｢感染症｣｢ウイルス｣といった｢時事的キーワード｣に触れながら、｢『カタン』と『パンデミック』という２つの『ボードゲーム』を紹介し、社会のさまざまなことがら、すなわち『社会科』で学ぶこととの関連｣を説明した｢リード文｣(文章Ａ)からの出題。｢地理｣｢歴史｣｢公民｣の各単元、各分野からの出題が並ぶ。｢説明記述｣でやや悩ましい問題があるが、基本的には平易なものが多い。短時間で得点を重ねていきたい大問だ。厄介な設問を中心にいくつかを確認してみよう。

[問３(２)]　｢下線部に関連する空所補充の内容説明記述設問｣(｢字数指定｣なし、｢20字ほど｣の解答欄)。｢地理｣単元。｢リード文｣中の下線部③の｢麦｣に関連して示されている｢説明文｣の空所        に｢入る適切な内容｣を説明する。

空所前後は｢(日本の小麦の自給率が20%未満にとどまっている)要因としては、農家数が減少しているといった日本国内の事情や、　       　といった日本国外とも関係する事情をあげることができます｣となっている。

｢小麦の自給率｣が｢20%未満｣(2019年度で｢16%｣)だということは知ってのとおりだ。なぜなのか？ 本問では｢日本国外とも関係する事情｣という視点なので、｢外国産の小麦｣が多く輸入される理由になる。であれば当然、先ずは｢価格｣の問題だと気づかなくてはいけない。｢小麦｣に限らず、｢国内産｣よりも｢安い｣から輸入されるわけだ。したがって、たとえば、｢国内産より低価格の外国産が多く輸入される(といった……)｡｣(20字)といった｢答え｣だ。｢自らの知識｣と｢与えられた情報｣とを多角的に組み合わせることが肝要。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問４]　｢下線部に関連しての選択肢設問｣(４択)。｢地理｣｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部④｢鉄｣に関連して、｢日本の産業発展に大きな役割を果たした八幡製鉄所｣の説明を答える。

各選択肢の｢要点｣で｢正誤判別｣していきたい。

(ア)｢オーストラリアから輸入した鉄鉱石｣

　　⇒当時の主な輸入元が｢中国｣だということは誰でも知っている＝不適切。

(イ)｢石炭の入手先であった筑豊炭田｣｢現在は採掘停止｣

　　⇒｢筑豊炭田｣があったからこそ｢北九州｣だったが、40年以上前に閉山となったことは周知のはず＝適切。

(ウ)｢日露戦争の賠償金で建設｣

　　⇒当然、｢日清戦争｣だ＝不適切。

(エ)｢北九州工業地域の出荷額は全国の10%以上｣

　　⇒衰退していることは知っているだろうが、｢数字｣まで定着しているか？

　　⇒現在(2019年度)では｢約３%｣に過ぎない＝不適切。

よって、｢答え｣は(イ)だ。尚、｢正誤判別｣では細部へのこだわりが正否を分けると心得よ。

＜時間配分目安：30秒以内＞

[問６]　｢下線部に関連しての選択肢設問｣(４択)。｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部⑥｢(アメリカの都市)アトランタ｣にある｢アメリカ疾病(しっぺい)予防管理センター｣の｢アルファベット略称｣を答える。

この組織、｢新型コロナウイルス｣関連のニュースで見聞きしたことはあるだろうが、略称まで定着させている諸君はいないかも。ともかく、各選択肢をチェックしてみたい。

(ア)｢ＣＤＣ｣⇒？……。

(イ)｢ＣＯＰ｣⇒｢地球温暖化｣の問題で習得しているはず＝｢国連気候変動枠組条約締約国会議｣だ。

(ウ)｢ＯＥＣＤ｣⇒これは定番＝｢経済協力開発機構｣。

(エ)｢ＯＰＥＣ｣⇒本校志望者であれば、押さえておいてほしい略称＝｢石油輸出国機構｣だ。

よって、結果として｢答え｣は(ア)になる。国連の専門機関などの国際機関については、｢日本語の正式名称｣･｢機関の役割｣、そして、｢アルファベット略称｣をセットで定着させておくこと。尚、｢選択肢設問｣では当然ながら、｢消去法｣を最大限活用することが肝要だ。

＜時間配分目安：30秒弱＞

[問９]　｢下線部に関連しての選択肢設問｣(４択)。｢地理｣単元。｢リード文｣中の下線部⑨の｢電気｣に関連して示されている【グラフ】(｢日本｣･｢カナダ｣･｢アメリカ｣･｢フランス｣が2017年にどのような資源を電源として活用しているかを示した棒グラフ)の中の(ア)～(エ)で、｢日本を示しているもの｣を答える。｢資源｣としては、｢石炭｣･｢石油｣･｢天然ガス｣･｢原子力｣･｢水力｣･｢その他｣となっている。

2011年の｢福島第一原発事故｣により日本の原子力発電所は全ての稼働(かどう)を停止した。その後、一部は再稼働しているが、その割合はとても小さく｢約３%｣だということは誰でも知っているはずだ。したがって、その数字に近い(イ)が｢答え｣になる。

ちなみに、｢水力｣の割合が高い(ア)は水資源が豊富な｢カナダ｣、｢原子力｣が高い(ウ)が｢フランス｣、そして、(エ)が｢アメリカ｣となる。尚、こうした｢統計資料｣は常にアップデートしておくことが重要。

＜時間配分目安：30秒弱＞

[問10(２)]　｢下線部に関連しての条件付き内容説明記述設問｣(全２問。ともに｢字数指定｣なし、各｢40字ほど｣の解答欄)。｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部⑩｢選挙｣に関連して、｢国政選挙によって選出された議員の重要な仕事の一つに予算案の審議｣がある。｢大日本帝国憲法時代と現在では、衆議院議員が予算案の審議において果たした役割｣には、｢共通点がある一方で、現在と異なる点｣があるが、｢現在はどのように定められているか｣を説明する。｢条件｣は、示されている｢『大日本帝国憲法の予算に関する条文』を見て、現在と異なる点を指摘したうえで説明する｣こと。

この複雑な問題文では、何をどのように説明していけばいいのか分からず、混乱するばかりに違いない。そういう時は、ふと｢視線｣をそらしてみるといい。｢解答用紙(解答欄)｣に注目！ そこは、[異なる点]と[現在]の２つに分かれているではないか。ということは両者を別々に説明すればいいわけで、先ずは[異なる点]を明確にすべきだと分かるはずだ。そのためには当然、示されている｢大日本帝国憲法｣を確認することになる。そこには３つの｢条文｣があって、最初に｢国家の歳出歳入については、予算案で帝国議会の同意を得ること｣、次に｢予算は先に衆議院に提出｣、最後は｢予算が成立しなかった場合、政府は前年度の予算を施行｣となっている。｢議会の同意｣と｢衆議院の予算先議権｣は現在と同じだが、｢予算が成立しなかった場合｣の対応が異なっているとすぐに気づくはず。現在は、その場合にも｢衆議院の優越｣が認められ、｢衆議院の議決によって予算が成立する｣ということは知ってのとおりだ。こうした内容を的確にまとめていけばいい。たとえば、[異なる点]＝｢予算が成立しなかった場合に、衆議院の議決にかかわらず、前年度の予算を施行する点｡｣(40字)、[現在]＝｢どのような場合でも、衆議院が予算案を可決さえしていれば最終的には予算は成立する｡｣(40字)といった｢答え｣だ。

｢条件｣はもちろん、本問のように｢解答用紙｣などあらゆるものが｢手がかり･ヒント｣になると心得よ。

＜時間配分目安：３分以内＞

｢『文章Ａ』で見てきた『ボードゲーム』とは異なり、運が勝敗に絡まない『将棋』にまつわる、奈良時代から現在までの歴史｣についての｢リード文｣(文章Ｂ)からの出題。｢写真｣｢図版｣｢史･資料｣｢地図｣｢地形図｣など、【大問Ａ】以上にさまざまな要素を絡めて、｢地理｣｢歴史｣｢公民｣｢時事｣の各単元に関して問われ、さらには｢考察問題｣も待ち構えている。そのようにして｢こむずかしさ｣を装(よそお)ってはいるが、実は基礎的問題がほとんどだ。惑わされることなく、手際よく解き進めていくこと。やや難解な問題を検討する。

[問１]　｢下線部に関連しての時期判別の数字記述設問｣(４択)。｢歴史｣単元。｢リード文｣中の下線部①の｢将棋の内容をもとにした言葉｣の１つに｢成金｣があるが、示されている【図１】(日本で｢成金｣と言われた人が多く登場した時期を描いた風刺画)が｢描いている時期よりも後に起こったできごとの『個数』｣を｢数字｣で答える。

｢記号｣で答えるのではないということをしっかりと意識すること。【図１】は誰もが必ず見たことがあるはず。｢大戦景気｣(｢第一次世界大戦｣＝大正時代)で急速に富を増やした｢船成金｣(海運業者)を描いたものだ。各選択肢の｢キーワード｣で時期判別をしていく。

(ア)｢関税自主権回復｣⇒｢1911年｣(明治時代末)は必須定着事項＝｢前｣。

(イ)｢国家総動員法｣⇒｢日中戦争｣と結びつかなくてはいけない(1938年制定)＝｢後｣。

(ウ)｢西南戦争｣⇒｢明治時代前期｣だということは常識(1877年)＝｢前｣。

(エ)｢東海道新幹線開通｣⇒前回の｢東京オリンピック開催｣(1964年)の時期だと知っているはず｣＝｢後｣。

結果として、(イ)と(エ)が｢後に起こったできごと｣になる。よって、｢答え｣は｢２｣だ。本問は決して難しいわけではないが、｢答え方｣が特別なので注意する必要がある。早とちりは禁物だ。

＜時間配分目安：30秒強＞

[問５]　｢下線部に関連しての条件付き理由説明記述設問｣(｢字数指定｣なし、｢50字ほど｣の解答欄)。｢考察問題｣。｢リード文｣中の下線部⑤の｢木簡｣は、｢『日本書紀』をはじめとする歴史書などと比べると、歴史を研究する上ではより信頼できる史料だとされることが多い｣が、｢その理由｣を説明する。｢条件｣は｢示されている説明文を参考にする｣こと。

｢木簡｣は｢知識｣として定着していても、｢史料としての信頼性｣などは知らなくて当然。では、諦(あきら)めるか？ 否！ ｢考察｣するのだ。

無論、｢説明文｣に｢手がかり･ヒント｣を求める。そこには、｢木簡は荷札や役人が出す命令を書き記すためなどに用いられ、用済みになれば廃棄された。一方、『日本書紀』は天皇家の歴史をまとめたもので、木簡とは異なり、後の時代の人が読むことを想定している｣といった内容が説明されている。つまり、｢木簡｣は｢その時だけの実用的用途｣のものであるが、｢歴史書｣は｢後の時代へ残す｣という意図があったことになる。ということは……、もう分かったはずだ。｢歴史書｣は記した人々に都合よくまとめられている可能性があるが、｢木簡｣には単に｢事実｣だけを記しているわけだ。したがって、たとえば､｢歴史書は記した人々に都合よくまとめられている可能性があるが、木簡は実用的で事実だけを記しているから｡｣(50字)といった｢答え｣となる。

｢私が知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えよ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問14]　｢下線部に関連しての条件付き自由考察記述設問｣(｢字数指定｣なし、｢50字ほど｣の解答欄)。｢自由考察問題｣(｢時事的要素｣あり)。｢リード文｣中の下線部⑭の｢ＡＩ｣とは｢人工知能｣のことで、｢知的作業を行う能力があり、様々な産業での有効活用が期待されている｣が、｢あなたは具体的にどのような形でＡＩが有効活用できると考えるか｣を説明する。｢条件｣は｢示されている『表』(Ａ～Ｐの産業分類)にある産業から一つ選び、その記号を記したうえで説明する｣こと。

｢自動運転｣に代表されるような｢ＡＩの活用例｣はいくつか知っているはず(典型的な｢時事問題｣)。そうした実用化されているもの以外を、｢表｣にある｢16の産業｣を参考にして具体的に何かを思いつきたい。あなた自身に、より身近な産業に注目すること。無論、｢あなたの考え｣なのでどのような具体例でもいいのだが、その際、｢知的作業を行う能力がある｣という点がポイントとなる。したがって、｢人間が行う知的作業を圧倒的に短時間で、しかも正確に行える｣といった｢活用の仕方｣を具体的にまとめていきたい。

尚、本年度から新たな｢大学入試制度｣が導入され、｢思考力･判断力･表現力｣がより強く求められるようになった。本校でもこれまで以上に、そうした力を問う｢自由考察問題｣の出題が予想される。そのための備えとして、世の中のさまざまな問題について常に自ら｢考察｣し、｢記述｣する練習が不可欠だ。

＜時間配分目安：３分以内＞

※尚、[問８]は｢資料｣｢地図｣｢統計｣｢年表｣を複合的に読み解いての｢説明記述問題｣になっている。こうした問題では、｢資料｣などをとにかく正確に読み解いて、｢条件｣等を｢手がかり･ヒント｣にして｢考察｣していくことが肝要。決して難解ではないので、果敢に挑んでほしい。

また、[問10]は｢地形図｣の｢読み取り問題｣。本校に限らず｢地理単元｣での定番なので、｢地図記号｣｢等高線｣｢方位｣｢縮尺｣等の｢地形図｣に関連する基礎的事項を完全に定着させておくことが肝要だ。