｢漢字の書きとり｣(全10問)。示されている各文の傍線部の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直す。本年度も昨年度同様で｢書きとり｣のみ。例年と比べて平易なので、本校志望者は｢全問正解｣したい。注意したいものだけ確認する。⑤｢トウブンの取りすぎに注意｣＝｢糖分｣⇒｢同音異義語｣に要注意。⑥｢初の女性大統領がタンジョウ｣＝｢誕生｣⇒｢誕｣は｢15画｣、一画一角をハッキリと記すこと。⑦｢交通事故にあい、シンパイ停止におちいった｣＝｢心肺｣⇒｢文脈｣からしっかり読み取りたい｡⑨｢クラスをハンに分けた｣＝｢班｣⇒｢真ん中の部分｣がつぶれないようにすること。ひとつでも曖昧(あいまい)な漢字があれば、改めての習練が不可欠。

｢空所補充の漢字記述｣(全10問｡｢漢字１字｣指定)｡｢総合的知識問題｣｡｢慣用句｣だ｡示されている｢慣用句｣の空所　にあてはまる｢自然に関する言葉｣を｢漢字一字｣で答える。基礎的なものが多いが、中には一瞬悩む空所があるかも。それらを確認する。①｢　上に置けない｣⇒｢風上に置けない｣＝｢答え｣は｢風｣⇒｢性質や行動の卑劣(ひれつ)な者をののしっていう言葉｣だ。用法も押さえたい。②｢　千山千｣⇒｢海千山千｣＝｢答え｣は｢海｣⇒これは馴染みがないか、｢世間の経験を多く積み、物事の裏表を知り抜いていて悪賢いこと｣。⑥｢　行きがあやしい｣⇒｢雲行きがあやしい｣＝｢答え｣は｢雲｣⇒つい｢先行き｣にしてしまわないこと｡｢もめごと･紛争などの起こりそうな不穏な成り行きである｣ことだ。⑦｢　の字に寝る｣⇒｢川の字に寝る｣＝｢答え｣は｢川｣⇒｢自然に関する言葉｣なので｢大の字｣ではない。｢夫婦が子どもを中にして『川』の字の形に並んで寝る｣こと。ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は、総復習せよ。

｢科学者｣は研究に伴う責任をどう考えるのか？ その行動規範は何か？――自然と人間の相互作用を読みこむ新たな科学観が問われている現在、転換期の｢科学者像｣を論じている。本文では、ニュートンの時代にあったキリスト教の自然観の枠組から知的な営みが解放され、｢科学｣という伝統が新たに創造されたと指摘している。｢科学論文｣であり｢英語｣がやたらに多いので、｢※注｣を活用しても内容を正確に理解することはまず無理だ。各設問に実直に向き合ってほしい。すると、実はさほど難解ではないと分かるはず。尚、｢選択肢設問｣でまことに興味深いものがある。それも含めて、以下、いくつかを確認してみたい。 

[問一]　｢語句の空所補充選択肢｣(全４問/４択)。本文中の　Ａ　～　Ｄ　の空所に｢当てはまる語句｣を答える。各選択肢は、｢接続詞｣｢副詞｣などだ。｢接続詞｣は本校に限らず定番の問題。中でも｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。順に空所に｢当てはまる語句｣を確認していきたい。　Ａ　には｢逆接｣の｢接続詞｣である(イ)の｢しかし｣､　Ｂ　には｢並立(並列)｣の｢接続詞｣である(ア)の｢また｣､　Ｃ　には｢言うまでもなく｣という意味の｢副詞｣である(エ)の｢もちろん｣、　Ｄ　には｢換言｣の｢連語｣である(ウ)の｢言い換えれば｣がそれぞれ入ると分かるはずだ｡｢接続詞｣の｢逆接｣以外では、いくつかの｢候補｣をしっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。  ＜時間配分目安：全問で２分＞ 

[問二]　｢語句の意味の選択肢｣(全２問/各４択)。｢総合的知識問題｣｡波線部(ａ)｢手を染める｣､(ｂ)｢かんに障る｣の｢語の意味｣を答える。これらの｢原意｣(本来の意味)を忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、本文中での意味を意識し過ぎると､間違ってしまう可能性があるので、要注意。それぞれの｢答え｣を確認したい。(ａ)｢手を染める｣＝｢ 関係を持ちはじめる。手をつける｣ことなので、選択肢(ア)｢ある物事をし始める｣｡(ｂ)の｢かんに障る｣＝｢腹立たしく思う。気に入らない｣ことなので、(イ)｢気に入らない｣｡こうした｢語句の意味｣では、｢原意絶対優位の原則｣(｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣を最優先に考えること)を徹底させることが肝要だ。
＜時間配分目安：全問で１分以内＞

[問三]　｢条件付き理由説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部①｢その反論には『ノー』と答えたい｣について、｢その理由｣を説明する。｢条件｣は｢♯１から♯２の部分に書いてある内容を元に簡潔に説明する｣こと。｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢その反論｣＝｢ニュートンは『科学者』と呼んでよいのではないかという反論｣だと分かる。これに対して｢『ノー』と答えたい｣ということは、｢ニュートンは『科学者』とは呼べない｣ことになる。なぜか？ ｢条件｣の範囲の冒頭に｢何故ニュートンは科学者ではないのか｣とあり、続けて｢その理由｣を説明している。そこでは、｢ニュートンの時代には『科学者』を意味する『scientist(サイエンティスト)』という言葉はなく、その名でよばれる実体も存在しなかった｣と述べられている。あとは、｢簡潔｣にまとめていきたい。たとえば、｢ニュートンの時代には『科学者』を意味する『サイエンティスト』という言葉はなく、その名でよばれる実体も存在しなかったから｡｣(60字)といった｢答え｣だ。尚、｢説明記述｣では、｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を必ず｢文末｣にすること｡                 ＜時間配分目安：２分弱＞

[問六]　｢理由説明不適切選択肢｣(４択)。傍線部③｢その(＝『科学者』の仲間と言ってよい)ハクスリは、英語としての《scientist》という言葉に我慢ならなかったという｣について、｢その理由｣として｢適切でないもの｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣を試みたい(原意絶対優位の原則)｡ここは｢理由説明｣なので、｢我慢ならなかった｣の｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣していく。無論、ここでは｢消去｣すべきものが｢答え｣になる。各選択肢の文末を確認する(選択肢の説明でのポイントは｢文末｣だ)｡(ア)｢広い意味の言葉がその前に置かれていたから｣⇒｢我慢ならなかった｣､(イ)｢反発を覚えたから｣⇒｢我慢ならなかった｣､(ウ) ｢その語を認めたくなかったから｣⇒｢我慢ならなかった｣､(エ)｢我慢ならなかったから｣⇒｢我慢ならなかった｣｡一瞬で(エ)は｢消去｣だと判断したい。｢同義反復｣、｢遅刻したから遅刻した｣と同じで、単に繰り返しているだけだ。念のために、他の部分の説明を｢同一意味段落｣で確認する(｢説明文(論説文)｣では｢同一意味段落に根拠･手がかり｣がある)｡特に誤っていないので、｢答え｣は(エ)になる。｢一発消去｣！　畏るべし！｢原意消去｣､は必ず習得して活用すること。                                                                                                           ＜時間配分目安：１分弱＞

作者の芥川龍之介が実際に体験した出来事を記している。汽車で乗り合わせた貧しい｢小娘｣が見送りの弟たちのために蜜柑を投げてやる光景は、｢私｣の陰鬱(いんうつ)な気持ちに一瞬の清涼感を与えてくれた……。本文はその全文だ。大正時代に書かれたものなので難解な語句があるが、｢※注｣を活用すれば内容は理解できる。ちょっと気になる｢選択肢設問｣を含め、多種多様な小問が並んでいる。以下、いくつかを検討してみよう。

[問二]　｢乱文整序選択肢｣(３択/複数完全解答)。本文中の空所 　Ｘ　には、示されている(ア)～(ウ)の各文があてはまるが、｢正しく並べかえ｣、その｢順番｣を答える。｢乱文整序｣では先ず、｢乱文｣どうしで｢順序｣が特定できる組み合わせを探すことで｢選択肢｣を減らしておきたい。その際は無論、｢接続詞｣や｢指示語｣が重要な｢手がかり｣になる。各選択肢を確認する。(ウ)に｢これらは、その時の私の心もちと、不思議なくらい似つかわしい景色だった｡｣とある⇒｢私の心もちと似つかわしい景色｣の｢これら｣とは？⇒(ア)が｢外をのぞくと、うす暗いプラットホームにも、今日はめずらしく見送りの人影さえあとを絶って、ただ、檻(おり)に入れられた小犬が一匹、時々悲しそうに、ほえ立てていた｡｣となっている。まさに、｢心もち｣を象徴する｢景色｣だ。したがって、(ア)→(ウ)は特定できる。次に、(イ)を確認すると、｢私の頭の中にはいいようのない疲労と倦怠(けんたい＝だるさ)とが、まるで雪ぐもりの空のようなどんよりした影を落としていた｡｣という｢心情｣なので、(ア)の｢前｣ではなく(ウ)の｢後｣だと判断できるはずだ。よって、(ア)→(ウ)→(イ)の｢順番｣になる。最終的に｢脱文挿入｣するので、本文の空所前後との｢つながり｣を確認する。ＯＫだ。したがって、｢答え｣は｢(ア)→(ウ)→(イ)｣でいい。｢乱文整序｣では、｢乱文｣どうしの｢順序特定｣が最大のカギとなると心得よ。
＜時間配分目安：１分半＞

[問六]　｢内容判別不適切選択肢｣(４択)。傍線部③｢もう窓の外がみるみる明るくなって、そこから土の匂(にお)いや水の匂いが冷ややかに流れこんでこなかったなら、ようやく咳(せ)きやんだ私は、この見知らない小娘を頭ごなしにしかりつけてでも、また元の通り窓の戸を閉めさせたのに相違なかったのである｣について、｢ここからわかること｣として｢適切でないもの｣を答える。傍線部はやたらに長いし、なんとも不可思議な問題だ。傍線部だけの内容で、正誤判別するわけだ。各選択肢は全て、ひとつのことがらだけ。判別していく。(ア)｢汽車はトンネルを抜けた｣⇒｢もう窓の外がみるみる明るくなって｣＝適切。(イ)｢私は小娘をしからなかった｣⇒｢流れこんでこなかったなら、……私は、小娘を頭ごなしにしかりつけて……｣⇒｢こなかったなら｣ということは実際には｢流れこんできた｣ので、｢しかりつけて｣はいない＝適切。(ウ)｢窓はすぐにしまった｣⇒(イ)と同じで、｢流れこんできた｣のだから｢窓の戸を閉めさせ｣なかったことになる＝不適切。(エ)｢私の咳はやんだ｣⇒｢ようやく咳(せ)きやんだ私は｣＝適切。したがって、｢答え｣は(ウ)だ。本校ではこうしたユニークな問題もあると心得よ。
＜時間配分目安：１分強＞

[問七]　｢条件付き理由説明記述｣(｢100字以内｣指定)。傍線部④｢私はこの時はじめて、いいようのない疲労と倦怠とを、そうしてまた不可解な、下等な、退屈な人生をわずかに忘れることが出来たのである｣について、｢『私』がそのような状態に至ったのはなぜか｣を｢百字以内｣で説明する。｢条件｣は｢『私が見た光景』にふれながら説明する｣こと。｢私｣は｢疲労と倦怠｣｢不可解な、下等な、退屈な人生｣という｢マイナス｣の｢心情｣や｢状況｣を｢忘れることが出来た｣ということは、何か｢プラス｣の｢心情｣や｢状況｣が｢理由｣だと考えられる。何か？ ｢同一場面｣から読み取る(｢小説は同一場面直前直後に根拠あり｣、｢小説｣の｢最重要解法｣)｡直前の段落の中ほどに｢ある得体の知れないほがらかな心もちがわきあがってくるのを意識した｣とある。｢プラス｣の｢心情｣そのものなので、これが｢直接的理由｣だと読み取れるはず。では、それは何によってもたらされたのか？ ｢条件｣の｢私が見た光景｣と結びつくに違いない。確認すると、同段落の前半から、｢町はずれの踏切りと、小鳥のように声をあげた三人の子供たちと、そうしてその上に乱落するあざやかな蜜柑の色｣という｢光景が(私の心に)焼きつけられた｣ことが分かる。そして、その前段落からは、｢奉公先におもむこうとしている、汽車に乗り合わせた小娘｣が｢わざわざ踏切りまで見送りに来た弟たちの労に報いるために、蜜柑を投げてやったこと｣も読み取れる。説明すべき要素はそろった。あとは、整理して｢過不足なく｣説明していけばいい。たとえば、｢汽車に乗り合わせた、奉公先に向かう小娘が、わざわざ踏切りまで見送りに来た弟たちの労に報いるためにあざやかな色の蜜柑を投げてやる光景を見て、私にある得体の知れないほがらかな心もちがわきあがってきたから｡｣(100字)といった｢答え｣になる。｢小説｣では、｢同一場面｣の｢状況｣を正確に読み取ることが肝要だ。
＜時間配分目安：４分強＞

※尚、[問八]に｢本文内容合致選択肢設問｣がある。｢論説文｣であれば｢論旨合致｣なので、｢序論部分｣および｢結論部分｣との照合で判別可能だ｡しかし、同じ｢本文内容合致｣でも、本大問のような｢小説｣や｢説明文｣では｢本文全体｣と照合しなくてはいけないので、とても時間がかかる。｢戦術｣としては｢あとまわし｣にする方がいい。無論、｢捨て問｣でも構わない。