女子学院中学校 入試対策
2020年度「女子学院中学校の算数」
攻略のための学習方法
女子学院が女子校の中でも最難関校の一つであり、また人気の高い学校であることは百も承知のことと思われる。それだけ合格への壁は厳しく、突破は容易ではない。まずは覚悟を決めよう。
これから算数について書いていくわけだが、特に女子学院の場合、算数という1科目のみを単体で考えることは難しい。
4科目の配点がどれも100点満点だと言うこともあり、どの科目についても算数と同じ特色(短い時間)で多くの問題にあたらなければならない。
スピードもかなりのものが要求され、どの科目も高得点が期待される。
学校によっては、「算数はきついけど、理・社は簡単」とか、「国語は記述で大変だが、算数は平易である」というように、どこかに「休息所」があるものだが、この学校にはない。どの科目でも気が抜けずハイスピードで解いていかなくてはならない。設問によってはいじわるなものもある。正解かどうか迷うところも多々存在する。それでも女子学院合格のためには、1問でも多く迅速に解き、正解していかなければならない。
算数においては、決して難易度の高い問題まで追及する必要はない。
男子難関校の算数につき合う時間があるなら、理科や社会の知識をひとつでも多く増やすことの方が合格への賢明な道である。
では、標準的な問題が普通に解ければよいとかというとそういうことはなく、ある水準までの問題は100%正解でき、スピードを上げて問題を処理しても雑にならないという、いわば機械のような精密さを身につけたい。
図形の問題
「図形の問題」では、基礎の基礎、まさに定義を聞かれたりする。
たとえば「平行四辺形とはどういう四角形か?」という問いに対して、必要十分に答えられるだろうか。同じように「長方形とは…?」と問題を変えてもよい。
答えは、「平行四辺形とは、2組の対辺がいずれも平行な四角形である」「長方形とは、4つの角がすべて直角である四辺形である」。正しく答えられただろうか?
算数で初めて「長方形」や「平行四辺形」を習ったときに、図形を見て直感的に形で覚えてしまっていると、意外に出てきにくいものだ。
もちろんそのままの形で問題になるわけではないが、四角形の分類などでは重要な事柄になる。
また、角度の問題では、原点に返って「多角形の内角の和・外角」などを用いて解くことがほとんどで、学年が下の生徒でも解けることがあるだろう。
ただ、解けることがあるだろうではダメで、必ず解けることが必要である。
平成30年度の問題であれば【大問1】の(2)・(5)などは見て分らないという問題ではあるまい。レベルで言えば平易な方だ。しかし、さっと問題に取り組み、よどみなく正確に答えを出せるかどうか?迷うことなく正解にたどり着けるよう演習を積み上げていかなければいけない。
速さの問題
「速さの問題」においては、条件に惑わされずに素早く自分にわかりやすい形にまとめることだ。それは、線分図でもよいしグラフの形でもよい。女子学院の「速さの問題」には、このような問題文自体がわかりにくいことが多い。
イメージと異なりかなり意地の悪い問題を出してくるので、慣れるくらいまで過去問に取り組んでおきたい。
特殊算を用いる文章題
特殊算を用いる文章題は年度によって難易度が異なる。平成28年度のようにかなり難しいときもあり、いくら「全問正解せよ」といっても解ききれないレベルだろう。
また平成30年度大問5のようにユニークな差集め算が久々に出されるということもある。水準が安定しない以上、過去問を解くに当ってはすべての問題で正解まで道筋を模範解答などでしっかりとつかんでおきたい。
問題を解くスピード
問題を解くスピードをつけるには、マイペースを引き上げるよう自覚的に努力しなくてはいけない。
4年生の時よりは5年生、5年生よりは6年生と、学年が上がるにつれて理解力だけでなく解くスピードも上がっては来ているはず。今の速さで十分、女子学院の問題に対応できると言う生徒は読み飛ばしても構わない。
そうではない生徒は古い方法ながら、時間を短めに計って一行問題集などで練習するのが一番よい。
上にも書いたが、速く解くだけでも不十分で、解き方が崩れないことが肝心である。「下手な鉄砲数うちゃあたる」ではなく、「百発百中」を目指したい。したがって、手順のムダをなくし、「早くていねいに」と いう究極の腕前を磨いてもらいたい。
最後に。
過去問には十分な時間の余裕を持って取り組むこと。
4科目のトータルで実力を判断すること。
算数においては最後の問題にまで時間が残せるようペース配分をつかむこと。
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2020年度「女子学院中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
40分で大問が6、小問が20数問(求め方も含む)と例年同じ程度の分量が出題される。
テスト時間の短さに比べて問題数が多いのはこの学校の大きな特色である。
ただし本年度に関して言えば、前半(【大問3】まで)をスピーディにそつなくこなし、後半の大問に十分な時間が割ければそれほど時間不足に陥ると言うことはなかったろう。
【大問1】計算問題・小問集
- 難度:易
- 時間配分:8分
- ★必答問題
(1) 恒例になっている分数と小数の混合四則計算から本年度もスタート。ていねいに逆算を行っていきたい。
(2) 「30度、60度、90度」の直角三角形を用いて面積を出すという、今では基礎と呼んでも良いレベルの問題で、ひし形のまま求積かあるいはACに直線を引いて2つの二等辺三角形にわけて求積かいずれにしても作業が滞ることなくこなしたい。
(3) こちらも対策を重ねてきたであろう角度の問題。本年度は比較的素直に角度が求まる問いになっていて、補助線を2本引いて四分円ABDの中に正三角形と二等辺三角形を作れば良い。
二等辺三角形の角度がそれぞれ「30度・30度・75度」とわかるのでまず㋐が求まる。ついで㋑を求めるには別の二等辺三角形を利用することが必要だが、いたずらに角度を書き込むことなく、スマートな解法を心がけたい。
(4) ジャガイモの値段を①とおいて式を立てて求める。標準的な問題だが4個入りの袋になると1つ10%引きになるので気をつけたい。
(5) 既視感のある最小公倍数の問題。A、B、Cそれぞれの周期と7(1週間)の最小公倍数を求めて曜日を特定していく。大の月・小の月の知識は言わずもがなであろう。
(6) 小学4年生に逆戻りしたような角度についての基礎の確認で、同じく基礎知識の確認にすべてを費やしている【大問3】の前振りかも知れない。間違えようがないが間違えるとなるとかなり恥ずかしい…
本年度の【大問1】は全問正解を課したい。
【大問2】平面図形(相似形・円の弧の長さ)
- 難度:標準
- 時間配分:6分
- ★必答問題
与えられた図の中には3つの直角三角形が見られるが、そのどれもが「5:12:13」の辺比を持つ相似の関係にある三角形である。
それを利用して(1)を求め、(1)の答えを半径として四分円の弧の長さを求めれば良い。
問題の水準としては【大問1】同様「易」でもよいが、Aの値が分数になり、それが(2)の計算を複雑にしているので「標準」としておいた。ここも必ず正解しておきたい。
【大問3】定義
- 難度:易
- 時間配分:2分
- ★必答問題
以前は時おり女子学院に見られたまさに算数の定義について問われる問題で、意表を突かれるもののまったく怖くないおばけといったところで、1・2分で粉砕して進むことが出来るだろう。
【大問4】速さ(図形上の動点とグラフ)
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
本年度のテストはこの【大問4】から始まると言っても過言ではない。ここまでは多くの受験生が全問正解、またはそれに近い成績を収めているのでほとんど差がついていない。ここから一気に算数の力が問われるよう問題が続いていく。
「速さの問題」とカテゴライズされているものの、実際には与えられた立体図形とグラフの関連性を見抜く問題になっていて、速さの3公式はほぼ使わない。グラフの変化するところには図形の頂点に書かれている数字を書き込んで問題にあたっていこう。
アは、1から2、3、…9を経て1に戻ってくるまでに通ったすべての辺または弧の長さの和を求めれば良い。
こういった図形上の点の移動の設問は、スタートに近い距離または時間から求めていくことが多いのに対し、この問題では反対にゴール地点から設問が始まっている。その点は大変ユニークな問題だ。
イの求め方が最も頭を使う。イの地点は「8」と「9」の間の半端なところだし、解き方がわかりにくい。
そこで数値が与えられている「5」を通過する9.21秒と「1」に戻ってくる16.71秒の間を考えると、この間に通る5本の直線それぞれにかかる時間はすべて等しくなることが与えられた条件からわかる。
したがって(16.71-9.21=)7.5秒を5でわると、1つの辺を通るのにかかる時間が1.5秒となる。つまり、「9」から「1」にかかる時間は1.5秒であり、「8」から「9」までかかる時間のうち、イの位置までかかる時間の割合でイまでの長さを求めることが出来る。
ちなみにウは、「1」から「4」までの長さを求めるだけなので最初に求めてもおかしくはない。
ア・ウの解き方は「標準」レベルだが、イの求め方が少し難しいので「やや難」とした。
【大問5】条件整理
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
与えられた規則に従ってA~Pの箇所に○×をつけ、これは手のかかる問題だ、と認識した上で十分に時間をかけて解いていくことにしよう。それしか手がないからだ。
(1)が解けたころには問題文の意味を理解できていると思うので、(2)(3)は同様にして考えられる数をせばめて求めていきたい。いずれにしても本年度で最も手作業を必要とする問題なので(2)まで出来ればよしとしよう。
【大問6】速さ(流水算・つるかめ算)
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
【大問6】は末尾を飾るにはふさわしい難問になっていて、(1)の難易度が高いので、速さの比を駆使して(1)を解けた者のみが(2)に進めるという、大きく差がつきやすい大問になっている。
(1)の、行き・帰りに進んだ距離から速さの比を求めるという設定は珍しいものではないが、単純な旅人算ではなく「川の流速」が関係してくる「流水算」で用いられるところが大変ユニークであり面白い。
2つの進み方からそれぞれ速さの比を求めると、「姉の下り」と「妹の上り」の速さの比は3:1で、「姉の上り」と「妹の下り」の速さの比は3:5となる。これでは速さの種類が多すぎてわかりにくいが、実は姉と妹の静水時の速さの和はどちらの場合でも等しくなる(上りと下りと言うことから、流速が相殺されるから!)ので、前の3:1とあとの3:5の和は実は等しいと言うことになる。3:1を6:2として比の大きさをそろえると「姉の下りと上りの速さの比」は6:3(2:1)となり、この差が流速の速さ2つぶんにあたる。ここから比1に当たる速さが求められれば、姉・妹の静水時の速さが答えられる。
(2)のはじめの問いはつるかめ算の考えを用いた設問になっている。(1)が求められた生徒には余裕があっただろう。
しかしもう1つの問いは設定が複雑なので、算数の自信がある生徒だけが挑戦すれば良いだろう。
攻略のポイント
テスト時間は40分で100点満点。
高難度だった昨年度の反動か、本年度は平均すると難易度が下がり取り組みやすい内容だっただろう。後半の大問は配点が高いもののなんとか70点以上の点数を取れるよう準備をしておきたい。
難易度が最高水準にある学校なので、今後また難度が高いテストに戻るという可能性は十分にあるだろう。しかしJGを志望する生徒は今までとってきた対策を変更すべきではないと思う。あくまでも、標準的な問題を素早く、適切に解ける力こそが合格への王道と言えるからだ。
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