女子学院中学校 入試対策
2019年度「女子学院中学校の社会」
攻略のための学習方法
[スライド式学習]
「女子学院対策」では先ず、「地理」「歴史」「公民」全単元の「知識」を確実に定着させることが重要だ。
「基礎的事項」は無論、細部にわたる「詳細な知識」や「深い理解」も求められるので、テキストの「注」や「囲み説明」等のチェックもすること。だが、悲しいことに人は忘れるものだ。時が経てば経つほど忘れる。ここに落とし穴がある。
基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し定着させたのか、その時期が問題となる。
塾では通常、本格的な受験勉強が始まる5年生になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、6年生の夏休み前には終える。その後は「復習」となるが、メインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。
そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。6年生で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか? 実質的に1年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。「地理」の全分野から深く出題されるJGではなおさらだ。
そこで、独自の「復習」が必要となる。塾での学習時期とはずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある5年生の冬休みやその後の春休みを利用して、徹底的に「地理」の「復習」をしておくことがポイントだ。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用するといい。
さらに、その後も定期的に「地理」の理解を深めるような学習を密かに続けておくことで、ライバルに差をつけておきたい。
[いもづる式学習]
全単元に共通だが、「暗記事項」はそれぞれ単独(要は「一問一答方式」)で定着させていても無意味だ。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられない。ましてや、JGで求められる「多角的思考」などできるはずがない。
そこで重要となるのが「いもづる式学習法」。「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習だ。
1つの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。もし「言葉」としては覚えていても「内容」があいまいになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ここでも「復習」できる)。また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。
その上で、それらが結びつく背景(=「面」)をも理解するようにする。
このようにして改めて暗記し定着させた「事項」はどのような問われ方をしても、「線」で結びつけて答えられることになる。
さらに、単元もまたいでいるので、JGおなじみの「単元融合問題」や「総合問題」にも対応できるようになる。無論、「多角的思考」にも「いもづる式学習法」は力を発揮する。
[手づくり式学習]
特に「歴史」単元の「復習」で必要となる。
塾での「歴史」の学習は通常、「政治史」を軸とした「通史」で「時代別」「時代順」になっている。しかし、JGに限らず上位校ではそうした単純な出題はほとんどない。
特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸になっている。
それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。
「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」~「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。
さらに、その「年表」には「西暦」だけではなく「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」も対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられないような問題が多いからだ。「年表づくり」を楽しみながらやってみたい。
[細部へのこだわり式学習]
前述のように、JGでは「リード文」「設問文」「統計資料」「地図」等の「要素」と自らの「知識」を多角的に結びつけないと解けない問題が多い。考える際の前提は無論、それぞれの「要素」をいかに正確に読み取るかということだ。そこから「考えるヒント」を見つけ出すのだから、「細部」にこだわって読み取ることが重要となる。
当然、トレーニングが欠かせない。過去問や練習問題等を用いて、各「要素」の細かな「意味」や「資料の数字」「地図上の位置」、そして「関連事項」など全てを材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する練習をしなくてはいけない。
導き出せることについては、過去問や問題集の「解説」に示されているはずなので活用する。
こうした「細部へのこだわり学習」を続けることで、次第に様々な「要素」から着目すべき「手がかり」が自然と浮かび上がるようになる。
後は自分の「知識」と結びつけて考えていけばいい。
[意識継続式学習]
いついかなる場合でも、常に何かを「意識」しながら学習することが必要だ。無意識に机に向っていても無意味。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのかを具体的に「意識」し続けていることが重要だ。
そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習していきたい。
女子学院の入試では40分という制限時間の中で、様々な「要素」を考え「条件」をクリアして70もの問題に答えなくてはならない。だからこそ、「設問」を正しく理解しているか? 「要素」は全て確認したか? 「他の設問」との関連は大丈夫か?「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。当然、「時間」も「意識」すること。
入試本番では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2019年度「女子学院中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問Ⅰは「歴史」。「ごみの処理や再利用の歴史についてのリード文」からの出題。
小問は全11問(解答数14)、「選択肢」(「不適切」「年代整序」「複数解答」あり)、「事項(県名)記述」、「説明記述」(4問。全て「字数指定」なし。「30字ほど」1問と「20字ほど」3問の解答欄)。
大問Ⅱも「歴史」。「鉄や石炭、石油といった鉱物資源の歴史上の役割」に関しての、「史料」などからの出題。
小問は全7問(解答数12)、「選択肢」(「不適切」「年代整序」「複数解答」あり)、「事項(人名)記述」、「説明記述」(2問。ともに「字数指定」なし。各「30字ほど」の解答欄)。
大問Ⅲは「地理」(2問のみ「歴史」)。「東京都日の出町」に関する「地図」「地形図」「統計資料」などからの出題。
小問は全11問(解答数19)、「選択肢」(「不適切」「年代整序」「複数完全解答」あり)、「事項記述」、「説明記述」(1問。「字数指定」なし。「50字ほど」の解答欄)。
大問Ⅳは「公民」(1問のみ「時事」)。「経済発展と環境破壊に関するリード文」からの出題。
全9問(解答数10)、「選択肢」(「不適切」「複数完全解答」あり)、「事項記述」(「漢字指定」あり)、「説明記述」(2問。ともに「字数指定」なし。各「30字ほど」の解答欄)。時間配分は、「説明記述」に10分ほど、他は2分強で3問をこなすペースとなる。無論、メリハリのある「戦術」が求められる。
【大問Ⅰ】「歴史」(「年代整序」「説明記述」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:11分
「縄文時代~江戸時代までの、ごみの処理や再利用についてのリード文」からの出題。「歴史」の「基本的事項」を問う小問が多いが、中には「考察」が必要なものや、判別の厄介な「年代整序」などもある。心してかかること。以下、いくつかの問題を確認してみる。
[問5] 「下線部についての年代整序設問」(4択)。「リード文」中の下線部⑤「大宝律令制定」の前後の「できごと」を「古い順」に並びかえる。「年代整序」は「うろ覚えの年代」で整序するのではなく、「流れ」や「キーワード」を確認し、特定していくことが肝要だ。「キーワード」から「流れ」や「時代」を特定していく。選択肢(ア)「大化の改新」⇒蘇我氏を滅ぼした「乙巳の変」から始まり、中国の律令制度に倣(なら)った「大宝律令」で完結、(イ)「仏教伝来」⇒「古墳時代」が終わるきっかけ、(ウ)「日本書紀」⇒自動的に「奈良時代」確定、(エ)「遣隋使派遣」⇒「聖徳太子(厩戸皇子)」と結びつき、「仏教」に基づく政治。よって、「答え」は「(イ)→(エ)→(ア)→(ウ)」となる。このように「流れ」で特定できなくてはいけない。不安な諸君は「レベルアップ」が必須だ。
<時間配分目安:30秒>
[問7] 「下線部に関する条件付き理由説明記述設問」(字数指定なし、「30字ほど」の解答欄)。下線部⑦「江戸は様々な商品の大消費地」に関して、江戸時代後半になると「江戸の町人の中では浮世絵を持っている人が増えた」が、「なぜ多くの人々が浮世絵を買うことができたのか」を説明する。「条件」は「浮世絵のつくり方にふれて説明する」こと。「江戸時代後半」の「浮世絵」? 「化政文化」の頃なので、多色刷りの「錦絵」だったとすぐに気づかなくてはいけない。つまり「版画」だ。ということは、大量に同じものが刷られた⇒価格が下がったわけだ。したがって、たとえば、「多色刷りの錦絵として大量に作られ、価格が一気に安くなったから。」(31字)といった「答え」になる。「条件」には確実に応じること。そして、「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。
<時間配分目安:1分>
[問8] 「リード文に関連する不適切選択肢設問」(5択)。「江戸時代の人々の様子」についての説明で、「まちがっているもの」を答える。「不適切」だということをしっかりと意識して、各選択肢の「キーワード」で正誤判別をしていきたい。(ア)「町の運営は町役人が行った」⇒何の問題もないはず=「適切」、(イ)「経済力では大名を上回る大商人もいた」⇒「大店(おおだな)」は大名に金を貸すほどだった=「適切」、(ウ)「厳しく差別された身分の人々がいた」⇒「士農工商」の下に「穢多(えた)」・「非人」という身分が存在したのは知ってのとおり=「適切」、(エ)「(農村では)米のほか雑穀などを食べていた」⇒「雑穀」が主食だったとも考えられる=「適切」、(オ)「歌舞伎は江戸や大阪に限って上演が認められていた」⇒ここまでが全て「適切」だったのでこれが「不適切」に違いないが、自信が持てない……⇒「歌舞伎」の常設小屋は「三都(江戸・大阪・京都)」に限って公認されていた=「不適切」。よって、「答え」は(オ)でいい。不安なものがあっても「消去法」で判別できると心得よ。ただし、「正誤判別」では「細部」にまで配慮することが肝要だ。
<時間配分目安:1分弱>
[問9] 「下線部についてのグループ分けおよび説明記述設問」(全3グループ/6択/全て「字数指定」なしで各「20字ほど」の解答欄/各「複数完全解答」)。下線部⑧「江戸では不要になったものが徹底して再利用された」について、示されている(ア)~(カ)の「職業」を「2つずつ組にして3つのグループ」に分け、それぞれ「どのように再利用したか」を説明する。各選択肢は、(ア)「古着屋:着物を買い取り、仕立て直して売った」・(イ)「古傘買い:折れた骨をはずし、油紙は包装紙として売った」・(ウ)「灰買い:灰を買い集め、農村で売った」・(エ)「焼継ぎ:欠けた陶器を接着し、再び焼いて売った」・(オ)「肥くみ:小便・大便を買い取り、農村で売った」・(カ)「ほうき買い:古くなったほうきを買い取り、タワシなどにして売った」。「再利用のしかた」による「グループ分け」だ。「同じ用途として」・「別な用途として」・「農村での用途として」の3つだと気づかなくてはいけない。したがって「答え」は、(ア)(エ)「修理して同じ用途として再利用した。」(17字)、(イ)(カ)「別の用途として作り変えて再利用した。」(18字)、(ウ)(オ)「農村に持っていき肥料として再利用した。」(19字)といったものだ。無論、誰にとっても初見の問題のはずだが、しっかりと考察すれば答えられるわけだ。
<時間配分目安:全問で3分半>
【大問Ⅱ】「歴史」(「年代整序」「説明記述」「複数完全解答」あり)
- 難度:易
- 時間配分:9分
「歴史上大きな役割を果たしてきた鉄や石炭、石油といった鉱物資源」をテーマとした大問。「歴史」単元だ。「鉄を利用した武器」に関する「史料」(刀狩令)からの出題が中心となっていて、「年代整序」3題や「理由説明記述」があるが、さほど難しくはない。一気呵成に得点を重ねたい。以下、いくつかの「設問」を検討する。
[問2] 「テーマについての年代整序設問」(5択)。示されている「石炭と関わりのあるできごと」を「古い順」に並びかえる。各選択肢の「キーワード」から「流れ」や「時代」を特定していきたい。(ア)「主な炭鉱で石炭の採掘が行われなくなった」⇒一瞬戸惑うかも知れないが、「石炭を採掘しない」⇒「需要」がない⇒「石炭」から「石油」への「エネルギー革命」=戦後の「1960年代」と結びつけたい。(イ)「新橋と横浜の間に鉄道開通」⇒無論、「明治時代初期」。(ウ)「九州の炭鉱を含む『明治日本の産業革命遺産』が世界遺産に登録」⇒最近のこと(2015年)だと知っているはず。(エ)「長州藩で石炭採掘」⇒「藩」であれば「江戸時代」、(オ)「八幡製鉄所操業開始」⇒「日清戦争」の賠償金で建設、「20世紀最初」(1901年)は常識。ということで、「答え」は(エ)→(イ)→(オ)→(ア)→(ウ)だ。「長州藩で石炭採掘」は知らない諸君もいるかも知れない。覚えておくこと。
<時間配分目安:30秒>
[問6] 「テーマに関する理由説明記述設問」(字数指定なし、「30字ほど」の解答欄)。「1950年代の日本で『三種の神器』と呼ばれた電化製品」のうち、「白黒テレビ」以外の2つが「人々に余暇を楽しむゆとりを与えた理由」を説明する。1950年代後半の「三種の神器」=「白黒テレビ」「電気洗濯機」「電気冷蔵庫」だということは誰でも知っている。これらの中で、「電気洗濯機」と「電気冷蔵庫」によって洗濯や炊事といった家事労働の負担が軽減され、時間に余裕ができたと考えられるはずだ。したがって、たとえば、「電気洗濯機と電気冷蔵庫によって家事労働の時間が軽減されたから。」(31字)といった「答え」だ。尚、1960年代半ばには「新・三種の神器」として「3C」=「カラーテレビ」「クーラー」「カー(自家用車)」が登場したことも合わせて押さえておくこと。
<時間配分目安:1分>
[問7(1)] 「テーマに関連する不適切選択肢設問」(4択)。「1973年、中東での戦争の影響による石油の値上げで経済が混乱した」が、「このような経済の混乱を防ぐ政策」として「ふさわしくないもの」を答える。各選択肢の「キーワード」で正誤判別する。(ア)「省エネルギーに努める」=当然、「適切」、(イ)「新エネルギー開発に助成金」⇒「石油」に代わるものにつながる=「適切」、(ウ)「商品の値上がりを防ぐため、所得税を減税する」⇒手取りの所得は増えるが、物価上昇を防ぐことにはならない=「不適切」、(エ)「できるだけさまざまな地域から石油を輸入する」⇒輸入先を分散することで、ひとつの地域からの輸入が難しくなったとしても他の地域でカバーすることができる=「適切」。よって、「答え」は(ウ)になる。ここは平易だったが、「因果関係」をしっかりと確認することが肝要。
<時間配分目安:30秒>
【大問Ⅲ】「地理」(一部「歴史」。「年代整序」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:13分
- ★必答問題
関東平野の西部から関東山地にまたがる「東京都日の出町」に関する、「地図」「地形図」「統計資料」、「同町の歴史に関する説明文」などからの出題。「世界地理」を含む「地理」の多彩な小問とともに、「歴史」の問題が2つ紛れている。「統計資料読み取り」がやや複雑だ。以下、いくつかの「設問」を考えてみる。
[問2] 「図についての不適切選択肢設問」(7択)。「地理」単元。示されている「図1(日の出町の地図)の中にない施設」を答える。「地図記号」の判別だ。各選択肢の「施設」を表す「地図記号」が「図1」の中にあるかどうかを丁寧に確認していく。すると、(ア)「病院」=「 」、(イ)「老人ホーム」=「 」、(ウ)「小中学校」=「 」、(オ)「寺院」=「 」、(カ)「交番」=「」、(キ)「 」はあるが、(エ)の「消防署」=「 」は見当たらない。したがって、「答え」は(エ)だ。ちなみに、[問1]では「町役場」の「地図記号」の記入が出題されている。もちろん、「 」だが、「市役所」の「 」と混同しないこと。尚、「令和元年」に新しく誕生した「自然災害伝承碑」=「 」も定着させておくこと。
<時間配分目安:1分弱>
[問6(2)] 「統計資料についての選択肢設問」(4択)。「地理」単元。示されている「日の出町や、女子学院のある千代田区などの昼夜間人口比率の表」について、「千代田区の昼夜間人口比率」を答える。「表」では「千代田区」の「昼夜間人口比率」は空所になっており、「昼間人口」「常住人口」「昼間人口密度」「常住人口密度」「昼間通学者」「常住通学者」の項目の数字が示されている。一体、どうやって求めればいいのか? その計算方法など誰も知るはずがない。ということは、直接的に知らなくても解けるはずだ。改めて確認すると、本小問全体の問題文に「昼夜間人口比率は常住人口を100とした場合の昼間人口の割合」と説明されているではないか。あとは「算数」だ。計算式は「昼夜間人口比率」=「昼間人口」÷「常住人口」×100となる。「表」の数字をあてはめると、「853068(人)」÷「58406(人)」×100=1460.582…。ということで、「答え」は(ウ)の「1460.6」だ。「私が知らない」⇒「誰も知らない」⇒「知らなくても解ける」と考え、徹底して「手がかり・ヒント」を見い出すことが肝要だ。
<時間配分目安:1分弱>
[問8(1)] 「下線部についての選択肢設問」(4択)。「地理」(世界地理)単元。「日の出町の歴史に関する説明文」の中の下線部②「森林」について、国土に占める「森林面積が日本に最も近い国」を答える。各選択肢は、(ア)「エジプト」、(イ)「オーストラリア」、(ウ)「フィンランド」、(エ)「中国」。どの国が日本の「森林面積」に最も近いのか、などということを直接的に知っている諸君はいないはず。だが、日本の「国土面積の2/3は森林」という数字は誰もが押さえていなくてはいけない。つまり、7割近くが「森林」だ。ここから、各国を判別していけるはずだ。「エジプト」と「オーストラリア」には「乾燥帯」(=砂漠)が広がっている。「中国」も西部や北部は「草原地帯」だ。であれば、「消去法」で「フィンランド」が残る。そう、「森林大国・フィンランド」は「国土面積の3/4」が「森林」(世界1位。ちなみに日本は2位)。尚、日本に関しては、国土面積の「3/4の山地」と「2/3の森林」を混同しないこと。
<時間配分目安:30秒>
[問9] 「下線部に関しての事項記述設問」。「歴史」単元。「日の出町の歴史に関する説明文」の中の下線部③「材木の大消費地であった江戸」について、「材木の値段は江戸で急上昇すること」があったが、それは「どのようなことが起きた後か」を答える。何が起きたら「値段が急上昇」するのか? ここは「自らの知識」を総動員して考えたい。「価格上昇」⇒「需要の増加」か「供給の減少」が考えられる⇒「江戸」は「消費地」なのだから「需要」の方⇒何かが起きたことによって「材木の需要」が「急上昇」⇒「材木」が一気に「不足」する事態⇒「江戸」といえば、そう「火事と喧嘩(けんか)は江戸の華」だ。「大火事と派手な喧嘩は江戸の名物」だと言われていた。19世紀前半には「世界一の人口」となった「江戸」では住宅が密集しており、大火事が頻繁に起きていた。そのたびに住宅を再建する必要があり、大量の材木が必要になったわけだ。したがって、「答え」は「火事(火災)」だ。与えられている情報から考察して「答え」を導き出す。本校では当然のことだと心得よ。
<時間配分目安:1分>
【大問Ⅳ】「公民」(一部「時事」。「説明記述」あり)
- 難度:標準
- 時間配分:7分
「1956年の『水俣病発生報告』から2015年に国連で採択された『SDGS』までの流れを追い、経済発展と環境破壊について説明したリード文」からの出題。さまざまな観点から「公民」の知識が問われている大問だ(1問のみ「時事」で他に「時事的要素」あり)。以下、いくつかの「設問」を検証したい。
[問2] 「下線部についての条件付き表現記述設問」(字数指定なし、「20字ほど」の解答欄)。「公民」単元。「リード文中」の下線部①「水俣病の患者とその家族は、……国や県の責任を問う裁判も起こした」について、「日本国憲法」に基づいて考えると、本来、「国や県にはどのような権利を守る責任があったのか」を答える。「条件」は「日本国憲法に用いられている表現で答える」こと。条件反射的に、「水俣病」=「公害」⇒「有機水銀という有害物質で環境が侵された」⇒「環境権」と結びつけたくなるだろうが、そうはいかない。なぜなら、「日本国憲法に用いられている表現」という「条件」を満たさないからだ。「環境権」は「新しい人権」であり、「日本国憲法」には規定されていないのは知っているはず。では、何を答えればいいのか? 患者は「水俣病」によって健康が害されてしまったのだから、そう、「生存権」を規定した「第25条」だ。よって、「答え」は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(19字)ということになる。当然のことだが、「条件」を的確に満たさなければ「失点」となる。注意せよ。
<時間配分目安:1分>
[問5] 「下線部に関連する選択肢設問」(6択/複数完全解答)。「時事」単元。「リード文中」の下線部④「廃棄物」に関連して、「プラスチックごみ」についての「正しい説明」を「3つ」答える。本年度の典型的な「時事問題」だ。各選択肢の「キーワード」で正誤判別していきたい。(ア)「使い捨てのプラスチック製ストローを廃止する飲食店チェーンがあり」⇒「スターバックス」や「ガスト」などが廃止を発表したことはニュースで知っているはず=「適切」、(イ)「2018年のG7サミットで『海洋プラスチック憲章』にすべての参加国が署名」⇒えっ? そんなことは知らない=「保留」、(ウ)「中国は、日本などからプラスチックごみを資源ごみとして輸入していた」⇒これまた大きく話題となった=「適切」、(エ)「海に流れたプラスチックの多くは、……短時間で溶けてなくなる」⇒5ミリ以下の小さな「マイクロプラスチック」として残ることは知ってのとおり=「不適切」、 (オ)「魚がプラスチックごみを飲みこむと、食物連鎖により人体に悪影響」⇒前述の「マイクロプラスチック」のことだ=「適切」、(カ)「プラスチックごみ排出量で、日本は世界の国々で下位」⇒正確には知らなくても、「下位」ということはあり得ないと判断したい=「不適切」。「正しい説明」は「3つ」なので、「保留」にした(イ)は結果として「不適切」だと判別できる⇒「海洋プラスチック憲章」に、残念ながら「日本」と「アメリカ」は署名していない。したがって、「答え」は(ア)(エ)(オ)になる。「プラスチックごみ」の問題で「マイクロプラスチック」に関しては、来年度も要注目の「時事問題」になるはずだ。
<時間配分目安:1分半>
[問9] 「下線部についての説明記述設問」(字数指定なし、「30字ほど」の解答欄)。「公民」単元(「時事的要素」あり)。「リード文中」の下線部⑦「世界の人々がともに豊かに暮らすために、限りある資源から得られる利益を公平に分かち合えるしくみ」について、「利益を公平に分かち合う」ためには、「日本で生活する私たちがチョコレートや衣料品などの商品を購入するとき」に「どのようなことを考えて選べばよいか」を説明する。「利益を公平に分かち合う」+「チョコレート」「衣料品」⇒「フェアトレード」という「キーワード」がすぐに思い浮かばなくてはいけない。ということで、たとえば、「公平なフェアトレードで流通している商品かどうかということ。」(29字)といった「答え」だ。「時事問題」に関しては受験年度だけではなく、過去数年まではさかのぼって押さえておくことが肝要だ。
<時間配分目安:1分強>
※尚、本大問の「リード文」にある「SDGS」=「持続可能な開発目標」の「17の目標」はしっかりと習得しておくこと。
攻略のポイント
- ●制限時間内にこなすのは至難の技といえる解答数で、しかも、難易度はバラバラ。したがって、最大のポイントは「試験時間の使い方」になる。先ずは、難易度を即座に判断する。そして、「取れる問題を確実に押さえる」ことが重要だ。「取れそうにない問題は潔く捨てる!」ことも戦術のひとつ。時間を取られて、「できるはずの問題」を逃してしまっては元も子もないのだから。もし時間が余ったら、また戻ればいい。本校の合格ラインは完全非公表だが、解答数から考えて10問程度の「捨て問」なら大丈夫だ。6割以上は「基礎的知識」で十分対応可能で、あとは前述したような「本校対策」ができれば「安全圏」だ。
- ●「基本的知識を基にした思考力や記述力、図表や資料等から必要な情報を読み取る能力」も求められる。それらの「設問」では、「リード文」「設問文」「統計資料」「歴史史料」「地図」等の「要素」と「自らの知識」を多角的に結びつけて考えることが必要だ。また、「設問どうしの連関」や「設問条件=手がかり・ヒント」だということも心得ておきたい。そして、過去問演習を通じて(「解説」を読みながら)、どのような「要素」を組み合わせて考えていけばいいのかを繰り返し確認し、自らも「多角的思考」ができるように練習していきたい。尚、「解答形式」が目まぐるしく変化するので、十分に注意する必要がある。
- ●もうひとつ。本校では「4科目の配点と試験時間が全て均等」であることにも注意したい。「社会」だからといって手抜きはできない。逆に考えれば「社会」が得意科目である場合、ライバルに大きく差をつけるチャンスにもなるのだ。
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