女子学院中学校 入試対策
2017年度「女子学院中学校の理科」
攻略のための学習方法
本校を志望する受験者のレベルで言えば、単なる知識問題で差がつくことはほとんど無いだろう。
もちろん知識をおろそかにすることはできないが、それ以上に重要なのが「当たり前」の知識や問題文の情報をもとに、「合理的な答え」をきちんと考え抜く練習である。
たとえば大問3では「鉄の熱伝導効率は発泡ポリスチレンよりも高い」、「熱は温度の高い方から低い方へと移動して温度を均一にする」といった知識から、「鉄板の上に置いた氷のほうが早くとける」という推論を的確に行なう力が要求されていた。
こうした問題は単に解説を参照しても知っていることしか述べられていないので、「言われてみれば当たり前だな」という感想しか残らないことが多く、要注意である。
答えを考えるうえで抜け落ちていた視点や想定の誤りを細かく検証して初めて、学習の経験を次の問題に生かすことができる。全く同じ問題に出会うという機会は少なく、学習の即効性が期待しにくい部分なので、過去問演習に入る前から気をつけるようにしておきたい。
出題範囲にこそ「不意打ち」の感があるが、作問そのものに奇抜さは無く、演習を繰り返していればどこかで見かけるような問題がほとんどである。その意味では、上述の点に注意を払いつつ参考書での学習や問題演習を徹底的に行っていれば、努力が報われやすい問題であるとも言える。
塾用教材を使うのであれば、授業進度に合わせて難関校レベルまでの演習をしっかりと仕上げることで、知識面での準備は不足なく整えることができる。
ただし、市販教材を用いる場合、「自由自在」など一般的な中学受験参考書では応用・発展レベルの問題演習が不足する。難関校受験者向けに特化した問題集を1、2冊用意しておきたい。
演習経験の蓄積量が物を言う入試問題であることから、基礎知識は最低でも夏までに一旦完成させておくのが望ましい。秋以降は難関校対応の問題集に取り組むべきだが、出題分野の分類が難しく問題集に掲載しにくいタイプの過去問にも積極的に触れる機会を設けよう。その際には、男子校・共学校の難関校入試問題まで含めて練習の対象にすることを考えて良い。
以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。
【生物分野】
用語や主な実験など基本的な知識は押さえたうえで、知識のつながりにまで気を配りたい。 たとえば乾燥地の植物に見られる蒸散と光合成の戦略など、生物個体または生物群集の生活スタイルと環境との関係は応用的な問題でよく見られる。
特に、環境問題については発生の背景や生態系への影響を含めてしっかり学んでおくと良い。 こうした学習を行なうには過去問を中心とした実戦問題に数多く触れるのが有効である。
一問一答形式の学習はほどほどに切り上げて、どんどん応用演習を積んでいこう!
【地学分野】
本年度の問題は惑星というテーマの性格上知識問題の比重が大きかったが、一般には考えさせる問題が多いのがこの分野である。天体の運動や地層による環境の判断など、問題集に載っているような応用問題はそつなくこなせるようにしておきたい。
また、本年度は生物での出題で見られたが、この分野は地理学との関連で問題を作りやすい。たとえば扇状地での果樹栽培が盛んな理由を堆積物の特徴という観点から捉えるなど、両科目のつながりを意識しながら学習してみると良いだろう。
【物理分野】
難関校の入試における物理・化学の問題では、大問4のように「なぜそうなるか理解できない」実験結果に基づく考察を求められることがある。演習の中でそうした問題に直面する度に原理を学ぶのも良いが、それ以上に「理解しないまま推測する」という練習を積むことも必要だろう。
問題集ではそのような練習が難しいため、ここでも過去問による実戦練習が鍵になる。今ひとつ考え方の予測がつかない問題を選んで積極的に取り組んでみること。
【化学分野】
本年度の問題は初歩中の初歩にあたる知識ばかりが問われていたが、それにもかかわらず問題が易しいと言えない理由は、活用すべき知識が何であるのかを的確に判断するのが難しい点にある。
それを考えると、最後の計算問題は問題集で繰り返し目にするもので、絶対に落とせない部類に入ってくる。過去問で実戦的な問題に慣れておく必要があるのは他の分野と同様だが、特に計算問題については定番の問題を楽々こなせるレベルまで念入りに仕上げておくと安心である。
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2017年度「女子学院中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
40分の試験時間に対し、解答箇所は61個。
すぐ答えられる設問も少なくないとはいえ、記述問題や計算問題も含まれることを考えると結構な手際の良さが求められる。
特に記述問題を中心とした考察を要する設問で長時間考え込んでしまうと他の問題を解く時間が厳しくなりかねないので、後回しにする勇気が必要。
【大問1】 太陽系の惑星
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
分野:地学 単元:太陽系の惑星
惑星調査による発見など問われることの少ない知識が必要となるので、漏れ無く学習できているかどうかが勝負。大気の成分に関する設問でやや考えさせられる。
2
(1) ①と②のいずれも、各成分について惑星ごとに「大気全体の重さ×重さの割合」を計算し、重さを比較すれば良い。
(2) 「植物」と答えないように注意!地球上で最初に水と二酸化炭素を原料とする光合成を始めたのは「シアノバクテリア」と呼ばれる細菌類であるとされる。そうした細菌類の存在を含めて「光合成をする生物」と答えるのが適切。
(3) 海洋の二酸化炭素吸収量は膨大である。カルシウムを含む水に二酸化炭素が吸収されると炭酸カルシウムを形成して沈澱するのは、石灰水(水酸化カルシウム水溶液)に二酸化炭素を通じると白くにごるのと同じ。サンゴの骨格はこのようにして形成される。
<時間配分目安:8分>
【大問2】植生・生態系
- 難度:標準
- 時間配分:9分
- ★必答問題
分野:生物 単元:植生・生態系
数値計算を通じて答えを考えていく設問が中心。若干考えにくい設問もあるが、他は慎重に情報を処理すれば難しくない。知識で躓かなければ解きやすいだろう。
4 「暖かさの指数」を計算する際、5℃を下回る月平均気温が算入されないということは、年間の気温の合計から「5℃を下回る月の平均気温」が差し引かれるということと同じである。
5℃以上の月平均気温からは「5℃」が差し引かれることを考えると、月平均気温が5℃未満の月が多ければ多いほど差し引かれる値は「小さくなる」、つまり「暖かさの指数」は「大きくなる」。
したがって、年平均気温が同じであれば、月平均気温が5℃未満である月は「暖かさの指数」が大きい照葉樹林地域の方が多い。
また、年平均気温が同じであるためには、気温の低い月が存在する分だけ気温の高い月も存在する必要があるため、寒暖の差も大きくなる。
5 ②まず、尾之間の月平均気温から①の結果である11℃を引いて宮之浦岳頂上の気温を求め、「5℃」以上となる月を絞り込む。それらの月の気温からさらに5℃を引いた結果を加えていけば良い。 「11+5=16℃を引いて、0℃を下回らない値のみ加えていく」という発想ができれば手早く解ける。
6 現在「暖かさの指数」に算入されている4月〜10月の7か月についてのみ考えると、櫛石山が照葉樹林になるためには「暖かさの指数」が85−57=28大きくならなければならない。 月平均気温が1℃上昇すれば暖かさの指数も1増加するので、単純に計算すれば28÷7=4℃ずつ、各月の気温が上昇すれば良いと分かる。 厳密には、11月が「暖かさの指数」の計算対象月として加わるので指数は88まで増加するが、分類には影響しない。
8 正解数が「2つ」と示されているので、「固有種が多い=他の地域との間で動物種の出入りが少ない」という発想ができれば難しくない。 イやカの選択肢はある地域における遺伝的な多様性を高める要因にはなり得るものの、固有種の進化を直接説明するものではない。
<時間配分目安:9分>
【大問3】化学変化・状態変化と熱との関係
- 難度:やや難
- 時間配分:12分
- ★必答問題
分野:化学 単元:状態変化・化学変化と熱との関係
基礎知識の応用力が問われており、慎重に考えなければ正解できない。計算問題はよく見るパターンで解きやすい。
1
(2) 水1gの体積は約1cm3、氷1gの体積は約1.1cm3である。 氷から水に変わる間は温度が0℃から変化しない一方、体積が1.1cm3から1cm3まで減少することを考えると、ウのようなグラフとなる。アは体積変化が大き過ぎるので不可。
(3) 設問の意図を読み取ること。本問は熱がテーマである。全ての水が液体から気体へと変わるのにより長い時間がかかるという情報から、「より多くの熱量を必要とする」という視点に結び付けられるかどうかが鍵。
2
(3) ②(水に加えられる熱量)−(水から逃げる熱量)の熱量分だけ水温は上昇する。水に加えられる熱量は一定であるから、温度上昇が小さくなる要因は水から逃げる熱量の増加にあると分かる。
③熱は温度が高い方から低い方へと移動して温度を均一にしようとするため、温度差が大きければ大きいほど移動する熱量も大きくなる。 空気の温度上昇は水よりも緩やかなので、加温に伴って空気と水の温度差が大きくなり、水から逃げる熱量が増える。 よって、水の温度はどんどん上がりにくくなっていくのである。
(4) 水から逃げる熱量を減らすためには、空気と水との温度差を小さく保つ必要がある。 空気の温度上昇が緩やかなのは、温められた空気が大きな容積空間へと広がっていくからなので、空気の拡散を防ぐことを考えれば良い。 実生活に即して最も簡単に思いつく答えは「ふたをして加熱する」だろう。
3
① 室内に長時間放置された物体はすべて、熱の移動を通じて室温と同じ温度になっているはずである。
② ヒトは恒温動物であるから、室温にかかわらず手の温度は36〜37℃程度である。
③ 手が冷たく感じられるのは、手の熱が物体に奪われるからである。つまり、熱を伝えやすい鉄の方が、触れた時に冷たく感じられる。
④ 鉄板や発泡ポリスチレンは室温と同じ温度であるから、氷を乗せると(室温が氷よりも低くなければ!)板から氷へと熱が伝わる。よって、熱を伝えやすい鉄板の上の方が氷を早くとかすことができる。
4
(1) 試験管を氷水につけておく。氷がとけずに浮いている状態を維持すれば水の温度は0℃に保たれ、0℃の塩酸との間で熱の移動は起こらない。
(2) 鉄+塩酸→塩化鉄(固)+水素(気)である。とけた鉄の重さが同じであれば、発生する水素の重さも塩化鉄の重さも同じ。
(5) 物質が過不足なく反応するポイントを見つけるのは基本中の基本。気体の発生が64cm3で停止していることから、塩酸5cm3がとかすことのできるスチールウールの重さは0.2×64/40=0.32[g]までであると分かる。
とけ残った0.08gのスチールウールをとかすためには、5×0.08/0.32=1.25≒1.3[cm3]の塩酸を加えなければならない。
<時間配分目安:12分>
【大問4】物体の運動
- 難度:難
- 時間配分:11分
- ★必答問題
分野:物理 単元:物体の運動
2、3の問題を何となくでも理解するにはエネルギーの概念が掴めていなければならず、小学生にとっては厳しい設問。一方4、5は実験結果を丁寧に読み込めば正解できる。こういった問題をきちんと解けるかどうかが勝負。
2
(1)(2) 【実験1】では同じ重さの鉄球Aと鉄球Bが同じ最高点を示していることから、鉄球Aの持つエネルギーは全量鉄球Bに引き継がれていると考えられる。
この場合、鉄球Aが単独で振れるのと状況は同じである。よって、鉄球Bは衝突前の鉄球Aと同じ速さで出発し、落下と同じ時間をかけて同じ最高点へとたどり着く。
(3)(4)(5) 【実験2】では鉄球Aと鉄球Cの両方が動くので、衝突前に鉄球Aが持っていたエネルギーは鉄球Aと鉄球Cに分散されていると考えられる。
つまり両鉄球はより小さなエネルギーで運動するため、衝突直後の速さは衝突前の鉄球Aよりも遅くなり、最高点も低くなる。
しかし、糸の長さは同じであるから、「重さや高さを変えても周期は変わらない」という結果を示すことになる。
3
2(3)と同じく、糸の長さが同じであれば鉄球の重さや高さにかかわらず周期は一定である点に注目して考える。つまり、何度衝突を繰り返しても衝突位置は変わらない。
4
(1) 組み合わせⅠとⅡだけを見ると合っているように思われるが、ⅢとⅣでは飛距離が2/3となっており、不適。
(4) Ⅰ〜Ⅳのいずれについても最初の高さを4倍にすると飛距離が2倍になっているが、最初の高さを1cmから9cmに変えたとき、飛距離は3倍にしかなっていないのが確認できる。
5
アとイについては最初の高さを4倍にすると飛距離が2倍になることを踏まえて、組み合わせⅠとⅡにおいて最初の高さが9cmのときの飛距離を2倍することで結果を推計できる。
また、ウとエについては最初の高さを9倍にすると飛距離は3倍になることを踏まえて、組み合わせⅢとⅣにおいて、最初の高さがそれぞれ2cm、3cmのときの飛距離を3倍して結果を推計できる。
<時間配分目安:11分>
攻略のポイント
知識の応用力を問う設問が多い。必要な知識のレベルは決して高くないのだが、出題頻度が高いとは言えない内容の問題も見られるため、基礎知識の習得に漏れがあってはならない。
また、大問4のように原理が完全に理解できない状態で問題を考えなければならない場合がある。 たとえば「30gの鉄球どうしをぶつけたら片方は停止するのに、なぜ30gと90gの鉄球を組み合わせたら両方とも動くのか?」という思考に入り込んでしまうのは避けたいところ。
題文の情報と知識を最大限駆使しながら、少しでも正解の可能性が高い答えを的確に、かつ時間内に無駄なく考え抜けるかどうかが勝負の分かれ目である。
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