。平易な「設問」が基本だが、中には「難問」もある。
以下、そうした「設問」から２問だけ考えてみる。
[問5]適切説明の選択肢設問
「仏教の歴史」について「正しいもの」を答える(５択)。
「社会」の「選択肢」も「国語」同様で「消去法」が原則。「事実関係」が誤っているものを「消去」していく。ただし、あらゆる「要素」について、その「正誤」を判断しなくてはいけない。「歴史」であれば、「説明全体」「各事項の結びつき」「時代」「世紀」「年代」「人物」等々だ。
雙葉のような上位校であればあるほど複雑になるので、要注意。この問題もそうだ。(ロ)「行基」≠「唐招提寺」、(ハ)「藤原道長」≠「鳳凰堂」の「消去」はたやすいが、残りは若干ややこしい。(ホ)は「17世紀」＝「江戸時代」に気づけば、「一向一揆」で消せるはず。残りは２択。「鎌倉新仏教」について説明した(ニ)が「正しい」ような気がするが、(イ)は本当に「消去」可能なのか？ 確認する必要がある。「６世紀に日本伝来」「蘇我氏中心」は誤ってはいない。だが、直後の「まもなく全国に広まった」はどうか？ 「奈良時代」の「仏教」は支配者のものだったということは知っているはずなので、それを結びつければ「消去」となる。
「あらゆる知識」を総動員して考えることが重要だ。
＜時間配分目安:1分＞
[問10]不適切事項の選択肢設問
「明治時代」の「教育」について「正しくないもの」を答える(４択)。各選択肢をざっと一読すると、どれも「正しい」と判断してしまうに違いない。ここでも自分の全ての「知識」をふり絞って考える。(イ)「学制」⇒「６歳以上の義務教育」、(ロ)「学制」⇒「学制反対一揆」、(ニ)「男女別学」⇒「共学は第二次世界大戦後」、これらはどう考えても「正しい」。では、(ハ)「就学する女子の割合は低く」「男子との差は大きくなる一方」はどうか？ 確認する。
ここで、「明治の終わりには就学率が90%を超えた」「大正時代の職業婦人」などの「知識」が結びつけば、「男子との差は大きくなる一方」というのは「正しくない」と確信できるはずだ。「多角的思考」が必要。
＜時間配分目安：1分＞
【大問Ⅱ】地理分野
- 時間配分：
「日本の人口や産業について」の出題。内容は、「統計資料」「地図」「地図記号」「正誤判定」等、多彩。
「基礎的知識」と「細部へのこだわり」で正解できるものがほとんど。落としたくない。だが、中には「？」となってしまう問題も。
以下、いくつか検討する。
[問1]統計資料の選択肢設問
示されている「人口」に関しての「都道府県別順位」について、「何の調査」なのかを答える(４択)。通常とは「逆パターン」の雙葉らしいユニークな問題。
戸惑ってはいけない。示された「順位」は上位が「沖縄県」「東京都」「愛知県」・・・、下位は「青森県」「秋田県」最下位「福島県」となっている。選択肢(イ)「人口数」、(ロ)「人口密度」が違うことはすぐ分かる。(ハ)「人口増加率」か(ニ)「高齢者率」かだ。日本は「人口減少社会」になっており、ほとんどの都道府県で人口が減少していることは知っているはず。その中で「自然増加」の多い「沖縄県」や「社会的増加」の多い「東京都」などほんの一部だけで増加していることも知っておきたい。「増加率」には当然「マイナス」もあり得る。無論、答えは(ハ)の「人口増加率」。動じず機転を働かせたい。
なお、最下位の「福島県」だが、この統計の「年度」に注意すること。「2013/14版」⇒「原発事故の影響」は忘れてはいけない。
＜時間配分目安： 1分＞
[問2]項目の選択肢設問
「日本の農業」に関して「1990年より2010年の方が増加していこる項目」を答える(５択)。これは「難問」かも。
選択肢(イ)「米生産量」と(ロ)「穀物自給率」は、「知識」として「増加していない」と分からなくてはいけない。(ハ)「化学肥料使用量」の増減など具体的には知らないはず。が、「有機農法の普及」などから類推はできる。「増加」はない。で、(ホ)の「その年耕作をやめた水田面積」だ。これを「耕作放棄地」と考えてしまうと「増加している」ことになる。しかし、「その年耕作をやめた」だけでは「耕作放棄地」には当たらないことに気づく必要がある。なので、これはおかしい。(ニ)の「農業をする会社の数」だが、それまで農業とは無関係だった会社が「農業に参入」しているということは「時事問題」で学習しているはず。「2009年の農地法改正による農業法人の増加」だ。そこに結びつけたい。
「時事問題」も含めた「深い知識」と「多角的思考」が必要だ。
＜時間配分目安： 1分＞
[問5]「位置特定の選択肢設問」
(Ａ)～(Ｃ)の「工業地帯」「工業地域」の説明から、地図中①～⑨の「位置」を特定する。
(Ａ)「せんい工業の割合が一番高い」「伝統工業」⇒「北陸工業地域」＝「④」、(Ｂ)「金属工業の割合が一番高い」「中小工場が多い」⇒「阪神工業地帯」＝「③」、(Ｃ)「化学工業の割合が一番高い」「臨海部に石油化学コンビナート」⇒「京葉工業地域」＝「⑧」と結びつけたい。
「正確な知識」があればたやすいが・・・。ここまでの「知識」が求められる。
各「工業地帯」「工業地域」の特色は必ず覚えておくこと。
＜時間配分目安：1分＞
[大問3] 公民分野
- 時間配分：1分
「日本国憲法と基本的人権、そして、現実の社会に存在する様々な差別と共生について説明したリード文」からの出題。
内容は、「空所補充」「事項記述」「正誤判定」、そして、最後に興味深い「説明記述」が用意されている
。この大問もやはり、「細部」への目配せが欠かせない問題ばかり。
以下、いくつか検証してみよう。
[問1(2)]不適切説明の選択肢設問
「日本国憲法前文」の「内容」について「ふさわしくないもの」を答える(４択)。「日本国憲法前文」に関する問題(特に「空所補充」)は上位校では定番。
覚えていれば即答だが、そうでなければ「消去」する。「憲法」の「趣旨」を踏まえて、(イ)(ロ)(ハ)は「ふさわしい」としたい。残りの(ニ)を確認する。どこが「ふさわしくない」のか？ 「国の安全や利益を維持する」はいいとして、最後の「専念する」は問題があると気づいてほしい。従って、答えは(ニ)。
やはり、「細部へのこだわり」がポイント。なお、「前文」には「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と記されている。
＜時間配分目安:１分弱＞
[問2]適切説明の選択肢設問
「基本的人権」の「説明」について「正しいもの」を答える(４択)。
「基本的人権」はまさに「基本的問題」であって誰にとっても易しいはずだが、この問題はどうか？ 勝手にドボンしてしまう可能税はないか？特に(ハ)だ。「説明」を勝手に読み違えて「男性と女性は社会のあらゆる場面で完全に平等」と判断し、「男女差別は今でもある」(これ自体は正しい)⇒「誤った説明」としてしまわないか。そうなると混乱するばかりで「正答」にはたどり着けない。
(ハ)の正しい主語は「男性と女性の権利は」だ。従って、「両性の本質的平等」(憲法24条)から考えて「正しい」(つまり答え)となる。勝手な「思い込み」を戒める良問。
[大問6（2）] マークについての説明記述設問
- 時間配分：２分
図示されている「マーク(ピクトグラム)」について、「どのようなこと」を示しているかを「考えて」説明する(字数指定なし。30～40字程度の解答欄)。「犬のイラスト」に「Welcome」(「ようこそ、歓迎します」という意味だと「注」がある)と記されている。「一部の文字」(答えにすぐつながる)は消されている。見慣れない「マーク」だ。だからこそ「考えて」となっている。では、考えよう。手がかりは「犬」「歓迎」、そして、「リード文」「設問文」で「共生社会」に触れていること・・・。これらから、身体障害者を助ける「盲導犬」「聴導犬」「介助犬」＝「補助犬」に結びつけていきたい。
ちなみに、「消されている文字」は「ほじょ犬」、この「マーク」は2004年度「グッドデザイン賞」受賞(03年から「身体障害者補助犬法」施行)。雙葉では柔軟な「発想」と「思考」も求められている。
攻略のポイント
●「雙葉の社会」を攻略するための最大のポイントは、「問題解説」で何度も触れてきたが、「多角的思考」と「細部へのこだわり」だ。前者は、「リード文」「設問文」「統計資料」「歴史史料」等の「要素」と自分の「知識」を多角的に結びつけて考察するということだ。そして、そのために欠かせない「条件」が「細部へのこだわり」。考察する「要素」を読み違えていては元も子もない。いかに「要素」を正しく「読解」するかが重要になる。過去問演習等を通じて、「細部」にこだわった「要素」の「読み取り」を繰り返し練習し、さらに、どのような「要素」を組み合わせて考えていけばいいのかを「解説」で必ず確認する。自分でも「多角的思考」ができるよう、十分に訓練しておきたい。
●当然、難易度は高い。合格ラインは非公表だが、７割近くは得点しておきたい。「試験時間」を考えれば「戦術」は不可欠。基本は「取れる問題を確実に押さえる」こと。逆にいえば「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も求められる。無論「単純ミス」は絶対にしてはいけない。「基本的知識」を確実に押さえることで、基礎点(６割強)は獲得可能だ。あとは「雙葉対策」の結果として勝ち取る。
●「地理」では「地図」「統計資料」等が必ず出題されるので、確実に覚えておくこと(「地図上の位置」「地形図」「地図記号」の確認は必須)。また、「統計資料」は必ず最新版を使いたい。テキストとしては「日本のすがた」(矢野恒太記念会編集)が分かりやすくてオススメだ。
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