陸上競技から離れて目標も持てずに無為に過ごしていた主人公だが、中学校時代の後輩と走り、かつての顧問だった教師と話すことで、自分を生かしてくれる存在は他にもあることに気づく。

問一　久しぶりに走ってみて、思ったほど体が衰えていなかったことをうれしく思っている。傍線直前の内容とも合うので、イが選べる。

問二　競走相手として油断できないと感じている。イのようなあきらめの気持ちではないし、アのようなうらやましさも関係がない。ウの前半の内容は文中に書かれていない。

問三　主人公の望む走りは、ゴールまで正確にペースを刻む崎山のような走りではなく、弾丸のように前に向かっていく走りであることが述べられている。しかしアやエのような「常にトップで」「一位でゴール」という順位へのこだわりではない。

問四　アの「応援に乗せられてがらにもなく」、イの「いまひとつ気合が入っていない」、エの「自分自身のためだけではない」などは内容と合わない。

問五　「負けるわけないと思っていた」とあるので、競技から離れた主人公の実力を低く見ていたことがわかる。予想以上の走りだったので、見直したのである。

問六　好きなことに真剣に打ち込んだ充実感が感じられる。それが主人公の中学時代とも重なって見えるのである。イの「好きなことに打ちこむ喜び」は一回タイムレースを走っただけなので大げさであるし、現在の自分と中学生を重ね合わせているわけでもない。

問七　「誰かと同じ場所へ向かって」とある。一人ではなく目標を共にできる存在と、前に進む衝動を感じたいのである。

問八　主人公が打ち込めるものを持てずにいることを感じ取った上原が、レースでなくても「駆り立てるもの」は見つかるはずだと、視野を広げようとしてくれている言葉である。

問九　直前の主人公の言葉を「そんなことないんじゃない？」と受けての発言である。主人公を頼りにして手を伸ばしている子供の存在を、主人公自身も頼りとして打ち込んでみてもいいのではないかとヒントを与えているのである。

問十二　タイムレースを走ってみて、くすぶっていた自分でもまだ「自分を駆り立てるもの」を欲していることを感じられたが、どこに求めてよいのかわからなかった。しかし、鈴香たちの応援や上原の言葉で、自分を頼ってくれている鈴香という大切な存在を改めて意識し、直接走ることだけでなく他の場所・他のことにも「自分を生かすもの」を見つけられるかもしれないと考えるようになっている。

完璧に便利な機械を目指すばかりでなく、機械と人間が互いに足りない部分を補い合うような関係もあっていいのではないかと説いている。

問一　[省]―省くという意味の時はショウ、省みるという意味ではセイと発音する熟語で使われる。省略・反省など。

問三　傍線のあとで、ロボットが不得意な部分を手助けしているうちに部屋が片付いている、とある。まるでロボットと人間が協力して掃除を完結したような状況なのである。

問四　「お掃除に参加するための余地や余白を残してくれている」とある。ふつうに考えれば欠陥でしかないものが、人間に機械を手伝うチャンスを与えてくれているという言い方である。

問五　「試行錯誤のなかで互いの得手・不得手を特定しあい、連携のあり方を探ろうとする」とあるので、アが合っている。

問六　ロボットに足りない部分があるからこそ人間がそこを補完することができる。互いに得手・不得手があるという多様性が相手の能力を引き出しているのである。

問七　傍線のあとで２点に分けて説明している。「一つには」このロボットの「性格からくる」と言っている。弱さを隠さず開示しておくことで、周りの手助けを上手に引きだしている、とある。「もう一つのポイント」は「相手に対する敬意や信頼」で、弱みを補い、強みを称えあっている、とある。それが共生(連係プレー)を成功させていると述べている。

問八・問九　傍線に続けて説明している。高機能になればなったで、さらに高度になることを求め、要求はエスカレートしてゆくのである。

問十　いくつかの例を挙げているが、〈する方〉と〈される方〉というように、立場や力関係をはっきり分けてしまうことを言っているようである。

問十一　傍線部は、ロボットが人間の能力を褒めているようなユーモラスな言葉になっている。どちらが主でどちらが従でと分けるのではなく、機械に任せる部分と人間が担当する部分とがあってよいのではないかと、筆者は考えている。